大空を見上げて

日頃感じていること

フライング!(青春の想い出)

2018-03-31 | Weblog

 

  

    「いくぞー!おぅー!」「いくぞー!おぅー」「位置につけー!1、2,3」

半世紀前22歳の秋、富士の裾野に落下傘降下の為、私は航空自衛隊機の輸送機(C-46)の機内にいた。
連続降下の右扉の先頭で扉に両手をかけ腰を落として準備OK。
いつでも飛び出せる状態で待機していた。
ちょっと顔を出すとすごい風圧が顔を叩く。しっかり飛び出さないと身体を飛行機の外面に叩きつけられる。

私はこの時期降下回数も20回を越えていたが、何回降りてもこの瞬間は緊張する。
私が飛び出したあと間髪入れず0,5秒間隔で両扉から30名の隊員が連続に降下する。
下界を見ると富士の裾野が見えてきた。
降下長が機内の真ん中前方で「いくぞー」降下隊員は全員で「おぅー」と答える。私は自分自身に気合入れ次の指示「降下!」の言葉を待っていた。
強風が扉から機内に吹き込む。もう下を見ると目的地の真上の様に見える。

降下長は地上からパイロットを通じて送られてくる無線の指示をランプにて確認する。
隊員は青ランプとブザーにて降下開始が確認出来るが、
先頭は位置に着いているので降下長の声を待つ。
この時「いくぞー!」また気合かけた私は「降下!」と間違えて勢いよく飛び出した。
100メートル降下して落下傘は無事に開いたが続いて誰も降下してこない。
大空に私一人である。

私はすぐ状況が飲み込めた。フライングだ。
下界を見たら御殿場の街の中である。
私は「おーい!」と何度も叫びながら落下傘を操縦して交差点の真ん中に着地した。
私の声を聞き通行人が全部車を止めてくれた。
私はお礼を言って落下傘を野戦巻きにして担ぎ、目的地の演習場に向かって4,5km歩いているとジープで隊長が迎えに来た。
怪我はないかと言われ「異常ありません」と報告すると安心したのか、その後凄く怒られた。
永い人生には一生懸命気を付けていてもいろいろ失敗する事がある。
仕方がないがこのことではしばらく恥ずかしい思いをした。

その頃は演習場外に流れて降下した事は日々あったようです。現在は公務員に対してすぐニュースになりマスコミに厳しく批判されます。時の流れと言えど本人又上司の責任問題になり大変で難しい時代だなぁ~と思っています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする