霧島の新燃岳の噴火から5年目となりました。
今も新燃岳周辺は立入規制が続き、えびの高原の硫黄山では噴火活動が心配されています。
地元紙 南日本新聞 2016/01/24 霧島連山の現状を知らせる紙面
新燃岳噴火から5年目の区切りとして、私の「花浄土」ホームページに掲載した当時の撮影記をこのブログにも掲載します。噴火活動の予測などは当時の状況を記録したものであり、あくまでも個人的な見解・記録であることをご理解ください。(一部加筆修正し、画像を追加しました。)
新燃岳の噴火撮影記 2011/02/15
2011年1月26日、霧島連山の中心部に位置する新燃岳の活動が激しくなり、風下の宮崎県都城市や高原町を中心に大量の火山礫や、軽石、火山灰などを降らせました。あれから3週間が過ぎ、季節は春へ向かおうとしています。これまでの体験をもとに噴火活動を振り返り、今後のことなどを考えてみました。以下の記録は個人的なメモであることをご了解ください。
1 突然の大規模噴火
新燃岳ではごく弱い噴火活動が断続的に続き、火口周辺1km以内への立入規制もあり、韓国岳から高千穂河原、高千穂峰に通じる縦走路がしばしば遮断されました。
最近では2010年5月6日に噴火警戒レベルが2に引き上げられ火口周辺規制が継続していました。
それにしても、これほどの大規模噴火を誰が想像したでしょうか。
気象庁が警戒レベルを2から3へ引き上げたのは激しい噴火が始まってから3時間後の18時。
17時前には鹿児島市街地からも高く噴き上がる煙が見え、高速道路の高原~都城は大量の火山灰が降り通行止め、それなのにテレビでは警戒レベルは2のままと言う報道が続き実に不思議でした。
一番ショックを受けたのは気象庁でしょう。
鹿児島市緑ヶ丘町から見えた噴煙 1月26日17時31分 新燃岳から直線で60kmほど
2 霧島へ急ぐ
噴煙は止まることなく上がり続け、気象庁は2500mと発表していますが実際には7500mの高さに達したようです。今回は激しい活動が夕方から翌朝にかけて続いたこともあり、何が起きているのか観測も報道も追いつけなかったように思われます。
霧島の火山活動がこれほど激しくなるのは近年にないことです。入浴、夕食を済ませ撮影機材を確認してコンビニで弁当を買い込み鹿児島市の自宅を19時50分に出発。徹夜を想定し気持ちを落ち着かせながら準備したのですが、翌日帰宅してみるとPCも炬燵も電源を切り忘れ! やはり焦っていたんですね。(笑)
はやる気持ちを押さえながら高速道路を北に走るものの、霧島の方角に火山噴火は見えません。溝辺空港付近からは確かに霧島連山が見えるはずですが・・・。みやまコンセール近くの道路右手には噴火見物でしょうか車が10台ほど駐車していました。
霧島トレッキングマップ 霧島市ホームページから引用 (新燃岳は立入規制が継続中)
3 新湯展望台
えびの方面に通じる道が高千穂河原方面へ分岐する新湯交差点は道路沿いの残雪がカチカチに凍っていました。時刻は21時、大量の降灰のため高千穂河原への道はここで封鎖されています。この時はまだ新湯温泉は営業していたようです。撮影機材を担いで新湯温泉手前の展望台(上の地図では新湯登山口と表示されています。)に向かいます。暗闇に黒々とした新燃岳が見えてきました。
やはり噴石は出ていませんが山鳴りは続いています。新燃岳までは約3km、凶暴に変わり果てた山の姿に愕然としました。中腹に点々と溶岩のような赤いものが見えます。右下の川沿いにある水汲場の先にも何か明かりが見えます。道路工事の標識だろうかと思ったのですが望遠レンズで確認すると山火事のようです。
山麓に赤く見えるのは山火事 右側が中岳方向
ゾッとしました。距離にして500m程度でしょうか、夜なので近くに見えるだけかも知れません。自分が居るここにも噴石が飛んでくるのではないかと怖くなりました。山腹に見えていた赤いものは噴石による山火事でした。ここは道路下から硫黄の噴気が常に出ていて長時間滞在は危険です。道から離れた山沿いの斜面に撮影ポイントを定めました。足下には残雪が固まり、強い北西の風が吹いて気温はマイナス3度。噴火見物の人が時々やって来て、近くで撮影する人の声も聞こえました。
4 最初はほどほどの噴火
