エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

なぜスマートグリッドの本質が語られていないのか

2010-07-31 11:28:35 | Weblog
スマートグリッドは、インターネット、コンピューティング、通信(テレコミ)、電力の各種技術を融合させて電力の双方向でのやり取りを可能にするシステムで、日本では20年代半ばまでに国内全域で構築されようとしていますが、このスマートグリッドがもたらす革命の本質がほとんど語られていません。
そのため一般の人々の関心は低く、アメリカでも79%の人々がスマートグリッドには関心がないと答えています。日本でも、スマートグリッドという言葉を聞いたことのある人々は過半を超えると思いますが、自分の生活やビジネスとは関係ないと思っている人々が90%以上であると推測されます。
このことは、15年前のIT革命勃興期にゴア副大統領の「情報スーパーハイウェイ」が一部の人々だけで熱く語られていたことを彷彿とさせます。この「土管の発想」がIT革命の本質ではなく、インターネットがもたらすビジネス革命のみならず生活革命が産み出す膨大なる需要の創造、「ムーアの法則」(半導体の価格性能比が18カ月ごとに半減していくという経験則)に代表されるイノベーション、「メトカ―フの法則」(ネットワークによる価値創造は参加者の2重に比例して増加するという経験則)に代表される自己組織化のネットワーク増殖力が革命の本質であると人々が気づくまでには、少し時間がかかりました。
スマートグリッドの世界でいま起こっていることの本質は、こうした方向、言ってみれば、IT革命がもたらした「You Tube」=誰もが番組をつくり、配信して楽しむパラダイムへの進化に相当する誰もがエネルギー作りに参加できる「You Energy」に向けた進化が起こっていることです。それが「スマートグリッド革命」です。
「You Energy」のパラダイムでは、誰もが発電所となって太陽光発電など再生可能エネルギーを提供し、電力会社に売電したり、電気自動車に搭載されている蓄電池を介して相互に融通したりして、「個人がエネルギーを作り、配電して楽しむ」ということを可能にします。そこでは、供給サイドから需要サイドへのパワーシフトが起こり、誰もがエネルギーを作り消費する主体、すなわちアルビン・トフラーの言った「プロシューマー」となります。そうなれば、インターネット上での双方向メディア、ピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)のファイル共有・情報の自主管理の発展が思い描いたシナリオよりもはるかに大きな変革をもたらすことは間違いありません。
広がりつつある分散型電源は、複雑なソフトウェアや高度なデジタル技術、インターネットによって相互に接続し、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を形作っていきます。次世代高機能ケータイであるスマートフォンがその端末となるでしょう。さらに、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を活用すれば、省エネによる発電(ネガワット)と太陽光発電による創エネ(ポジワット)を、トータルとして個人・法人による発電ととらえることができます。この多様な主体による発電をエネルギーマネージメントでつなげ、日本全体でヴァーチャル発電所として「スマート国民総発電所」を構築すれば、原子力発電所の数基分~十数基に相当する発電エネルギーを得ることができます。
さらに、再生可能エネルギーは地球環境にやさしいエコの価値を持っていますので、その売電収入やCO2削減分に対応したエコの価値エコの価値をエコポイントやエコマネーという媒介を使って取引するようにすれば、「You Energy ! 誰もがエネルギーを作れる」から「誰もが新ビジネスを創造できる」というパラダイムが生まれ、おびただしいイノベーションの創造が「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムへと発展します。それは、人々が課題解決に向けて新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという、いままでとは逆向きのイノベーション・プロセスです。
そこで強みを発揮するのは一人ひとりのゼロからの創造力です。その主体は市民で、その場は地域です。今日本の課題となっている「地域主権」社会の構築や「新しい公共」の創造にもつながります。このパラダイムの出現が「スマートグリッド革命」が革命たるゆえんです。

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