エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

政府の「革新的エネルギー・環境戦略」とスマートプロジェクト~「エネルギーのインターネット」への道~

2012-09-19 07:03:18 | Weblog
政府の「革新的エネルギー・環境戦略」とスマートプロジェクト
~「エネルギーのインターネット」への道~

 9月14日政府が「革新的エネルギー・環境戦略」(http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120914/shiryo.pdf)を決定しました。そこで打ち出された「原発に依存しない社会」に関しては賛否両論があり、スマートプロジェクトとしてはそのいずれにも与するものではありません。この点に関するスマートプロジェクトの立場は、さまざまな機会に説明してきたように、あくまでも事実に基づいて現実的な対応をするというものですが、ここでは、同戦略に盛り込まれた指導理念としての「グリーンエネルギー革命」(節電・省エネルギーと再生可能エネルギーの2本柱)とスマートプロジェクトの今後の活動についてご説明したいと思います。

1 総論
① 政府の言う「グリーンエネルギー革命」は、従来スマートプロジェクトが活動の目標として掲げてきた「スマートグリッド革命」(2010年)や「スマートグリッド『プランB』」(2012年)と酷似しており、既報の「スマートグリッド推進議連」などの提言(http://blog.goo.ne.jp/ecomoney/e/61866844615d674647ff7db845d1a316)等に見られるようなスマートプロジェクトの提案と政府も同じ基盤に立って、必要な政策を展開するものとして高く評価できます。
② 政府の「グリーンエネルギー革命」は、「消費者を含む多様な担い手が主役となる新しい仕組みを構築し、『グリーン成長戦略』を強力に推し進めるもの」として捉えられています。それは、「熱的利用も含めた高度な(エネルギー)効率化を図るもので『エネルギーの安定供給』にも資する」ものであり、取りも直さず、「『地球温暖化対策』の着実な実施に直結する」としています。そのため、「『電力システム改革』を断行し、エネルギー需給の仕組みを抜本的に改め、国民が主役となるシステムを構築する」ことを謳っていますが、これは従来からのスマートプロジェクトの基本的な立場です。
③ その関連で、「国民一人ひとりが受け身の電力消費者から、立場に応じて、分散型発電所になり、スマートな省エネルギーの担い手になるような、新たな仕組みを構築することである」。「家庭や地域に、太陽光発電、蓄電池、燃料電池が、当たり前のものとして普及していけば、電気料金を払うのではなく、売電により収入が得られることも考えられる。1990年代後半のIT革命の時と同じように、私たち国民全員が主役となって社会変革をもたらすことが、グリーンエネルギー革命の本質である」としていますが、そのような下りについては、「我が意を得たり!」という感があります。
④ ただし、政府の言う「グリーンエネルギー革命」は「革命」の捉え方が狭いことが難点です。前述の「スマートグリッド革命」や「スマートグリッド『プランB』」は、大きく言って、①ICTにおける「モノのインタ-ネット」(Internet
of Things)、クラウドコンピューティング、ビッグデータという変革との一体性、②エコポイントという新しい価値通貨の流通(この点は、「第3の波」の考え方を提唱したアルビン・トフラーが『富の未来』において、貨幣経済と非貨幣経済の2つのシステムが相互に影響しあいながら新たな富を創り出し、プロシューマ(生産消費者)への報酬として「代替通貨」が流通すると予言されています)、③節電・省エネルギーと再生可能エネルギーの2本柱よりなる「グリーンエネルギー革命」として「革命」のスコープを狭くとらえるのではなく、同じ分散型電源のコジェネや基幹系を構成する化石燃料と原子力を含めた「エネルギーネットワーク」の根本的な変化(すなわち「エネルギーのインターネット」の登場)として目標の「革命」を大きく捉えたものです。

