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日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

3月に結審決まる/広島無償化裁判第14回口頭弁論

2016-11-24 10:00:00 | (S)のブログ

 広島無償化裁判第14回口頭弁論が11月16日、広島地裁で行われた。

 法廷ではまず、原告の1人である広島朝鮮初中高級学校の教員が意見陳述を行った。陳述では、祖国で暮らしたことのない在日4世の自分が、ルーツを知り、朝鮮人であることに誇りを持つことができたのは朝鮮学校があったからだと話し、在日朝鮮人にとって朝鮮学校がいかに重要かということを話した。また、街頭活動中に罵声を浴びせられ泣き出す生徒もおり、身近に差別があることを実感したこと、一方では、朝鮮学校が日本と朝鮮の架け橋になれることなど、高校時代の経験も語った。最後に、「子どもたちの頑張る姿を見てほしい」と裁判官に学校訪問を求め、公正な判決をするよう訴えた。

 裁判では、原告側(朝鮮学園)が第14準備書面を提出し、大きく2点を主張した。

 ①被告(国)はこれまで、広島朝鮮高校に対する不当な支配が疑われる根拠として産経新聞に書かれた内容をあげている。原告は、「本当に補助金の流用という重大な疑惑があるのであれば、産経新聞だけでなく他の多くのメディアもこれを大きく取り上げたであろうし、場合によっては捜査機関による捜査も開始されたはずであるが、そうした事態は起きなかった」などと説明しながら、被告が主張する「事実」はいずれも真実と認定できない単なる疑惑であるにもかかわらず、これを無償化除外に至る経緯として位置づけていることは不当だと主張した。
 
 ②また、被告が朝鮮学校と朝鮮民主主義人民共和国や朝鮮総聯のつながりを「不当な支配」としていることについて、「日本国内の外国人学校であれ、日本国外の日本人学校であれ、現地の私的団体である外国人団体と一体となって運営され、人事、財政、教育内容等に関する支援を受けることは、自然かつ普遍的な現象」だとし、他の外国人学校でも普遍的に認められる本国や民族団体からの支援を理由に、広島朝鮮高校を規程13条(学校運営の適正)違反と認定することは明白に違法だと主張した。

 被告からは第11準備書面が提出されたが、原告が公開を求めていた文書に対し、「指定された文書がない」との回答に留まった。

 原告は今回、教育法学の立場から国の不当性を指摘している、獨協大学の成嶋隆教授の意見書を提出。次回はこの意見書を踏まえた主張を行う予定だ。また、来年3月に結審が行われることが決まった。

 今後、以下の流れで裁判が行われる。
 第15回口頭弁論/12月14日(水)16:00~ 広島地裁
 第16回口頭弁論/2017年2月8日(水)13:30~ 広島地裁
 第17回口頭弁論・結審/2017年3月8日(水)13:30~ 広島地裁



 広島では11月13日から1週間、オモニ会、朝高生、教員、日本人支援者たちが広島駅前に集まり、街頭活動を行った。
 高校生たちは街頭で、「ビラに目を通すだけでも、どうかお願いします!」と一人ひとりに声をかけながら、ビラを配っていた。
 「在日でしょ?」と吐き捨てて通り過ぎる人や、「私は知らないから、いらない」と言った人もいた。
 一方で、立ち止まって話を聞いてくれる人の姿も。日本の学校に通う学生は、ビラを1枚だけでなく何枚も受け取り、朝高生と一緒にビラを配ったという。
 
 今回の裁判には、配られたビラを見てこの問題を知り傍聴に訪れた日本の方がいた。
 今後も地道に問題を伝えながら裁判を闘っていこうと、現場では気持ちを新たにしている。(S)




映画「高江―森が泣いている」を観て

2016-11-14 10:00:00 | (S)のブログ

 先日、ポレポレ東中野で上映されていた映画「高江―森が泣いている」(監督:藤本幸久・影山あさ子)を観に行った。

 これは、沖縄本島北部に壮大に広がるやんばるの森に囲まれた、人口140人ほどの小さな集落・高江で、今何が起こっているのかを記録したものだ。
 2007年、住民たちの反対にもかかわらず、沖縄防衛局は米軍北部訓練場でのヘリパッド建設工事に着手した。同時に高江の住民や支援者たちもゲート前で座り込み、テントを設置し、絶対に工事を食い止めようと闘ってきた。
 そして、今年7月10日の参議院選挙で、辺野古新基地に反対する伊波洋一氏が勝利したその日、明日から高江のヘリパッド建設が再開するという情報が入った。市民たちは翌日から現場に駆けつけ、撮影チームもそれから毎日撮影を続けた。

 全国から動員された約500人の機動隊員が市民たちを容赦なく排除していくようすは、本当に恐ろしい。機動隊のあからさまな暴力によって救急搬送されていく市民たち。「戒厳令」かと目を疑うほどの壮絶な光景だ。7月22日、激しい混乱の末、機動隊は市民がゲートを封鎖してきた座り込みテントを破壊してしまう。呆然とたたずむ人びとから、悔しさがにじみ出る。

