エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

ガス会社の対応

2011-08-30 00:11:18 | Weblog
ガス会社は、IPP(Independent Power Producerの略で、独立系発電事業のこと。卸電力事業とも呼ばれる)、PPS(Power Producer Supplierの略で、電気の小売りを行う特定規模電気事業者のこと)などの新しい電力事業のモデルに積極的に参入してきました。しかし、期待の高かったPPSのシェアが1.5%にとどまるなど、1995年以来の電力自由化の下で勢力を拡大するには至っていません。また、ガス会社は燃料電池の開発も積極的に行ってきており、09年度より家庭用燃料電池「エネファーム」の販売に力を入れていますが、家庭用燃料電池の開発をリードしてきた荏原バラードが解散するなど、現状では、燃料電池市場の立ち上げに苦戦しているのが実情です。
ガス会社としては、当面は、太陽電池と燃料電池の組合せによる「ダブル発電」により家庭に攻勢をかけ、家庭用の固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発に弾みをつける戦略です。SOFCは燃料電池の中では最も効率の良い方式で、従来型の燃料電池に比して部品点数も約半分でよいことからコストを抑えることができます。集合住宅にも置けることから、早ければ11年度にも商用化される可能性があります。
このような状況の下で、スマートグリッドでイニシアティブをとることは、ガス会社にとって至上命題になりつつあります。ガス会社が最終的に目指しているのは、需要形態・変動パターンにあわせたガス、電力、熱、水素の供給のベストミックスを実現する「スマートエネルギーネットワーク」の構築です。このモデルはEUにあります。EUでは、04年2月にCHP指令(指令2004/8/EC)が採択され、さまざまな実証事業が展開されています。ここでは、出力等が不安定な再生可能エネルギーを天然ガスコジェネレーション、燃料電池等で補完することにより、低コストで変動安定化が可能となります。さらに、東京ガスは50年にCO2排出80%減という長期目標の達成に向けて、水素社会の実現に向けた研究開発も進めています。
この中長期的な構想の下、ガス会社が取り組んでいるのは、太陽光、風力、バイオマスなど分散型の新エネルギーと天然ガスのコジェネレーション(熱電併給)システムを組合せた地域電力ネットワークの構築です。ここでは、発電量が不安定で系統電力ネットワークにつなげにくい太陽光発電については、電気とともに太陽光から温熱や冷熱を取り出し、電力と熱エネルギーを活用して効率を高めるコージェネシステムと組合せたり、蓄電池を利用して電圧や周波数変動を抑える仕組みとなっています。
 東京ガスの試算によると、宿泊施設や集合住宅の空調や給湯などにマイクログリッドを導入した場合、火力発電による電力利用に比べ、CO2は39.5%、原燃料となる1次エネルギーも26.5%削減できます。需要に応じて発電することで総合エネルギー効率が向上するためです。東京ガスは、横浜市鶴見区にある横浜研究所において06年から実証試験を行っていますが、これを発展させて、実際のオフィスビルなどの地域電力ネットワークとして既存の電力ネットワークとつなげた実証試験を行うこと目指しています。