花浄土鹿児島

鹿児島の花や風景、祭りなどを巡るブログです。
(季節の花、吹上浜、桜島、霧島など)

真冬の紫尾山に行く 後編 2018/01/26 (鹿児島)

2018-01-27 18:34:17 | 自然観察
1月26日の紫尾山行の後編です。
路面の積雪凍結のため車を安全な場所に止め、山頂に向けて歩き始めました。

上宮神社の鳥居 12時39分


12時半頃から歩き出してすぐに両側の林に霧氷が見え始めました。5分ほどで左手に現れたのは上宮神社の鳥居です。紫尾山東側の千尋滝下から尾根伝いに登るとここに出るようです。山ヒルの心配をしながら苦労して登っても、車で上れる山であり山頂には鉄塔が多くて趣に乏しいと嘆く登山者の声もあります。

トイレのある休憩所広場


屋根の一部に小雪が吹き付けた程度に見えます。路面の雪は1センチ程度ですが気温はマイナスのようで路面が凍っていました。

紫尾山頂 13時ちょうど 


1時間ほど歩くかもと思いましたが、意外にも短時間で着きました。撮影せずに歩けば20分程度でしょうか。

出水平野方向 13時1分


雲が少なくなり眺望が開けてきました。右側は出水市街地、左側はツル越冬地の荒崎干拓地方向です。

周囲の風景を撮影するうちにスタッドレス(冬用)タイヤを付けた軽自動車が上がってきました。サーフィンが趣味と話す若者で、しばし写真撮影のことや世間話など交わしました。スタッドレスタイヤで安定走行できたとのこと。コンパクトカー用なら量販店で4本25000円程度とか。

初冬には季節の話題として報道されることの多い紫尾山の霧氷風景です。鳥居付近から足跡が付いていたので2~3名登山者がいたようですが、他に上がって来る車はありませんでした。

方位ごとの案内図


お供えのようにコインが多く並んでいました。訪れた人が記念に(あるいは祈念に)置いたものでしょう。雲が少なくなり霧島連山も雲から顔を出しました。桜島は遠くて見えませんでした。

王貞治さんの書


山頂に置かれた石には短い漢詩のようなものが刻まれていました。1981年11月8日、王貞治書とありました。

木々を縁取る霧氷(樹氷)


霧島のような海老のしっぽは見られませんでした。枝先で凍った水蒸気に小雪をまぶしたような感じです。雲が殆どなくなり明るい日差しが照り付け、溶け始めた枝先の雪などが風に飛ばされて落ちてきました。

青空との対比が美しい 13時52分


日差しのあるなし、背景の青空と流れる雲で霧氷の表情が変わります。動き回りながら何枚も写しました。次第に雲がなくなり単調な青空が広がり、枝先の霧氷が細くなっていくのが判りました。帰りは休憩所から車まで歩いて15分ほど。途中の路面の雪は殆どが解けていました。

堀切峠まで戻り山頂を振り返ると霧氷はわずかに見える程度でした。日差しで殆どが解けたのでしょう。堀切峠が雪で通行止めにならず、山頂まで普通タイヤで上がれて、霧氷も見られるというのは限られた日だけです。今回は20分程度歩くだけで霧氷を見られて幸運でした。

紫尾山の霧氷撮影について注意事項をまとめてみました。

1 標高1,067m程度なので霧島とは違ってかなりの寒波でないと見映えのする霧氷はできません。霧島えびの高原は標高1,200m、韓国岳は1,700mです。
  
2 霧氷は美しく立派でも曇り空では背景と同じ色合いで色鮮やかには写りません。枝先に成長する霧氷は霧島よりも少なめで、日差しが強くなれば短時間で霧氷が解けてしまいます。

3 ある程度雪が積もると堀切峠が通行止めになり車で紫尾山には上れません。紫尾山頂までの林道では雪による倒木被害の恐れがあります。

4 普通タイヤで無理に雪道を上がるのは危険です。
  林道の急坂部を横断面で見ると路面が山麓側に下がっています。車が滑るとガードレールがないので道路外転落の危険性があります。通行車両が殆どないので単独行では特に危険です。人里から遠く離れており、JAFなどの救援を呼ぶしかありません。

広域基幹林道紫尾線の説明板 昭和53年4月


帰り道は堀切峠を南へ進み、広域林道を東郷町山田方向へ走りました。峠の交差点脇に倒れた説明板があり、改めて読むと時代ものです。当時の林業開発にかける意欲と期待感にあふれ、昭和後半の高揚感も現れていると思います。以下に書き写します。

概要
北薩地方の雄、紫尾の霊峰に流れる所謂紫尾山系は、県下で最も森林生産力の高い地域であってこの資源を開発し、林業経営の近代化を図り、もって北薩地域の総合的な開発振興に寄与することを目的として、昭和45年度からこの広域基幹林道紫尾線の開設が始まったのである。

