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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1071

2022-10-05 06:15:20 | 古今和歌集

あふみより あさたちくれば うねののに たづぞなくなる あけぬこのよは

近江より 朝立ち来れば うねの野に たづぞ鳴くなる 明けぬこの世は

 

よみ人知らず

 

 近江国から朝早く発って来ると、うねの野で鶴の鳴くのが聞こえる。夜が明けたのだ。

 詞書には「近江ぶり」とあります。「近江の曲」ないし「近江風」の意ですね。「うねの野」は現在の滋賀県近江八幡市あたりの野とされます。


古今和歌集 1070

2022-10-04 06:11:01 | 古今和歌集

しもとゆふ かづらきやまに ふるゆきの まなくときなく おもほゆるかな

しもとゆふ 葛城山に 降る雪の 間なく時なく 思ほゆるかな

 

よみ人知らず

 

 葛城山に降る雪のように、絶え間なくいつまでもあなたのことが思われるよ。

 詞書には「古き大和舞の歌」とあります。「大和舞」は、大嘗祭などの際に奉納される舞。第一句の「しもとゆふ」は、「葛城山」にかかる枕詞ですね。大歌所御歌であることを考えると、「思ほゆる」対象は愛する異性ではなく時の帝でしょうか。


古今和歌集 1069

2022-10-03 06:50:35 | 古今和歌集

あたらしき としのはじめに かくしこそ ちとせをかねて たのしきをつめ

新しき 年の始めに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきを積め

 

よみ人知らず

 

 新しい年の始めに、このようにして千年もの未来を先取りして、楽しみを積み重ねるのだ。

 詞書には「おほなびの歌」とあり、左注には「日本紀には、つかへまつらめよろづよまでに」とあります。詞書は大直日の神を祭る神事の歌の意。「大直日の神」とは、禍を吉に転じる神とのこと。左注は、続日本紀に記載のある、この歌の第四句、第五句です。

 今日からは巻第二十「大歌所御歌」のご紹介。「大歌」は宮中の祭事で楽器の演奏に合わせて歌う歌のことで、「大歌所」はそれを担当する役所の名です。ただ、巻の名になってはいますが、1100 まで続く巻第二十の歌にあって、大歌所に伝えられる歌は最初の五首のみです。
 いよいよ古今和歌集の最後の巻。どうぞ引き続きおつきあいください。

 


古今和歌集 1068

2022-10-02 05:13:06 | 古今和歌集

よをいとひ きのもとごとに たちよりて うつぶしそめの あさのきぬなり

世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり

 

よみ人知らず

 

 世を捨てて木々の元に立ち寄り、うつむく私が身に着けるものは、うつぶし染めの麻の衣なのであるよ。

 第四句の「うつぶし」に、「うつぶす(うつむく、下を向く)」と僧衣を染める黒い染料の「うつぶし」を掛けています。後者は漢字で書けば「空五倍子」ですね。

 68首を採録した巻第十九「雑躰」はこれで読み切り。明日からはいよいよ最後の巻、巻第二十「大歌所御歌」の歌群のご紹介です。


古今和歌集 1067

2022-10-01 06:18:18 | 古今和歌集

わびしらに ましらななきそ あしひきの やまのかひある けふにやはあらぬ

わびしらに ましらな鳴きそ あしひきの 山のかひある 今日にやはあらぬ

 

凡河内躬恒

 

 猿よ、そんなに悲しそうに鳴かないでくれ。山に峡があるように、甲斐がある今日ではないか。

 詞書には「法皇、西川におはしましたりける日、『猿、山の峡に叫ぶ』ということを題にて、よませたまうける」とあります。「法皇」は第59代天皇であった宇多法皇のこと。
 「わびしら」の「ら」、「ましら」の「ら」はいずれも接尾語で、「ら」の反復で歌にリズムを添えています。「まし」は「猿」の意の歌語ですね。第四句の「かひ」は「峡」と「甲斐(効)」の掛詞。「甲斐」はここでは、法皇の行幸を迎えることができたことを指しています。

 

 今日から10月。ご紹介してきた巻第十九「雑躰」の歌も明日でおしまいです。墨滅歌まで含めて1,111首ある古今和歌集歌のご紹介もあと44首。読み切りの日が近づいてきて、なんだか少し寂しくなってきました。^^;;;