 上映後のトークで藤本監督は、「国を挙げて全国から動員された機動隊員500人、沖縄県警入れて1000人が、140人しかいない高江の村にもう3ヵ月間も貼り付けている。沖縄の森の中で安倍政権がやっていることを、早く伝えないといけない」という思いで、映画をまとめたと話した。また、自然が破壊され工事が強行されていく森の中で、今も人びとが闘ってる。そのことを伝えるため、次の映画を準備しているという。
 「沖縄が今、闇に覆われているが、光を放つ人びとが集まり行動しているのも事実。集い続ける人たちに自身も付き合い続けて、記録を続けて行こうと思う。記録しない事実は消えていくし、記録してもたくさんの人が見られる形を作らないと意味がない。映画を観てもらう事で、初めて事実が事実として伝わっていく」

 現在、上映権付きDVDを販売中。また、ポレポレ東中野でアンコール上映が予定されているそうだ。
 次回作の「高江―森が泣いている2」は、11月末から上映権付きDVD販売。劇場上映は沖縄(12月10日~、桜坂劇場)、東京(12月中旬、ポレポレ東中野)、大阪(シアターセブン)で行われる。
 是非、足を運んでほしい。(S)

朝鮮学校への弾圧、韓国の支援者が抗議

2016-11-02 10:10:00 | (S)のブログ


 10月28日、韓国の「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」などの代表12人が、文科省を直接訪れ、日本政府の朝鮮学校差別に反対する要請文を提出した。

 要請文では、今年3月29日に文科省が地方自治体に出した朝鮮学校への補助金停止を促す通知について、「日本政府が今後も在日朝鮮人に対する差別と弾圧の政策を持続・強化し、民族教育の内容に難癖をつけ、朝鮮学校に対する差別政策を持続するという意志」の表れだと非難した。
 また、在日朝鮮人の歴史的経緯や、日本政府に出されている国連勧告についても指摘し、一日も早く朝鮮学校生徒たちに高校無償化を適用すること、学生たちを威嚇する右翼団体に対して規制処置をとることなどを訴えた。
 
 「私たちは朝鮮学校差別反対、高校無償化制度適用を要求する在日同胞と良心ある日本社会の動きに積極的に連帯し、韓国社会でこれをより一層拡散させていく。日本政府の蛮行を大々的に知らせ、朝鮮学校に関する裁判が勝利することができるように力を集める。私たちは私たちの同胞に対する日本政府の継続する差別をこれ以上、座視しない」

 これに対応した文部科学省修学支援室国際課の担当者は、補助金の支給は地方自治体に任せていると繰り返した。
 また、「3.29通知」を出した理由について、政治状況を配慮し国としてのスタンスを示す必要があったと説明。これに対しては、「それこそ教育と政治を絡めた朝鮮学校への差別だ」と批判の声が上がった。


 要請が終わると、韓国の支援者たちは、文科省前で行われていた金曜行動に参加。雨が降りしきる中、朝大生たちと共に不当な弾圧へ反対の声をあげた。

 韓国支援者の1人は、「あまりにも心が痛い。息子、娘のような朝鮮学校の子どもたちに申し訳ないという言葉しか出てこない」と話しながら、参加者たちを激励した。

 朝大生が歌を歌う姿に、涙を浮かべる韓国支援者の姿も見えた。

 この日、金曜行動に参加した朝大生の1人は、「この活動を続ける中で葛藤もあるが、韓国や日本の方が共に闘ってくれているようすをこうして直接見ると、自分たちだけではないということ、運動が連帯の中で行われていることを感じられた。自分たちの役割、闘う意味を改めて考えさせた」と語っていた。(S)

100回目の「金曜行動」に思う

2016-10-24 10:00:00 | (S)のブログ

 朝鮮学校への高校無償化制度適用を求め、毎週金曜日夕方に文部科学省前で行われている「金曜行動」が、10月21日で100回目を迎えました。文科省前には1000人の人びとが集まり、日本政府の差別に強く反対しました。
 
 この抗議活動は2013年5月、朝鮮大学校学生の呼びかけで始まり、たくさんの人が携わってきました。
 先代たちが勝ち取ってきた民族教育の権利を奪われてはいけないと胸を張って声をあげる大学生。後輩たちに同じ思いをさせたくないと勇気を振り絞ってマイクを持つ高校生。子どもたちが闘う姿に胸をえぐられながら共に声をあげるオモニ(母親)たち。「日本人の問題」だとこの場に駆けつけ、大学生が参加できない時は「勝手に金曜行動」で運動をつないできた日本の支援者たち。そして、同じ思いで闘う日本全国の朝鮮学校生徒、学校関係者、支援者たち。

 3年の間に、朝鮮高校生や朝大生の多くが卒業し、ここに立つ人たちの顔ぶれも変わりました。そして、高校生から大学生になり、大学生から教員となり、変わらずこの場に立ち続ける姿があります。闘いの3年間は、成長の3年間でもあったように感じます。

