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日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

「女性手帳」について考える

2013-06-01 09:00:00 | (淑)のブログ
 政府が少子化対策として検討してきた「生命と女性の手帳」(仮称)、通称「女性手帳」の配布が物議を醸したが、「個人の生き方の問題に国が介入すべきでない」などと批判が相次ぎ、政府は事実上これを撤回した。この女性手帳、何が問題なのか、少し考えてみたい。

 女性手帳は、少子化対策を検討している内閣府の有識者会議が提案したもので、若い女性を中心に、妊娠・出産にまつわる知識を広め、晩婚化に歯止めをかけるのが目的。30代後半になると一般的に女性は妊娠しにくくなるといった医学的知識を盛り込むほか、個人の健康記録欄も設け、中学1年で子宮頸がんワクチンの予防接種を受ける時などに女性に配ることを想定していた。

 まず、配布対象を女性に限定するのはおかしな話で、確かに子どもを産むのは女性にしかできないことだが、女性一人では妊娠も出産もできない。妊娠・出産・子育ては男女共有の問題だ。

 そして、産婦人科や助産師の不足といった医療現場の現状、待機児童の問題や社会活動の制限など女性にのしかかる子育ての負担の問題、さらに婚外子への差別の問題やシングルマザーの精神的・経済的負担など、山積する問題を棚に上げて、女性を「啓発」して出生率をあげようという女性手帳の発想から見えてくるのは、権力者の思想でしかない。
 また、様々な理由から非婚や不妊の人、出産を望まない人もいる。そして同性愛者やセクシュアル・マイノリティなどの存在はどうなるのか。女性手帳は極めてヘテロ・セクシュアル(異性愛)中心主義的で、同性愛者やセクシュアル・マイノリティへの差別や偏見の助長につながるともいえる。

 私自身は20代後半にさしかかり、最近は妊娠適齢期や高齢出産のリスクをことさらに強調され、結婚を催促されることがままある。その度に強烈な違和感と不快感を感じている。このような「お節介」は言う側は無意識で、一人ひとりの妊娠・出産の意思や人生設計、生き方の問題を完全に度外視し、自己決定権を侵害していることに気付いていない。言われた側にとってはほとんど強迫観念と言ってもいい。女性手帳もこれと同じだ。
 妊娠・出産を希望する女性が安心して出産・子育てできるよう環境づくりや、なによりも社会的構造、ジェンダー規範の抜本的な改善に取り組むことが先決ではないか。

 出産をめぐっては2007年に、柳澤伯夫厚生労働相(当時)が女性を産む機械に例え批判を浴びた。厚労相の失言しかり女性手帳しかり、第二次世界大戦中、植民地拡大を背景にして兵力増強のため掲げた「産めよ増やせよ」の政策を想起させる。
 そしてこのようなジェンダー・バイアス、権力者による性の専横は、「慰安婦制度は必要だった」とした橋下氏の妄言と根を同じくするものである。(淑)


外国人学校合同絵画展

2013-05-25 09:00:00 | (淑)のブログ

 今年で12回を数える「東京外国人学校合同絵画展」が5月17日から22日まで、東京・新宿にある都政ギャラリーで開催されました。
 現在、東京都内には約5000人の外国人小学生、約3000人の外国人中学生が在住し、多くの子どもたちが外国人学校に就学しています。
 同展は、外国人学校の存在をアピールし、多くの日本人に理解を得ると同時に、外国人学校同士の交流を深め、地位向上と権利拡充のために働きかけることを目的として2001年に始まりました。
 今年は都内の朝鮮学校8校と、東京中華学校、東京インドネシア共和国学校、グローバル・インディアン・インターナショナルスクールの11校の児童・生徒らの作品、116点が展示されました。
 自画像や風景画、学校生活、民族衣装。絵画展では、多様なテーマや表現、個性的な筆致で描かれた作品群を一同に見ることができ、それぞれの学校の日常生活や文化が反映された子どもたちの絵は、どれも楽しいものばかりでした。私はいろんな表情をした鬼面瓦と、ランドセルの絵が気に入りました(写真下)。

 
 

 ギャラリーに足を運んだ日は東京中高の中級部の生徒たちも来ていて、会場はとてもにぎやかでした。



 生徒たちはひと通り絵画を鑑賞したあと、他の外国人学校と朝鮮学校の作品の中で気に入ったものをそれぞれ一つずつ選んで、作品に対する感想と絵を描いたともだちへのメッセージを書いていました。感想文は絵を描いた本人に送るそう。用紙には自己紹介と似顔絵の記入欄もあり、趣味やクラブ活動のことなんかを書いている子が多かったです。
 この取り組みは同校が毎年行なっているもので、他校からも同様の葉書が送られてくるそうです。文通みたいでいいですね。
 中級部1年生のある女子生徒は、「日本に暮らす同じ外国人として、外国人学校に通う生徒たちがどんな学校生活を送って、どんな考えを持っているのか、会って話をしてみたい」と話してくれました。また、「絵を通して、日本には日本人だけじゃなく、外国人も存在しているということを伝えたい」とも話していました。