 以来8ヶ年の歳月と事業費9億7640万円を投じ、延長25.6キロメートルの広域基幹林道紫尾線が誕生したのである。眠り続けてきた山の大資源は、この開発によって勢よく目を覚まして沿線に写る造林の姿は日一日とその樹相を新たにしていく。そして平均標高400メートルのラインを走れば北薩・川薩の勇大な視野は勿論、遠く東支那海をとおし、甑島列島への眺望は正に天下一品である。 昭和53年4月 鹿児島県

当時は大阪万博が成功、社会が活気に満ちて社会基盤整備の公共事業が盛んになりました。昭和53年には成田空港が開港しています。誰しもが豊かな未来を信じて疑わず、折れ線グラフは右肩上がりが当たり前のような時代でした。

子孫のために植樹すれば50年後にはマイホームが造れる。成長した杉材一本が5万円と考えれば、孫たちにとても大きな資産を残せる。造林に励もうと熱っぽく語る林業関係職員の声が今も頭の片隅に残っています。

今や木材は大半が輸入材になり、材木の伐採経費の方が膨大で山林経営は厳しい状況です。杉は花粉症の元凶とされ、管理の届かない造林地は水害でさらに荒れ、林業政策の失敗を非難する声もあります。懸命に植林し山を守り育ててきた人たちにとって時代の移り変わりは残酷なものです。それでもやがて時代が変われば何らかの好転もあると期待せずにはおられません。

林道から見えた桜島 右奥 15時ちょうど


林道は説明板の通りずっと美林が連続し、伐採作業中を一か所見かけただけ。全般に木が成長しすぎて見晴らしは良くありません。すれ違う車もなく人家も見えず似たような風景が続く中で桜島が見えました。

植樹された桜


ここから南側には道沿いに数本ずつの桜並木がありました。茂った山林に隠れるような状態ですが花の時期には楽しみです。道幅は5m程度ですが花見ドライブの穴場ではないでしょうか。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

<追記2018/02/03>
紫尾山系に大規模な風力発電構想
2018/02/03 今朝の地元紙南日本新聞の一面に記事が出ていました。
東京の2社が最大で140基を建設、2025年の営業開始を見込んでいるとのこと。

事業実施想定区域は広域基幹林道紫尾線沿いと紫尾峠の北東側山系と報道されています。まさに眠っている大資源の開発でしょうか。森林資源など周辺環境を破壊しないよう配慮して、より良い方向で開発・活用されることを期待します。
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真冬の紫尾山に行く 前編 2018/01/26 (鹿児島)

2018-01-27 14:08:35 | 自然観察
年明けから2回目の寒波が続く中、1月26日(金)紫尾山に出かけました。

1月26日12時の天気図 気象庁ホームページから引用


冬型の気圧配置が続き26日の東京都心の最低気温はマイナス3.1度。鹿児島地方の天気予報は曇りのち晴れです。紫尾山に近い阿久根の最低気温は0.3度、最高気温は5.8度でした。

朝の桜島 7時47分 NHK鹿児島のライブ画像


桜島(標高1,117 m)には雲がかかっておらず雪も見えません。日の出は7時14分、高隈山系上に朝日が見えています。紫尾山にも積雪はないと判断し天候の回復を待って10時半頃に出かけました。入来峠~さつま町山崎交差点~北薩広域公園~堀切峠へと車を走らせました。

出水市から見た紫尾山 2018/01/18


紫尾山は鹿児島県出水市とさつま町に跨り標高は1,067m、薩摩半島北西部の最高峰です。山頂部にはテレビ中継局、ラジオ送信設備、防災無線設備などが多数設置されています。

国道504号の堀切峠から山頂まで林道が通じており山頂広場まで車で行くことができます。前回の寒波では山間部を中心に積雪があり堀切峠は数日間通行止めになりました。

北薩広域公園で休憩 マユミ


さつま町白男川地区からの紫尾山 11時47分


雲が多く日差しはなく紫尾山頂付近は雲に隠れています。

堀切峠の案内看板


合併前の宮之城町時代に設置された看板です。山頂まで4km、車で20分、徒歩90分とあります。堀切峠(標高約650m)のある国道504号は道幅が狭く大型車の通行は困難、普通車の離合個所もわずかです。積雪時には鹿児島県内で最初に通行止めになるような難所です。

バイパスとしての北薩横断道路工事が進んでいます。2017年現在事業中であるきららICから中屋敷ICまでの区間にある北薩トンネルは全長4,850mです。鹿児島県の道路トンネルとしては最長であり、2018年3月25日に開通予定です。

堀切峠では小雪がちらつき、山頂を目指して走るうちに道路の一部に雪が見えてきました。

普通タイヤでの走行を断念


慎重に登ってきましたが次第にカーブがきつくなり道路全体に雪が積もっていました。普通タイヤでこれ以上の走行は無理と判断して路側に車を止めて歩くことにしました。

看板横に車を止める


案内図によると山頂に近い感じですが、どの程度歩くのか不明です。単独行でもあり歩行中の安全を考慮して、三脚、ストックは持たず両手を自由にしました。望遠レンズと飲料水などをリュックに背負って歩き出しました。さて、山頂まで何分かかるでしょうか・・・・・後編に続きます。
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