とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

BBCドラマ「シャーロック」がヤバいの巻(追記あり)

2012年04月09日 23時16分24秒 | SHERLOCK/シャーロック



ほんとにね。ヤバいです。かなりヤバい。

先日もハマった萌えたと騒いでいた、英国BBC放送のドラマ「シャーロック」が、あまりにもおもしろすぎて参っています。


第2シーズンのDVDが届いて(英国アマゾンはほんとに仕事が早い)ワクドキしつつ、収録の3話をさっそく観てみました。

おもしろい・・・おもしろすぎる!
第1シーズンより、さらにパワーアップしてるよ!!


先日の記事では、「ピンク色の研究」(A Study in Pink)について「ホームズものの映像作品としてもこれほどの傑作はなかなかないだろう」なんて書いちゃったけど、いやはや第2シーズンではもう上回ってくれちゃってるじゃないですかっ。


説明しそびれてましたが、「シャーロック」はワンシーズン3話、1話90分のスペシャルドラマです。英国では、第1シーズンが2010年7月25日から3週連続、第2シーズンが2012年1月1日から3週連続で放送されました。第1シーズンは日本でもBSプレミアムで2011年に放送されています(日本語吹替)。

なんと、第1シーズンと第2シーズンのあいだが1年半近くあいていたんですね。第1シーズンでファンになった人たちは、長く待たされてさぞかしつらかっただろうなあ。第1シーズン最終話の結末も激しく思わせぶりだったし・・・


しかし、第2シーズン最終話の思わせぶりぶりが、これまたすごい!第3シーズン放送まであと1年も待たなきゃいけないなんて、拷問やわ旦那はん~!!
(第3シーズンは2013年早々に撮影開始、夏に放送予定)


・・・いや、マジで、このドラマのクリエーターは相当Sだと思うぞ。そうでなくても英国人って、いたぶりいたぶられに快感を見出しやすい国民性が・・・なーんてはなはだしく誤解をまねきそうな発言をいましておりますが。


でも、そこらへんはすでに確信犯的なのではないかな、と思わせられたのが、第2シーズン第1話「ベルグラヴィアの醜聞」(A Scandal in Belgravia)。コナン・ドイルの原作「ボヘミアの醜聞」のもじりです。

原作とおなじく、ホームズにとっての “忘れがたき女” アイリーン・アドラーが登場するんだけど、彼女の設定がなんとSMの女王!しかも、そんじょそこらの女王様じゃない。政財界の大物や王室の人々までもが顧客に名を連ねている。


ということはつまり、表に出せないあらゆるスキャンダルや裏情報がいくらでも彼女のもとにあつまってくるわけで、アイリーンはそれをネタに大博打をうつ。究極の悪女なのです。


美しく、シャーロックと同じくらい頭が切れて、タフ。男女関係なく、これほど魅力的な悪役にはそうお目にかかれるもんじゃありません。アイリーン・アドラーに関しては、残念ながらガイ・リッチー版に楽勝してしまったという感じ。







そんなアイリーンにたいして、シャーロックは完全に「年下の男の子」状態。あんまりネタばらしはしたくないけれど、シャーロックがアイリーンにムチで打たれるシーンなんて、ちょっとゾクッとしてしまった(のはわたしだけか?)。







「シャーロック」の魅力のひとつは、非常にキャンプ的であることだとわたしは思う。

映像はすごくスタイリッシュなんだけど、ちょっとした設定やシーンにキャンプ趣味がみえかくれするところに、とても惹かれます。ピンク色、ゴシック、SM、ほのかな同性愛のニュアンス・・・もともとドイルの原作も、探偵小説というよりゴシックホラーに近いし。


これまたちょいネタバレだけど、第3話「ライヘンバッハ・フォール」(The Reichenbach Fall)のあるシーンでは、シャーロックとジョンが手錠でつながれたまま夜のロンドンを疾走する。「手をつないで走れ!」と叫ぶシャーロックに、またまたゾクッ!(あたしゃ変態か)

この時のふたりの映像などは、『明日に向かって撃て!』のラストシーンあたりを思い出させるし、なおかつ手錠というアイテムがいやがおうにもセクシャルな暗示を醸し出してもいる。


以前、バディ映画の定義について書いたとき、次のようなものを挙げました:


一、バディものとは、ふたりの男がはじめから、あるいは最後には、無二の親友とならなくてはいけない。

一、バディものとは、ふたりの男が生きるか死ぬかの危機を共に闘い抜くシビアな物語でなくてはならない。喜劇か悲劇かは関係ない。



このドラマにおけるシャーロックとジョンは、毎回のように「生きるか死ぬかの危機を共に闘いぬく」仲です。いわば義兄弟としての強い絆で結ばれている。それは時として、セックスよりもずっとセクシーなものになりうるのです。タナトスはエロスを凌駕する・・・


そんなふたりだからこそ、「ライヘンバッハ・フォール」で起きることは、もう、心を引き裂かれるほどにあまりにも悲しい・・・原作の読者なら展開ははじめっからわかっているはずなんだけど、それでも胸がキリキリ痛んでたまらず、号泣。








脚本もすばらしい。モリアーティがシャーロックをいかに追いつめていくのか、そのやりかたが何とも皮肉というのか・・・オーウェルの『1984年』をほうふつさせてぞっとさせられる場面もある。とにかくクレバーな脚本で、圧倒されます。しかも原作小説に忠実。