 2001年から毎年行われてきた同展。2010年には10周年記念行事として上野動物園で合同写生会を行うなど、交流を積み重ねて来ました。
 今年は準備の都合上、不参加でしたが、例年は韓国学校からも多くの作品が出品されてきました。今後、同じ民族同士の学校のつながりはもちろんのこと、他の外国人学校、そして日本の学校とのさまざまな分野での交流がいっそう深まり、違いを知り理解することで、それぞれの教育の現場がより豊かに彩られることを期待したいです。(淑)
 










 

橋下発言を容認するか否か

2013-05-18 09:00:00 | (淑)のブログ
 日本軍「慰安婦」問題をめぐる橋下大阪市長の発言は、著しく人権意識を欠いた許し難い暴力であることは言うまでもないが、問題はいち政治家の資質云々の問題にとどまりません。
 社会意識の根底に内在された「女性への支配」、構造的な性暴力の問題はもとより、植民地主義の未清算に起因する問題であり、日本の戦争犯罪、戦後責任を自らの問題として受け止められない市民の意識が、こうした政治家を持続的に支えてきたという点で、橋下氏の発言を容認するか否か、日本社会のあり方そのものが問われていると思います。

 来週、韓国から被害女性らが再び来日し、関西で証言集会を行います。関西方面の方はぜひご参加ください。
 被害女性たちはこれまで幾度も証言を重ねてきましたが、証言を記録し語り続ける役割を被害者だけに委ねるのではなく、私たち自身、何よりも日本が歴史の責任として担っていかなければならないことだと思います。

 24日には被害女性らが橋下氏と面会すると報じられました。女性たちの正義を前にしても、橋下氏は同じ妄言を繰り返すのでしょうか。

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●「何度でも語る 歴史の事実はこれです」
     ~再び戦争への道を歩まないために~ in おおさか

日 時:5/25(土)12:30開場、13:00~16:30
場 所:ドーンセンターホール
被害者証言:金福童さん/吉元玉さん
講演1「被害者の声に向き合ってー記録し、記憶し、未来へ語り継ぐ責任ー」 吉見義明さん(中央大学教授)
講演2 尹美香さん(韓国挺身隊問題対策協議会共同代表)
うた:李政美さん・安聖民さん
資料代:一般800円・学生400円
主催:日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク
協賛:日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
問合せ:080-6185-9995 info★ianfu-kansai-net


●「何度でも語る 歴史の事実はこれです」
     ~再び戦争への道を歩まないために~ in なら

日 時:5/26(日)12:30開場、13:00~16:30
場 所:奈良県人権センター2階大研修室(旧奈良県解放センター)
被害者証言:金福童さん/吉元玉さん
講演1「被害者の声に向き合ってー記録し、記憶し、未来へ語り継ぐ責任ー」 吉見義明さん(中央大学教授)
講演2 尹美香さん(韓国挺身隊問題対策協議会共同代表)
<アニメーション上映>『少女の物語』
資料代:一般800円・学生400円
主催:日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、
     アイ女性会議なら、多文化共生フォーラム奈良、解放同盟奈良県連合会女性部

http://www.ianfu-kansai-net.org/index.html




 話は変わり、本日イオ6月号ができあがりました。
 当ブログで何度も告知していますが、特集は「在日朝鮮人とマスメディア」。日本のマスメディアが在日朝鮮人に関する問題をどのように報じてきたのかを歴史的に振り返り、その歪みを検証します。

 特別企画は「オモニ代表団、国連へ」。スイス・ジュネーブで国連社会権規約委員会の日本審査に参加したオモニ代表団の活動を追った現地ルポ、北南朝鮮をはじめとする世界各国の国連関係者のコメントをお届けします。

 ほかにも、帝京大学ラグビー部監督と同部で活躍する朝高卒業生らの座談会、文化センターアリランの連続歴史講座など、今月号も多彩な内容でお届けします。ご愛読のほど、よろしくお願いします。(淑)

楽しい遠出

2013-05-11 09:00:00 | (淑)のブログ
イオ編集部は昨日、6月号の校了日を迎えました。絶賛開放感に浸っております。
といっても、脱稿するや否やこうしてまた文章を書いているわけですが。
ゴールデンウィークをはさんだせいか、6月号の〆切シーズンは普段以上に慌しかったです(当社比)。

