エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;アメリカで膨大な需要を喚起している「PACE」)

2010-12-17 00:22:29 | Weblog
スマートグリッドの「革命」としての条件には、膨大な需要を喚起して「ムーアの法則」(性能対価格比が、18か月ごとに半減する現象が長期にわたり継続するという経験則)がハードに妥当するようにするとともに、、「メトカーフの法則」(ネットワークの価値は、ネットワークに参加する人数の2乗に比例して増加するという経験則)によりその価値がユーザに広範に浸透する環境を早期の段階でつくることが必要です。
アメリカでのスマートグリッドの市場拡大には、この観点からすると、政府の制度設計が大きな役割を果たしています。日本は、太陽光発電、電気自動車、エコキュート、エネファームなどの普及のため、補助金制度一辺倒となっていまが、膨大な財政赤字を抱えている現下の情勢で、日本政府の関係者は、もう少し「チエ」をひねる必要があります。
アメリカ政府の制度設計で注目されるのは、省エネ設備や再生可能エネルギー設備の設置促進ができるよう08年から導入された「PACE」(Property-assessed clean energy)というユニークなプログラムです。
この「PACE」は、アメリカの家庭・オフィスの省エネ改修を促進し、エネルギーの節減とCO2排出削減を促進するために08年に設けられた制度で、09年1月カリフォルニア州バークレーで最初の債券が発行されて以来、わずか12ヶ月の間に、コロラド州、イリノイ州、ルイジアナ州、メリーランド州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、オクラホマ州、オレゴン州、テキサス州、ヴァーモント州、ヴァージニア州、ウィスコンシン州 の15州で発行されています。フロリダ州、ハワイ州ではPACE債券の発行権限はすでに存在しており、アリゾナ州とニューヨーク州では導入を検討中です。10年にはさらに多くの州に拡大し、「PACE」券の発行は5000億ドルに達すると予想されています。
 アメリカにおけるエネルギー使用とCO2排出の約40%は家庭・オフィスの建物におけるものであり、これらの省エネ改修が重要な課題となっています。このため、納税者にほとんど負担をかけることなくプログラムの成功を期しうるものとして、「PACEは」考案されました。「PACE」をスタートさせるためには、州が州法により適用対象となる市町村の区域を指定し、それに基づき市町村が「PACE」特別区域を設定します。その「PACE」特別区域内にある家庭・オフィスの建物所有者は、省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置を行おうとするときは、市町村あるいは指定金融機関(ファニーメイ、フレディマックなど)に対して「PACE」債券の発行を申請することができます。
この「PACE」債券には州政府の政府保証がつきますが、「PACE」債券の購入者には先取特権が付与されます。家庭・オフィスの建物所有者は20年間に渡る固定資産税の上乗せ徴収により、省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置に要した費用を償還するという仕組みです。
この「PACE」による効果はエネルギーの節減とCO2排出削減ばかりではありません。省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置に要した費用に相当する需要の拡大、雇用の増進のみならず、家庭・オフィスの資産価値の上昇、担保価値の増進を通じて不動産取引の活発化を促進するという大きな効果もあります。

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