金環日蝕を翌日に控えていた夜、初めて息子の口からウリマルの寝言が飛び出した。
「ハジマラ!(하지마라・やめろ)」。
笑いながら足をバタバタさせているのを見ると、どうも夢の中で友だちとじゃれあっているようだ。初級部2年に進級して早や1ヵ月。弟、妹にあたる新1年生を迎え、今は3日後に迫った運動会の準備に明け暮れる日々である。
当然のことだが、進級してから勉強が少しずつむずかしくなっているようだ。毎日の帰宅は3時半ごろで、おやつを食べたあと、宿題にとりかかる、というパターンで過ごしている。時々、近所の習字教室を終えた保育園時代の友だちが寄ってくれて公園で遊んでいることもあるが、大体は家でのんびりしている。
1年生の頃は私が5時半ごろに家に戻ると、宿題を終えて遊んでいることが多かったが、ここ数日は私の帰りを待っている。짧은글짓기(短文作り)につまづいているのだ。聞くと、「속삭여요(ささやく)」という単語で作文を作りたいけど、作れないという。まずは言葉の意味を知っているのかと聞くとモゴモゴ。祖母からプレゼントされた국어사전(朝鮮語辞典)を開いたが、意味を理解できなかったとのこと。朝鮮学校に入学して1年。まだまだ朝鮮語の語彙が少ないので、当然のことだろう。
こういう時は、朝鮮語と日本語の対訳がついている学友書房の朝鮮語小辞典の出番だ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/81/32f909c193155fb5e01f4bce87bec3a9.jpg)
しかし、この貴重な辞典、残念なことに絶版だという。適当な辞典を探している最中だったので、「ささやく」という日本語の訳を教え、日本語の辞典で調べればと言ってみた。例文がピンと来なかったようなので、「弟が耳元でささやいた」なんてどう?と助け舟を出すと、朝鮮語に訳してノートに書き込み、宿題は完了した。
1986年に出版された朝鮮語小辞典は、日本語圏で暮らす朝鮮学校の子どもたちが朝鮮語を学ぶための工夫が随所に散りばめられており、とても使いやすい。
例えば…
속삭이다【동】귀속말로 조용조용 말하다.(ささやく)
례:어머니의 귀에 대고 속삭이는 아이.동무들이 속삭이며 걸어간다.
↑↑↑のように、どの言葉にも日本語訳がついており、例文も豊富。発音法や漢字、同義語、反対語なども明記されており、それぞれの語彙を総合的に学べるようになっている。
朝鮮語小辞典には、朝鮮学校の初級部、中級部を対象にした1万8390の単語が載っている。
辞典は、調べれば調べるほど、わからない言葉が芋づる式に出てきて、「言葉の果てしなく大きな海」を感じさせてくれる不思議な本だ。
ウリマルを習いたての頃は、動詞の活用形を身につけることもむずかしい。それぞれの単語の活用形や連語を頭に叩き込んで覚える、ということを重ねていくしかないけれど、辞典を繰るワクワク感が伴えばウリマルペウギ(우리말배우기)がもっと楽しくなる、と思う。
さて、のどから手が出るほど欲しい学友書房の朝鮮語小辞典、数年後の完成に向けて新しいものを作成中とのことです。
読者の皆さん、初級部児童にお勧めの辞典があれば教えてくださいね。(瑛)
「舟」っていうのは、「広大なことばの海」を渡る舟=辞書のことなんですね。
なかなか感動的です。興味がおありならご一読を。
子どもは学校では学友書房の辞典を使っているようですが、家にも一冊欲しいので、コリアブックセンターに問い合わせてみました。勧められたのは韓国で出版されている延世初等国語辞典。届くまでは、職場で使っている小学館の朝鮮語辞典で乗り切ろうと思っています。