日本政府が高校無償化からの朝鮮学校排除を決めた後、神奈川、埼玉、広島、山口などで朝鮮学校に対する補助金カットの動きが出ています。まとめると以下の通りです。
△神奈川県
2月13日、黒岩裕治知事が「北朝鮮による3回目の核実験を受け、県内の朝鮮学校5校に交付してきた補助金を平成25年度予算案に計上しない」「補助金継続は県民の理解が得られない」と突如発表。県の学事振興課が神奈川朝鮮学園に通知した。神奈川県は5日に同学園に対する25年度補助金を支給する方針を示していたが、8日後に一転した。
△埼玉県
2月13日、上田清司知事が「日本人拉致問題が何ら進展がなく、度重なるミサイル発射や核事件など、もう我慢に限界がある。埼玉朝鮮初中級学校の運営費補助金を2013年度の一般会計予算案に計上しないことを決めた」と述べ、14日に総務部学事課が学園に通知。埼玉県は補助金支給を2年間、保留・凍結していた。
△広島県
2月14日、湯崎英彦県知事が記者会見で「国も支援しないと判断した。県民の理解を得るのは難しい」と表明し、広島朝鮮学園に交付してきた県独自の補助金を、2013年度予算案に計上しない旨を発表。さらに2月21日の県議会で環境県民局長が、今年度保留中である授業料軽減補助金及び経常費補助金の交付もしないと唐突に答弁し、学事課が広島朝鮮学園に通知した。広島県は20年以上もわたり広島朝鮮学園に対する補助金を交付し、1993年7月には同学園を「学校教育法上の1条校に準ずる学校」として全国に先駆けて認知した。
△山口県
2月21日、山本繁太郎知事が山口朝鮮学園に交付してきた県独自の私立外国人学校特別補助金を「平成25年度予算案に計上しない」と発表。その理由として、総務部学事文書課が2月25日付け文書で述べた理由は次の通り。①朝鮮学校を高校授業料無償化の対象外とした国の考え方②朝鮮学校への補助金支給に関する他県の動向③朝鮮民主主義人民共和国の様々な行動に対する国内外の受け止め―。これらを総合的に勘案し、予算計上を見送ることにした、という。
神奈川県では2月28日、卒業式を直前にした高校3年生全員と保護者たちが、「黒岩知事に直接会わせてほしい」と県庁に要請に訪れました。それは、2011年に知事が同校の生徒、オモニたちと面談した際、「朝鮮の問題と朝鮮学校は別」「拉致問題は子どもたちに何の責任もない」という言葉をかけていたからでした。
今日のブログでは、補助金不支給の不当性を述べることは割愛します。
驚くのは行政の物事の決め方です。
補助金というのはその目的、支給対象、基準が要綱などで決められ、毎年予算計上され、支給されていきます。神奈川県が支給していた私立学校経常費補助金は、「私立学校の教育条件の維持向上及び修学上の経済的負担の軽減」が目的で、朝鮮学校のような各種学校認可を取得した外国人学校も対象となっています。
今回、神奈川県の黒岩知事は朝鮮の核実験を「理由」にしていますが、朝鮮学園は行政に運営状況を報告するなど、要綱に定められたことを誠実に履行してきました。補助金不交付はただひとつ、知事の独断と権限をもって決められたのです。
日本各地の自治体で朝鮮学校への補助金支給が始まったのは1970年代からですが、上記の広島県のように、「1条校に準ずる」という判断を下すまで、行政の中でも議論の積み上げがありました。その間、朝鮮学園や行政の国際化を求める日本市民とも無数の話し合いがあった。さらに、行政の施策が決まった後は、その施策を市民に浸透させるための広報や国際交流が数多く行われ、そこにはウリハッセンたちの姿がありました。
電話一本で「出さない」と通知し、その理由も伝えない。山口県ではこの対応のひどさに、学園側が県に対し、その「理由」を文書で通知することを求めました。
各地では日本市民も立ち上がり、抗議の要請、街頭署名が行われています。一人ひとりを突き動かしているのは、日本の民主主義が根底から揺らいでいることへの危機感ではないかと感じます。(瑛)
行政サービスがコロコロかわっては市民の生活が成り立ちません。
日本人自身も安心して暮らすために、このような事例を残してはならないのです。