ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

私のちいさなお葬式

2020年11月09日 | 映画みたで

監督 ウラジミール・コット
出演 マリーナ・レヨーロワ、アリーサ・フレインドリフ、エヴゲーニー・ミローノフ

 ロシア映画である。ロシアの小さな村に住む元教師のおばあさん。心臓に病を持っていて、いつ死んでもおかしくないといわれる。
 彼女には息子が一人いるが、彼は有能なビジネスマンらしく多忙をきわめ、めったに会いに来ない。忙しい息子の手を取らせたくないと、自分で自分の葬式の算段を始める。死亡診断書、埋葬許可から棺桶も買って、葬式の料理の準備まで行う。万事、怠りなし。これでいつ死んでもいい。
 小さな村の学校の先生だったから、あちこちに元教え子がいる。検視官の元教え子にむりやり頼みこんで死んだことにしてもらう。また、釣り好きな元教え子は、いらんゆうのにむりやり釣った鯉をくれる。この鯉がこの映画で重要な脇役を務める。そういえば、冒頭に出てきておばあさんの心臓の診断をした医者も元教え子。
 日本ではどうか知らないが、ロシアでは本人が生きてても死亡診断書があれば埋葬許可が出るらしい。私は死にましたから、私の埋葬許可を下さいと死んだ本人が役所に手続きにやってくる。まるで落語の「そこつ長屋」みたいな話だ。
 主役がおばあさんであるからして、魅力的なおばあさんが出てくる。終活するおばあさんもそうだが、隣のおばあさんも面白い。口は悪いが気立ては良さそう。このばあさん二人のやりとりがたいへんに面白い。
 年寄りが死んでいこうという映画ではあるが、決して暗くはなく、みょうに明るい映画であった。
 この映画のテーマ音楽のように使われている曲はザ・ピーナツの「鯉のバカンス」だ。