ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

愛は静けさの中

2024年01月31日 | 映画みたで

監督 ランダ・ヘインズ
出演 ウィリアム・ハート、マーリー・マトリン、パイパー・ローリイ

 教師が主人公の映画で定番のオープニングである。ジェームズが学校に面接にやってくる。聾唖学校である。いろんな経験をしてきたジャームズは採用される。いさささか型破りだが良い先生だ。耳の聞こえない生徒たちにいろんなことを教える。大きな音でレコードをかけて校長に叱られたりするが、生徒たちにはしたわれる。
 若い女性がトイレ掃除をしている。この学校の掃除人だ。掃除のおばちゃんというのは気の毒。きれいな掃除のねえちゃん。サラという彼女も耳が聞こえない。5才のころからこの学校にいる元生徒で卒業後も学校に残り掃除のねえちゃんをしている。頭の良い子だったが学校に残ってトイレ掃除をしている。
 彼女に興味を持ったジェームズは、彼女に言葉を教えようとするが、彼女は心を閉ざし素直にならない。読唇術も覚えようとしない。
 彼女は聾者ゆえにかってたえがたい経験をした。それゆえ殻に閉じこもって社会に出ず学校で掃除人をしている。
 あとはジェームスがサラの心をいかに開かせるか。実に素直な純愛ドラマである。サラ役のマトリンはろう者の女優で、この映画の中で一言もセリフをいわない。手話と表情とだけで感情を表現し、セリフはなくても、心を閉じた若い女性を見事に演じていた、主演女優賞も納得のいく演技であった。

桂文三さんの「満腹全席」に行ってきました。

2024年01月30日 | 上方落語楽しんだで
 お寒うおす。昨日は会社でのお仕事を終わってから、大阪は天満までいっておりました。天満天神繁昌亭の夜席です。私の落語観賞の本拠地は神戸新開地喜楽館ですが、繁昌亭は準本拠地といったところでしょうか。
 夕食に天ぷらを食べて繁昌亭に入ります。桂文三さんの「満腹全席」です。文三さんとゲストの噺家さんが一人です。昨日は桂雀喜さんです。
 まず一席め。文三さんです。この企画ではいつも、あまり他ではやらない艶噺をやらはるそうです。テレビでは絶対にできない、昼席でもはばかられるような噺をしますということです。昼席はあまり落語になじみのないお客も来るので、あまりエロが濃いのはしないそうです。それに比べて夜席は落語マニアが多いのでリミッターを外した噺ができます。
 マクラで軽い艶噺でジャブ。
「昔の長屋は隣近所で貸し借りをよくしたそうです」
「ヤモメが引っ越してきました。いい男で、礼儀をわきまえた男です」
「米1合貸したら、2合返してくれた」
「醤油1升貸したら、2升返してくれた」
「掃除もしてないし洗濯物がたまっているので、娘を貸したら、2人にして返してくれた」
 で、本編の落語は「近所付き合い」昔、6代目笑福亭松鶴師匠がときどきやってた噺で、いまはあまり高座にかけられません。エロで下ネタ噺です。私(=雫石)も聞くのは初めてです。
 植木屋のタケさんが木の上で仕事してると、下の離れでおっさんがお手かけさんとねにょねにょやってる。最初はぬくい造りや口移し酒やったけど、そのうちお手かけさんがおっさんのまたぐらに頭突っ込んで、ナニを口でナニしよる。それ見たタケさんのアソコが活性化。タケさんしんぼうたまらんようになって家に帰って「おい、カカ布団ひけ」「こんな昼間っから子供帰って来るやないの」「ワシのこれどなしてくれんね」「お金やるから松島か飛田いっといで」
「タケさんどこ行くの」「お、お梅さん。ちょっと女郎買いに」「そんなとこ行かんでもワテがしてあげる」「あんた早よかった。松島は」「お梅さんにしてもろた」
「お金は」「お梅さんにやった」「アホやなあ。ワテはいつも松さんにタダでしてんのに」
 仲入りまえはゲストの桂雀喜さん。「ヨーデル食べ放題」でおおなじみの雀三郎師匠のお弟子さんです。雀三郎師匠、けっこう厳しいおっしょはんだそうです。「アイヤー行路」100才の師匠と80才の弟子が旅興業に行きます。老老師弟のボケ具合がおかしいです。
 仲入り後は文三さんと雀喜さんの対談。ほぼ同じようなキャリアで雀喜さんの方が2才年下ですって。二人は長いつきあいで趣味嗜好がよく似てるそうで、二人とも離婚経験者だそうです。雀喜さんちかじか引っ越すそうで、整理の手伝いに文三さんが来たそうですが、本はほとんどダブってそうです。「妖怪人間ベム」のDVDをもらったんですって。私(=雫石)も同じような経験をしました。阪神大震災のとき私の本棚がぐちゃぐちゃになりました。SFのお友だちに整理を手伝ってもらったのですが、所有本の多くはダブってました。
 さてトリは文三さんです。「くっしゃみ講釈」です。文三さん、冬の噺をしましょうとはじめられたのです。この噺よく聞きますが季節を意識したことはないです。なるほど「くっしゃみ講釈」は冬の噺なんですね。暖房用の火鉢を借りて、それでとんがらしの粉をくすべて講釈師にくっしゃみさす噺ですが、冬でないと火鉢ありませんからね。この噺は成り立ちません。
 実は先日、喜楽館で桂雀々さんの「くっしゃみ講釈」を聞きましたが、かなりの迫力でした。この時の文三の「くっしゃみ講釈」も雀々さんに負けず劣らずの迫力でした。
 文三さんと雀喜さんの熱演で心は暖かくなりましたが、繁昌亭の外に出ると寒いです。そのへんでラーメンでも食べようかと思いましたが、天ぷらを夕食に食べたばかりなんで、ラーメンはがまんしました。

