Gabbie's Cafe

 天使のカフェへようこそ

祖母のダリア

2006年08月02日 | Season's Special

今年はキリギリスの当たり年のようで、びっくりするほど大きなやつによく出会います。
そのキリギリスが、庭のダリアを食い荒らしてしまうといって、母が無事だった花を摘んできました。

このダリアは、今は亡き父方の祖母が植えたもの。赤や黄色、毎年夏になると色鮮やかな花が裏庭を彩ります。

祖母はどうやらとても花が好きな人だったらしく、昔の田舎の村では誰も植えていなかったであろう花がいくつも残ってます。このダリアもそのひとつ。母はそれらの花を、祖母の思いを受け継ぐように大切に育て続けています。

横浜に住んでいた私たち家族がその祖母に会いに来ることができたのは、夏休みを利用して数えるほどだったと思います。幼い頃の私が訪ねていくと、足が不自由だった祖母は、階段の急なこの二階家の、一階の西日の入る居間にいつもいました。そして痛い足を押して、なにかと孫が喜びそうなことを考えてくれようとしていたのを思い出します。
長いことこの家を一人で守ってきた祖母は、気丈で泣き言などついぞ言わない人だったと聞きます。少ない祖母の記憶をたどっても…いつもあっけらかんとして笑っている…そんな感じがします。

私ら孫たちが結婚する前に他界した祖母に、ひ孫の顔を見せてあげることはかないませんでしたが、自分が守ってきたこの家にひ孫たちを交えて私たちが毎日にぎやかに暮らしていると知ったら、どんな顔をするでしょう…そして全国各地から、あるいは外国から、たくさんのお客さんをお迎えしていると知ったら…。きっと、びっくりするだろうな。そして昔のように目じりにしわをいっぱい寄せて笑ってくれる気がします。

生後5か月のひ孫の住環境を考え、祖母がいつもいた西日の入る窓に、一昨日ひさしがつきました。規格外だから取り付けられないと言われて我慢してきた網戸も、知り合いのクラフトマンが特注でつけてくれ、すだれやよしずもあしらい、西日は髄文と和らぎました。
すだれ越しに入る夕風に涼みながら、母が何度も言いました。“お母様がいる間にこんな風にしてあげられればよかった”。
盛夏の頃、祖母がよく西日を避けて道の向かいの石段の一番下に座っていたのを、母は思い出しているようでした。

夏が来てダリアが咲くたびに、私たちは祖母のことを思い出す。曾祖母に会ったことがないこの子供たちにも、この花が咲くたびに祖母のことを話して聞かせていこう。