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日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

アナログ回帰

2014-01-18 10:01:13 | (淑)のブログ
 スマートフォンの爆発的な普及によって、Googleカレンダーなどクラウドサービスによるスケジュール管理が浸透されて久しいですが、にもかかわらず手書きの手帳が再注目されている、といった記事を去年くらいからちらほら見かけるようになりました。実際に、手帳の出荷数は年々微増傾向にあるそうです。

 私自身、スマートフォンを初めて持ってから4年以上経ちますが、以来スケジュール管理もデジタルに完全に移行し、その利便性を享受しています。
 デジタルでスケジュールを管理する最大のメリットは、なんといっても閲覧のしやすさ。パソコンだけでなく、常に手にしているスマホでもすぐにスケジュールを確認でき、ワンタッチで月間、週間、1日と画面を切り替えられるし、膨大な過去のスケジュールに遡ってアクセスできます。私の場合は09年からのスケジュールが細かく記憶されているので、数年分の手帳を常に携えている、という感じです。
 それに対して紙の手帳の良さは、開いて全体を俯瞰でき、1画面当たりの情報量が多いこと。また、形式に縛られないので文字の大きさもさまざまにメモ欄を自由に使えますし、アイデア出しや思考整理のためのメモも手書きのほうが想像力が膨らみます。

 手帳だけでなく、日記や雑感などのメモも含めデータはデジタルに一元化していましたが(取材のときはノートに手書きのアナログですが、あんまり情報量が多い時は、書いた文字をWordなどに自動的に文字起こししてくれる魔法のノートはないかな、と思ったりします。笑)、2014年はいろんな変化を楽しみたいと思っており、その一つとして久しぶりに手帳も使い始めました。上手に併用して日々をより豊かに彩りたいと思います。
 皆さんはデジタル派ですか? 手書き派ですか?(淑)

2014年、光を読みたい

2014-01-11 09:00:00 | (淑)のブログ
 今年のお正月休みは、いつになく楽しい時間を過ごせました。ちょっと遠出をし、古きものを観て、美味しいそばと日本酒を喰らい、水平線と空を一望できる温泉につかり…と、贅沢(当社比)もして。年末に笑えるだけ笑いきって、年始も笑い続け…、とにかく笑って過ごしていたので、その陽気を今も引き連れている感があり、2014年はもうこのままずっとご機嫌でいられるような気がしています。

 読者の皆さまも楽しいお正月休みを過ごされたことと思います!今年も読者の皆さまのご意見・ご感想に耳を傾けながら、よりよい誌面づくりに励んでいきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いします。

 新年です。私は今年の目標の一つに、「写真の撮影技術の向上」を掲げました。編集部に配属になって4月で4年目になるというのに「遅すぎじゃないか」とご指摘を受けるかもしれませんが…。
 去年、写真展や写真集、雑誌などで鮮やかな写真を見ながら、(プロのカメラマンと比較するのはお門違いですが)「なぜ! 私だっていいカメラ(編集部のもの)を使っているのに!」と思ったことが何度もありました。そのたびに「ここまでの写真を撮れないのは撮影者の腕のせいだ」と反省しきり。

 年末、かねてから「一緒に仕事をしてみたい」と思っていたSさん(まだ秘密)のお店(福岡県)を訪れた際、店先に置いてあったある雑誌に目が止まりました。
 これ↓




 九州地方で販売しているローカル誌です。
 素材の自然色をいかした鮮やかで温かみのある写真たちに魅せられて一冊買ってきたのですが、これが聞いてびっくり。原則としてストロボは一切焚かず、自然光のみで撮影するそうです。どんなにどしゃぶりの雨だろうが、暗雲が立ち込めていようが、です。
 その雑誌と並んでイオ1月号も置いてあり、「イオは印象が明るくて、お客さんも興味をもってくれると思うんです」とSさん。ありがたきお言葉! 負けていられません。

 ちなみに、お店でご馳走になったランチは、それはそれは見るも美しく、芸術的な美味しさでした。とくにほうれん草の胡麻和えは感動的ですらありました。
 これ↓


 お土産にマフィンとうぐいす豆のリュスティックも買って、東京に戻ってから食べました。こちらも、近所にあったらリピート必至の美味しさでした。
 これ↓


 食の話に大幅にずれました。
 以前、カメラマンをしている親戚とカメラの話をしたとき、撮影モードの話で、私が「マニュアルモードは使わない」と言ったら、「なんでだよ! 設定はM(マニュアルモードのこと)だよM! 光を読むんだよ!」と興奮気味に言われたことがありました。
 今年は、カメラの構造を一から学び、これまでの「撮り方」から一変したいと思っています。

 他にも目標はいくつか立てましたが、2014年は何か新しいことにもチャレンジしたい!と、午年なので鼻息を荒くしている一年の初めです。(淑)

今年最後の出張

2013-12-28 08:38:57 | (淑)のブログ
 今年最後の出張は、大阪生野からはじまり鳥取米子、広島と南下して、最後は福岡博多へ。一週間の日程を無事終えて、先週末に東京へ戻ってきました。今年、とくに上半期は例年に比べて地方出張が少ない…なんてふてくされていましたが(笑)、最後にいろんな地域でたくさんの新しい出会いにも恵まれ、来る年にも期待を感じさせる有意義な締めくくりとなりました。