22時頃から再び噴火が始まり、強い北西の風に飛ばされて噴石が南東斜面に降り注ぎました。噴煙も量が多くて噴石を隠す勢いでした。新湯展望台からは画面右奥方向に噴石が飛ぶため画像では狭くしか写りません。桜島の噴火と違って断続的に小さな噴石が大量に降り注ぐため、露光時間30秒では斜面が真っ赤に染まり単調な画像になりました。風の影響がなければ火口から飛散する噴石が噴水のように写ったことでしょう。風向きが変わらず小さな噴石が一杯飛ぶだけで、類似画像だらけで23時半頃に噴火は鎮まりました。
強風に流され南東側の中岳方向へ飛散する噴石
風は依然として強くて寒さに震えました。寒いはずです、桜島撮影で着用するヒートテック下着を上下とも着け忘れ。上半身は夏と同じ半袖下着で、ズボン下も着けていませんでした。それほど撮影に熱中していたようです。自分でも滑稽です。(笑)
これ以上撮影を続けても無駄なような気がしましたが、生涯に滅多に訪れない機会です。寒い中ですが撮影準備は万端、もう少し粘ろうと自分を奮い立たせて待ち続けました。
5 大規模噴火
24時頃から再び噴火が始まりました。今度は勢いが強いようです。噴石が大きくなっているように見えますが風向きは変わらず北西のまま。中岳の方まで噴石が飛ぶのが見えます。これも似たような画像のオンパレードですが、貴重な記録になると考えズーム、縦横構図、露光時間、感度、絞りを変えて撮影を続けました。
2時過ぎからは一段と噴火の勢いが激しくなり火口上空に火柱が噴き上げて南東側だけでなく火口の西側にも噴石が飛び始めました。地鳴りや空気振動が続き、噴石が飛んでくるかもという恐怖心もありましたが、一定の激しさで噴火が続き風向きも北西のままでしたから撮影を続けました。
新燃岳火口の西側に飛散する噴石
ついには激しい噴火に圧倒されてどのように活動を記録すればよいかも判らないようになり、いつまで噴火が続くのかマグマは無尽蔵なのかと考えながら呆然と山を見上げて撮影を続けました。噴火活動はさらに激しさを増して、火山雷も光り始めました。
噴煙の量が多いため広い範囲に火山雷が発生しました。30秒程度の露光時間では画面が赤くつぶれるため5秒程度で何カットも撮影を続け、広角レンズも利用して広範囲の火山雷を写し込みました。
月齢22下弦の月が南天にあり、不気味な濃い噴煙を照らし火山雷、噴石が闇を切り裂く異様な光景でした。
南東側に発生した火山雷
6 撮影終了
カメラはニコンD700とD200を持参しましたが山の斜面で足場が悪く、三脚1台にD700主体となりました。
噴火がいつまでも続くのでもう一台のカメラをセットする余裕もなく、結果的に電池消耗の激しいD200を使用しなかったのは正解でした。さすがの激しい噴火も4時40分頃には終息しました。夜明けが始まる中で5時半まで待機しましたが噴火はなく、帰途につきました。道路上には三脚をセットしたカメラマンが3人と見物人数名を見かけました。帰宅後画像をPCに取り込み、3点を地元テレビ局画像ギャラリーに投稿しました。
当時の天気図 気象庁ホームページ「日々の天気図」から引用
7 ネットで見る当日の撮影状況
1月26日朝方からの噴火活動をチェックしていた人や、夕方にいち早く撮影に駆けつけた人々の画像や動画が新聞やyoutubeに出ていました。
鹿児島・宮崎の各地から高く上がる噴煙の様子が記録されています。えびの高原からは韓国岳の背後に大きな噴煙が立ち上る様子が環境省のライブカメラ画像に残っています。
霧島連山を熟知し夜間に韓国岳から撮影した人も多かったようです。あの強い風と寒さの中で大変だったと思います。普段では新湯展望台が最も一般的な撮影位置ですが、後日大浪池から撮影した人もあるようです。風向きは北西でしたが、新燃岳の南側や高千穂牧場付近など、かねて知ったポイントから撮影した人も多いことでしょう。
8 立入規制の拡大
2月1日朝方の大きな爆発では霧島市側で、空気振動によるホテルの窓ガラス破損などの被害が発生しました。また、新湯展望台を越えて噴石が飛散し、山火事が発生しました。警戒していた警察官が雪の固まりで小さな火事を消す様子や、大きな噴石による2mほどのクレーター、周囲の立木がなぎ倒され燃える生々しい映像などが報道されました。
近くに噴石が飛んできて命からがらと言うカメラマンの話も南日本新聞に出ていました。
