エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

新著『スマートグリッド「プランB」ー電力改革へのメッセージ』に対するコメント第4号

2012-05-24 04:19:21 | Weblog
エネルギー革命のファンタジー, 2012/5/23

By retriever - レビューをすべて見るレビュー対象商品: スマートグリッド「プランB」―電力大改革へのメッセージ (単行本)

この種の本としては珍しく、そのストーリーの面白さゆえに一気に読破した。私の大好きな上橋菜穂子の「守り人シリーズ」のような壮大なファンタジーを読んでいるような錯覚に陥った。
そのストーリーは、面白さと壮大さだけでなく、現在と今後の電力エネルギー需給問題に対する極めてリアリティーに満ちた解決策をも提示しているところがファンタジーとの違いだろう。
そのリアリティーの根拠は、著者が情報通信の変遷をよく学び、それをベンチマークとして今後のエネルギー分野の絵姿を描いている点にあると思う。

実は私は35年以上電気通信分野に身をおく人間だが、27年前の自由化、その後の熾烈な競争、インターネットの登場などを間近で体験してきた。翻弄されてきた、という表現が正しいかもしれない。
かつての電話線を家庭までひくことがサービスであった時代から、モバイルインターネットの爆発的な普及とともに、ユーザーがやりたいあらゆることを提供することがサービスとなり、電話はそのひとつのアプリに過ぎなくなった現在に至る情報通信の歴史が、今、電力・エネルギー分野でその数百倍の速度とスケールで起ころうとしている、というのが著者の視点である。
すなわち、著者が「エネルギーのインターネット」と呼ぶ現象は、提供者が主導権を握りサービスを規定しそれを一方的に提供する世界から、ユーザーが自分のサービスを規定・選択できる、ユーザー主導の世界へのシフトである。

著者の加藤敏春氏はまた、行動する理論家でもあるようだ。
今夏の電力不足への具体的な対策として、節電アクションに対する”節電エコポイント”を出すことにより、経済活性化と電力需給問題解決の両方を実現しようと目下様々なセクターを巻き込むリアルな活動を進めているという。
この夏、日本が世界に先駆けて、今後のエネルギー政策に大きなインパクトを与える壮大な社会実験が行われようとしている。そしてそれは日本人の知恵と力強さを世界に見せつける格好の舞台になるに違いない。

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