2023.05.09撮影
改めてご紹介します。
学名 Papaver cambricum「ウェールズのケシ」
英名 Welsh poppy「ウェルシュ・ポピー」
和名 メコノプシス・カンブリカ(旧学名から)
ケシ科(Papaveraceae)ケシ属(Papaver)
バンクーバーでは、「ウェールズのケシ」は、だれが植えるともなく、庭づくりをしているお家の庭には、どこにでも出てきます。
たいへんきれいなんですが、あまりにも増えるので、タネができる前に終わった花を摘むことになります。これを怠っているととんでもないことに。
でも、4月の終わり、5月、6月初め、と咲き続けてくれるので、ありがたい存在です。
2023.04.29撮影
この閉じたツボミの状態の個体が、花びらを覗かせるようになるのに、3週間ほどかかりました。それが冒頭の画像。まだ、10℃出るか出ないかの時でしたからね、このころは。
15℃〜20℃に上がると、この期間は短くなるのだろうと思います。
ちょっと葉もご覧ください。
2023.05.11撮影
柔らかできれいな緑です。
ブログ上の画像ではあまり拡大されていませんからわかりにくいですが、コンピュータの大きいモニタ上で見てみると、葉の表面に白っぽい点々が出ています。何か特別な働きをするのでしょうか。
それにしても、この「ウェールズのケシ」の葉は、他のケシ属の種の葉と全然似ていない・・・
次の画像の植物は、わたしの実家の庭で育っていたケシ(Papaver somniferum)です。日本語で「ケシ」とだけ言えば、このアヘンを取るケシ属の植物を指すのではないでしょうか。それではややこしいので、種小名から「ソムニフェルム種」とも呼ぶそうですが。
さて、この、実家の庭できれいに咲いていたケシ、警察の手入れにあい(いえ、女警さんが、写真つきの説明書を持って、優しいお声で「指導」に来られたそうです)、翌日までに抜いてしまうように、と命令が出たんですって。
その前後、わたしの実家だけでなく、あちらでも、こちらでも、ご近所、みんな「指導」を受けたそうです。
2014.05.25撮影
「ウェールズのケシ」(Papaver cambricum)は、「ソムニフェルム種」(Papaver somniferum)などの他のケシ属(Papaver)と、葉の見かけもかなり違う、「子房〜花柱〜柱頭」の作りも違う。それならケシ属じゃないだろう、だから、メコノプシス属(Meconopsis)「ケシのような属」として分離しよう、という、そういう人間の知覚に基づく判断を押さえ、分子系統学的研究により、「ソムニフェルム種」と同じくケシ属(Papaver)に再び配属されました。
2022.06.06撮影
さて、これで困ったことが起きた。
なぜなら、そもそも、メコノプシス属は、「ウェールズのケシ」をケシ属から独立させるために創設された新しい属でした。そのため、「ウェールズのケシ」がメコノプシス属の模式種となっていたのです。
模式種
模式種とは、まあ言えば、その属の、人間の家で言えば、戸籍筆頭者、戸主、あるいは、組織で言えば、筆頭者、代表者、みたいなものです。その筆頭種が属から引き抜かれてしまったのですから、メコノプシス属は、模式種なし、つまり、主なしの、「仮の属」となってしまいました。(属になぜ模式種がなくてはならないか、というのは、ここではナシね。)
これを正すために、どうするか。わたしのような素人は簡単だと思うのですが、学者さんたちはこれをするのに5〜6年かかったんです。
2023.05.09撮影
メコノプシス属を廃してメコノプシス属に入っていた残りの種を他の属に再配分するか、もっと簡単に、メコノプシス属を温存して、メコノプシス属の残りの種のひとつを模式種に認めればいいだけですよね。素人はわかっちゃいねえよ、って? ごもっとも。
でも、結局、後者の方法が取られ、Meconopsis regia がメコノプシス属の模式種となりました。いわゆる「ヒマラヤの青いケシ」のひとつです。
Meconopsis (Himalayan Poppy)
2013.05.07撮影
わたしは、「ヒマラヤの青いケシ」(どの種であったかの記録、なし)を育てたことがあります。数年うまく咲いてくれたんですよ。眺めるたびに、感動で、ぼ〜〜っとしていました。でも、周りの木々の成長につれ、環境が変わって、やはり失ってしまいました。
それで、写真も撮らなかったなあ、残念だったなあ、と思っていたんですが、自宅のではなく、ブリティッシュ・コロンビア大学の植物園で撮影した、他種の「ヒマラヤの青いケシ」の写真が見つかりました。それが、直前の画像で、Meconopsis grandis「大きいメコノプシス」です。
どうか色をお楽しみくださいませ。