 イオ新年号を手に取られた方はもうご覧いただけたかと思いますが、新連載「ガンバレ! ハップモ」では、ウリハッキョに子を送る保護者の学校支援活動から日本各地のウリハッキョを紹介する企画です。

 今回は生野朝鮮初級学校に行ってきましたが、そこで素晴らしい図書室と出会いました。取材で訪れたウリハッキョの図書室のなかで、はっきり言って抜きん出て充実した図書室でした。
 誌面では紹介しきれない、細部まで愛情が行き届いたこだわり満載の生野ハッキョの図書室を写真で紹介します。

 図書室に入ってまず目についたのがこれ。

 本は初級部1年生から6年生まで対象児童別に整理されており、各学年に合わせたオモニたちお手製のポップが本棚を元気いっぱいに装飾してくれています。


 「わかったさん」シリーズもこんなにかわいらしく。


 ジブリコーナー。


 注目の本は、こうして棚に表紙画像を貼ることで、ひと目で貸出状況がわかるようになっています。アイデア賞!


 オモニたちからのエールがあちらこちらに。


 これは新刊コーナー。ご覧のように、ほとんどが貸出中で、図書室の利用率の高さが見て取れます。図書室をリニューアルしたのは3年前で、以来利用する児童が倍に増えたそうです。ちなみに棚は木工業に従事するアボジの手作りだそう。


 図書通信には、新刊の案内や読書模範生などが紹介されています。


 貸出は毎週土曜の午前午後。オモニたちが交代で「司書さん」を務めています。


 手作りの日めくりカレンダーも。


 休み時間は児童たちで大賑わい。


 最後に、オモニたちとお話しながらふと天井を見上げてびっくり。東西南北に四神図がありました。



 図書室だけではなく、この日、生野ハッキョのオモニ・アボジたちの取り組みからは、感動や自省も含めて思うことが多々ありました。
 ウリハッキョのためにできることはまだまだたくさんある。そして、学校を支えている(厳密には支援を超えて、少なからず運営の一旦を担っている)保護者や地域の同胞たちの存在を常に心に落として、生活の目線で物事を考えることも絶対に忘れてはいけないと感じさせられました。

 さて、2013年の日刊イオは今日でおしまいです。皆さま、来年もどうぞよろしくお願いします。良き新年をお迎えください!(淑)

無償化問題、九州も国を提訴

2013-12-21 09:00:00 | (淑)のブログ
 「高校無償化」から朝鮮高校から排除されている問題で、大阪、愛知、広島に続き、4件目となる訴訟が九州で提訴されました。九州朝鮮中高級学校(北九州市八幡区)の在校生、卒業生ら67人が19日、国に損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に提訴。訴状提出に先立って、弁護団、生徒、保護者をはじめとする同胞、日本の支援者ら約200人のデモ隊が小雨の中、地裁周辺を行進し、差別是正を訴えました。





 原告側は、日本政府が①2010年11月27日から2013年2月20日に至るまで朝鮮高校を無償化の対象に指定しなかったこと、②2013年2月20日、規定ハ号を削除し、朝鮮高校について不指定処分を行ったこと、③2月20日以降、現在に至るまで無償化の対象と指定しないでいることは違法違憲であり、これによって平等に教育を受ける権利や経済的援助を受ける権利を侵害されたとして、各原告生徒一人あたり慰謝料10万円、弁護士費用1万円、計737万円の慰謝料の支給を求めました。
 提訴後に開かれた報告集会及び記者会見で弁護団の安元隆治弁護士は、問題の本質は日本社会に根深くある在日朝鮮人に対する差別・偏見の現れであると指摘。「この訴訟を通じて少しでも問題の抜本的解決につながるよう、臨んでいく」と話しました。



 現在、無償化問題をめぐって係争中の裁判は、大阪が「高校無償化」指定を求める「義務付け訴訟」(行政訴訟)で、広島と愛知は同じく「義務付け」とともに、制度除外に対し損害賠償を求めています(民事訴訟)。
 九州で国賠訴訟を選択した理由については、福岡県下で行政訴訟を起こせるのは福岡地方裁判所の本庁だけで、小倉支部では行政訴訟ができないという裁判所の事務分配に関することもありますが、弁護団では今後の継続的な運動を考え、まずは北九州(小倉)を本拠地とすることとしたというのが一点。そして「高校無償化」の受給権は生徒一人ひとりにあることを重視し、多くの生徒が原告に立つことによって全国的な運動として盛り上げ、裁判所だけでなく国会までも動かし法律を是正するところまで目指したいとの思いからだといいます。なお、追加訴訟については引き続き検討中だとしています。

