
イギリスのゲイカルチャー評論家マーク・シンプソンが、「自覚のない腐男子」と賛辞(?)を送った映画監督ガイ・リッチーが、またしてもやってくれました。
現在劇場公開中の『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』。
傑作バディムービーでございます!
2009年のシリーズ第一作については、とんねるずイズム5「男男-2」ですこしふれました。
たしかにバディ映画としては前作も良く出来ていたんだけど、ホームズものとしてはちょっとどうかなー、というのが個人的な感想でした(シャーロキアンには好評だったそうですが・・・)。CGで作ったのがまるわかりなロンドンの街並は興ざめだったし。アイリーン・アドラーがルパンの不二子ちゃんみたいな扱いなのも、なんとなく違和感が。
第2作は、脚本がすばらしいです。第1次大戦の遠因となったフランスとドイツの対立、テロやスパイ合戦に、モリアーティ教授 vs ホームズの対決をうま~く織り交ぜた物語になっている。やっぱりホームズは、国際紛争とか諜報活動とか、リアリティのあるプロットじゃないとね。
19世紀末ロンドンの雰囲気を忠実に再現した美術デザインも堪能できます。今回はCGやVFXを最小限におさえている(3D でもない!)。やや“古風”にすら見えるアクションシーンは安心して楽しむことができます。
英国カントリーサイドの美しい風景や、スイスアルプスを馬で越えてゆく西部劇のような映像(ドン・シーゲルの『真昼の死闘』オマージュが泣かせる!)など、合成じゃないヨーロッパの風景が見られるのも、魅力。
しかあし!やっぱりなんだかんだいっても、最大の見所はホームズ(ロバート・ダウニー Jr )とワトソン(ジュード・ロウ)のお色気ムンムン(?)な男の友情なのだ。
ガイ・リッチー版『シャーロック・ホームズ』が大成功をおさめた理由も、まさにここにある。つまり、コナン・ドイルが書いた原作小説が、ただの探偵小説じゃなく、本質的にはバディ小説なのだという点を、堂々とみとめ、プッシュしたことがエラかったわけです。
続編では、ガイ・リッチーも大胆になったというか、ひらきなおったのか、はたまたついにみずからの腐男子ぶりを自覚したのか、もう、ホモ・エロティシズムを象徴する映画的シンボルが充満しているといっちゃっていい。映画を観ながら何度ニンマリさせられたことでしょうか。ネタバレになるから、ここで逐一説明できないのがもどかしいわあ(直接劇場でおたしかめください)。
映画を観て、自分の中のホームズLOVEがちょっとだけ再燃し、帰宅してからグラナダTV版(NHKドラマ版)の映像を観たり、小説をあちこち読み直したりしていました。それでつくづく感じたのは、「ほんま、ええコンビや・・・」。
いかなる状況下でも、たがいへの信頼と尊敬をわすれない、というのが、ポイントです。
もっとくわしいホームズファンはたくさんいらっしゃるので、ここであらためて解説するまでもないのですが、ホームズ x ワトソンコンビの基本形というのは、わがままでエキセントリックなホームズ(=ボケ)に、常識的で心優しいワトソン(=ツッコミ)が、ひっぱりまわされながらもついていく、というもの。
小説がほぼ一貫してワトソンの一人称形式で語られているのも、見方によれば、ワトソンがホームズに愛あるツッコミをいれつづける過程だといえなくもない。
星の数ほどあるホームズの名セリフのなかでも、ホームズのツンデレぶりを如実に示す「都合が良ければすぐ来い。悪くても来い」は、映画でも意外なシーンで引用されていました。
こういうとき、ワトソンが「おれにだって都合があるんだよ。女房もうるさいし、いつもお前のわがままに振り回されるわけにゃいかないんだよ」なーんて言ってしまうと、コンビ解散の道まっしぐら、となる。
じゃあ、ワトソンだけがひたすら我慢しなきゃいけないのか?という疑問が出てくるわけですが(そして実際そうなんだけど(笑))、そこを救うのが、ホームズからワトソンへの絶え間ない賛辞。
“ワトソンと行動をともにするのは感傷やきまぐれなんかじゃなく、彼自身がすばらしいからだ”
とか、
“私の伝記作家なしではやっていけない”
とか・・・
超天才の相棒からこんなことを言われちゃった日にゃあ、「何があってもついていくぜ!」となるしかないわよね。
もちろん、相方がホームズ並の超人でなかったとしても、こうしてたがいの良さをときどきはっきり言葉にだしてつたえるのって、大事なんだろうと思う。
ホームズからワトソンへの賛辞で、わたしがいちばん好きなのは、『最後の挨拶』のこのセリフです。
「あいかわらずだねえ、ワトスン君は。時代は移ってゆくけれど、君はいつまでも同じだ」
(『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』新潮文庫 延原謙訳)
探偵稼業を引退して田舎にひっこみ、養蜂業に精出していたはずのホームズが、国家からの要請で数年間の潜入捜査をしたのち、最後の解決の場面でかつての相棒ワトソンの協力をあおぐという物語。
どうやらこのときも、長年音信不通だったホームズからいきなり呼び出されたらしいことが、文中の会話でほのめかされています。
でも、そんなホームズにたいしてワトソンは、
「20年も若がえった気がするよ。君から電報で、自動車をもってハーリッジへこいといってきた時くらいうれしかったことはないね」
と、こたえる。時がたっても変わることのない友情・・・
お笑いはもちろん、音楽でもお芝居でも会社経営でもなんでも、コンビで仕事をする男性諸氏は、ぜひシャーロック・ホームズを愛読するべき。コンビのありかたに迷いを感じたら、ホームズとワトソンが、きっと思い出させてくれるはずです。

