地方の女たち

夜の街で出会った女達と男達

児童養護施設との関わり

2024-09-03 11:32:01 | 日記
日テレの24時間テレビで「児童養護施設の子供たちの為に」と
タレントのやす子が24時間マラソンに挑戦していました。
彼女自身も高校生の時に児童養護施設で世話になったらしい。

普通、児童養護施設とは一生接点のない人が殆どだと思います。
私も知るまでは頭の中を一瞬でも通る事は無かった。
ですから児童養護施設がどういう活動をしている施設なのかは、全く分からない人でした。

大阪で生活していた時、仕事半分・プライベート半分で名古屋市に住む人と会って話をする事になり、車で名古屋に行きました。
その名古屋の人が、仕事に関する話の関係者に会いに行くと言うので、言われるままについて行った先が児童養護施設でした。
そこで働く女性が少しなら時間が取れると言うので行ったのです。

少し坂を上がった所にその施設は有り、中まで車で入り、その女性に会った。
話は直ぐに終わったのですが、持ち前の好奇心が抑えきれず。
「チョッと見学させてもらえないか」と尋ねると
快く了解してくれて、施設の中を案内してくれました。

最初に行った場所は広いフロアで、集会場というか遊戯場というか、目的は解らないけど、そんな感じの部屋でした。
そこに入り、私は直ぐに気になった事が・・・
入り口付近に駄菓子屋さんにあるような大きな瓶にお菓子が入って、それがいくつも並んでいました。

「これは何の為?」と、すぐに質問すると
子供たちが自由にお菓子を食べられるようにしているのです。昼に限らず夜中でも良いんです、、、と笑顔で答えてくれました。

そうは聞いてもその意図が解らない・・・私がそんな感じの顔をしていたのでしょう
続けて説明してくれました。
もし、これが無かったら、上の子が小さな子からお菓子を取り上げたり、盗んだりしてしまう。チョットした悪い事を経験すると、次はもう少し大きい悪い事をしてしまうんです。ですから「盗み」という最初のルール違反を発生させない為なんです。。。と。
この説明には異論も有ったのですが、これは経験から出て来た処置なのだろうと、黙って聞いていました。

ふと気が付いたのですが、いつの間にか小さな子供に取り囲まれた。
その日は日曜日で小学生や中学生も居たのですが、近くまで来て私に触れてくるのは小さな子供たちでした。

私はかがみこんで、その小さな子供たちに話しかけました。
何を言ったかは忘れてしまったけど、小さな子供たちからの質問はハッキリ覚えています。
「誰のお父さん?」
誰のお父さんでもないよと答えると
「何しに来たん?」

保育園とかの園児たちだと、誰かが何かの質問しても、他の子供たちは注目はしません。しかし、ここの子供たちは「誰のお父さん?」・「何しに来たん?」の質問に、私が答えるのを全員が黙って待っているのです。ここの子供たちに取り、それだけこの質問の答えが気になるのだろうか。

結局、子供たちとのやり取りに時間を取られ、他の施設を見学する事は出来ませんでした。
帰り際にちいさな子供たちが車の近くに来て、見送ってくれました。
ある子は手を振り、ある子はすねるように下を向き、ある子は寂しそうに見えた。

それから数か月後に名古屋市に行く用事が出来ました。
大阪を出る前に児童養護施設に何かお土産を買って行こうと・・・
これは子供たちの為ではありません、あくまでも仕事上でそこで働く女性に好印象を持ってもらいたいと言う、いやらしぃ~不動産屋の感覚です。
子供も数十人居てた感じだったので、ミカンだったかリンゴだったか・・・
数箱買って持って行きました。

施設に到着し、相手の女性にその旨を話し、車から荷物を下ろしていると。
小さな子供たちが集まってきました。
そして、、、驚く行動が・・・
小さな子供たちはお土産には目もくれず、私の服を引っ張り遊びたがっているのです。
許可を得て、子供たちと遊ぶことにしました。
遊ぶと言っても、何か道具が有る訳でなく、子供に触ったり抱き上げたりするだけです。それでも小さな子供たちは大喜びで、何時まで続けるのかと思う感じでした。
そして、、、、前回と同じ質問が 「おっちゃん、誰のお父さん?」
これ、今も子供たちの意図は理解できません。
想像ですが、親が施設に来るという事は、近いうちに引き取りに来る。
つまり子供たちにとっては、施設から脱出できるんです。
やはり、どんなに楽しそうに遊んでいても、親と生活できないのは寂しいんです。
これは、、、たぶん、、、逆に施設に顔を見せなくなる親は、何時まで経っても引き取らない現実を、小さな子供でも肌で感じ取っているのだろう・・。

名古屋市に行く用事はプライベートも含め、数カ月に一度くらいのペースで5~6年続き、その度に児童養護施設を訪ねるようになっていました。
回数を重ねると、子供たちは私の顔を覚え、かなり懐いてくれた子供も居ました。行くたびに私から離れない、帰る時は悲しそうに下を見て、私の方を見ないんです。その姿を見ると、小さな子供に変な期待を持たせてるだけで、良くないのではと自問自答するようになった。

私が施設に頻繁に行く理由は、子供たちにお土産と持って行く為だけではなく、半分は自分の為だったんです。それは、施設で働く人たちとの、何気ない会話が楽しかったのです。私が今まで会ってきた人たちとは違っていて、その人たちと話をしているとメチャクチャ癒されるんです。
その大らかな言葉と振舞は、言葉で上手く表現できませんが、職業上作っている物ではなく、生まれ持って身に付いている物だと感じました。

児童養護施設に入る事になった原因は千差万別でした。
ただ都会の施設には特徴が有り、地方から何かの理由で、子供と一緒に着の身着のままで出て来た親が預ける場合が多いらしい。
母親の場合だと、夜の街に働き場所を探し、一日も早く子供たちと暮らせる家を借りられるようにと頑張る。しかし、繁華街に歩いて出勤する為には、繁華街の近くでなければならない。そうなると子供と暮らせるほどの広さを考えると家賃が高い。もう少し資金をためて、少し離れて電車で出勤できる場所で・・と考えるが、帰りはタクシーになる事を思えば、そんなに遠くの場所は不経済。子供を引き取り、一緒に生活できない理由は、後から後からいくらでも出てくる。そして、、、男が出来たりすると・・・引き取りに来なくなる。
そんな話を施設で働く人から聞かされ、私の口からは何も言葉が出なかった。

これはほんの一例ですが、預けに来る親の殆どが経済的に壊れているので。それを立て直して、子供を引き取りに来るのは至難の業。
結局、大半が限度まで居る事になるらしい。
施設から社会に出ても、頑張ればなんとかなるなんて言うのは綺麗ごと。
現実は厳しい人生が待っている。
どうすれば良いか、、、そんな事は誰にも簡単には答えられないだろう。
24時間テレビを見て、ふと思い出しました。


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