連休明けのブログでは、「特別なことはしてない」と毎度のように書いてきましたが、
今回は少ーしだけ足を伸ばしました。
栃木(笑)。
宇都宮は初めてだったのですが、侮っていたらなかなかの遠さでした。新宿から宇都宮線で約2時間。
行きは浮かれていたのであっという間でしたが、復路はあまりの退屈さに「古今東西」ゲームをしながら帰りました。いい大人が…。
テーマは世界の国。これが案外とおもしろくて、少しだけ世界旅行に行った気分になりました。暇つぶしにオススメです。

とはいえ栃木へは友人とその愛娘(旦那さんも)に会うのが目的だったので観光などはしていないのですが、
やはり近場であっても遠出は楽しいものです。車窓からの風景を楽しんだり、聞いたことのない駅名を知れたり。

振り返れば1月以来出張に出ていないので、そろそろ地方出張に出たいな、とこの場を借りてアピール(笑)。
それから古今東西ゲームではなく、本当の海外旅行に、今年こそは行きたいと思っています。(淑)

取材先でタロット占い初体験

2013-04-27 09:00:00 | (淑)のブログ
 先日都内のとある飲食店に取材に行った際、同席した方がタロット占い師ということで、取材のあとに私も占ってもらうことに。

 その占い師の同胞は、昨年地元のウリハッキョのバザーでお見かけしたのですが、占いは大人気で長蛇の列だったので、その時は遠慮しました。
 自身、きちんと対面して占いをしてもらったのは今回が初体験だったので、興味津々でした。

 タロット占いは78枚の絵柄が描かれたカードを使って占うのですが、それぞれのカードには意味があり、カードに描かれている光景を基に結果を読み取ります。
 手渡された水晶を手の中でコロコロ遊ばせながら、選ばれた7枚のカードの意味と、自分の現在の状況を照らし合わせて一つひとつ注意深く聞きました。
 感想は、状況や未来を言い当てる、というよりは、諭されてるというかカウンセリングを受けている感じでした。物腰がものすごくやわらかかったからかもしれません。「直感で、自分が本当に好きなことややりたいことをしなさい」とアドバイスを受けました。Don't think.feel!ってことでしょうか。

 取材の直後で緊張していたからか、疑り深い性格のせいなのか、「久しぶりにうまくできなかった」と言われてしまいました。とほほ。良くも悪くも(?)印象に残ったようで、今度会った時にもう一度占わせて、と言われました。
 その方は固定のサロンを設けておらず、「呼ばれればどこへでも」とウリハッキョや同胞の行事でも「出張占い」しているそうなので、みなさんも見かけたらぜひ占ってもらってみてください。

 さて、今日からゴールデンウィークの方も多いと思いますが、10日が雑誌の〆切の編集部にとってはゴールデンウィークは毎年いい迷惑です(笑)。連休前に、出来る限り仕事を前に進めたいと思っています。
 みなさん良い休日を。(淑)

他者との交差点に立つ

2013-04-20 09:00:00 | (淑)のブログ
 2013年から、「交差点~日本の中のマイノリティ」というエッセイを連載しています。
 日本社会における、さまざまな社会的少数者や弱者に、現在日本社会の中で置かれた状況や抱える痛み、自身と在日同胞社会との関係性などをそれぞれの立場から発信してもらうという企画です。これまで5回掲載されましたが、以下の方々にご登場いただきました。

 1月号は、被差別出身で、在特会などの日本におけるレイシズムについて研究されている藤岡美恵子さん。
 2月号は、北海道・アイヌ民族の多原良子さん。幼い頃の在日朝鮮人との思い出についても書いてくださいました。
 3月号は、沖縄出身の当真嗣清さん。当真さんが代表を務める琉球弧の先住民族会では琉球民族の主権回復を国際社会に訴えながら活動をしています。
 4月号は西本マルドニアさん。31年前にフィリピンから日本に移住されて、現在はカラカサンという、DVや在留資格、子どもをめぐる問題など、移住女性たちが抱える問題の解決に向けて活動する団体の共同代表を務められています。
 そして先日できあがった最新号・5月号は、セクシュアルマイノリティ当事者として、映画の上映会をはじめとした社会活動をされている島田暁さんです。レインボー・アクションという団体の代表です。