もちろん、演じる役者さんたちもすばらしい。「シャーロック」ファンのご多分にもれず、わたしも主演のベネディクト・カンバーバッチ君の大ファンになってしまいました。最初は「ヘンな顔だな」とか思ってたのに、いまじゃすっかりトリコ。冷酷で傲慢で気高いシャーロックを、完全に自分のものにしています。







彼はテレビドラマでゴッホや物理学者のスティーブン・ホーキングを演じたこともある(どちらも名演技)。「天才ばかりを演じてますね」とトークショーで聞かれて「それは僕の顔がヘンだからでしょう」と答えるベネディクトに、ハートずきゅーん(笑)








*追加動画
ベネディクト・カンバーバッチ主演「ホーキング」 (1 of 6)





ベネディクト・カンバーバッチ主演「Van Gogh Painted With Words」 (1 of 6)


ゴッホとその近親者たちが書いた手紙の言葉を、一切創作を加えずそのままセリフにして構成されたドキュメンタリードラマ。このドラマにおけるベネディクトの演技はとにかく秀逸。狂気の天才とみなされることの多いゴッホを、静謐な演技で表現している。ゴッホの孤独が胸に刺さる。



そうかと思うと、トークショーのお料理コーナーで、おそろしくぶきっちょな包丁さばきを披露したりもする。


Benedict Cumberbatch - Something For The Weekend Part 2


トマトがたいへんなことに(笑)でもそれが逆に可愛いのよね♪
「手元があぶなっかしくて見てられない!」とファンたちがコメント欄で騒いでいる(笑)





すばらしいバリトンボイスの持ち主であることも、彼の武器です。最近はユーチューブで彼の朗読をずーっと聴いてる。

これ↓がわたしの子守唄がわりになってます。彼の声には催眠効果があるんだよなあ・・・



キーツ「ナイチンゲールに寄す」 朗読ベネディクト・カンバーバッチ





*追加動画
スティーブン・ホーキング監修「神は宇宙を創造したか(Did God Create the Universe?)」



ディスカバリーチャンネルで放送されたドキュメンタリー。
ドラマでホーキング博士を演じた縁で、ベネディクトがナレーションを担当した。





映画の近作としては、スピルバーグの最新作『戦火の馬』に英国将校役で出ていました。21日から公開される『裏切りのサーカス』にも出ているそうで、大スターの器といった存在感のある俳優さんです。ハリウッド進出して妙なアクションスターにさせられないよう気をつけてほしいものだ。


ああ、他にもいっぱいいっぱい書きたいことがあるのに・・・それだけ傑作だということです。また近いうちに記事にしてしまいそうな予感まんまんです、すみません(笑)


7月の日本でのDVD発売が待ち遠しい。
(それにしてもなんでこんなに高価なのか。UKアマゾンで買ったら送料入れても2,000円以下だぞ)






兄マイクロフト(マーク・ゲイティス)と
ジョン・ワトソン=マーティン・フリーマンも良いです!
次はあなたのことを書くからね、ジョン!






レストレード警部(ルパート・グレイブス)と






レストレードがこんなにセクシーになりうると誰が予想しただろうか!?






ホームズにバイオリンはつきもの
ベネディクト君にもうちっと弓の使い方を練習させてあげてほしい・・・






膨大な数のファンダムビデオがネット上にあふれています。
なかにはプロ並みの傑作もたくさんあっておもしろい。
(ネタバレ映像含むものがほとんどなのでご注意を!)


Sherlock Holmes [BBC] - Oh No!(ネタバレはほぼないです。ピンクが可愛い)









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2 コメント

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こんばんは。 (ki-chi)
2012-04-10 21:25:20
お邪魔しています。ファイヤーさんが「シャーロック」に相当入れ込んでおられる様子が、画面越しにもひしひしと伝わってきます・・・(笑)
それにしてもアイリーンがまさかSMの女王様だとは!Mの気がある(?)私としてはたまらん設定です。映画ではアイリーンは開始早々いなくなってしまいましたけど、私はおそらくまた復活するのではないかと踏んでおります。
ところでファイヤーさんは「アイアンマン」を御覧になったことがあるでしょうか?ダウニーjrが主演の映画なのですが、なんと悪役がモリアーティ役だった俳優なんですよ!!図らずも2回対決していたのかと思うと、なんだか因縁深さを感じます・・・。
追記)
ワトソンの記事も楽しみにしています。
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ki-chiさん (ファイアー)
2012-04-11 02:09:29
うむむ、Mっけがある!それはこのドラマにぴったりですw
映画版のアイリーン、微妙な感じの消え方でしたよね。
やっぱり次回復活かな?
映画版を演じたレイチェィル・マクアダムスは大好きな女優さんなんですけど、
わたしの中ではどーもアイリーンぽくなかったんですよねえ。

えっ、「アイアンマン」の悪役がモリアーティ!? 
ぜんっぜん気づかなかった!
めずらしいですねえ、ちがう映画でまた対決だなんて。
「アイアンマン」のダウニーjrもすごくいいですよね。
映画版モリアーティはとても良かったと思いました。そこはかとない怖さが・・・
ドラマ版のモリアーティはわたしはちょい疑問だったんですけど、
意外性があって、評判が良いようです。
ワトソンの記事、遠からずアップしそうな気がします
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