エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

週刊エコノミストに拙著『節電社会のつくり方』の書評が掲載されました。

2011-08-08 00:20:44 | Weblog
週刊エコノミスト(毎日新聞)8月9日特大号

「話題の本」のコーナー

「福島原発事故後菅直人首相は「脱原発」を宣言したが、多種多様で不安定な分散型エネルギーを送配電網に接続するためにはスマートグリッドが必要だ。

日本の送配電網は7割がロス、日本の電力システムは世界基準から遅れているなど、驚くべき事実も次々。

発送電分離を前提に新エネルギー社会の創造であるスマートパワーをわかりやすく解説した入門書だ。お薦め。」


産経新聞に拙著『節電社会のつくり方 スマートパワーが日本を救う!』の書評が掲載されました

2011-08-05 05:53:42 | Weblog
産経新聞に拙著『節電社会のつくり方 スマートパワーが日本を救う!』(角川oneテーマ21)の書評が掲載されました。

「エネルギー危機に直面しているいま、「前向きに節電を」とプラス思考を呼びかけ、実践法を示す。スマートグリッドとコージェネレーション、この新語は覚えておいて損はない。」

メトカーフのエナーネット

2011-08-04 06:32:28 | Weblog
1969年に誕生したインターネットがその後40年かけて進化してきたように、今後ネットワークとしてのスマートグリッドのの進化のあり方を洞察することが重要になってきます。この点について、LANの標準になっているイーサネット(Ethernet)の生みの親で、それを製品化するためにかつて3Com社を創設し、現在はポラリスベンチャー・キャピタルのパートナーになっているメトカーフは、「エナーネット」(Enernet)という注目すべきコンセプトを提唱していますので、ご紹介したいと思います。
メトカーフは情報ネットワークに関する「メトカーフの法則」を提唱した人物です。情報ネットワークの価値というものは、それを使う人の数の2乗に比例するというものです。この「メトカーフの法則」は、インターネットで大いに有効な考え方であることが実証されています。インターネットが登場した頃はユーザ数も少なく、その価値に対する実感はあまりありませんでしたが、ネットワークへの参加者が増えるに従い、その価値が飛躍的に増大しているのは、実感できるところだと思います。最近はやりのフェイスブックやマイスペース、日本でのミクシィなどのSNS(Social Networking Service)にしても同じことが言えます。メトカーフは、このようなインターネット的な考え方をエネルギー問題にも適応すべきだと主張しているのです。
これまでエネルギー業界では、公益事業に対する政府の規制の下で電力、ガス、石油それぞれのビジネスモデルが確立されていますが、彼の主張は、今後エネルギーネットワークの構築に当たって政府や既存企業等だけに頼るのではなく、インターネットがそうであったように、ベンチャー企業、大学、ベンチャー・キャピタル等が既存企業等と力を合わせ、競争と協調の中で新しいものを作っていくべきだと指摘しています。
スマートグリッドで再生可能エネルギーをどう送電、配電か、ということになると、それはまさしくエネルギーネットワークの問題になります。現在のインターネットのシステムは分散型ネットワークで、たくさんの場所に情報の発信源があり、それらがネットワーク全体に伝わっていくという構造になっています。これと同様に、スマートグリッドについても、小規模ながらたくさんの太陽光発電などを数多くのところで実施し、それを送電、配電のネットワークをうまく使う構造にすることができるのではないか、とメトカーフは主張しています。

ICTと環境の両立

2011-08-03 06:47:58 | Weblog
そのような包括的な政策パッケージを立案する上で参考になるものとしては、まず、08年8月に「The Climate Group(気候グループ)」(政府と産業界の連携により地球温暖化問題の改善を推進する国際NGOで04年に設立)と「GeSI:Global e-Sustainability Initiative (e-持続可能性・国際イニシアティブ)」(欧州のICT・テレコム企業が中心となって設立された国際NGO)が公表した報告書「SMART2020」があります。この報告書は、情報通信技術が地球温暖化防止に果たす役割を示す世界最初の包括的な研究報告書です。
「SMART2020」は、20年までに世界のCO2を15%削減することができ、エネルギー効率の改善により5000億ユーロを節約できると指摘しています。「SMART2020」で示されたマッキンゼー社の分析によると、世界全体のCO2排出量は、02年の40Gtに比して、20年には51.9Gtに増加します(放置ケース)。しかし、SMART構想を実現することにより30.0Gtにまで抑えることができるとしています(対応ケース)。  
放置ケースと対応ケースの差21・9Gtの内訳は、ICTによる直接削減分が7.8Gt(これだけでも、アメリカもしくは中国の年間排出量に相当)、新エネ、植林等分が14.1Gtです。「SMART2020」は、情報通信技術によるCO2排出削減分を前者に限定していますが(前記の15%や5000億ユーロもこれに対応しています)、後者のうち新エネに関しては、ICTの活用によるスマートグリッド等の進展により実現するものがかなりあります。また、ICTによる直接削減分が7.8Gtの内訳としては、①スマートモータシステム(2020年世界全体で9億7000万トン、680億ユーロの削減)、②スマート物流(2020年世界全体で15億2000万トン、2800億ユーロの削減)、③スマート建物(2020年世界全体で16億6000万トン、2160億ユーロの削減)、④スマートグリッド(2020年世界全体で20億3000万トン、790億ユーロの削減)となっています。
「SMART2020」が単なる分析ペーパーと異なるのは、低炭素経済社会への移行は、ICTパワーにより市民や企業が技術の利用方法を変えることが、根本的な解決策だと指摘していることです。ICTによるエネルギー消費に関する標準化(S:standerdization)、監視(M:monntoring)、会計・収支計算(A:accounting)を通じて、われわれがエネルギー効率の最適化の方法や低炭素経済社会における生活様式について再考・再検討(R:rethik)を行うことで、多分野において低炭素経済社会に向けたビジネスモデルの開発が進み、低炭素経済社会への転換・変革(T:transformation)が実現されると、「SMART2020」は主張しています。
また、10年3月にアメリカ情報労連を含む4団体が公表したスマートグリッドに関する報告書「Networking the Green Economy How Broadband and Related Technologies Can Build a Green Economic Future 」は、狭義のスマートグリッドだけではなく、スマートテクノロジーによる家庭・オフィスのエネルギーマネージメント、さらにブロードバンドを活用した遠隔医療、遠隔教育などにより、エネルギーやCO2を削減するという視点が重要なことを強調しています。原口ビジョンの「25%減のうち10%以上をICTで実現する」ためには、ICTと環境の両立という視点が必要でしょう。

