エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

オールIPネットワークを推進するシスコシステムズ

2011-10-26 06:46:39 | Weblog
09年5月シスコシステムズは、『Cisco Smart Grid Solutions』を発表し、スマートグリッド市場におけるリーダーシップをとるための方針を表明しました。
シスコの戦略は、①送電・配電の自動化(Transmission & Distribution Automation)、②スマートグリッドのセキュリティ確保(Smart Grid Security)、③スマートメーター・最終端末通信(Smart Meter & Endpoint Communication)、④事業所・家庭エネルギーマネージメント(Business & Home Energy Management)の4つで構成されていますが、簡単に言えば、送電線網全体のコミュニケーションを実現するIPインフラの構築支援と言えます。すなわち、家屋に設置する高機能なメーター、伝送用ルーティング機器、そして送電線網自体の管理や監視を支えるソフトウェアの展開をIPベースで行おうというものです。このSmart Grid Solutions での戦略は、09年1月に発表されたCisco のネットワークの電力管理プログラム『Cisco EnergyWise』を発展させたものです。 
このためシスコは、ドイツの電力会社Yello Stormと共同で、70の家庭とオフィスビルを対象にしたオールIP実証実験を行っています。これにより、オフピークの最適制御、10%以上のエネルギー消費の削減などを期待しています。エネルギー分野におけるオールIPネットワークとしては、初めての試みとして注目されます。
電力会社との関係では、フロリダ電力会社の2億ドルの事業規模の「エネジースマート・マイアミ」(Energy Smart Miami)において、GEがスマートメーターを、シルバー・スプリング・ネットワークが無線通信のサービスを、シスコがネットワーキングを提供しています。これはシスコにとってはじめてのスマートグリッ関連プロジェクトです。さらにシスコは、より大きなスマートグリッ関連プロジェクトとしてデュークエネジーとのプロジェクトに取り組んでいます。これは10億ドルかけてデュークエネジーがスマートメーター、AMIを整備するものです。デュークエネジーは、過去5年にプラグインハイブリッド車とマイクログリッドなどの実証事業に取り組んできていますが、AMIのパートナー選定には慎重な姿勢をとってきました。そのデュークエネジーがシスコをパートナーに選定したことは、他の電力会社もその方向に動く可能性が大きいと専門家は分析しています。シスコは、この分野において、現在AMI事業のリーダー企業であるシルバー・スプリング・ネットワークと競争していくことになります。
09年9月17日、シスコはそのスマートグリッド基本戦略の体系化のメニューを公表しました。それによると、次の4本柱となっています。
① Cisco Smart Grid Ecosystemの形成:IPベースの通信方式の標準化とその拡大を図るため、コンソーシアムを結成。第1次としてArcadian Networks,Capgemini,Infosys,ITron,Ladis+Gyr,Secure Logix,Verizon,Wipro,Worldwide Technologiesの各社を結集しています。
② Cisco Smart Grid Techical Advisory Board:世界中の革新的な電力会社やエネルギー顧客を集め、顧客からCisco が提供すべき製品やサービスに対するフィードバックを受ける。
③ セキュリティサービスやソリューションの提供:新しいセキュリティ関係のサービスやソリューション群を提供します。
④ 互換性とIPベースの通信標識の標準化:シスコの最優先課題です。このためにZigbee Alliance参加し、Zigbee Smart Energy Profile 20の技術と製品を市場に供給しています。
アメリカの専門家の間では、シスコの参入は、「MicrosoftのWindows95やAppleのiPhone登場に相当するものだ」とか、「情報通信のWeb2.0や Telecom 2.0ように、次世代巨大インフラ(next vast infrastracture)であるスマートグリッドや新たな電力経済(electricity economy)の扉を開くものだ」という評価がなされています。