エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

注目すべき連邦投資税控除制度(ITC)と固定価格買取り制

2011-10-05 06:57:51 | Weblog
スマートグリッドの市場拡大のための米政府の制度設計として次に注目されるのは、再生可能エネルギー導入を進めるためにとられている税制上の措置にPTC(Production Tax Credit)です。これは、再生可能エネルギー設備の最初の10年間の稼動に対して1キロワットアワー当たり1.8セント(インフレ率により毎年調整される)の税金が控除されるというものです。
さらに、05年連邦エネルギー政策法(Federal Energy Policy Act of 2005)によって、住宅部門やビジネス部門における再生可能エネルギー導入のための投資に対し30%の税額控除を認めるという画期的な税制上の措置であるITC (Investment Tax Credit)が導入されました。税額控除(tax credit)は支払うべき税額から控除額を差し引くもので、今回のcreditは事業費の30%のためこの30%分の税金がまるまる安くなるもので、税率を掛ける前に控除額を差し引くdeductionよりも減税額が大きくなります。
 PTCとITCは選択制です。また、PTCにしろITCにしろ、税額控除制度は企業収益が黒字の場合に効果を発揮し景気動向に影響されるものであるため、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電に限り、投資される資産価値の30%に相当する助成金を交付する制度もスタートしています。
 ITCに関しては、当初の有効期限が08年末となっており期限切れが強く懸念されましたが、08年10月に太陽光発電に関しては8年間、風力発電に関しては2年延長されました。また、電力会社にも始めて適用され、メガソーラーの導入に対しても優遇措置がとられることになりました。これにより設置コストが30%も軽減されるので、電力会社の投資判断に決定的な影響を与えます。
 さらに、10年1月8日オバマ大統領は、スマートグリッド、ビルに省エネ・エネルギーマネージメント、太陽光、風力関連の製造業への投資に対する最大23億ドルのITCを通じて1万7000人、関連する民間投資54億ドルで4万1000人、計5万8000人の雇用を創出する考えを明らかにしました。対象事業は14年までに施設建設に着手することが求められていますが、対象事業の3割は10年中に着手予定です。控除額の合計は23億ドル、事業者側の負担と合わせると77億ドル規模の事業への投資となります。
 今回の助成対象事業は、風力、太陽光・太陽熱発電関連装置、変圧器やスマートメーターなどのスマートグリッド関連装置、省エネ型の照明や空調機器などの省エネ関連装置、高効率なタービンなどの産業用装置、電気自動車やバッテリ関連装置、原子力関連装置、二酸化炭素回収・貯留(CCS)関連装置など、極めて広範にわたる装置の製造施設の建設です。
 さらに、アメリカの動向として注目されるのは、太陽光発電等再生可能エネルギーに対する支援措置が設備投資に対する支援から、実際に発電されたエネルギーに対する支援措置に徐々に移行してきていることです。後者のインセンティブの中で注目を集めているのが固定価格買取り制度です。アメリカでは連邦レベルではなく州や地方自治体単位で個別に進められており、従来はテキサス州などでRPS(Renewables Portfolio Standard:電気事業者に対して、その販売電力量に応じた一定割合以上の再生可能エネルギーから発電される電気の利用を義務付け、その普及を図るもの。電気事業者は義務を履行するため、再生可能エネルギーによるを発電するか、他から購入することになります)が導入されてきていますが、近年カリフォルニア州が初めて導入したのを皮切りに、ミシガン州、イリノイ州、ミネソタ州、ロードアイランド州、ヴァーモント州およびハワイ州の7州が再生可能エネルギーの固定価格買取り制を導入しています。また、フロリダ州、メイン州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オレゴン州およびウィスコンシン州が導入を検討中です。