 九州の弁護団は60人で、弁護士の数は全国で最多。中心となっているのは同校出身の金敏寛弁護士をはじめとした地元の若手弁護士らです。前出の安元弁護士は、同期である金敏寛弁護士の呼びかけで初めてこの問題に携わるようになったといいます。提訴に向けて行った個人面談で生徒らが「後輩たちのために原告に立つ」と口々に話していたことが印象的だったそうで、「まさに自分だけの問題でなく、自分たちの学校を守っていきたいという思いを感じた。今後、当事者の意識を大切にして意見交換しながら訴訟を進めていきたい。この裁判運動に多くの日本人を巻き込んで、在日同胞社会と一歩でも二歩でも近づきたい」と話してくれました。

 高校3年生のある男子生徒は訴訟について、「不安もあり複雑な心境だけど、この裁判が自分たちの未来が開ける希望でもあると信じたい。全国の朝高生と団結してがんばっていきたい」と話していました。
 提訴の翌日に学校を訪ねると、前日のこわばった表情とは打って変わって子どもらしい無垢な笑顔で迎えてくれた生徒たち。学期末の総括や大掃除の慌ただしい合間にも、前日の提訴を報じたニュース番組の録画を、中学1年生から高校3年生まで全校生徒が順番で観ており、自分たちの学校でも長い闘いの火ぶたが切られたことを、学校中がひしひしと実感している空気が伝わってきました。

 一方、広島では18日、第一回口頭弁論が広島地裁で開かれ、48席の傍聴席を求め、多数の同胞、支援者らが裁判所に集まりました。広島朝鮮学園の韓政美理事長と足立弁護団長による意見陳述の後、別法廷に移り、生徒代表による意見陳述が非公開で行われました。とくに韓理事長と生徒による陳述は、それぞれの原体験に基づいて朝鮮学校と民族教育への思いが切々と語られ、傍聴席のあちこちですすり泣く声が聞こえてきました。「私たちは朝鮮人として胸を張って学び、育ち、受け継ぎたいだけなのです」。裁判官の前でそう訴える堂々たる姿に、傍聴席でメモを取っていた私も思わず手を止め、じっと聞き入っていました。



 その後の報告集会及び記者会見では、客席の保護者や支援者らからも「この問題は朝鮮学校の問題ではなく、日本の社会の中、日本の国内にある、日本の問題。そういう意識でこの問題に関わり続けて欲しい」「こんな日本社会でいいのか。日本人としても負けられない裁判」などと訴えが相次ぎました。
 まさに、人としての尊厳、朝鮮人として生きる権利をかけた裁判であるという、闘いの本質を突く第一回公判とその後の会見だったと思います。
 次回公判は来年3月12日。より多くの方が法廷に足を運び、生きた声を聞いてほしいと思います。(淑)

「高校無償化」裁判闘争続く

2013-12-14 09:00:00 | (淑)のブログ
 「高校無償化」からの朝鮮高校排除から4年が経とうとしている。闘いの場は、今年1月の大阪と愛知での提訴を皮切りに司法へと移り、次いで8月に広島が提訴。大阪では無償化適用とともに、府と市を相手取って補助金支給を求める、二つの裁判を係争中だ。さらに現在、九州、東京でも訴訟の準備が進められている。準備中の裁判を含めれば、民族教育権の保障に関する6つの裁判が各地で同時に闘われることになる。半世紀を超える在日朝鮮人の民族教育史において、初めてのことだ。

 準備中の東京、九州の提訴については、東京は年明けに、九州は来週に迫っている。
 九州では去る10月21日に、朝鮮学校を支える会を母体に、7団体で構成される「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」が結成され、支援体制も固まりつつある。また、9月7日と11月9日には、弁護士による朝鮮学校生徒らと保護者への説明会がもたれるなど、提訴に向け地道に取り組んできた。原告に立つ朝高生と卒業生は約70人、弁護団は約50人の規模だ。
 編集部からは私が取材に当たる。九州の提訴に関する続報は本誌とブログで伝えます。

 運動の長期化が見込まれる中、2014年の月刊イオでは、来週刷り上がる新年号から始まる新連載で、「高校無償化」、補助金裁判について継続的に伝えていく。全国の動きをこぼさず追い、当事者と支援者らの声を届けることで広く世論を喚起し、日本全国の裁判運動、生徒をはじめとする原告ら、支援者たちを相互につなげ、いっそう運動を盛り上げていきたい。(淑)

年末を迎える前に

2013-12-07 09:00:00 | (淑)のブログ
 年を重ねるにつれて、時が経つのが早くなっている気がします。子どもの頃も今も変わらず1日は24時間、1年は365日なのに、どんどん短く感じられる年月の長さは、心理学ではこのような法則によって説明されています。
 たとえば50歳の人にとって1年の長さは人生の50分の1で、5歳の子どもにとっては5分の1に相当します。よって50歳の人にとっての10年間は、5歳の子どもにとっての1年間ということになります。記憶の蓄積が時を短く感じさせ、その速度はこれから年を重ねる毎に加速していくということですね。

 そんなわけで、気づけば2013年も3週間と少し。
 日本では歳末お馴染みの「流行語大賞」が発表され、「ヘイト・スピーチ」がベスト10入りしました。昨日深夜の参議院本会議で可決・成立された「特定秘密保護法」も。振り返ってみると、昨年の韓国大統領選挙しかり、ここ数年の師走は良くないことばかり起こっているような気がします。



