エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「オンデマンド電力ネットワーク」構想

2011-08-24 06:52:07 | Weblog
この「エネルギーの情報化」に関して、京都大学の松山隆司教授は「オンデマンド電力ネットワーク」構想というユニークなコンセプトを提唱し、実証しています。このコンセプトは、供給者主体の“プッシュ型”の電力ネットワークをユーザ、消費者主導型の“プル型”に180度切り替えようというものです。今の電力ネットワークにおける電力需給モデルでは、電力会社にすべての需要に対して安定的な電力を供給することを義務付けています。これでは、本当に必要なもの以上の電力容量を社会全体として持たなければならなくなり、エネルギーのロス、無駄なCO2の排出が起こります。松山教授の発想は、まず需要端で自律分散のユニットを作り、本当に必要な需要に対応した電力を供給するというシステムに転換することにより、エネルギーのロス、無駄なCO2の排出を排除すつとともに、利用者の決定権の拡大を図ろうようというものです。「You Energy」へのパラダイムシフトの典型です。
具体的には、ユーザがスイッチを入れると自動的に電気が流れてくるのではなく、まず、これだけの電力がほしいというパケットを飛ばします。システム上位置づけられた電力マネージャーが個々の家庭、家電機器からのオンデマンドの要求を受けて、その要求にどう対応するかを検討し、その後電力を提供するという仕組みです。この構想では「オンデマンドの要求→マネージャーとの交渉→給電」という手順で電気が供給されますが、見方を変えると、給電されるごとの電力が仮想的にパケット化されているととらえることもできます。
オンデマンド型にすることによる最大の変化は、需要サイドから省エネ、CO2排出削減ができるようになることです。たとえば、利用者があらかじめ電気料金を20%カットするという指示をホーム・サーバにセットすると、20%カットした電力しか流さないという利用者主体の取組みが可能になり、技術的な対応だけによる対応を超えて省エネ、CO2排出削減ができるようになります。生活の質を確保しつつ電量消費をどこまで削減できるかが重要で、そのため、生活パターンの正確な学習とそれに基づいた電力制御方式を使います。
また、「オンデマンド電力ネットワーク」システムの下では、再生可能エネルギーによるグリーン電力と化石燃料によるダーティ電力を仮想的に識別することができるようになりますので(=「電力の色づけ(カラーリング)」)、割高なグリーン電力にプラスのプレミアムを付け、他方、割安なダーティ電力からマイナスのプレミアムを徴収することにより、グリーン電力とダーティ電力の価格の平準化を図ることができるようになります。また、ユーザが再生可能エネルギー由来の電力のみを買いたいという希望を有するときに、それを可能にするという「電力の買い分け」もできるようになります。
そして、長距離送電をしないことによる送電ロスの節減、電力供給の平準化等に伴うCO2排出削減を実現でき、省エネ、CO2排出削減と生活の質の確保水準の両立させる道を開くことも可能となります。