職場の建物裏に咲いているアヤメです。
この季節になると、毎年花を咲かせてくれますが、 初めこそ数株?だったのがドンドンと大きくなって、増えて・・・
綺麗な花なので、とても好きですね僕は、 この花が咲くといよいよ梅雨がやってくる。
長雨が余り好きでないので 入ると同時に開けてくれる事ばかり考えますが、この一月足らずの
季節が日本の緑を支え、 夏にあらゆる動植物達を爆発をさせてくれる。
セミ、スイカ、風鈴、虫取り編みに、蚊取線香等々、
花を見た一瞬の間に、懐かしき思い出が止め処なく溢れ出してくるんです。
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「蝉の脚」
ほじくった、緑の木々うっそうとした地面を一心不乱に。
指先が痛くなる、爪に泥が詰まる。
やがて猫背で、小さくて、モソモソ動くそいつが姿を現す。
薄い緑のパーツがちりばめられたクリーム色、そいつを手のひらで転がしてみる。
小さい穴に野草の茎を差し込み、じっと見つめる。 瞳はあたかも青空映し出す朝露
ドキドキする心臓、 息を止める、
少しでも動けば、今度は茎を動かしてみる指先の感覚だけを頼りに。
昇り始めた強烈な光が顔を横から照らし、朝露の中へ小さな太陽を造り出す。
くすぐったい感覚を残しつつ、そいつは手のひらを不器用に歩く、引っ掻く、痛くはない。
すこしだけ悩む、持って帰ろうか?と・・・
そいつは木に登る、殻を破る、そして羽を広げて空に舞って夏を謳歌する。
カニのハサミみたいな脚に指で触れると、そっと木の根元に戻してあげた。
何となくバツが悪い、高揚していた気持ちを塗り替える様に、後悔する気持ちがあふれてくる。
胸に下がったラジオ体操のカードが揺れる。
この後どうなるだろうか? 無事空に羽ばたけるだろうか? それとも鳥が食べてしまうだろうか?
急に家に帰りたくなってくる。
手に残るその感触を握りながら歩く、幾分か歩くいて振り返ってみる。
わずかなあいだに、地面から登る水蒸気が僕をつつみ込み、そいつはもう見えない。
急に怖くなり走った。 逃げる様に「ただ今!」と家へ駆け込むと、採れたての暖かい卵が
食卓に載せられていた。
それを手に持つと、しばし見つめる。 すべすべとシットリが手の平に伝わる。
そんな僕を不思議そうに、心配の少しだけ入り交じった顔で母が見つめる。
「何でもない」と一言。 そして僕は卵を割って御飯に落とす。
鮮やかな黄身は丸い形を保ちながら白御飯の上に乗り、湯気と供に有る。
まるで朝霧の中のお日様みたいだな・・・・と、その美しさに、ついさっきの有った事を思う。
それを振り切る様に、「今日は何して遊ぼうか?」と考える。
まだ心の中に残っていた引っかかり、それを少しだけ強引に、お日様(卵ごはん)と一緒に口の中へ掻き込んだ。
どこからともなく泣き始めた、蝉の声と供に・・・・
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詩 BY 翔
懐かしき夏休みのある朝の出来事ですね。
夏休み 熊木杏里