情報主権の革命とスマートグリッド

2011-08-02 06:56:19 | Weblog
さらに、Green by ICTについても、いま一段高次元の視点で考える必要があります。今後予想されるエネルギー費用の増加と現在進行している気候変動に関する議論を考慮に入れると、「グリーンIT」は社会のさまざまなステーク・ホルダーとのとの関係が深く、IT業界だけで取り組める課題ではありません。企業担当者や政府立案者が、エネルギー消費を考慮したITの新しい可能性を積極的に追求していくことが必要不可欠となっています。
10年5月政府のIT戦略本部は、日本の新たな情報通信技術戦略を策定しました。この戦略でもっとも特徴的なのは、「情報通信技術革命の本質は、情報主権の革命である」として「情報の民主化」を宣言したことです。これは「You Tube」のパラダイムにほかなりません。その上で、すべての世帯でのブロードバンドサービスの利用の実現を目標として、重点テーマの3本柱として、①国民本位の電子行政の実現、②ICT利活用による地域の絆の再生、③新市場の創出と国際展開を掲げています。
具体的には、週7日24時間いつでも行政サービスが利用できる環境整備、遠隔医療、在宅介護サービス、教育が受けられる環境づくりのほか、スマートグリッド、情報通信技術を活用した住宅・オフィスの省エネ化、人やモノの移動のグリーン化などを推進するとしています。このほか、ウェブベースの電子商取引の推進もそのような効果があります。
したがって、今後より高次元のGreen by ICTをも推進する視点から、スマートグリッド推進とのリンケージを構築した包括的な政策パッケージを推進し、「You Energy」のパラダイムをIT革命の負の側面を克服するものへと発展させていかなければなりません。

IT革命の負の側面

2011-08-01 07:04:17 | Weblog
「スマートグリッド革命」の駆動力には、IT革命に対する反省も含まれています。現在、インターネットの利用が拡大したために、エネルギー消費量やCO2の排出量が増加したり、電力系統にかかる負荷が増大しています。サイバースペースへの移行が進むと、CO2排出量の増加や電力消費が増加するという現象が起こっているのです。
たとえば、データセンターから排出されるCO2は、全世界のCO2排出量の2%を占め、世界中の航空業界からの排出量に相当しています。よく引き合いに出される比喩に「Googleの検索エンジンを2回クリックすることにより、コーヒー一杯分のお湯を沸かすだけのエネルギーが消費される」というものがあります。データセンターにおける消費エネルギーの費用は、ハードウェア機器にかかる費用の8倍に上ります。また、インターネット利用に伴うエネルギー消費は、アメリカでは07年に7%と推計されていますが、20年には20%~25%に拡大すると試算されています。日本でも、経済産業省は50年には50%にもなると試算しています。
このように、今までのIT革命は人間の知的活動を発展させるものではあっても、地球環境に優しいものではありません。人間のすべての活動は知的活動のみならず一般の生活活動によっても構成されています。今のままでのインターネットの利用は、確かに革命的変化をもたらしたかもしれませんが、エネルギー消費やCO2排出量の増大という無視し得ない負の側面を有しています。
現在「グリーンIT」の推進が政策的スローガンとして謳われていますが、ITを活用することで、プロセスのモニタリング(経過の観察)過程を改善し、より効率的な管理に役立てることのみならず(Green of ICT)、さらに大きな枠組みにおいて、全く新しい省エネルギービジネスモデルの構築とそのプロセスの設定にITを活用することを考える必要があります(Green by ICT)。 「グリーンIT」は、IT自体の省エネルギーを意味するだけでなく、ITを活用して経済社会の省エネルギー化を構造的に進めることだと捉えるべきです。