とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

底抜けコンビに夢中デス

2009年12月09日 01時56分26秒 | マーティン&ルイス
「マ-ティン&ルイス→貴明&憲武」の記事でふれたディーン・マ-ティン&ジェリー・ルイスのコンビは、日本では<底抜けコンビ>の名で人気者だったそうです。

この<底抜けコンビ>に、あたしゃゾッコンまいったよ、もう夢中!
寝ても醒めても、底抜け、底抜け・・・

60年近くも前に活躍したお笑いコンビに、ひとって夢中になれるものなんですね。








彼らの主演映画は、ほんとうにおもしろい。特に『画家とモデル』(1955)と『底抜けニューヨークの休日』(1954)は、何度観ても飽きない。ふたりが歌う劇中歌もすてきな曲ばかり。


だけど、まだ何かが足りない気が・・・


いまやわたしのアイドルとなったミスター・ルイスは、著書にこう書いている。


---なぜか映画では、マ-ティン&ルイスのエッセンスを表現することができなかった。ナイトクラブのステージや、初期のテレビ・バラエティでこそ、僕らの本領は発揮された---


そうは言われても、ナイトクラブでのライブを観ることは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンが実用化されるまではムリ。

しかあし、われわれには、動画投稿サイトという文明の利器があるのだ!

というわけでここ最近、Youtubeでマ-ティン&ルイスのテレビ動画をひたすら見ています。


彼らが出演していたのは、The Colgate Comedy Hourというバラエティ番組で、1950~55年にNBCで放送されました。M&Lの他にも、アボット&コステロやジミー・デュランテ等、数人のコメディアンがかわりばんこにホストを務めていたらしい。

M&Lは、おそらくいちばん若いホストだったはず。
最初に番組に登場したときの彼らは、コンビ結成からわずか5年しかたっていませんでした。


見てみると、これが・・・・・・・・・・・・

おもしろい!!!


番組の構成:

オープニングトークorコント

ゲストをまじえてのコント

モノローグなど

音楽パート

エンディング


という流れ。

コントパートは、さすがにちょっと古くさいと評する人もいるのですが、わたしはそうは思わない。現代の鑑賞にも十分耐えうるおもしろさだと思います。


バックステージものが多いのはアメリカのエンターテイメントの伝統なのでしょうが、特におもしろい発見だったのは、彼らがテレビというメディア自体をネタにしていたことです。

たとえば、こんなコント:


ジェリー・ルイスがカメラにむかって神妙な顔で、番組のスタッフたちに謝辞を述べている。

そこへスタッフのひとりが近寄ってくる。

ジェリーは「これがいつもお世話になっている○○さんです」とにこやかに紹介。

スタッフが「すまないジェリー、手違いがあってまだカメラが回ってないんだよ」と言った瞬間、

「ナニ!?カメラが回ってないってどういうことだよコラァ!!」と、いきなりスタッフをボコり始める(笑)

ADが焦って出てきて「カメラ回します!」

途端に笑顔にもどり、スタッフに謙虚にお礼を述べはじめるジェリー。



これを、執拗に何度も何度もくりかえすんです(笑)


まだ20代半ばのキュートなジェリー・ルイスが、アヒルのようなヘンな声(この声が大好き!)でくりひろげるマシンガントークが、とにかくすごい!回りで起こるすべてのハプニングを、即座に笑いに変えてゆく頭の回転の速さといったら!


他にも、ADのカンペをひったくって視聴者に見せたり、カメラに急に近づいて「フォーカス合わすの苦労するでしょ!?」とカメラマンをからかったり・・・やりたい放題。

いかがですか。わかっていただけますか、わたしが底抜けコンビになぜビビビと感じたかを!?

とんねるずと底抜けコンビには、大いに共通点がある!

Colgate Comedy Hourを見て、わたしの予感はほぼ確信に変わりました。



この番組のハイライトは、なんといっても音楽パートからエンディングに至るシーンでしょう。

音楽パートでは、M&Lが生バンドをしたがえて歌ったりしゃべったり。おそらくこれが、彼らがナイトクラブでやっていたステージにかぎりなく近い雰囲気なのではないだろうか。


ふたりは必ずタキシードを着ています。


(頭蓋骨のラインが実に美しいジェリー・ルイス・・・)




若くてハンサムな男性が、高そうなタキシードをびしっと着ている。それが二人もいるというだけでも華やかでセクシーなのに、彼らはタキシードを着たまんまで、飛んだりはねたりひっくりかえったりするんです!


時には互いのタキシードをビリビリに破きあったり、水をぶっかけあったり。

ディ-ンの甘い歌声にのって、ジェリーがでたらめのタップをふんだり。

ジェリーのへんな歌にディ-ンが呆れたり。

そんなディ-ンにジェリーが熱くキスしたり。

時たまディーンが放つ強烈なジョークに、ジェリーが素で爆笑したり。

割り込んでくるバンドリーダーにふたりして散々悪態をついたり。

満足したジェリーがディーンにキスしたり。











もうとにかく、ハグしてキスしてシバいてドツいて、またハグしてキスしてシバいて・・・

見ている方は、次の瞬間何が起こるか、まったく予想がつかない。
たぶんやってる当人たちもそうだったんでしょう(笑)

「ボクらはリクエストにこたえることはめったにありません。なぜなら何をやってるか自分たちでもおぼえてないからです!」

と、ジェリーが断言する場面もありました。


即興と偶然だけが生む笑いのパワー。それが、この番組で爆発しています。


細い体のどこにそんな力が、と思う程、ジェリー・ルイスのエネルギッシュな動きに圧倒される。
それでいて、どこか頼りなげで、あぶなげで、シニカルでもある。

そんないたずらっこジェリーをあたたかく受け止める、ディ-ン・マーティンの包容力。
このクレイジーなモンキー・ボーイが好きでたまらない、と彼の瞳は語っている。
彼がいるからこそ、ジェリー・ルイスはどこまでもクレイジーになれるのかもしれない。


一見いびつなコンビにみえる。

なのに、ふたりが並んで何かを始めるやいなや、すべてが吹き飛んでしまいます。


いったい、どこがどうおもしろいのか?
いやそもそも”コメディアン”としておもしろいと言っちゃっていいのかどうか?
この人たち、いったい何なんだ!?


そのわけのわからなさに、魅了されるんです。


タキシードにシルクハットのふたりが"Every Street's a Boulevard(in Old New York)"を歌い踊りはじめると、もう目が離せなくなる。


ミスター・ジェリー・ルイスに、いつか伝えたいなあ。
日本には、とんねるずという、あなた方によく似たコンビがいるんですよ、と。
彼らはもう30年も一緒にがんばっているんです、と。

ひょっとしたら、もう知ってるかもしれないけどね。







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