 長い闘いは、自分との闘いでもあります。通り過ぎていく通行人を見て悲しくなったり、どうして声が届かないのだろうと虚しさだけが残ったり、そんな金曜日もあったと思います。それでも、一緒に声をあげる仲間の姿に力が沸いた日もあったはず。「頑張ろう」と何度も決心した日々だったはず。
 一人ひとりの顔を浮かべると、この3年間、この場でどれだけの思いが共有されてきたかを考えさせられます。
 
 文科省前「金曜行動」は100回目という節目を迎えましたが、この先、この何倍も回を重ねることになるかもしれません。たとえそうなっても、「絶対に諦めない」という、参加者たちの「覚悟」が見えた金曜行動でした。(S)






記者が記録した桜本の闘い「ヘイトデモをとめた街」

2016-10-13 10:00:00 | (S)のブログ

 神奈川新聞の連載「時代の正体 ヘイトスピーチ考」を再構成した、「ヘイトデモをとめた街―川崎・桜本の人びと」が出版されました。
 
 社会福祉法人青丘社を中心に40年以上、民族差別のない多文化共生の街づくりに取り組んできた桜本に、ヘイトデモが襲ってきたのは2015年11月8日。川崎市ではそれまで10回のヘイトデモが行われていましたが、桜本地区が標的になったのは初めてのことでした。
 本書は、ヘイトデモに立ち向かう桜本の闘いの記録です。
 
 共生の街づくりを担ってきた青丘社の職員や地元住民、カウンターたちなどヘイトデモに抗う人びとの訴えや、現場の緊迫感が詳細に伝えられています。
 日常の生活圏に「殺せ!」を叫ぶヘイトが押し寄せてくる衝撃、この街にレイシストは絶対に通さないという必死の覚悟、共生に対する人びとの切実な願いがひしひしと迫ってきます。
 
 今年5月23日にヘイトスピーチ解消法が成立し、流れは変わります。川崎市はヘイトデモに対して公園の使用を不許可。デモは大勢の市民に阻まれ中止に追い込まれました。印象的なのは、カウンターの排除を求めるデモ側に「できない」「これが国民世論の力」と答えた県警の変化。不十分ながらも「法」の力を実感させる場面です。
 多文化共生の対極にあるのがヘイトデモ。桜本が築いてきた共生の歴史は、ヘイトデモが桜本を標的にしたのも、桜本の人びとが初めてヘイトデモを阻止できたのも、偶然ではないということを改めて考えさせてくれます。
 
 本書にはまた、差別と偏見に対して妥協しないという記者の強い意志が貫かれています。
 「ヘイトスピーチに中立はない。被害にさらされている人たちに肩入れする。それは偏っていることでも、不公平なことでもない」と、「記者の視点」で臆することなく主張しています。

 この闘いの記録を、是非一度読んでみて下さい。(S)

国の法律違反を指摘/九州無償化裁判第10回口頭弁論

2016-10-03 10:00:00 | (S)のブログ

 九州無償化裁判第10回口頭弁論が9月29日に行われた。福岡地裁小倉支部には傍聴券を求め90人が足を運び、46の傍聴席が埋まった。

 今回原告(朝鮮学園)が提出した第15準備書面では、被告の第6準備書面に対し再反論した。内容は、原告に適正な学校運営の立証を求める被告(国)の主張の矛盾点や、根拠なく朝鮮学校だけを疑う被告の主張が偏見に基づく誹謗中傷であるという点など、これまで繰り返し指摘してきたものだ。

 さらに原告は第16準備書面を提出した。
 被告はこれまで、朝鮮高校に就学支援金を支給していない理由のひとつとして「就学支援金が授業料へ充当されないおそれがある」と説明してきた。原告書面では、無償化法での法定充当の仕組みを考えると「無償化法は、学校の設置者による就学支援金の横領、あるいは第三者への流用などという事態を全く想定していない」ことが明らかだとし、被告の主張は無償化法を逸脱した暴論だと指摘。さらにこの主張が「無償化法に違反する」「不指定処分をする理屈を作り出すために必要不可欠なロジック」であると批判した。
 被告が朝鮮高校を除外するもう1つの理由としてあげている規程13条(法令に基づく学校の運営を適正)については、無償化法が支給対象として定めている「高等学校等の課程に類する課程を置くもの」を逸脱した違法な規定だと主張した。

 また第16準備書面では、「安倍自公連立政権による本件への対応は法的にもずさん極まりないものであり、それ故に、安倍政権の差別意識を如実に示すものである」とし、この安倍政権の差別政策を裁判所が厳しく断罪すべきだと訴えた。

 原告は今回、学者による意見書3つを提出。次回の裁判でそれに基づく主張をする予定だ。原告が開示を求めていた文書に対する被告の回答書が提出されたため、これらを踏まえた反論も今後行っていく。





 裁判終了後に裁判官の部屋で行われた進行協議では、今後の裁判の流れについて話し合われ、最終段階となる尋問についても言及された。尋問の時期は、引き続き書面を通して双方の主張が続けられた後、来年5~6月頃になる見込みだ。
 原告が裁判官に対し学校訪問を要望していることに対しては、裁判官からはっきりとした答えは告げられていない。進行協議で原告は、学校訪問の必要性についても改めて強調した。