 この、まったくもって不透明な法案の中身もさることながら、法案成立をめぐるここ数日の与党の横暴を見ていると、こんな独善的な官僚の支配のもとで、私たちの住むこの国はどこへ向かっていくのだろうと、ゆく年来る年を前に疲弊してしまいます。今年の世相を表す漢字は「蔑」(ないがしろ)といったところでしょうか。

 さて、イオ編集部は新年号制作の大詰めを迎えています。
 9月頃から仕込んできた新企画が、記者の手からデザイナーへと渡り、続々と誌面が出来上がっています。新しいイオをより楽しんでいただけるよう、ブログではあえてふせておきます。
 イオ2014年版、情報公開まで今しばらくお待ちください!(淑)

ラララオモニ会

2013-11-30 09:00:00 | (淑)のブログ
 ある企画の取材で滋賀のトンポたちに会ってきました。滞在した2日間は、滋賀朝鮮初級学校と総聯大津支部を拠点に、一日中トンポたちとともに過ごしました。
 2010年の学校創立50周年を機に、ここ近年滋賀では30、40代を中心としたハッキョとトンポ社会を盛り上げる実践が活発です。昨年10年ぶりに行われた金剛山歌劇団公演は、規模は縮小したものの今年も満員御礼、盛況だったそうです。

 滋賀県は大阪、京都のベッドタウンとして、交通の利便性などから首都圏以外では稀な人口増加県。とはいえその人口は大阪、京都にアクセスしやすい南部に集中しており、例に漏れずトンポたちも過半数が大津に集住しています。そのため大津を中心に、滋賀県全体を巻き込んだ地域再生が課題にもなっているようでした。

 滞在中にトンポたちから最も多く聞いたのはおそらく「人が少ないから~」という枕詞でした。ですがそれは決してネガティブなだけの意識ではなく、現状を真摯に見つめた上で自分たちにできることを懸命に模索しているように感じられました。

 オモニ会の活動一つとっても、小さいトンポ社会ならではの、知恵とアイデアが満載でした。
 「オモニ給食」はどのウリハッキョでもメジャーですが、滋賀ハッキョには「オモニ給食」のほかに、「アッパ給食」「ハンメ給食」「卒業生オモニ給食」があります。少ないオモニたちだけでは児童らにたくさんの給食を食べさせてあげられないことから生まれたアイデアです。



 これは「チョゴリノート」。とってもかわいくないですか? オモニたちが手作りして学校や地域の行事などで販売し、学校の財政に充てています。オモニ会会長は自宅で50冊も内職したそうです。
 オモニ会とは別に「チャララクラブ」という学齢前の子を持つオモニたちの親睦を深める会がありますが、ここでも一翼を担っているのはオモニ会です。約20年の歴史を持つチャララクラブでは月に1回の集まりのほかにも、青商会とコラボレーションした家族参加型イベントなど、若い世代に楽しんでもらうための取り組みも盛んです。また、県の社会福利協議会が運営する「子ども未来基金」から助成金を得るなど、財政面でも知恵が光ります。
 ほかにも「オモニ文庫」やオモニたちのための学習会など、挙げればきりがありません。
 少数精鋭でこれだけのことをやろうとしたら、一人ひとりが多くの負担を担わなければならないのは当然。そんな滋賀オモニ会の今期のスローガンは、<웃음 가득 희망 가득 라라라 어머니회>。ハッキョや子どもたちのために、大変なことも「ラララ」と笑う強さに、滋賀を支える女性たちのたくましさを感じました。(淑)

3世の食卓

2013-11-16 08:28:28 | (淑)のブログ

 実家ぐらし、というのは言い訳に過ぎませんが、家では全くと言っていいほど料理をしません。毎日のお弁当で玉子を焼くくらいです。それでも20代前半の頃は料理本を見ながらあれこれチャレンジしたものです。
 娘が(息子たちも)こんな体たらくなので、子どもたちが大人になった今も母の手料理が家族みんなの胃袋を満たしてくれています。
 在日2世である母がつくる料理は、おかずもスープも圧倒的に朝鮮料理が多い。とくにスープのバリエーションは豊富で、たまに出てきた味噌汁に「今日はハズレだ…」なんて思ったりします。盛り付けも大皿に豪快にどん! それをみんなで囲みます。「足りないのがいや」という母は大量につくるのが癖で、食材をダメにすること多々。そんなところも1世を思わせます。

 小学生の頃、友達の家に遊びに行ったとき、テーブルに並んだ家庭料理にびっくりしたのをよく覚えています。各々のランチョンマットの上に、優しい味のお惣菜や炊き込みご飯などが小鉢などに上品に盛り付けられており、そのテーブルコーディネートは、小学生の私にとっては小さなカルチャーショックでした。

 日本は飽食の時代、わざわざ遠くへ行かなくても世界各国の食文化に触れることができます。もちろん、世界の食糧危機はもとより、日本の食料自給率や原発による食料汚染を考えれば手放しで喜ぶことはできませんが。
 韓流ブームに伴って朝鮮料理店も乱立し、日本全国どこでも朝鮮料理を食べることができます。
 日本社会の変化に影響を受けながら、1世から2世へと受け継がれた朝鮮の食文化。いま、在日3世の家庭ではどんな朝鮮料理が、どれくらい並ぶのでしょうか。毎日の食卓にキムチはあるのでしょうか。