ストランド誌『シャーロック・ホームズ』挿絵

ベイジル・ラズボーン(ホームズ)とナイジェル・ブルース(ワトソン)

グラナダTVドラマ版ホームズ
(「2人目のワトソン」を演じたエドワード・ハードウィックが昨年5月に亡くなったそうです。合掌・・・)

BBCで2010年から放送されている現代版ホームズ『シャーロック』
おくればせながら現在DVDを注文中。届くのが楽しみ♪
昨年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターをつとめたダウニーJr とジュード・ロウ
Robert Downey Jr. and Jude Law Presenting at Oscars 2011
プライベートでも親友になったというふたり。
日本でのプロモーションはジュード・ロウだけが来日したので、ふたりの「アツアツ」ぶりを直接見ることは残念ながらかなわなかった。
バディ映画の真髄を、いまもっとも熱く体現しているふたりである。
Robert Downey Jr and Jude Law promote Sherlock Holmes
開始30秒あたりでジュード・ロウが「いま僕が恋している唯一の人は、僕の左側にいます」
・・・ツボを心得てるねえ!
「木梨憲武は日本一のエンタテイナーだ。おれは、いまも変わらずそう信じている」
------石橋貴明
ファイヤーさんもご覧になったんですね!うれしいです。
私は封切日で朝イチに観てきました(汗)。
もうなんなんですか!!というぐらい、ホームズとワトソンの関係に、終始ニヤケっぱなしでした。(ワトソンが二日酔いになったシーンとか)
特にラストシーンのダウニーjrの仕草が最高でした。
完全に心を持ってかれました。返して!!
おっ、ki-chiさんお好きでしたか!うれしい
ワトソンの二日酔いというと、結婚式に送り届けるシーンですね!
無言で服を直してあげたりして・・・
なんとなーくさびしそーなホームズの表情がたまらんですよね!(爆)
ラストシーンの仕草って・・・えっ、どれどれ?
(って、もろネタバレになるかあ)
吹替えで観たので、もう一回字幕版で観てくるつもりです!