最初は火口から2km以内が立入規制されていましたが、これが3km程度になり、ついには4kmまで規制されています。これに従って大浪池だけでなく韓国岳も登山禁止となりました。2月15日時点では林田温泉~えびの、新湯~高千穂河原、霧島神宮~高千穂河原の通行止が継続中です。
霧島高原国民休養地から撮影 2011/02/01
9 今後の噴火活動予測
1月26日から27日にかけての大規模な噴火を第一段階とすれば、現在は時々爆発的な噴火を繰り返す第二段階に入っています。1月末に火口内に溶岩ドームがせり上がり雲仙普賢岳の悪夢が頭をよぎりましたが、溶岩は火口内に止まり温度もさめてきて平坦になっています。
このままマグマの供給が止まれば、溶岩は冷却収縮して活動は収束すると思われます。ただし、現在は火口内に溜まった溶岩が鍋に蓋を被せたような形になっています。しばらくは火山ガスが充満して蓋の隙間から爆発を繰り返す状態が続くと予測されています。
新燃岳 斜面の立木は全て焼失しています 撮影 2015/11/10
火口縁の突起が通称「うさぎの耳」です。右の突起は3~4階建ビルに相当する高さです。望遠レンズで見ると斜面には自動車ほどの大きい噴石もあります。
10 立入規制の解除見通し
今回の新燃岳噴火は享保年間の噴火活動と酷似していると言われています。
静まった頃に大噴火を起こすのではないかと恐れられていますが、地震計、傾斜計、航空観測や衛星監視などの態勢が整いつつありますので何らかの予兆はキャッチできると思われます。
霧島連山を愛するカメラマンとしては一日も早い活動の収束と、緑と花の復活を待ち望んでいますが火山活動は長期化が予測されており、当分は規制解除の見通しは立たない状態です。
以上は「新燃岳の噴火撮影記 2011/02/15」でした。
えびの高原 背景左奥が硫黄山 撮影 2015/11/10
霧島連山の中で噴火活動が懸念されているのが、えびの高原の硫黄山です。これまでも地震が発生し、噴気と地温上昇が確認され、気象台は安易に噴気地帯に近づかないよう注意を呼びかけています。
観光地えびの高原のすぐ隣で多くの登山者や観光客の訪れる場所です。生駒高原方面へ通じる道路沿いであり噴火すれば大きな影響があります。なお、今のところ韓国岳登山や不動池観光などは規制されていません。
今も新燃岳周辺は立入規制が続き、えびの高原の硫黄山では噴火活動が心配されています。
地元紙 南日本新聞 2016/01/24 霧島連山の現状を知らせる紙面
新燃岳噴火から5年目の区切りとして、私の「花浄土」ホームページに掲載した当時の撮影記をこのブログにも掲載します。噴火活動の予測などは当時の状況を記録したものであり、あくまでも個人的な見解・記録であることをご理解ください。(一部加筆修正し、画像を追加しました。)
新燃岳の噴火撮影記 2011/02/15
2011年1月26日、霧島連山の中心部に位置する新燃岳の活動が激しくなり、風下の宮崎県都城市や高原町を中心に大量の火山礫や、軽石、火山灰などを降らせました。あれから3週間が過ぎ、季節は春へ向かおうとしています。これまでの体験をもとに噴火活動を振り返り、今後のことなどを考えてみました。以下の記録は個人的なメモであることをご了解ください。
1 突然の大規模噴火
新燃岳ではごく弱い噴火活動が断続的に続き、火口周辺1km以内への立入規制もあり、韓国岳から高千穂河原、高千穂峰に通じる縦走路がしばしば遮断されました。
最近では2010年5月6日に噴火警戒レベルが2に引き上げられ火口周辺規制が継続していました。
それにしても、これほどの大規模噴火を誰が想像したでしょうか。
気象庁が警戒レベルを2から3へ引き上げたのは激しい噴火が始まってから3時間後の18時。
17時前には鹿児島市街地からも高く噴き上がる煙が見え、高速道路の高原~都城は大量の火山灰が降り通行止め、それなのにテレビでは警戒レベルは2のままと言う報道が続き実に不思議でした。
一番ショックを受けたのは気象庁でしょう。
鹿児島市緑ヶ丘町から見えた噴煙 1月26日17時31分 新燃岳から直線で60kmほど
2 霧島へ急ぐ
噴煙は止まることなく上がり続け、気象庁は2500mと発表していますが実際には7500mの高さに達したようです。今回は激しい活動が夕方から翌朝にかけて続いたこともあり、何が起きているのか観測も報道も追いつけなかったように思われます。