 私たち在日朝鮮人は日本において民族的マイノリティではありますが、もちろん私たち以外にも多様な境遇の方々がいます。抑圧構造の中、権力に対して尊厳と権利を主張する私たちだからこそ、なおさら、私たち自身も「誰かの足を踏んでいる」という自覚を持ち、そのことにきちんと心を痛められる想像力を携えていたいと思います。
 エッセイはそれぞれ、当事者の立場から思いが綴られており、私も読みながら毎度勉強させてもらっています。これまで「見逃していた!」という方は、ぜひバックナンバーを遡って読んでいただきたいです。

 ちょっと脱線しますが、先週観た映画2作。
 「過去のない男」(2002年/フィンランド/アキ・カウリスマキ監督)
 「海と大陸」(2011年/イタリア・フランス/エマヌエーレ・クリアレーゼ監督/岩波ホールにて上映中)

 前者は、フィンランド・ヘルシンキが舞台。一切の記憶を失った一人の男がさまざまな人々と心を通わせていく中で自己を再構築していく、といった物語です。
 後者は、地中海に浮かぶリノーサ島を舞台に、そこに暮らす一家と、難民の母子の心の交流を描いた人間ドラマ。

 マイノリティをテーマにした作品ではありませんが、どちらも社会の底辺を生きる人々の営みを描いた作品と言う点で共通しています。個人的には前者がより人々の生活や精神世界を丁寧に描写していた気がします。興味のある方はぜひ。(淑)

入学式と防犯ブザー

2013-04-13 09:00:00 | (淑)のブログ
 先週末は日本各地の朝鮮学校で入学・入園式が行われましたね。
 オモニ、アボジ、入学チュッカトゥリムニダ!
 私も新1年生をひと目見ようと近所のウリハッキョに行くつもりでしたが、まんまと寝坊し(白状)、入学式後に校庭で行われたお花見から参加しました。
 お花見の席でも新入生とそのオンマ、アッパたちの紹介がありました。オンマ、アッパたちのあいさつに同胞らがお祝いと激励の拍手を送り、また、ソンセンニムたちの紹介もありました。
 その光景を見ながら、これからこの小さな学校で、子どもたちとソンセンニム、オンマ、アッパの奮闘の1年がスタートするのだなぁと考えながら、私も今年はできるだけ学校に足を運ぼうと思いました。

 また、入学式・入園式を前後して、自身が利用しているSNSでは、わが子が入学・入園を迎えた両親たちの喜びあふれる投稿が多く見られました。
 入学・入園前から持ち物を揃えたり、入学式のようす、さっそく始まった通学・通園を見送っては帰りをそわそわ待つ…。
 そんなオンマ、アッパたちの日々の報告が、校了前の慌ただしい日々の密かな楽しみでもありました。

 ですが喜びとは裏腹に、不安の声も多く聞こえてきます。
 すでに数人が当ブログで書いていますが、町田市の教育委員会が朝鮮学校に防犯ブザーの配布を取りやめた問題。8日に同教育委員会は決定を撤回しましたが、現在、町田市教委宛に配布に反対する大量の脅迫電話などが相次いでいるそうです。報道によると、9日までに寄せられた電話、メール、ファクスは計1612件。これは配布中止に対する抗議数を上回っています。
 防犯ブザー配布中止に対して、「情勢に敏感になりすぎた」などと的外れな説明をする町田市教委の人権意識にも甚だ辟易しましたが、日本社会全体の人権意識に対しても然りです。一方で良心的な日本の方々が学校に防犯ブザーを送ってくれるといった出来事もありましたが、そのような良心をはるかに凌ぐ、朝鮮学校への憎悪、その現実に非常に強い警戒心を抱いています。(淑)

ウリノレ文化のいまむかし

2013-04-01 09:00:00 | (淑)のブログ
 今日から新年度。日曜日には日本各地の朝鮮学校で入学式が行われます。入学を目前に控えて、当人も保護者の方もドキドキ・わくわくの1週間でしょうね! 私も週末、散歩がてら地元のウリハッキョを覗きに行くつもりです。

 さて、先週に続きウリノレについて。
 (k)さんも書いていましたが、私も3月18日に行われた金正守創作詩歌作品公演「ウリトンポニルリリ」を観にいきました。
 私にとって披露された曲たちはどれも馴染み深い曲で、学生時代のあの場面この場面や新社会人の頃を懐かしく思い出しながらすっかり聴き入った1時間半でした。
 公演後、感動を分かち合おうと、一緒に観ていた両親に感想を尋ねると、知っていた曲が全体の2、3曲だったそうで、あれ? そうなの?と肩透かしをくらったというか。ジェネレーションギャップですね。
 両親は1950年代生まれ。私は1980年代生まれです。きっと両親は朝鮮民主主義人民共和国で作られた曲や故・韓徳銖総聯中央議長が作った曲とともに青春を過ごし、私たちの世代は、多くは80年代以降に作られた曲とともに育ったからだと思います。親と私の青春時代の間に、同胞「音楽史」の過渡期があるのではないでしょうか。

