このお店に初めて行ったのは、もう10年以上も前のこと。
とあるグルメ雑誌に載っていたレシピをもとに、スイートポテトを作ってみました。とても美味しく出来上がったので、そのお店のお菓子をぜひとも食べてみたくなりました。当時住んでいた場所から地図を片手に一時間以上もかけてまで、どうしても行ってみたかったのです。
“リリエンベルグ”。今は一時間どころか、このお店を目指して全国から人がやってくると聞きます。
カフェにもよく立ち寄ってくれる“れ。”から、そのリリエンベルグのお菓子が届きました。なにを隠そう、れ。は、以前このお店のスタッフだったのです。さすがにおすすめを知り尽くした選りすぐりの美味しいスイーツが、かごいっぱいに詰められていました。
可愛らしいシェル型のクッキーに、しっとりした紅茶のパウンドケーキ。なんの変哲もない焼き菓子の振りをして、食べてみるとびっくりするほど美味しいフクロウの形のクッキーは、Tのお気に入りに…。“無理を言って、ベリーから日向夏に換えてもらった”という瓶入りのコンフィは、それはそれは上品でやさしい柑橘の味わいです。
…Tの出産のために当時勤めていた店を辞めるとき、ご挨拶の菓子折りを用意しようとして真っ先に思い浮かんだのが、やはりこの店でした。秋の日暮れに久々に訪れると、有名になって手狭になったからか、お店はかわいらしい別棟を増設していました。クリスマスケーキの受注が始まったばかりのころで、お店を出る時に振り返ると、日もとっぷり暮れているというのに、厨房にはまだ明かりが灯っていました。
奇しくも、一ヶ月前に家族揃って訪ねてきてくれたKさんが手土産にくださったのは、最近近くにできたというリリエンベルグの暖簾分けのお店のお菓子でした。クッキーの香ばしさ、オレンジのパウンドケーキの洋酒の利いたしっとりさは、やはり本家譲りの上質なもの。本物は、いつ食べても何度食べても決して期待を裏切ることはない、ということでしょうか。
今は1000キロも離れたところに飛んできてしまったけれど、ここのお菓子はいつまでも私のフェイバリットです。愛する友人たちのご好意によって、こんなに離れた場所にいてまたあの“百合の咲く丘”に行くことが出来るなんて…
れ。そしてKさん、どうもありがとう…!