霧島の火山活動がこれほど激しくなるのは近年にないことです。入浴、夕食を済ませ撮影機材を確認してコンビニで弁当を買い込み鹿児島市の自宅を19時50分に出発。徹夜を想定し気持ちを落ち着かせながら準備したのですが、翌日帰宅してみるとPCも炬燵も電源を切り忘れ! やはり焦っていたんですね。(笑)
はやる気持ちを押さえながら高速道路を北に走るものの、霧島の方角に火山噴火は見えません。溝辺空港付近からは確かに霧島連山が見えるはずですが・・・。みやまコンセール近くの道路右手には噴火見物でしょうか車が10台ほど駐車していました。
霧島トレッキングマップ 霧島市ホームページから引用 (新燃岳は立入規制が継続中)
3 新湯展望台
えびの方面に通じる道が高千穂河原方面へ分岐する新湯交差点は道路沿いの残雪がカチカチに凍っていました。時刻は21時、大量の降灰のため高千穂河原への道はここで封鎖されています。この時はまだ新湯温泉は営業していたようです。撮影機材を担いで新湯温泉手前の展望台(上の地図では新湯登山口と表示されています。)に向かいます。暗闇に黒々とした新燃岳が見えてきました。
やはり噴石は出ていませんが山鳴りは続いています。新燃岳までは約3km、凶暴に変わり果てた山の姿に愕然としました。中腹に点々と溶岩のような赤いものが見えます。右下の川沿いにある水汲場の先にも何か明かりが見えます。道路工事の標識だろうかと思ったのですが望遠レンズで確認すると山火事のようです。
山麓に赤く見えるのは山火事 右側が中岳方向
ゾッとしました。距離にして500m程度でしょうか、夜なので近くに見えるだけかも知れません。自分が居るここにも噴石が飛んでくるのではないかと怖くなりました。山腹に見えていた赤いものは噴石による山火事でした。ここは道路下から硫黄の噴気が常に出ていて長時間滞在は危険です。道から離れた山沿いの斜面に撮影ポイントを定めました。足下には残雪が固まり、強い北西の風が吹いて気温はマイナス3度。噴火見物の人が時々やって来て、近くで撮影する人の声も聞こえました。
4 最初はほどほどの噴火
22時頃から再び噴火が始まり、強い北西の風に飛ばされて噴石が南東斜面に降り注ぎました。噴煙も量が多くて噴石を隠す勢いでした。新湯展望台からは画面右奥方向に噴石が飛ぶため画像では狭くしか写りません。桜島の噴火と違って断続的に小さな噴石が大量に降り注ぐため、露光時間30秒では斜面が真っ赤に染まり単調な画像になりました。風の影響がなければ火口から飛散する噴石が噴水のように写ったことでしょう。風向きが変わらず小さな噴石が一杯飛ぶだけで、類似画像だらけで23時半頃に噴火は鎮まりました。
強風に流され南東側の中岳方向へ飛散する噴石
風は依然として強くて寒さに震えました。寒いはずです、桜島撮影で着用するヒートテック下着を上下とも着け忘れ。上半身は夏と同じ半袖下着で、ズボン下も着けていませんでした。それほど撮影に熱中していたようです。自分でも滑稽です。(笑)
これ以上撮影を続けても無駄なような気がしましたが、生涯に滅多に訪れない機会です。寒い中ですが撮影準備は万端、もう少し粘ろうと自分を奮い立たせて待ち続けました。
5 大規模噴火
24時頃から再び噴火が始まりました。今度は勢いが強いようです。噴石が大きくなっているように見えますが風向きは変わらず北西のまま。中岳の方まで噴石が飛ぶのが見えます。これも似たような画像のオンパレードですが、貴重な記録になると考えズーム、縦横構図、露光時間、感度、絞りを変えて撮影を続けました。
2時過ぎからは一段と噴火の勢いが激しくなり火口上空に火柱が噴き上げて南東側だけでなく火口の西側にも噴石が飛び始めました。地鳴りや空気振動が続き、噴石が飛んでくるかもという恐怖心もありましたが、一定の激しさで噴火が続き風向きも北西のままでしたから撮影を続けました。
新燃岳火口の西側に飛散する噴石
ついには激しい噴火に圧倒されてどのように活動を記録すればよいかも判らないようになり、いつまで噴火が続くのかマグマは無尽蔵なのかと考えながら呆然と山を見上げて撮影を続けました。噴火活動はさらに激しさを増して、火山雷も光り始めました。
噴煙の量が多いため広い範囲に火山雷が発生しました。30秒程度の露光時間では画面が赤くつぶれるため5秒程度で何カットも撮影を続け、広角レンズも利用して広範囲の火山雷を写し込みました。