 裁判報告会では、金敏寛弁護士がこの日の裁判と進行協議の内容を報告した。
 また報告会前に行われたミニ学習会では、京都朝鮮第1初級学校襲撃事件のヘイトスピーチ裁判に携わった冨増四季弁護士が講演を行い、京都での裁判を通して見えてきた民族教育に対する考えや、差別社会とどう向き合い改善していけばいいのかなどについて話した。

 第11回口頭弁論は、12月8日(木)14:00から福岡地裁小倉支部で開かれる。(S)


広島無償化裁判第13回口頭弁論

2016-09-21 10:00:00 | (S)のブログ

 広島無償化裁判第13回口頭弁論が9月14日、広島地裁で行われた。
 
 広島では、11回、12回口頭弁論で証人尋問が却下されたことで、今後への不安が広がっていた。そんな中、原告(朝鮮学園)は、公正な判決を裁判官に求める内容のハガキを1000枚以上を集め、裁判提訴3周年となる8月1日に裁判所へ送り、今回の法廷に臨んだ。
 
 法廷では、広島朝鮮初中高級学校の卒業生の1人(現在大学生)が、証人尋問を却下し続ける裁判官に対し意見陳述を提起したが、裁判官はこれを認めなかった。傍聴席からは不満の声があがり、法廷は一時騒然とした。

 今回、被告(国)から第10準備書面が、原告から第13準備書面が提出された。

 原告が、ハ号の削除など、すべての議論の過程で作られた文書の提出を求めていたが、今回被告が提出した書面は、これまでのことを繰り返すだけの内容も分量も乏しいものだった。

 原告は準備書面で、2010年2月から始まった高校無償化法の制定課程の詳細を説明し、朝鮮高校が「高等学校の課程に類する課程を置く」といえるかどうかの判断基準において、財政面における学校運営の適正や、その確認体制の有無などは当初の段階で含まれていないことについて指摘した。そして、無償化判断材料が同じ国である被告の主張と真逆であることを明らかにした。
 
 法廷後の報告会では、今回意見陳述する予定だった原告の卒業生が思いを込めて陳述書を読み上げた。
 この日は、毎回口頭弁論を傍聴しているハルモニと、原告であり今年から母校である広島初中高で教鞭を取り始めた教師の2人が意見発表を行った。

 次回の第14回口頭弁論は11月16日(10:00~)、第15回口頭弁論は12月14日(16:00~)に広島地裁で開かれる。(S)

大阪の「オープンカフェ」を取材して

2016-09-07 10:00:00 | (S)のブログ

 先月、大阪府東大阪市にある「オープンカフェ」を取材した。今年5月、社会福祉士の資格を持つ同胞がオープンした、児童発達支援・放課後等デイサービスだ。地域に住む未就学児や、小学校から高校までの障がいを持つ子どもたちが、コミュニケーション力や自己表現、就労支援などの「生きる力」をそれぞれのペースに合わせて学ぶことができる場所だ。

 同施設には障がい者に限らず、地域の子どもたちも訪れる。過去に行われた「ふくろうカフェ」や「バルーンハウス」といったイベントには、朝鮮学校と日本の学校に通う子どもたちが参加。その他にもセミナー、朝鮮学校保護者の子育てサークルなどの場として利用され、大人たちも足を運ぶ。障がい者と健常者、在日と日本人、あらゆる人が集うことで、地域の壁をなくしてみんなが触れ合い学べる場を目指しているという。中には、コーヒーを飲みに立ち寄る人もいるそうだ。

 運営をしている同胞は、大学時代から障がい者に関わる活動や仕事をしてきた。それまでは障がい者は「見えない存在」だったが、自分の視点が変わることで、社会の見え方が大きく変わったという。オープンカフェ開設の裏には、身近にいる障がい者の存在を地域住民や在日同胞たちに知ってもらいたいという思いがある。

 「日本では今、社会に役に立つ人材になれるかどうかという観点から教育が行われていて、一人ひとりに合わせた教育にはなっていない。障がい者に対する理解も以前より広がってはいるけれど、それは日本の経済的発展の中で可能だったことで、余裕がなくなると弱者への支援は当然のように削られてしまう」

 私が朝鮮学校に通っていた時、障がいを持ったクラスメイトがいた。明るくて活発で、羨ましいくらい周囲と打ち解けるのが得意。私にとって、それまで接する機会がほとんどなかった障がい者を身近に感じた期間だった。ただ、今回の取材の後に改めて振り返ってみると、朝鮮学校に通っていない障がいを持った同胞たちのことを、あまり想像できていなかった。色々な取材を重ねながらも感じることだが、私が認識している枠は想像以上に狭い。視野を広げたり、違う角度から物事を見るためには、もっと積極的に自分から知ろうとしないといけないなとも反省した。(S)

神奈川中高生がロボコン出場 9月には全国大会へ

2016-08-29 10:00:00 | (S)のブログ


 朝鮮学校の夏休みも終わりに近づいています。夏休みといえば、日頃の学校生活とは違うさまざまな活動の中で新たな経験をする、もうひとつの「学び」の期間だと思います。

 8月24日、神奈川朝鮮中高級学校では中級部・高級部生たちが「第18回電子ロボと遊ぶアイデアコンテスト ミドルコース」(神奈川工科大学)に出場しました。WRO(World Robot Olympiad)の全国大会、世界大会の予選も兼ねた大会です。