 私は今回の特集で若者たちの取り組みについて担当していますが、「今」を捉えるためには、「在日史」と照らし合わせながら同胞音楽の変遷をたどることが必須です。ですが、その音楽史は整理されたものがないため、手探りです。
 まだ取材過程ではありますが、海原に揺れる小舟のように朝鮮半島や日本の社会状況に翻弄されながら抑圧状況に抵抗するためだけでなく、在日朝鮮人としての「生」を自由に歌い、謳歌したいという根本的な欲求としての文化創造の精神は、現在も受け継がれているのではないかと、新しい担い手たちの言葉と音楽から感じながら、取材を進めています。
 今日は川崎まで、とあるロック・バンドを取材してきます。(淑)

地方の結婚式とウリノレ

2013-03-25 08:49:57 | (淑)のブログ
 週末は大学の友人の結婚式に参加するため、山口に行ってきました。山口県を訪れたのはこれが初めてでしたが、滞在時間24時間にも満たない弾丸ツアーとなりました。

 これまで友人や知人に招かれ、地元の東京をはじめ北は北海道、そして今回の山口と、各地の結婚式を見てきましたが、地域ごとに色があって、とくに地方の結婚式に参加するのは楽しいです。
 もちろん一つとして同じ結婚式はないので、それぞれの良いところがあるのですが、印象としては東京がやや大人しめ? 傾向として地方の結婚式は格式張った形ではなく、アットホームな内容が多い気がします。以前、関西地方のある結婚式に参加した際は、新郎新婦の友人らが新郎になりすまして登場したり、大胆な仮装などで会場を湧かせていました。

 そして各地の朝鮮歌舞団による余興も見どころの一つ。
 昨日の結婚式は広島朝鮮歌舞団によるパワフルなステージが印象的でした。
 広島朝鮮歌舞団のパフォーマンスを観たのは初めてでしたが、いやはや大いに盛り上がりました。
 「ノドゥルの川辺」などの朝鮮の民謡や「息子自慢、娘自慢」といった同胞社会で作られ愛されてきた往年の名曲はもとより、私が聴いたことのないダンサブルなウリノレが老若男女をステージ前まで引き込んでいました。
 K-POP やJ-POPならぬ、T(トンポ)-POPとでも言いましょうか。アップテンポでノリのいい楽曲たちは若い人たちにも受けが良く、なおかつ歌詞はウリマルでリズムには長短(チャンダン)の要素も入っていたので年配の方たちも違和感なく楽しめたんだと思います。途中、オッケチュムを踊ったらいいのか、ライブ感覚でのればいいのか戸惑うほど。辺りを見回すと、同胞たちは思い思いにウリノレに身を任せていました。ちなみにノリノリで踊っていた私の友人は式終了後に新婦のご親族から「踊ってくれてありがとう!」と礼を言われていました(笑)。
 あの素敵な曲たちが広島朝鮮歌舞団のオリジナル曲なのかどうか、聞きそびれてしまったのが心残りです。

 すでに(相)さんがお知らせしましたが、イオ5月号はウリノレ特集です。
 昨今、K-POPはちまたにあふれていますが、みなさんは朝鮮の歌や同胞社会で作られたウリノレを聴く機会って日常でありますか? 結婚式や同胞の行事くらいでしょうか? 5月号では主に同胞社会で普及した曲たちを紹介します。残念ながら雑誌から音楽は流れませんが、楽譜なども掲載予定なので、読者の皆さんがウリノレを聴くきっかけになればと思います。(淑)

オスプレイ本土訓練と辺野古埋め立て

2013-03-18 09:03:18 | (淑)のブログ
 在沖米軍基地をめぐる、ここ最近で気になった二つの動きについて。

 今月6日、米軍は新型輸送機MV22オスプレイの「本土」では初となる飛行訓練を行った。普天間基地から飛び立ったオスプレイは、山口県の岩国基地を拠点に四国から紀伊半島上空で、低空飛行や夜間飛行訓練を行ったとされている。
 「沖縄の負担軽減」と印象付けようとする報道が目についたが、地元紙が批判しているように(オスプレイ本土訓練 この程度で負担軽減とは/3月4日付琉球新報社説 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203502-storytopic-11.html)、本土での訓練はわずか3日間、12基中の3基であり、連日のように全土で飛行訓練が行われている沖縄の現状を軽減したとは到底言えない。訓練の内容としても、固定翼モードで上空をただ飛び過ぎるのとヘリモードで離着陸やホバリングを行うのとでは、爆音の大きさも危険性も比にならないという。また、普天間基地周辺市街地上空の飛行は既成事実化しつつあり、日米が配備の前提として「安全宣言」で順守すると強調した合意事項は守られていない。
 この度の「本土」訓練は、オスプレイの強行配備の横暴さ、米軍基地のあり方そのものを、日本社会が当事者意識を持って自らに問うものにならなければいけない。
 昨日の17日、宜野座村城原区でオスプレイの撤去を求める総決起大会が開かれるなど、強行配備から5ヵ月、住民らの取り組みはなお続けられている。


