高校無償化が朝鮮高校を排除してスタートし7ヵ月以上が過ぎた11月5日、高木義明文科相は適用基準を発表し、朝鮮学校も授業時間などの基準に合えば高校無償化の対象にするとした。
この当然のことを決定するのに「専門家会議」や「民主党内での議論」など、いろんな手続きを繰り返し7ヵ月もの時間を費やした。適用を求める生徒や保護者、支援者側も、街頭宣伝、署名活動、デモ行進、要請行動と膨大なエネルギーを費やしてきた。
さらに今の段階ではまだ決定ではなく、今後、各朝鮮学校側が、学則、年間指導計画、施設状況、財産目録などを記した書類を添えて11月30日まで文科省に申請し、教育専門家らが各学校に対し審査を行った後、適用されるかどうかが決まる。
さらにさらに、高木文科相は5日の記者会見で、朝鮮学校の教育内容について「自主的改善を促す」と談話を発表しているし、「政治、経済などでは日本の教科書の使用を要請する」とも報道されている。
そもそも、同じ各種学校の他の外国人学校は無条件で適用しておいて、朝鮮学校だけを排除し、今後その教育内容にまで干渉してくることまで可能にするとは、どれだけ破廉恥なことであろうか。
朝鮮学校はもともと、日本の植民地統治により日本に来ざるを得なかった朝鮮人が、1945年8月の解放後、自分たちの力で作り上げたものだ。そのときは、朝鮮半島には朝鮮民主主義人民共和国も韓国もまだ成立していなかった。
歴史的経緯を見れば、日本政府は朝鮮学校に手厚い援助を与えるのが当然なのに、これまで、逆に弾圧を加え続けてきているのである。
1948年1月には、GHQ(連合軍総司令部)の指示のもとに文部省は学校教育局長通達「朝鮮学校設立の取り扱いについて」(学校閉鎖令)を出し、朝鮮人を朝鮮学校で学ぶことを禁止して日本人学校への入学を強制しようとした。
同年4月には4.24教育闘争が起こり、その過程で警官の銃弾により金太一少年(16歳)が殺されている。そして1949年以降、朝鮮学校は次々と強制閉鎖されていく。
1965年には、「朝鮮人のみを収容する施設の取り扱いについて」という文部事務次官通達が出され、ふたたび朝鮮学校を弾圧する。
通達の後には、外国人学校法案(学校の管理運営、教員の任命、学校閉鎖の権限を文部大臣に集中させるなどとしたもの)を数回にわたり国会に提出して、朝鮮学校に対する取り締まりの強化をはかった。
これらの弾圧はけっして過去のものではない。
1990年には、些細な外国人登録法違反を理由に東京朝鮮中高級学校を強制捜索しているし、2007年には大阪府警が「電磁的公正証書原本不実記録」などの容疑を口実に滋賀朝鮮初級学校に踏み込み強制捜索を行っている。
(朝鮮学校に対する弾圧の歴史については、在日本朝鮮人人権協会の「朝鮮学校Q&A」というページに詳しく載っています。http://www.k-jinken.ne.jp/minzokukyoiku/index.htm)
今回の高校無償化からの朝鮮学校排除も、本質的には、2010年に日本政府によって加えられた朝鮮学校に対する弾圧、攻撃の一つだといえる。
いま現在もこれからも、朝鮮学校の教育内容に対する干渉、地方自治体による「補助金」の減額や廃止など、さまざまな形で弾圧が加えられることであろう。
1965年以降、外国人学校法案が数度、国会に提出されたと書いたが、その際にはそれに反対する日本の世論の盛り上がりにより、ことごとく廃案に追い込んだ。しかし、現在はどうであろうか。
逆に、高校無償化の朝鮮学校への適用に反対する世論が大きいし、日本のマスコミに至っては適用反対キャンペーンを行ったり本質から外れた議論を繰り返している。それが一番おそろしい。(k)