 神奈川中高は2人1組でチームを組み、中級部から1チーム、高級部からは4チームが参加。夏休み期間、それぞれのクラブ活動に打ち込みながら合間を縫ってロボットを製作。大会前日も夜遅くまで調整を行い本番に挑みました。

 競技の形式は、大会指定のレゴ マインドストームで作られたロボットを決められたフィールドで走らせ、4つのミッションをクリアしながらポイントを積んでいくというもの。2回競技が行われ、点数が高かった方がチームの得点となり、同点の場合はスタートからゴールまでのタイムで順位が決まります。

 神奈川中高は、中級部チームと高級部の1チームがすべてのミッションをクリアし無事完走。高校生は40チーム中ミッションをクリアしたのは11チーム。完走させるだけでもとても難しいことです。
 さらに、中級部チームはなんと1位を獲得。高校生の部ほど参加チームは多くありませんでしたが、正確なプログラミングとチームワークでレベルの高い走りを披露しました。9月18日に東京で行われる「第13回WRO Japan決勝大会」に出場します!

 神奈川中高では2001年以降、何度かロボットコンテストに参加し成績を挙げてきました。昨年11月には、第3回宇宙エレベーターロボット競技会で高級部生徒が「株式会社カリナ賞」を受賞しました。
 この取り組みに力を入れてきた金先生は、ロボットを作る過程は「自分の力で原因を考え、問題を解決する過程」、また「決まった答えを探すのではなく、『学び方』を身に付ける過程」でもあると話します。ロボットコンテストに参加することで、日頃の勉強意欲にもつながるそうです。

 児童・生徒たちは「面白い」「かっこいい」とロボット制作に燃えていました。楽しみながら大切なものを学ぶ、貴重な経験となっているようです。(S)

9月号が完成しました!

2016-08-18 10:00:00 | (S)のブログ

イオ9月号が完成しました。

今月の特集は「同窓会で会いましょう」。
さまざまな思い出が詰まった学生時代。異国日本で歴史を重ねてきた朝鮮学校、その卒業生たちは、なおさら学生時代に対する思いが強いのかもしれません。
特集では、実際に行われた朝鮮学校卒業生の同窓会のようすや、学生会で知り合った仲間たちで開いた同窓会などを紹介しています。また、各地の同窓会情報も掲載しています。
平壌に住む同級生たちとも同窓会を開きつながりを広げてきた金日宇さんのエッセイも必見です。
各地方に散らばって生活している同胞たちをつなぐ重要な場ともなっている同窓会。この機会に是非、同窓会に足を運んでみたり、同窓会を開いてみてはいかがでしょうか。

特別企画は「メディアは社会を変える?」。
右傾化や軍国主義化が進む日本社会。そんな中、日本のマスメディアは政治権力に屈し、市民たちの声を封じ込めることでそのような社会の変容に加担してきました。一方で、独自の切り口と主張でその流れに対抗する志あるメディアも存在します。
本企画では、受け手一人ひとりの思考力を鍛え世の中の風潮を再び変えようと尽力するメディアを、ネット媒体を中心に紹介します。

その他に、本格的に公的住宅の建設が始まり、苦難の歴史が刻まれた風景が消えようとしている在日朝鮮人集住地区・ウトロ(京都)について、南武朝鮮初級学校で行われたラグビー体験教室や、開館15周年を迎えた高麗博物館について取り上げました。
問題となっている大学生の“奨学金”についても掲載されています。

今月号も盛りだくさんの内容となっています。是非ご愛読ください!(S)

「和解・癒やし」財団にNO!!  ~外務省前で反対アクション

2016-08-02 10:00:00 | (S)のブログ

 韓日両政府が被害者の声を無視し強引に行った、昨年12月28日の「最終的かつ不可逆的」な「合意」。中身が抜け落ちたこの不当な「合意」では、「韓国政府が被害者支援のための財団を設立し、日本政府がそれに10億円を拠出する」ことが発表された。
 先週の7月28日、韓国政府がこの財団の設立を強行した。その名も「和解・癒やし」財団。設立式は、主人公であるはずの被害当事者たちは誰1人出席せず、政府関係者らだけで行われ、この財団の性格を物語っていた。
 韓国では設立当日、記者会見会場を大学生たちが占拠し、「韓日合意 破棄しろ!」と叫び続けた。“和解は、加害者が強行できるものではない! 被害者が望まない合意を実行しておきながら、10億円をもらい財団を作ることは、被害者に対する新たな暴力だ!”
 一方、日本国内では、韓日「合意」の問題点に対する認識は希薄だ。それどころか「10億円の拠出が『賠償金』と受け止められかねない」とわざわざこんな懸念すら聞こえる。

 

