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帆∞翼(セイル バイ ウイング) -太陽そして風と供に- 

海・南風・そして何より”真夏の太陽”が大好きな翔です。

「よろしく!」  

アヤメ

2013年05月23日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

職場の建物裏に咲いているアヤメです。

この季節になると、毎年花を咲かせてくれますが、 初めこそ数株?だったのがドンドンと大きくなって、増えて・・・

綺麗な花なので、とても好きですね僕は、 この花が咲くといよいよ梅雨がやってくる。

長雨が余り好きでないので 入ると同時に開けてくれる事ばかり考えますが、この一月足らずの

季節が日本の緑を支え、 夏にあらゆる動植物達を爆発をさせてくれる。

セミ、スイカ、風鈴、虫取り編みに、蚊取線香等々、

花を見た一瞬の間に、懐かしき思い出が止め処なく溢れ出してくるんです。

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「蝉の脚」

 

ほじくった、緑の木々うっそうとした地面を一心不乱に。

指先が痛くなる、爪に泥が詰まる。

やがて猫背で、小さくて、モソモソ動くそいつが姿を現す。

薄い緑のパーツがちりばめられたクリーム色、そいつを手のひらで転がしてみる。

 

小さい穴に野草の茎を差し込み、じっと見つめる。 瞳はあたかも青空映し出す朝露

ドキドキする心臓、 息を止める、

少しでも動けば、今度は茎を動かしてみる指先の感覚だけを頼りに。

昇り始めた強烈な光が顔を横から照らし、朝露の中へ小さな太陽を造り出す。

 

くすぐったい感覚を残しつつ、そいつは手のひらを不器用に歩く、引っ掻く、痛くはない。

すこしだけ悩む、持って帰ろうか?と・・・

そいつは木に登る、殻を破る、そして羽を広げて空に舞って夏を謳歌する。

カニのハサミみたいな脚に指で触れると、そっと木の根元に戻してあげた。

 

何となくバツが悪い、高揚していた気持ちを塗り替える様に、後悔する気持ちがあふれてくる。

胸に下がったラジオ体操のカードが揺れる。

この後どうなるだろうか? 無事空に羽ばたけるだろうか? それとも鳥が食べてしまうだろうか?

急に家に帰りたくなってくる。

 

手に残るその感触を握りながら歩く、幾分か歩くいて振り返ってみる。

わずかなあいだに、地面から登る水蒸気が僕をつつみ込み、そいつはもう見えない。

急に怖くなり走った。  逃げる様に「ただ今!」と家へ駆け込むと、採れたての暖かい卵が

食卓に載せられていた。 

 

それを手に持つと、しばし見つめる。  すべすべとシットリが手の平に伝わる。

そんな僕を不思議そうに、心配の少しだけ入り交じった顔で母が見つめる。

「何でもない」と一言。 そして僕は卵を割って御飯に落とす。

鮮やかな黄身は丸い形を保ちながら白御飯の上に乗り、湯気と供に有る。

 

まるで朝霧の中のお日様みたいだな・・・・と、その美しさに、ついさっきの有った事を思う。

それを振り切る様に、「今日は何して遊ぼうか?」と考える。

まだ心の中に残っていた引っかかり、それを少しだけ強引に、お日様(卵ごはん)と一緒に口の中へ掻き込んだ。

どこからともなく泣き始めた、蝉の声と供に・・・・

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詩  BY 翔

懐かしき夏休みのある朝の出来事ですね。

 

 

夏休み 熊木杏里