月齢22下弦の月が南天にあり、不気味な濃い噴煙を照らし火山雷、噴石が闇を切り裂く異様な光景でした。
南東側に発生した火山雷
6 撮影終了
カメラはニコンD700とD200を持参しましたが山の斜面で足場が悪く、三脚1台にD700主体となりました。
噴火がいつまでも続くのでもう一台のカメラをセットする余裕もなく、結果的に電池消耗の激しいD200を使用しなかったのは正解でした。さすがの激しい噴火も4時40分頃には終息しました。夜明けが始まる中で5時半まで待機しましたが噴火はなく、帰途につきました。道路上には三脚をセットしたカメラマンが3人と見物人数名を見かけました。帰宅後画像をPCに取り込み、3点を地元テレビ局画像ギャラリーに投稿しました。
当時の天気図 気象庁ホームページ「日々の天気図」から引用
7 ネットで見る当日の撮影状況
1月26日朝方からの噴火活動をチェックしていた人や、夕方にいち早く撮影に駆けつけた人々の画像や動画が新聞やyoutubeに出ていました。
鹿児島・宮崎の各地から高く上がる噴煙の様子が記録されています。えびの高原からは韓国岳の背後に大きな噴煙が立ち上る様子が環境省のライブカメラ画像に残っています。
霧島連山を熟知し夜間に韓国岳から撮影した人も多かったようです。あの強い風と寒さの中で大変だったと思います。普段では新湯展望台が最も一般的な撮影位置ですが、後日大浪池から撮影した人もあるようです。風向きは北西でしたが、新燃岳の南側や高千穂牧場付近など、かねて知ったポイントから撮影した人も多いことでしょう。
8 立入規制の拡大
2月1日朝方の大きな爆発では霧島市側で、空気振動によるホテルの窓ガラス破損などの被害が発生しました。また、新湯展望台を越えて噴石が飛散し、山火事が発生しました。警戒していた警察官が雪の固まりで小さな火事を消す様子や、大きな噴石による2mほどのクレーター、周囲の立木がなぎ倒され燃える生々しい映像などが報道されました。
近くに噴石が飛んできて命からがらと言うカメラマンの話も南日本新聞に出ていました。
最初は火口から2km以内が立入規制されていましたが、これが3km程度になり、ついには4kmまで規制されています。これに従って大浪池だけでなく韓国岳も登山禁止となりました。2月15日時点では林田温泉~えびの、新湯~高千穂河原、霧島神宮~高千穂河原の通行止が継続中です。
霧島高原国民休養地から撮影 2011/02/01
9 今後の噴火活動予測
1月26日から27日にかけての大規模な噴火を第一段階とすれば、現在は時々爆発的な噴火を繰り返す第二段階に入っています。1月末に火口内に溶岩ドームがせり上がり雲仙普賢岳の悪夢が頭をよぎりましたが、溶岩は火口内に止まり温度もさめてきて平坦になっています。
このままマグマの供給が止まれば、溶岩は冷却収縮して活動は収束すると思われます。ただし、現在は火口内に溜まった溶岩が鍋に蓋を被せたような形になっています。しばらくは火山ガスが充満して蓋の隙間から爆発を繰り返す状態が続くと予測されています。
新燃岳 斜面の立木は全て焼失しています 撮影 2015/11/10
火口縁の突起が通称「うさぎの耳」です。右の突起は3~4階建ビルに相当する高さです。望遠レンズで見ると斜面には自動車ほどの大きい噴石もあります。
10 立入規制の解除見通し
今回の新燃岳噴火は享保年間の噴火活動と酷似していると言われています。
静まった頃に大噴火を起こすのではないかと恐れられていますが、地震計、傾斜計、航空観測や衛星監視などの態勢が整いつつありますので何らかの予兆はキャッチできると思われます。
霧島連山を愛するカメラマンとしては一日も早い活動の収束と、緑と花の復活を待ち望んでいますが火山活動は長期化が予測されており、当分は規制解除の見通しは立たない状態です。
以上は「新燃岳の噴火撮影記 2011/02/15」でした。
えびの高原 背景左奥が硫黄山 撮影 2015/11/10
霧島連山の中で噴火活動が懸念されているのが、えびの高原の硫黄山です。これまでも地震が発生し、噴気と地温上昇が確認され、気象台は安易に噴気地帯に近づかないよう注意を呼びかけています。
観光地えびの高原のすぐ隣で多くの登山者や観光客の訪れる場所です。生駒高原方面へ通じる道路沿いであり噴火すれば大きな影響があります。なお、今のところ韓国岳登山や不動池観光などは規制されていません。