海を抱きしめて
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上手くいく人生なんて無くて、 思う通り行く人生も無い・・・・
でもね、そうした日常の中で一秒、一分、出来れば数分、少しだけ気持ちの赴くままでいられる自分が有ったとしたら。
それってどれだけ贅沢だろう。
指先に触れる花びらの柔らかさ、 瞳を輝かせる太陽の光、辛い様で優しい潮風のストリーム。
青春は失われるのものではなく、永遠に続くもの、そう思いたい気持ちと現実の狭間、あまりにも小さな自分の上に浮かぶは積乱雲
降り注ぐ大粒の雨に、人は逃げ惑うけど、冷たくもなくてね、むしろ暖かささえ感じるやさしい雨。
降りしきる雨の中、バイクのエンジン停め、シールドを上げて空を見上げる・・・・
そんなバカな自分は惨めなのか? それとも幸せ者なのか?
防水のジャケットの隙間から流れ落ちる命の基はTシャツを濡らし、そして少しだけ僕の体温奪いつつ暖かくなる。
冷え切るのを知っていながらね、雨に打たれたい時もある・・・
理由は簡単なんだ、人の温かさがよく解かるから。
深呼を一つして、初夏の空気を胸一杯に吸い込むと、 イグニッションキーを回してセルボタンに触れる。
少し苦しげなセルモータの回転音の後に 4つのシリンダーは起爆する。
なんとなく不機嫌なエンジンが、今の自分にシンクロする音に変わるころ、降り飽きた東の空に虹がかかり始める。
家に帰ろうか?それとも虹を目指して走る幸せに ときめいてみようか?
な~んてね・・・・・・
いまだ降りしきる雨の中に 七色の未来を馳せながらクラッチ握る僕がいる、そう、これこそが僕なんだ。
題名 クラッチ by 翔