2 各論
 また、同戦略に盛り込まれた個別の政策項目に関しては、以下の項目が従来からのスマートプロジェクトの主張に沿うものです。
① 節電は、2010年(1.1兆kWh)比で2030年までに1,100億kWh以上の削減を実現する。その際、ピーク需要(kW)については、スマートメーター、HEMS/BEMS、デマンドレスポンスなどにより大幅に抑制する。
② スマートメーターの設置、HEMS/BEMSの導入を進め、見える化に加え、ピーク時料金やポイント制、ネガワット取引を含む市場メカニズムを活用した「スマートな節電」(デマンドレスポンス)の国民的展開を図る。
*①と②について、「国民的展開」としてオールジャパンで推進するとしていることに注目したいと思います。オールジャパンで「家庭の節電行動2012~節電エコポイントとネガワット」(http://www.smartproject.jp/wp-content/uploads/pdf/120801_NewsRelease.pdf)などを推進しているスマートプロジェクトが特に強調したことです。
*また「ポイント制」は、節電エコポイントと言えます。
③ 「スマートな節電」のような仕組みを地域や都市に拡大すべく、スマートコミュニティ実証事業等の成果を活用し、スマートハウスの普及、スマートコミュニティの実現
を進める。
*これもオールジャパンで推進するとしていることに注目したいと思います。スマートプロジェクトが特に強調したことです。
④ 家庭用燃料電池は、家庭が分散型発電所になるためにも重要であり、2020年時点で140万台、2030年時点で530万台(2010年現在1万台)の導入を目指す。
*ここで、「家庭が分散型発電所になる」としていることに注目したいと思います。スマートプロジェクトが特に強調したことです。
⑤ 上記の実現のためには、一定の設備投資に伴うコスト負担や消費行動の変更が前提になることを、国民全てに丁寧な情報開示で説明する。
*ここでの「情報開示と説明」については、不十分と言わざるをえません。家庭等の初期投資負担軽減のスキーム作りが必要です。
⑥ 公共施設等において、太陽光発電や蓄電池等の設置を進める。また、災害時のエネルギー供給を含めた地域のエネルギーセンター機能としての活用を図る。
*モデルとしての「足利市民総発電所構想」(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html)の意義がさらにクローズアップされてくると思います。
⑦ 地域が主導する地域の特性を踏まえた再生可能エネルギーの導入加速化を支援する。その際にはエネルギーインフラの整備とまちづくりを一体で進めていく。
⑧ 燃料電池を含むコジェネ(熱電併給)を最大限普及させ、エネルギーの有効利用を促進する。そのため、コジェネによる電力の売電を円滑に行い得る環境を整備する。

3 今後の展開
① 政府は、本年末を目途に「グリーンエネルギー革命」の実現に向けた工程を具現化した「グリーン政策大綱」を策定するとともに、以下の内容等をより具現化した「電力システム改革戦略」を国民に提示するとしています。
・ 小売市場の全面自由化により、全ての国民に「電力選択」の自由を保障するとともに、デマンドレスポンスなどの関連サービスの導入を促進する。
・ 発電部門と送配電部門を、機能的又は法的に分離する。これにより、再生可能エネルギーやコジェネを含むあらゆる事業者に対し、送配電網を中立・公平に開放する。
② ただし、前述のように、政府の言う「グリーンエネルギー革命」は「革命」の本質の捉え方が不十分なところがあります。特に、この革命がエネルギー革命であるとともに情報通信革命でもあるという二面性を十分に理解していないことは、修正されなければなりません。後者は、「モノのインターネット」(Internet
of Things)の浸透、クラウドコンピューティングの進展、ビッグデータの活用というインターネットの新展開であり、2つの革命的現象のシナジー効果が発揮されるのが、スマートプロジェクトが提唱する「エネルギーのインターネット」です。そこでは仮想空間上に幾重にも「ヴァーチャル発電所」が形成されエコポイントが新しい価値媒体として流通します。
③ スマートプロジェクトとしては、政府による「革新的エネルギー・環境戦略」の具体化、特に「グリーン政策大綱」や「電力システム改革戦略」をも踏まえつつ、「エネルギーのインターネット」により国民一人ひとりが発電所になる「スマート国民総発電所構想」(http://www.smartproject.jp/conception)の実現に向けて、プラットフォームの構築とさまざまなアプリケーションの発展を推進していきたいと考えておりますので、今後ともご協力、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

2012年9月18日
死線を越えて
加藤敏春拝

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