お友達のブログがなんだか美味しそうなオレンジ色なのをみていたら、このケーキを思い出しました。
コアントローをきかせたオレンジ風味のロールケーキ。コルドン・ブルーで習った配合を、日本人の口に合うように少しアレンジしたものです。
薄くスライスしたオレンジを透き通るまでシロップで煮て、オレンジ味のカスタードにバターを加えたクリームをスポンジで巻き込んで…と、少々手間はかかりますが、なかなか好評で何度も作ってお店に卸していたケーキです。
小学生の頃のある日、お呼ばれして友達のうちへ行くと、お勝手でお母さんがおやつにドーナツを揚げていました。その時のショックは今でも忘れることができません(笑)。
その時以来、“おやつに手作りケーキを出せるおかあさん”になるんだと思ってきました。
そんなことをきっかけにケーキ作りに夢中になり、趣味が高じて学校にまで行ってしまい、自分をパテシェールの端くれとまで名乗ることになり…
で、“おかあさん”になった今、どうしているかといいますと…こんな手間のかかるケーキを作ろうものなら、なまじの職人魂(?)で子供の呼ぶ声も後回しにしてしまいます。そしてふとわれに返り、あのときのドーナツを思い出して、これじゃ本末転倒だなぁと反省したりして…。
手間のかかるケーキもいいけれど、家庭で簡単に作れるお菓子が、大好きです。
製菓の専門学校で、高度なアメ細工やショコラティエでも開けそうな技術を学び、それらは本当にすばらしくて、毎回シェフのデモンストレーションに魅了されたけれど、でもやっぱり、焼きっぱなしのマフィンやスコーン、無造作に重ねてメイプルシロップをいっぱいかけたパンケーキの幸せも、大切にしていきたいと思うのです。
そして、最近よく思うのは“食べる人が本当に求めているのは何かな”ということ…。
“ママと一緒に”…子供たちの口から、この言葉が思いのほか多く出ることに気がついてから、“おやつを手作りしてくれるおかあさん”という子供の頃の自分のゴールは、“おやつを一緒に作ってくれるおかあさん”へと変わってきました。
子供がまだ幼くて、原風景を残すことのできるいましばらく、少し混ぜすぎたり焦げたりの、焼きっぱなしの幸せを味わってみたいと思います。
…と、そんな折。“なっちゃんもきっとこんなことできるよ”と、一件のURLをもらいました。ご自身のケーキを紹介し、ネット上で販売をしている方の、素敵なhpのアドレスでした。
“焼きっぱなしおかあさん”。でも、そうだな…こんな可能性も…と、オレンジのロールケーキを何台も仕上げる日を心待ちにしているのも、またこれ事実…なのでした。