 他方は、辺野古への基地移設をめぐる問題だ。
 名護漁協は11日、普天間基地の辺野古移設に伴う公有水面埋め立てについて同意することを賛成多数で決めた。日本政府は同日、今月29日にも仲井真沖縄県知事に埋め立て許可を申請する方針を固めたが、県知事をはじめ県議会、全市町村議会にいたる沖縄全土が辺野古移設に反対しており、総意はすでに示されている。
 名護市や住民の意向を無視した漁協の問題も看過してはならないが、根底に横たわっているのは日本政府による分断政策だ。辺野古移設に反対する稲嶺市長が誕生し、基地再編交付金(基地建設に対する協力の度合いに応じて自治体に支給する交付金)が打ち切られるなど、政府の政策がコミュニティに対立と分断をもたらしてきた。



 先日、宮森小学校米軍機墜落事故に関するある映画を鑑賞した。
「ひまわり~沖縄は忘れない、あの日の空を~」(http://www.ggvp.net/himawari/
 映画の詳しい内容はイオ4月号(本日発刊)で紹介しているので割愛。
 作品の焦点は米軍機墜落事故だが、沖縄戦から米軍施政下、そして基地沖縄の現在までを網羅したスケールの大きな作品で、より広く観られることで、沖縄の現状に対する無理解を是正する一助となり得るといえる。登場人物の台詞一言一句、映像の一つひとつに付与された意味を、沖縄の声として噛み締めながら観てほしい。(淑)

本日校了日! 学校デビューをイオがサポート

2013-03-11 09:00:00 | (淑)のブログ

 今日はイオ4月号の校了日です。
 私の場合、毎月この日を迎えると解放感ももちろんありますが、反省で落ち込むことの方が多いです。性根がネガティブだからでしょうか(笑)。
 とはいえ、4月号の編集期間は、いつにも増して楽しい時間でした。
 特集は、「学校デビュー応援プログラム」。
 今春、ウリハッキョの保護者になるオンマ、アッパたちの不安に答えるべく、ウリハッキョ特有の学校生活をいろんな角度から取材してみました。実践に基づいた実用的な企画になっていると思います。全貌はイオ4月号の発刊までしばしお待ちください。

 さて私は今回、初級部1年の朝鮮語の勉強について取材しました。1年生のお子さんを持つ、関西と関東の同胞のお宅にお邪魔して、1年間どのようにウリマルの勉強を見てあげたのかを取材しました
 取材をしてみて感じたのは、オンマ、アッパたちがハッキョのソンセンニムたちに全幅の信頼を寄せているということ。そして個々の保護者の実情に沿った学校のサポート、ソンセンニムたちの試行錯誤です。ウリハッキョの強みの一つとして、「学校(ソンセンニム)=子ども=保護者」の三角関係、連携体制があると思います。今後もいろんな形でこれを見せていけたらと思いました。

 ちなみに、自分としては今回の取材や原稿執筆、なるべくオンマ、アッパたちの目線と合わせられるよう、背伸びをしなければなりませんでした。人の親になったことのない私なので、今後の課題として、日頃からたくさんの保護者の方たちとの交流を心がけたいと思います。

 イオ4月号、今年じゃなくて来年学校デビュー!という保護者の方や、入学はまだ当分先という方、はたまた引退された方もお孫さんの就学を見据えて…、ぜひぜひ手にとってもらいたいと思います。誌面には、元気いっぱいなウリハッキョの子どもたちがたくさん登場するので、子どもたちの笑顔も楽しみにしてほしいです。



 上の写真は、家庭訪問の際、東京第1の初級部1年のかわいい女の子がプレゼントしてくれた折り紙の花束です。女の子はウリマル模範生ですが、本人は図工が大好きとのことでした。(淑)


朝高排除から3度目の卒業式

2013-03-04 09:00:00 | (淑)のブログ
 昨日、朝鮮高校10校の卒業式が各地で行われた。2010年、高校無償化制度が朝鮮学校を排除して施行された後、3年目の卒業生たちが憤りの中、卒業を迎えた。
 今年度の卒業式らは2010年に朝高に入学した。生徒らの高校3年間は常に朝高排除に立ち向かうたたかいとともにあったが、先輩たちと同じように、光をみることなく母校を巣立っていくこととなった。
 この不条理なたたかいの日々が生徒たちに植え付けたものとはなんだろうか。自分たちが生まれ育った日本社会への失望・絶望なのか、朝鮮人である自己の存在否定なのか――。

 2月20日、文科省記者クラブで行われた記者会見では2人の朝高生が壇上で思いの丈を語った。
 東京朝鮮中高級学校高級部2年の李祥庸さんは、「僕たちにとってこの問題は、単なる支援金の問題ではない。日本社会がわれわれの存在を認めるかどうかの問題だと思っている。そして昨日(省令改悪決定が発表された2月19日)、僕たちの存在が否定された。僕たちは朝鮮人の存在が認められるまでたたかっていく」と語った。
 また高校3年の白聖亜さんは、卒業後は日本の大学へ進み、看護士になって社会に貢献したいと話していた。
 朝鮮学校卒業生は日本のほとんどの大学で受験資格が認められており、大学卒業後は大多数が日本国内で就職し、日本社会で生きていく。3年間、文科省は何度も決定を覆し、朝鮮学校生徒らに自己否定という屈辱を与えてきた。だがそんな中でも聖亜さんのように「社会に貢献したい」と志を抱く生徒は少なくない。それは、立派な朝鮮人として日本社会とともに生きてほしいと願う、朝鮮学校教員たち、保護者をはじめとする同胞たち、朝鮮学校の民族教育があったからにほかならない。これが「反日」教育といえるのか。

 国家権力を振りかざし、ついに朝高完全排除を完成させた日本政府および地方自治体と同時に、政府による朝鮮学校への不当な扱いを許容してきた日本社会に跋扈する無自覚な民族差別、他者排除の風潮をこそ糾したい。政府による差別を助長し、生徒たちに傷を負わせてきたのは日本社会だ。
 差別が我が物顔でまかり通ってきたこの3年間を振り返ると、在日同胞たちが一つひとつ勝ち取ってきた民族教育の権利を奪う、新たな動きが出てくるのではないだろうかと危惧している。それほどの危機意識を持って、高校無償化制度の省令が改悪され絶壁に立たされた今、さらなる声を集めていくことが強く求められている。(淑)

李冽理選手、接戦の末ドロー

2013-02-25 09:00:00 | (淑)のブログ
「負ければ引退――」。

 先週の2月20日、朝鮮大学校出身で元世界チャンピオンの李冽理選手が、後楽園ホールで行われた東洋太平洋フェザー級王座決定戦に臨みました。フィリピンフェザー級王者のシリロ・エスピノ選手(30)と対戦し、ドロー。
 今回の試合は李選手にとって、自身のボクシング人生をかけた一戦でしたが、悔いの残る結果となりました。

 今回、冽理選手は試合に備えて、一ヵ月間、韓国で強化トレーニングを行い、一から鍛え直したといいます。
 試合前、冽理選手の兄・李哲理さんは、「ここ最近、試合で思うような結果を出せていない。本人は『初心に戻ってボクシングに臨む。与えてもらったチャンスを手にしてもう一度世界にチャレンジしたい』と話していた。大事な一戦、自分のボクシングを信じてベストを尽くしてほしい」と話していました。

 冽理選手は、4回、8回の公開採点で0-2と相手にリードされ、終盤に接近戦で反撃し、判定にもつれこみましたが、結果は1-1でした。



 冽理選手は試合後、「極度の緊張で足が動かず、ペースをつかむのに時間がかかった。また弱点が出てしまった」と肩を落としながらも、「同胞たちの声援は届いていた。期待に応えられず残念な結果になったが、応援してくれた皆さんに必ず恩返しをし、今後も同胞のために尽くしていきたい」と話していました。

 会場に詰めかけた同胞は約300人。冽理選手に終始熱い声援を送っていました。



 会場には、日本ウェルター級タイトルマッチを3月に控える尹文鉉選手の姿もありました。文鉉選手は、「世界タイトルを獲ったときより技術は確実に高くなっている。フットワークも健在で、体力も衰えていない。まだまだ現役でがんばってほしい」と、朝鮮大学校時代の先輩でもある冽理選手に、エールを送っていました。
 
 元世界チャンピオンの名と同胞の期待を一身に背負う冽理選手のプレッシャーは並大抵のものではなく、ボクシングの過酷でストイックな精神世界は、私などの素人には到底図り知れないものだと思います。ですが冽理選手には、積み重ねた努力を信じて次につなげ、またきっと同胞たちに勇姿を見せてほしいと思います。(淑)