 「和解・癒やし」財団が設立される前日、日本の外務省前では、「韓日『合意』反対アクション~『和解・癒やし』財団設立にNO!!」と題し、抗議活動が行われた。在日同胞、日本人らが集まり、「日本政府は被害者支援事業を被害国に押しつけるな!」「日本政府は国連勧告に従って法的責任を認めろ!」と声を挙げた。
 参加者たちは、朝鮮語と日本語で「和解」「癒やし」と書かれたマスクを付けて街頭に立った。韓日「合意」と財団設立の本質が、「和解」「癒やし」というまやかしの言葉で被害女性たちの声を封じ込めようとするものだということを示すためだ。 

 参加者たちは、日本軍性奴隷制の被害女性たちの鎮魂をテーマにした映画「鬼郷」の主題歌である「カシリ」という曲を流しながら、被害者への鎮魂の思いを込めた。
 
 「韓国政府も問題だが、自らの国家犯罪に対する法的責任を認定せず、国際法の責務に沿った被害回復措置を全く取っていない日本政府に根本的な問題がある。この「合意」を一斉に歓迎する日本の主要メディア、いわゆる「リベラル」な知識人、それに流されてしまう日本社会の世論は非常に問題である」。主催者は外務省前で反対アクションを行うに至った理由をこう説明した。

 「昼食をもてなすからという名目で被害女性たちが財団設立の場に直接来るよう政府が電話をかけ、しかも直接来ればお金をあげるという内容も話された」と、挺対協によって報告されたこの間の出来事にも触れ、「被害女性たちを『合意』の支持者として利用しようという意図が透けて見える」と、韓国政府に対しても強く非難した。
 
 これまで、国際人権条約機関による日本政府への勧告が度々出されてきた。反対アクションでは、なかでも近年出された勧告(2016年/女性差別撤廃委員会対日勧告、2014年/人種差別撤廃委員会、2013年/社会権規約委員会勧告、2014年/自由権規約委員会勧告、2013年/拷問禁止委員会勧告)が読み上げられた。外務省はこのような国連勧告に従い法的責任を認知し、公式謝罪と法的賠償、真相究明や歴史教育、加害者処罰を行うべきだと訴えた。



 フリースピーチでマイクをとった、日本人のOさん。「日本政府は二度と同じ過ちを犯さないために、自ら歴史的加害責任を問い、その記憶を継承していかなくてはいけません。それは、苦痛を伴うことかもしれません。しかし、二度と同じ過ちを起こさないための必要な苦痛であると言えるし、未来の希望につながるものだと思っています。韓国でも教科書の国定化が問題になりましたが、その時、韓国の高校生はこうスピーチしていました。『事実は事実として教えてほしい。私たちの判断力を信じてほしい―』。日本でもそのように思う若者は多いのではないかと信じています。日本政府は『合意』の前に真相究明、謝罪、補償、責任者処罰、歴史的教育、歴史の継承をすべきです。ところが日韓『合意』には、真相究明への措置も、再発防止への措置も全く触れられていません。事実認定も曖昧、責任の所在も曖昧、性奴隷制であることも否定。そんな日本政府が、平和を願う少女像について『移転』だの『撤去』だの、言語道断です。被害者を置き去りにして『和解』とうたうこと自体が、『和解』という名の暴力です」。

 財団反対アクションをすると聞き外務省前に駆けつけたUさんは、「財団が設立されるという今の状況に絶望的な気持ちになった。日本政府は、最低限守るべき道義と倫理を果たしていない。それはまさにまた同じ過ちを繰り返し兼ねないことに繋がる。言うまでもないが、上っ面の未来志向ではなく被害者の言葉にちゃんと耳を傾けるところから、やり直していかなければならない」。
 
 同じく外務省前で声をあげたIさんはこう話す。「昨年12月の『合意』に失望した。当事者のハルモニたちを無視し政治的な解決を図ろうとしたことに怒りをもった。政治家たちの思惑で被害者たちの思いを踏みにじろうとしていることに怒りが込みあげる。声をあげることを絶やしてはならないと思うし、自分たちのこととして向き合っていきたい」。

 多くの人が通り過ぎていく街頭で抗議行動をしながらマイノリティとしての「疎外感」のようなものも感じたという在日朝鮮人のCさん。「日本では、『慰安婦』問題の本質がほとんど理解されず、この問題を自分とは無関係のものとして捉えているように感じる。これも日本社会の1つの暴力構造だと思う。『伝える』ということは簡単なことではないが、地道に声をあげたい」。

 現在韓国では、韓日「合意」に基づく財団に反対し、日本政府の拠出金ではなく市民の力による「正義と記憶」財団が立ち上げられ、募金運動が行われている。外務省前での反対アクションでは、同財団へのカンパも呼びかけられた。(S)


広島無償化裁判第12回口頭弁論/結審の日程が先送りに

2016-07-22 10:00:00 | (S)のブログ

 広島無償化裁判の第12回口頭弁論が7月13日、広島地裁で行われた。

 広島では前回の第11回口頭弁論で、9月14日に結審を行うことが決められた。しかし同じ法廷で、当事者である原告の証人尋問がすべて却下されたことから、裁判官の結審に対する懸念の声が上がっていた。
 今回の法廷に先立ち、原告(朝鮮学園)側の弁護士は裁判官に面談を申し入れ、▼法律研究者による意見書2つの提出と、▼新たな原告の証人尋問を申請していた。裁判当日は、これらに対する裁判所側の対応が注目された。そのため会場にはいつも以上に多くの傍聴者が集まった。

