暑い。
うだるように暑い。
腹も減った。
そんなお昼時、
「うなぎ」の文字は否応もなく扇情的ですなあ。
この幟を見て、さらに「うな丼880円」という敷居の低い料金を見て、
ほぼ反射的に飛び込んだ午後12時15分。
カウンターの椅子に、尻が付くか付かないかのタイミングで勢いよく、
「うな丼ねっ!」と言う声がカン高くなるのを、誰が責められよう。
もう、すでに心(と胃袋)は、
濃いキツネ色の蒲焼。
甘辛のタレ。
そしてそれらが渾然一体となったフックラなご飯。
その狂おしいまでの饗宴を待ちかねている状態。
で。
お店の姐さん一言。「すいません、うなぎは切らしてます」
・・・・・。
「え?っていうか、ええ?まだ12時過ぎ・・・」
「今日はいい物が入ってないもんで」
・・・・・。
「いやいやいや。じゃあ、あの『うなぎ』の幟は外したほうがいいんじゃない?」
「あ、そうですか」
「『あ、そうですか』じゃなくて」・・・・てもう、やめた!
ということで、
煮魚定食(750円)!
正確に言うと、「あら炊き」。
薄味だけど、なかなかうまい。魚好きの気持ちがよく分かってる感じ。
・・・・・。
で、それはいいけど、
「うなぎ問題」。
冒頭述べたように、「うなぎ」の文字には、人を惹きつけてやまない「魔力」のようなものがある。
それに抗えずに入ってきた客に、「うなぎはありません」と言うのは、
「蛇の生殺し」と言うか、それこそ
「うなぎの生殺し」!
それだけではなく、
勘繰れば、「おとり行為」とも取られかねない。
店の主人の雰囲気、職人の様子、料理の内容、値段設定。
どれをとっても、そんな行為をするようには見えない。
だけど、ちょっとした心配りの欠如で信用を無くすことはよくある話。
悪くない店だけに、ひとこと忠告。
李下に冠を正さず!