花見特集のイオ3月号、本日発刊

2013-02-18 09:00:00 | (淑)のブログ


 一見ファッション誌のような上の画像はイオ3月号の表紙です。
 手前味噌で恐縮ですが、ちょっと今までにない感じに仕上がったと思いませんか? 在日コリアン3世の写真家・鄭然柱さんの作品です。

 本日、イオ3月号が出来上がりました。
 特集は「春だ! 花見だ! トンポトンネ」。
 イオで花見特集をするのは今回が初めてで、特集では、北海道から九州まで日本各地で行われている同胞の花見や、花見の場でのエピソードなどを紹介しています。
 3月号の編集中は、七輪を囲む同胞たちの写真を見ながら(今年もイオ編集部で昼間から酒盛りしたい…)なんて煩悩がよぎったりしてました。老若男女が集う同胞トンネならではの花見の良さを今一度感じながら、去年は結婚式と重なって行けなかった地元の花見にも、今年は顔を出さなきゃなぁ、と思ったり。
 季節はもうすぐ春。読者の方々もイオ3月号を読んで、今年の花見を楽しみにしてもらえたらと思います。
 近年トンポの花見はご無沙汰、という方にも「ちょっと覗いてみるか!」と思ってもらえる内容になっていれば幸いです。

 特別企画では、愛知、大阪の「高校無償化」裁判の現地のようすを伝えています。

 ほかにも、日本ウェルター級タイトルマッチを闘う尹文鉉、金樹延選手へのインタビュー、写真集「隣人。38度線の北」を出版した写真家・初沢亜利さんへのインタビュー、東京朝鮮第6初級学校で教鞭を取られた趙淑来先生への思いを綴ったエッセイなど、豊富な内容でお届けするイオ3月号をぜひ手にとってください。(淑)

ベビーラッシュ

2013-02-09 09:00:00 | (淑)のブログ
 20代後半、ちまたで言う「アラサー女子」の私の周辺は、昨年頃からベビーラッシュ&結婚ラッシュが続いています。実際に、来春だけでも結婚式が5件も。うれしい悲鳴です(笑)。

 かつて一緒に学校生活を送った仲間たちが、結婚を機に新しい環境に踏み出したり、新しい命を授かったり、パワフルに子育てに奮闘する姿をブログやSNSなどで覗き見しながら、元気をもらっています。

 以前久しぶりに高校の同級生たちと会って話した際、その中に妊婦さんが2人いて、普段あまり聞かない話を聞くことができ、興味深かったです。イオ世代には子育て真っ只中!という方も多いので、「生活の声」は、勉強にもなります。
 友人らは、「赤ちゃんが生まれたらイオのピョンアリ(長寿連載の赤ちゃんコーナー)に出したい。(淑)に送れば載せてくれるの?」と言ってくれて、たったそれだけなのにとてもうれしくなりました。

 そして子どもの入園・入学を見据えて、ハッキョというものが近い存在になっているようです。

 高校や大学を卒業し、社会人として働き始める20代は、学校や地域社会から少し距離がある年代と言えるかもしれません。それは個々の生活に必ずしも必要なものではないからなのかも、と地元の朝青活動を通して感じたりします。

 そのときのメンバーでも、ハッキョの話題なんて数年前はほとんど出なかったのに、友人らは「どこそこのハッキョのバザーに行った」とか、「この家とあの家の子どもが同級生になる」とか、いろいろ。とても楽しそうに、とても真剣に。
 近い将来、同級生たちが幼稚園やハッキョを選択するときに、私も微力ながら「情報」でお手伝いができるように、ウリハッキョの様々な情報を集めていきたいと思いました。それから当事者に「通わせたい」と思わせるような「ハッキョ企画」もたくさん作っていきたい。

 先日も、ずっと心待ちにしていた、十年来の友人の息子に会いに行ってきました。もうそれはそれは、食べてしまいたいくらい可愛かったです(笑)。かのじょにそっくりな息子を見ながら、また、しっかりと「オンマする」姿を見ながら、異なるそれぞれの経験を分け合い、切磋琢磨できる同級生の存在を大事にしていきたいと改めて感じました。もちろん、未婚既婚、子のありなしに関わらずです。

 話は少し横道に逸れますが、「高校無償化」を巡り裁判を係争中の大阪と愛知につづき、東京も近く提訴することが発表されました。
 わが子の成長を夢いっぱいに話す新米オンマたちを見ながら、かのじょらがウリハッキョの保護者になった時には余計な問題に頭を抱えないで済むよう、解決されなければならない問題が山積している、と頭の片隅で考えていました。(淑)