 イオでは創刊時から手を変え品を変え、たくさんの料理企画をつくってきました。一般の家庭料理から、宮廷料理、朝鮮八道を料理で旅した企画もありました。在日同胞の暮らしと味覚にあった新たな食文化創造にもなれば、そんな思いを込めて、来年の料理ページを準備しています。(淑)

ウリハッキョの芸術コンクール

2013-11-09 09:00:00 | (淑)のブログ
 今年もウリハッキョでは、在日朝鮮学生中央芸術コンクールが行われました(10月30~11月1日、於大阪朝鮮文化会館)。今年で46回を数えます。ウリハッキョのいち生徒だった頃は芸術部に所属していたので、46回中の9回は私も参加しています。
 現在は、東日本と西日本で行われる予選を経て中央大会に上がるのは中級部、高級部のみですが、当時は初級部も同様に地方予選と中央大会がありました(2000年を前後する時期に、初級部においては東西それぞれで競われるようになりました)。
 私が通っていた東京朝鮮第9初級学校は当時、舞踊においてはちょっとした有名校で、中央大会は常連。当時は既成作品、創作作品に先立って朝鮮舞踊基本動作も審査されていたのですが、第9ハッキョの順番が回ってくると毎年他校が覗きにくるほどでした。
 今思い返せば、初級部にしては結構なスパルタだったと思います。踊りの体づくりの基礎となるバーレッスンからみっちりと叩き込まれ、柔軟体操、筋トレは部員の一人でも怠ければ連帯責任で全員が最初からやり直し、というふうに容赦なくしごかれました(笑)。それが中高級部での部活動において大いに活きたわけですが。

 朝鮮新報によると、今年は生徒ら1538人が185演目に出演したとのこと。
 舞踊部OGとしては、やはり舞踊部門でどのような創作作品が並ぶのか、毎年気になります。
 というのも、主に各校の舞踊教員らがつくる創作作品には、その時々の朝鮮半島や日本、在日朝鮮人社会を取り巻くさまざまな状況や出来事、問題がテーマとして描かれることが多いからです。
 私が在学時の第9ハッキョを例に上げると、初級部4年(1994年)は「チマ・チョゴリ事件」、5年は学校創立50周年、6年は日本学校からの転入生、といったテーマでした。
 他校の演目では、アトランタ五輪柔道金メダリスト、ケ・スニ選手の快挙を描いたもの、朝鮮の人工衛星光明星1号などが印象に残っています。
 技術とともに、表現することを通して子どもたちにアイデンティティやいろいろな問題意識を授けようと、先生方は創作にも指導にも苦心されたことでしょう。当時も今も。私自身、価値観の形成に舞踊(部活)が果たしてくれた役割はとても大きいです。

 今はFacebookなどで各校や保護者がいち早く動画を発信してくれるので、今年もありがたく拝見しています。優秀作品にも選ばれた群馬初中の男声4重唱を観ましたが、編曲もさることながら、ウィーン少年合唱団にも負けてない美声です(笑)。動画は群馬ハッキョのfacebookページでご覧になれます。

 近年、ウリハッキョの運動部の公式試合での目覚ましい活躍を誌面で大きく取り上げているのに比べ、芸術部は部活動そのものを取り上げる機会がなかなかないので、来年はその裏側も含めて取材できたら、と思っています。(淑)

スマホとストレートネック

2013-11-02 09:00:00 | (淑)のブログ
 近年、スマホを多用する現代人に増えているというストレートネック。
 よくニュースなどで取り上げられているのでご存じの方も多いかと思いますが、ストレートネックとは、通常、ゆるやかなアーチを描いている頚椎が、前かがみな姿勢が続くことで頚椎が頭の重さを支えられなくなり、アーチが失われ首がまっすぐになってしまう状態のことを言います。ストレートネックになると首周りの血流も悪くなって頭痛や肩こり、めまい、手のしびれ、ひいては自律神経の失調などが起きてしまうといいます。
 ストレートネック、つまり、猫背ということです。最近この言葉がよく耳について、耳障りです。
 というのも私自身数年前にストレートネックと診断されたからです。
 3、4年ほど前に右肩甲骨にビリビリっと走る不気味な痛みを感じて接骨院で診てもらったところ、レントゲン写真に写った私の頚椎は見事にまっすぐで、原因は姿勢の悪さ、猫背だと診断されました。子どもの頃はバレエも習って、学生の頃はずっと朝鮮舞踊部に所属していたくせに猫背だなんて、なんて情けないんだ!と、さすがにショックでにわかには受け入れられませんでした…(※最近になって知ったのですが、バレリーナはストレートネックになりやすいそう。人の身体はS字ラインになっていますが、バレエはそれをまっすぐに保とうとするからだそうです)。
 ストレートネックの原因は主に携帯・スマホ・PCなどを前かがみに見る姿勢に問題があるそう。でもそう言われると、思い当たるフシのある人がほとんどですよね。医師には頭が前に落ちているので、日常生活で頭の正しい位置を意識して下さい、と言われました。特別な治療法はないようですが、首をのばしたり、回したり、肩甲骨を動かしたり、こまめなストレッチが効果的だそうです。
 以前(相)さんもながらスマホの危険性についてブログで書いていましたが、うつむき族、歩きスマホ…、スマホの普及や進化にともなって今後も様々な疾患や社会問題が増えるかもしれませんね。便利な生活の代償でしょうか。身体のメンテナンスを含め、もろもろ気をつけたいと思います。(淑)


