とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

ジョン・ワトソンのブログ「バスカヴィルの犬」抄訳

2012年08月01日 02時31分30秒 | SHERLOCK/シャーロック



(ネタバレを含む内容です。「シャーロック」S2E2「バスカヴィルの犬」を観ていない方は、本編観賞後にお読みください)


日付:3月16日
タイトル:バスカヴィルの犬

本文:



ヘンリー・ナイトが来てくれた時ほどほっとしたことは、かつてなかった。シャーロックは退屈していた。いっとくけど、退屈してる時のシャーロックのそばには近寄らないほうがいい。落ち着きがなくなるし、無礼で高慢ちきな、とんでもなくヤな奴になってしまうんだ。

まあ、つまりは普段通りのシャーロックってわけだけど。

ヘンリーは20代後半のごく平凡な青年だった。ベイカー街にやってきたとき、明らかに心配事を抱えているようだった。彼は僕らに、父親が死んだ20年前の出来事を語った。彼の父は悪魔に八つ裂きにされて死んだというのだ。

・・・・・(中略)・・・・・

ヘンリーの自宅へ行った。父親が死んだ夜のことをまた少し思い出したと彼は言った---ふたつの言葉:リバティとインだ。シャーロックは次のわれわれの行動についてこう説明した---夜になったらヘンリーを荒野につれてゆき、何が襲ってくるか見ようというのだ。ヘンリーとおなじくらい、僕もこの案がうまくいくのか心配になった。

僕らの不安は的中した。その晩、僕は犬(ハウンド)の鳴き声を聞いた。ハウンドだったかはわからないけど、とにかく何かを聞いた。その場所は寒々としてうらさびしい場所だったが、鳴き声は気のせいなどではなかった。悪い事に、シャーロックとヘンリーはそれを目撃してしまった。

はじめシャーロックは否定したが、パブに戻ってから目撃したことを僕にみとめた。彼があれほどびくびくしている姿を見たことがなかった。心底こわがっていたんだ。僕らはそこで別れて、僕はヘンリーのセラピストであるルイーズ・モーティマーにさぐりを入れに行った。彼女が心を開きかけたちょうどそのとき、フランクランドの邪魔が入った。どうもうまくいかない。

翌朝、僕とシャーロックは前の晩のできごとについて話し合った。恐怖だけでなく、最悪だったのは自分自身に対する疑惑だったと、シャーロックはうちあけた。それまで彼は一度たりともみずからの力を疑ったことはなかった。だから、自分の見たものが信じられなかったのだ。

・・・・・(中略)・・・・・

僕らはステイプルトン博士に会いに基地へ戻った。だが、博士に会う前に、どこかに「モンスター」が存在する徴候がないか見てきてくれとシャーロックが僕に言った。そこで、いちばん大きな実験室から調査をはじめた。その時、「それ」がこっちにむかってきた。僕は追いつめられ、動けなくなってしまった。聞こえたんだ・・・そして、目撃した・・・これまでいろいろと恐ろしい経験をしてきたが、あれは最悪だった。信じがたいもの、止めようのないもの・・・あの恐ろしい目・・・

それから、シャーロックが僕を助けてくれて、僕が見たものは薬による幻覚だと告げた。僕が「ハウンド」を見たのは、見るんじゃないかと心の中で予期していたからなのだ。無論、医者として、さまざまなドラッグの作用は見てきた。だがこれはまったく違っていた・・・僕は「ハウンド」を見ただけでなく、その声を聞き、こちらに近づいてくる気配を感じたのだ。自分のなかの恐怖を感じたのだ・・・

ステイプルトンの実験室で、シャーロックはヘンリーの家から持ってきた砂糖を分析した。ヘンリーのところでコーヒーに砂糖を入れたのはシャーロックとヘンリーだけで、だから、二人だけが「ハウンド」を目撃して僕は見なかったのだ、ということにシャーロックは気づいた。同じ理屈で、その日の朝シャーロックが僕に砂糖の入ったコーヒーをいれてくれた理由も説明がついた。彼は僕を実験台にしたのだった。いずれ、このオトシマエはつけさせてもらう。







・・・・・(中略)・・・・・

・・・H.O.U.N.Dが作り出した毒ガスは、砂糖の中にあったのではない。霧だったんだ!僕らは化学兵器のまっただなかにいたというわけだ。まさに襲いかからんとするハウンドを撃ち殺すと、それはただの犬だった。

その時、シャーロックがとった行動は、僕がそれまで見たなかでもっとも人間的なものだった---ヘンリーに犬を見せたのだ。もう事件は解決したんだから、そんなことする必要なかったのに。ヘンリーに幻覚と現実のちがいをさとらせるのが何より重要なことだと、シャーロックが知っていたかのようだった。ひょっとしたら、あの恐怖と疑惑の感覚が、そしてアイリーン・アドラーとの経験が、シャーロックを人間的にしたんだろうか?

もっとも、そのすぐ後には、ヘンリーの目の前で今回の事件がいかにファンタスティックだったかをわめきはじめたのだが。やっぱりあいかわらずのシャーロックだなと思った。

その後すこししてから、もうひとつ気づいたことがあった。シャーロックは、はじめ砂糖がドラッグだと考えていた。というより、確信していた。だがシャーロックは、間違っていた。

彼も、やっぱり、人間なんだね。







コメント(9件)


ヘンリーが「ごく平凡な青年」だったって? まったく、ジョン、君プロの作家になれるよ。
シャーロック・ホームズ 12時22分


こわ~い!!
ハリー・ワトソン 12時36分


こいつ(*)に噛み付かれるより犬の鳴き声の方がおそろしいみたいだね。
ビル・マレー 12時38分

*以前は「こいつ」にリンクが貼られていたが、現在リンク先はない。なので、ビルのジョークの意味はわかりません。


LOL!(爆笑)
ジェイコブ・サワーズビー 12時40分


確かに考える手がかりはあたえてくれるよね。
(It's certainly given me paws for thought. paws=犬の前足をひっかけたシャレだと思われるがいまいちうまく訳せません)
マイク・スタンフォード 13時32分


LOL!
ジェイコブ・サワーズビー 13時34分


やめろ。すぐに。
シャーロック・ホームズ 13時36分


どう見ても、けむくじゃらのワンちゃんの話ってだけでしょ。
ビル・マレー 13時47分


ジョン、僕のピストルをとってくれ。
シャーロック・ホームズ 13時50分











Sherlock「バスカヴィルの犬」BBCオリジナル予告編










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