 裁判所はこの日、原告側が準備している研究者の意見書を10月末までに提出することを認めた。結果、9月14日には口頭弁論は行われるものの、予定していた結審は先送りとなった。
 また法廷では、広島朝鮮初中高級学校を紹介するDVDが上映された。前回の口頭弁論で、学校を直接訪れ事実を確認してほしいとの検証を裁判官に申請していたが却下されたため、代わりに提出されたものだ。DVDでは学校設立当時の歴史、現在の授業のようすと教科書の紹介、児童・生徒たちのさまざまな日常が映し出され、同校が高等学校の類する課程であることを示すものとなった。
 しかし一方で、原告の証人尋問は前回と同じように却下された。

 今回、原告から第12準備書面、被告(国)からは第9準備書面が提出された。
 原告は準備書面で、▼文部科学大臣が行った朝鮮学校に対する不指定処分が、審査会の最終意見を踏まえることなく独自で行われたものであり、手続き上違法であること、▼今年3月29日に文部科学大臣が地方自治体に出した、朝鮮学校への補助金見直しに関する通知が、高校無償化制度からの除外と同様、政治的目的で行われた不当な行為であることを主張した。
 被告の準備書面では、▼文科大臣の朝鮮学校に対する不指定処分が正しかった、▼学校の適正な運営を原告側が立証しなくてはいけないなど、これまでの主張が繰り返された。

 裁判では、同校オモニ会が中心となり集められた陳述書134件も提出された。当事者一人ひとりが自身の言葉で心境を綴ったものだ。




 裁判終了後の報告会で、弁護団が裁判に対する現時点での見解や今後の予定について報告した。原告が準備している意見書を裁判所が受け入れたこと、法廷でDVDを上映できたことに一定の評価をした一方で、原告の証人尋問が再び却下されたことに対する懸念を示した。
 裁判官の対応を巡って、引き続き懸念が広がっていることに対して足立修一弁護団長は、弁護団で今後の対応を検討したいとした上で、「どの裁判官でも原告を勝たせるしかないと判断するような立証を積み重ねていくこと」が重要だとのべた。
 
 この日、2010年の徳島県教組在特会襲撃事件の被害に合い、今年4月に裁判で全面勝訴を勝ち取った原告の女性が、裁判を傍聴しに徳島県から訪れた。報告会では、6年間に及ぶ裁判の紆余曲折の日々を語り、「裁判で闘い続けることはとても苦しいが、声を挙げ続けない限り道は開かれないと思う。今後も共に勇気を出して頑張りましょう」と集まった人々を鼓舞した。会場から大きな拍手が送られた。

 また、報告会のはじめには広島初中高の生徒たちが合唱を披露し開場を勇気付けた。

 次回の第13回口頭弁論は9月14日(13:30~)、第14回口頭弁論は11月16日(10:00~)に広島地裁で開かれる。
 第14回口頭弁論で原告は法律専門の研究者による意見書を提出する予定。結審はその後行われるが、日程はまだ決まっていない。(S)



子どもの力はふしぎ

2016-07-12 10:00:00 | (S)のブログ
 私は、子どもと遊んだりすることにあまり慣れていない。親戚に幼い子はいても会う機会が少なかったからだろうか。なぜか、子どもに人見知りをしてしまう。
 しかし、見ているだけでも癒されてしまうのが子どもというもの。「どうしてこんなにかわいいんだろう」と思いつつ、ニコニコしながら眺めているしか出来ない自分がもどかしい…(笑)。

 取材先で子どもと対面することもあるが、その時は「人見知り」という概念を頭から消して、少しだけ声のトーンをあげて話しかける。もちろん子どもにも人見知りの子はいるし、そもそも誰か分からない人を警戒するのは当たり前。基本的に反応はいまいちだ。
 でも必ず子どもが喰い付いてくれるものがある。取材先で私が持っているカメラだ。特に初級部低学年くらいまでは、カメラを向けるととにかく嬉しそうにはしゃぎ出す。

 先週、金剛保険群馬支社を取材しに行った。メインとなる写真を、職員の方と群馬初中の子どもたちで撮ることになり急きょ学校へ。通りかかった児童に「みんなで写真撮るよ~!」というと、次から次へと子どもたちが駆けつけて、数分も経たないうちに10人以上の子どもたちが集結。
 子どもたちはかわいい、かつ本当に不思議だなと思う。これといって何も起こっていない状況で、最高の笑顔を作れるのだ。静止画なのに大声で笑いながら、何枚とってもひたすら笑い続けられるからすごい。写真に抵抗感がないのもそうだが、「面白い」という感情を全身で表せる力があるのだろう。おかげで撮影は無事終了。私の心もほんのり温まった。

 子どもたちにとって何ともないことが、大きな力を発揮する。ニコニコ眺めているだけでも元気をもらえるのだから。自分も含め、この世のすべての人がそんな子どもだったというのも、考えると不思議だ。
 「かわいい」の一言で表現しがちだが、子どもながらに悩んだりぶち当たったりもするのだろう。それでもやはり、大人が持ちえない不思議な力にはいつも驚かされる。(S)

