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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 213

2023-11-15 04:33:09 | 貫之集

ひさかたの つきかげみれば なにはがた しほもたかくぞ なりぬべらなる

久方の 月影見れば 難波潟 潮も高くぞ なりぬべらなる

 

天高く上った月が見られるころとなれば、難波潟の潮も満潮で高くなっているようだ。

 

 「ひさかたの」はここでは「月」にかかる枕詞。「天」「光」など天空に関係する多くの言葉に掛かる他、「都」に掛かることもあるようです。中でも、百人一首(第33番)にも採られた 古今和歌集0084 紀友則の歌が著名ですね。

 

ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずごころなく はなのちるらむ

ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ


紀友則


貫之集 212

2023-11-14 04:14:02 | 貫之集

としつきの かはるもしらで わがやどの ときはのまつの いろをこそみれ

年月の かはるも知らで わが宿の 常盤の松の 色をこそ見れ

 

年月の移り変わりも知らず、わが家の常緑の松の色を眺めて過ごす日々であるよ。

 

 邸宅の庭に松が聳える絵柄でしょうか

 貫之集巻二の歌も残り五首となりました。


貫之集 211

2023-11-13 04:34:06 | 貫之集

うつろふを いとふとおもひて ときはなる やまにはあきも こえずぞありける

うつろふを いとふと思ひて 常盤なる 山にはあきも 越えずぞありける

 

常緑の山は、色変わりすることをうとましいと思っているのか、秋のその山を越えては来ず、いつまでも紅葉しないのであるなあ。

 

 常緑樹で覆われた山は紅葉しないので秋が感じられないとの歌意ですね。053 の類歌と言えるでしょうか。


貫之集 210

2023-11-12 04:58:59 | 貫之集

このやどの ひとにもあはで あさがほの はなをのみみて われやかへらむ

この宿の 人にもあはで 朝顔の 花をのみ見て われや帰らむ

 

この宿に住むいとしい人にも逢わず、朝顔の花を見るだけで私は帰ろう。

 

 「朝顔」には、見ることが叶わなかった意中の人の顔が象徴されているのでしょう。


貫之集 209

2023-11-11 05:48:14 | 貫之集

たまもかる あまのゆきかひ さすさをの ながくやひとを うらみわたらむ

玉藻刈る 海人の行きかひ さす棹の 長くや人を うらみわたらむ

 

漁師たちが舟で行き交うためにさす長い棹のように、長く人を恨み続けることになるのでしょう。

 

 「玉藻刈る」はここでは「海人」にかかる枕詞。海岸の地名や、海や水に関係する言葉など、多くの語にかかります。また、第1句から第3句までが「長く」を導く序詞となっています。つまり歌意としては「長く人を恨む」の部分だけ、と言ってしまっては身も蓋もないですかね ^^;;  修辞としてはさらに「うらみ」が「浦見」と両義で、「浦」は「海」の縁語ともなっていますね。
 この歌は、拾遺和歌集(巻第十九「雑恋」 第1272番)にも入集しています。