この頃の仕事模様

2013-10-26 08:12:41 | (淑)のブログ
 雑誌編集の仕事をしていてよく思うことは、1週間、1ヵ月が過ぎるのがものすごく早く感じるということ。少し前に11月号の校了日を迎えたばかりなのにあと10日もすればまた締め切り地獄がやってきます。

 2014年度の新企画もすべて決まり、今は2013年を締めくくる12月号の作成と新年号の準備を同時進行しています。毎年この時期が編集部にとってもっとも忙しい時期ですが、早くも散らかり始めたデスクがその兆しを見せており先が思いやられます。

 朝鮮のことわざで<시작이 절반>という言葉がありますが、新年号で雑誌のイメージが大体決まるので、とくに新連載は責任重大です。
 やらなければならないことを並べると気が遠くなりそうですが、なまけず一つひとつ丁寧に進め、少しでも良いものにしたいと思います。外部の筆者をはじめとする、イオを一緒につくっていく新しいメンバーも迎えます。たくさんの情熱と情報や材料を集めて、イメージを一新させたい。リニューアルされたイオを楽しみにしていてくださいね。

 ちなみに次号は、ドキュメンタリー映画に関する特集を組んでいます。特集と関連してここ数日で数人の映画監督とお会いして話を聞きました。毎度、ひと通り取材が終わったあとはここぞとばかりに、「最近観た映画」や「お勧めの一作」を聞きました。取材ノートの端っこに書き記した映画監督イチオシの良作を観るのが今から楽しみでもあります。

 台風は当初予想されたほど強くはないみたいですが、せっかくの週末は雨降り。皆さま足元に気をつけて、良い週末を。

在日朝鮮人フットボーラーたちの軌跡から

2013-10-19 09:00:00 | (淑)のブログ
 11月号の特集は「スポーツと政治・考」。表紙で登場してくれた男性も実はスポーツマンです。FCコリアの社会人一部リーグ初優勝の快挙は、11月号の誌面でも紹介していますが、表紙の康成宇さんはFCコリアのゴールキーパーです。
 今回、表紙は撮り下ろしで、モデル選びをする際、特集がスポーツなので何かしら関連した方がいいなぁと思い、FCコリアをツテにアタックしたところ、二つ返事。当日ロケ地で初めて顔を合わせたのですが、康さんはなんと学部時代の同級生の弟さんでした。
 表紙を見ればわかるようにロケ地は渋谷スクランブル交差点です。撮影日は日曜日とあって、多くの若者でごった返していました。横断歩道の真ん中で撮ったので、カメラマンさんとモデルさんは信号が青になっては出動、赤になっては退散、という一連の動きを20回以上は繰り返したんじゃないでしょうか。こんな感じで。

 終盤はカメラマンさんとモデルさん、息が合ってきてあうんの呼吸で「寄せては返して」を繰り返していました。私はといえば、荷物当番しながらただ二人を見守っていました(笑)。

 11月号のこぼれ話はこのくらいにして。
 (相)さんも書いていたとおり、特集記事はなかなかの力作ぞろいです。個人的には、とくに慎武宏さんの文章をぜひ読んでいただきたいです。
 私も今回、2010年に出た慎武宏さんの著書、「祖国と母国とフットボール」を遅まきながら手に取り読みました。
 同書は、安英学、鄭大世、梁勇基、李忠成といった若い選手から、金光浩さんはじめ在日朝鮮人のサッカーの礎を築いた往年の選手まで、在日朝鮮人のフットボーラーたちのサッカーにかける情熱を追った渾身のルポルタージュです。在日朝鮮人のサッカー史を語る上で、必然的に関わってくる国籍や再入国の問題、高体連の問題、そして書籍名にあるように朝鮮半島の北と南、生まれ育った日本とのはざまで生きるさまざまな葛藤など、サッカーにとどまらない輻輳的な在日朝鮮人の記録になっています。在日朝鮮人史においても、価値ある資料だと思います。
 とくに注意深く読んだのは、第7章「祖国と母国とサッカーと」で登場する李忠成選手の箇所です。李忠成選手とは母校が同じ東京朝鮮第九初級学校ということもあり、かねてから何かと「気になる」存在でした。かれは一級下ですがサッカーの腕前は当時から折り紙つきで、注目を集めていましたね。周知の通りかれはサッカーに専念するために中学から日本の学校へ、そして「日本国籍取得」という生き方を選んだわけですが、初級部時代の李選手の同級生からかれの話を聞いたり、SNSなどで同窓会の写真を見た時は、勝手に安心感のようなものも感じていました。
 同書で紹介されている李選手はじめ多くのサッカー選手たちの言葉からは、「在日朝鮮人」という存在と「サッカー」をめぐったさまざまな人生、生き方を垣間見ることができ、この本は、読む人にサッカーを通じて在日朝鮮人に対してものすごく柔軟な理解を与えるかもしれない、と思いました。サッカーやスポーツの持つ力が、政治が越えられない一線を飛び越えるように。
 何より、世代を越えて脈々と受け継がれる在日朝鮮人サッカー選手たちのサッカーにかける情熱、在日同胞社会への深いまなざしには、胸に熱いものがこみ上げてきます。読みながら何度も目頭が熱くなりました。
 ルポルタージュそのものとしても、その取材量には頭が下がります…。一つのテーマを掲げ、追いかけ、これほど厚みのある読み物を生み出す信念に、いち記者として大いに刺激を受けました。
 詳しくは、ぜひ同書を読んでいただきたいです。合わせてイオ11月号を読んでいただけたら、サッカー以外のスポーツとともにより理解が深まると思います。(淑)