大盛況! モンダンヨンピルコンサート in 茨城

2016-07-05 09:49:08 | (S)のブログ


 「モンダンヨンピルコンサート in 茨城 サランへヨ!朝鮮学校!」が7月1日、茨城県水戸市の駿優教育会館大ホールで行われました。各地から在日同胞と日本の方たちが駆けつけ、感動を共にしました。

 「モンダンヨンピル(몽당연필)」とは、「短くなった鉛筆」のこと。「鉛筆を削って削って、これ以上短くなることができなくなるまで大切にして使う心」で朝鮮学校を助けようという意味で名づけられました。
 2011年の東日本大震災で被害を受けた朝鮮学校を支援しようと結成された「モンダンヨンピル」。同年の4月から計18回のコンサートを韓国で行い、日本公演は東京、大阪、広島に次いで4回目です。
 今では、被災地だけでなく、「高校無償化」問題や補助金問題などで逆境にさらされている全国の朝鮮学校と同胞社会に大きな勇気を与える存在です。

 コンサートのオープニング「歓迎の舞」。茨城朝鮮初中高級学校の生徒たちによるサムルノリに続いて、日本のよさこいチーム「縁結、同心會」が登場。茨城初中高児童・生徒たちの舞踊と農楽が見事にコラボし、会場が一気に沸きました。
 韓国からは、歌手グループ「ウリナラ」、歌手のイ・ハンチョルさん、パンソリ(韓国の伝統芸能)歌手のパク・エリさんとダンサーのホッピン・ヒョンジュンさん、日本公演初出演のテグム奏者のハン・チュンウンさん、ユニット「人気歌手」(ソン・ビョンフィさん、イ・ジョンヨル)らが出演。楽しく、感動的な舞台に、大きな拍手が送られました。
 パク・エリさん、ホッピン・ヒョンジュンさん夫婦と、在日の舞踊家のソン・ヨンスクさん、太鼓演奏家のせきぐち のりあきさんのコラボも斬新でした。
 出演者と観客が一体となって作り上げたフィナーレは、コンサート一番の盛り上がりでした。

 「今公演を続けながら、私たちがしている活動が果たして合っているのかどうか悩むことがあります。しかし、舞台裏で、この公演の準備をしている子どもたちの姿を見たときに勇気を得ます。『間違っていないんだ』と…」。
 司会を務めたモンダンヨンピル代表で俳優のクォン・ヘヒョさんの言葉に、5年に渡る「モンダンヨンピル」の活動が決して平坦な道ではなかったこと、また人々が互いに力と希望を与え合いながら、朝鮮学校のため、平和のために進んできたとことを感じました。公演は、それをひとつの空間で確認しあう場だったと思います。

 朝鮮学校の子どもたちへの愛情があふれにあふれていた、モンダンヨンピルコンサート。大人たちに負けず、堂々と舞台にあがる子どもたちに、その力の大きさを改めて感じさせられました。朝鮮学校が、朝鮮半島と日本の「架け橋」になれる、そのことを見せられた気がしました。

 政治的な問題が常に立ちはだかりますが、昔も今も、これからも、朝鮮学校の子どもたちの笑顔が、私たちが進む原動力になると思います。(S)

「舞台裏」を知ることは楽しい

2016-06-22 10:00:00 | (S)のブログ
 数日前、パティシエをしている同胞を取材した。“パティシエ”という響きからしてなんだか格好いいし、働いている姿を想像しても、とてもおしゃれで華やかなイメージがある。
 しかし、実際はかなりの重労働だ。体力のいるハードな職だとは聞いたことがあったが、現場の生の声を聞くと想像以上のものだった。

 長時間の立ち仕事で、腰への負担も大きい。酷い手あれにも悩まされるし、火傷をすることも一度や二度ではない。
 そして何より、忙しい。ケーキのシーズンといえばクリスマス。店頭には数々の可愛いケーキが並び、見ているだけで癒されてしまうが、その裏側では、パティシエさんたちが睡魔と闘いながら死に物狂いで働いているのだ。睡魔に襲われ、気が付けばケーキに手をぶち込んでしまっていた…なんてことは「あるある」だそうだ。
 街中からクリスマスモードが消えても、パティシエの世界では嵐が収まらない。お正月、バレンタインデー、ホワイトデーと、忙しさが続く。いろいろな意味で体力勝負だ。

 こんな熾烈な世界を知ってしまった以上、今後ケーキを食べる時は、この「裏側」を思い浮かべずにはいられないだろう…。取材を終えて、ひしひしと感じた。

 今回のパティシエに限らず、取材を通してさまざまな職業の人の話を聞く機会がある。その職業は自分の身近なものを作り上げていることも少なくない。自分の日常の一つひとつに対して、少しずつ「舞台裏」を知っていく過程のように感じられる。世界が少し変わって見えると、取材が本当に楽しい。
 たとえ取材がきっかけでなくても、物事に想像力を働かせながら過ごしていかなくてはとも思うようになった。(S)