秋の夜長に映画

2013-10-12 09:00:00 | (淑)のブログ
 10月も半ばに差し掛かるというのに真夏日が続いていますが、変わりやすいのが秋の空。厳しい日差しでも、肌に感じるそれは夏のものとは違います。

 最近、映画熱がふつふつと再燃して、ぽつぽつ観ています。
 先日は渋谷で行われた上映会に足を運びました。
 「労働者 前へ! PAME全ギリシャ戦闘的労働戦線」という作品。ギリシャ共産党とPAME(全ギリシャ戦闘的労働戦線)の活動を追ったドキュメンタリーで、労働者を犠牲にする資本の危機乗り切り攻撃と闘うギリシャの労働運動の現状を活写しています。
 ギリシャといえば2009年政権交代を機に始まった経済危機やデモなどの騒乱のイメージがぱっと浮かびます。しかし建設労働者の集会、海員組合、造船、飲料産業、乳業などの労働組合の活動家たちへのインタビューからは、ステレオタイプなイメージとは違う、厳しい現状下でも躍動感みなぎる運動、明るくたくましい人々の姿を感じ取ることができます。
 作品が伝えようとする「日本もギリシャのように立ち上がれ」というメッセージは明快です。
 時折ギリシャの街角やデモのもよう、労働組合の活動家と日本の訪問団が交流する映像などが挿入されますが、基本的には活動家らにクローズアップし表情に肉迫しながら、淡々と、進みます。通訳を介しながらコミュニケーションをはかる様子も印象的で、字幕を極力入れない形で、ありのままを見せることで連帯の過程も示したかったのではないでしょうか。ドキュメンタリー映画の手法としても興味深い作品でした。

 先月は、1926年作・羅雲奎の「アリラン」のリメイク版、「アリラン2003」を観ました。本作を観たのは2度目ですが、拷問の末「狂人」と化した主人公・ヨンジンが狂喜乱舞する場面には、ただただ悲哀が押し寄せてきます。

 古い映画といえばオードリー・ヘプバーンの代表作、「麗しのサブリナ」「ティファニーで朝食を」「パリの恋人」の3作がデジタルリマスターされ期間限定で劇場公開されています。いずれも小学校の頃に観た作品ですが、やはり劇場で観たい。大学1年の頃、当時のルームメイト4人を誘って、デジタルリマスターされた「ローマの休日」をスクリーンで観たときは、眼前に広がるアン王女の愛くるしい仕草一つひとつに、お気に入りの名場面たちに心が踊りました。

 秋の夜長、次の〆切前のドタバタがやって来る前に、良作をまとめて観たいと思います。(淑)

同胞と出会いたい方、お見逃しなく!

2013-10-05 09:00:00 | (淑)のブログ


 昨年9月に朝鮮大学校連合同窓会主催で行われた同胞の出会いのパーティ、通称「ソクサギム」の、第2弾が11月16日に企画されています。
 昨年は「船上のソクサギム」と銘打ち、横浜みなとみらいをクルージング。約100人の参加者で賑わい、大同窓会さながらの雰囲気でした。
 スタッフの間では第2回はどうしようか? 海の次は「天空のソクサギム」にしようか!?などと話し合われましたが、今年はシンプルに地上になりました。やはり、「人は大地を離れては生きていけない」ので(byシータ「天空の城ラピュタ」より)。(言いたいだけ)

 題して、
「ソクサギム2013in Tokyo~そして出会いは船上から地上へ~」

 普通です(笑)。副題は私が考えました。
 このイベント、朝鮮大学校連合同窓会主催とだけあって、「参加者は朝大卒業生だけなの? 朝高出身や日本学校出身は参加できないの?」という質問が多く寄せられますが、そんなことはありません。25~39歳の未婚同胞男女ならどなたでも参加可能です(※対象外の参加希望者はご相談ください!)。
 開催日まではまだ1ヶ月以上ありますが、関東近郊はじめ遠方からも続々とエントリーが集っており、現在すでに30名以上が参加登録しています。内訳を見ると、女性の方が積極的なようです(笑)。

 9月に行われた青商会主催の同様のパーティは、聞くところによると早い段階から定員オーバー、キャンセル待ちだったとか。純粋に「同胞と出会いたい」というニーズがたくさんあるんだなぁと、うれしくなった次第。

 イオでも昨年12月号で「出会い」に関する特集を組みましたが、日本人と比べて同胞との出会いが圧倒的に少ない中で、今後はもっと枠組みにとらわれないより自由なカタチで、あるいは男女間だけでない新たな枠組みで、出会いの場をつくっていくことが必要なんじゃないか、と思います。どんなことができるかな?と、昨年に引き続きスタッフを任されながら考えています。

 参加受付第1次〆切は10月16日。さまざまな同胞との出会いや再会を気軽に楽しんでもらえたらと思います。
 参加登録、詳細はこちら。(淑)

日時:11月16日(土) 開場18:30/開始18:50
場所:Gamran Ball(JR新宿駅東口徒歩5分、パセラリゾーツ新宿本店ビル7階)
参加対象:25~39歳の未婚同胞男女
定員:80名
参加費:男性7,000円/女性4,000円
参加登録フォーム:https://ssl.form-mailer.jp/fms/fd39b673259681

ハルモニたちの声を

2013-09-28 09:00:00 | (淑)のブログ
 今月中旬、日本軍「慰安婦」被害女性らが韓国から来日し、日本各地を回りながら活動を続けている。15日には北海道朝鮮初中高級学校を訪問。ウリハッキョの生徒・教員らと交流を深めた。編集部からは北海道が地元の(理)さんが取材にあたり、詳しい内容はイオ11月号に掲載されます。

 24日には参議院議員会館で3名のハルモニたちを迎えて院内集会が開かれ、私も足を運んだ。今回来日されたハルモニたちを含め被害者らはみな80を超えたご高齢で、一回一回の来日が身体にも心にも大きな負担となるのは言うを待たない。韓国への自由な往来が困難な現状において、被害者から直接お話を聞く機会は極めて限られていることを踏まえればこの機会を逃せない、と永田町へ向かった。

 集会では林博史関東学院大学教授とアクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館wamの渡辺美奈事務局長が講演したほか、1994年、埼玉教育会館での金学順ハルモニの証言映像も上映された。壇上でマイクを握り締め一つ一つ搾り出すように言葉を紡ぐ姿は、約20年後のこんにちのサバイバーらの姿とぴたりと重なって、被害者らが求めた公式謝罪と賠償が一向になされないまま過ぎてしまった歳月に悲嘆を禁じえなかった。


 この日証言をされたのは朴玉善ハルモニ(90)、李玉善ハルモニ(87)、姜日出ハルモニ(86)。以下、サバイバーらの声を紹介する。

朴玉善ハルモニ
 私は「アライアキコ」と名づけられた。14歳で連行され、今90歳だ。自分は長生きして日本政府の謝罪を待っていたがもう先がない状況だ。生きている間に解決してほしい。黙っていてはいけないと思い、勇気をもって日本に来てこうして話をしている。みなさんが温かく迎えてくれて、真剣にこの問題に向き合う姿を見て、もしかしたら明日にでも解決するのではないかと安心している。問題の解決のために、みなさんの力を貸してほしい。

李玉善ハルモニ
 15歳で中国に連行され、60年ぶりに韓国に帰ってきた。その間の苦労について考えてみてほしい。私がこうして話をしなくても、女性たちを連行して何を行ったか、日本政府はすべて知っている。「慰安所」は人が住む場所ではなく、いわば場のような場所だった。食べるものはなく雑穀に味噌をつけて食べた。暴力をふるわれ、目も耳も悪くなって歯も失った。何度も逃げては捕まえられ、そのときの傷がまだ残っている。私たちがお金儲けをしていたというのなら、私たちにお金を渡したという人は名乗り出てください。戦争が終わって日本軍は私たちを置き去りにして逃げた。必ず謝罪、名誉回復、賠償しなければならない。そして歴史の真実を必ず教科書に載せて名誉を回復してほしい。

姜日出ハルモニ
 日本は朝鮮を奪った。国がなかったために私たちは強制的に連行された。私たちはこのことを民族の歴史として記憶しなければならない。
 安倍首相は私たちのことを人間とも思っていない。なぜ私たちを無視するのか。なぜこの場にいないのか。ここに来てきちんと謝罪すべきだ。日本政府の対応を見ていたら、食べ物ものどを通らない。このまま謝罪しないなんてだめです。だめです。謝罪をしなければなりません。



 被害者らは何度もマイクをくれと求めては、謝罪と賠償をしてほしいと切々と話した。語りつくせない思いが次から次へと溢れてくるようだった。
 集会後、一言お礼を伝えようとハルモニたちのところへ向かうと姜日出ハルモニが「在日同胞か。屈せず勉強をがんばりなさい」と私の手を強く握ってくれた。その言葉に込められた思いを、しわだらけの、柔らかい手に込められた力を、しっかりと受け止めたい。(淑)