終着駅

2024年01月25日 | 作品を書いたで
 顧客を交えた会議が午後六時半までかかった。その後近くの料亭で接待。そのあとバーで二次会。ホテルに客を送っていく。
 ホテルを出たのは十一時をすぎてからだ。
 最終電車は十一時十五分。走れば間に合う。全力疾走して改札を駆け抜け、エスカレーターを駆け上がったとき、電車が滑り込んできた。十一時四十五分に自宅最寄り駅に着く。自宅は駅から十五分。急いで帰れば「今日」中に家に帰れるはずだった。

 最終電車にはそこそこ乗客はいた。
 座席の中ほどに座った。つかれた。うとうとする。三駅分。三十分は眠れる。ドスン。隣りに勢いよく座った者がいた。ウトウトしかけたのがハッと目が覚めた。
 中年の男が座っていた。静かに座れと文句をいってやろうと思ったが、ケンカになったらイヤだから黙っていた。
 ハー。大きなため息をして肩を落とした。なんだか疲れているようだ。同年配の男だ。スーツにネクタイ。営業職だろうか。ご同業と見た。
 スマホを出して、しばらくいじっていたが、すぐポケットにしまった.スマホを触る気力もないみたいだ。こくりこくりと居眠りを始めた。そのうちぐっすりと熟睡した。盛大に白河夜船だ。
 よほど疲れていたのだろう。がっくりと前に首を折り、左右にゆれだした。
 帰りの電車だ。きょう一日をふり返った。午前中は部下と二人で得意先を訪問。注文を受けたモノの納品日を部下が読み違い、相手先の希望納期と大きな違いが出た。謝罪と仕入れ先と納期短縮交渉を行うことを約束する。
 そこを辞去し、二人でファミレスで昼食。その足で隣県の仕入れ先まで移動。相手の工場長と談判。なんとか納期を一週間短縮してもらう。そのムネを部下に連絡させる。得意先は納得したようだ。
 会社に帰ったのは午後四時。四時半には顧客が来社。その顧客を交えて会議。会議はえんえんと続いた。途中退席し、総務の女子社員に顧客宿泊用のホテルの予約を指示。接待用料亭は予約ずみだ。
 会議は六時半に終わった。そのあと料亭で接待。二次会はバーでスコッチのシングルモルト。客をホテルに送っていって、やっと解放された。
  そして、私は、いま、この最終電車に乗っているというわけだ。
 そういうわけで私もたいへんに疲れている。したたか酔ってもいる。ぐるり電車の中をながめる。全員が座っている。本を読んでいる者はいない。数人がスマホをいじっている。ほとんどが座席にぐったりと腰かけて目を閉じている。みんな疲れているんだな。
 隣りに座った男は、居眠りというレベルではない。ぐっすりと熟睡している。
 私の肩に頭をもたれかけてきた。押し返そうと思ったがやめた。ずいぶん疲れているようだ。私の肩を自宅の枕と思って眠っているのだろう。平安な顔をして安心しきって目を閉じている。
お疲れのご様子だな。ご同輩。そういいたくなった。この人も私と同じ、仕事で疲れているんだ。
 おこすのが気の毒になってきた。このままにしておこう。私の肩でよければ疲れを癒やすのに使ってもらっていい。
 一駅めに電車は着いた。この人はここで降りるのだろうか。もしそうなら起こしてやるのが親切だ。
 起こしてやるべきか。私の肩でじつに気持ちよさそうに熟睡している。起こすのは気の毒だ。この人がどの駅で降りるのか私には判らない。ねすごしたとしても私の責任ではないだろう。
 疲れている時の電車での居眠りほど快楽なモノはない。できればこのままずっと、ここでねこんでいたい。環状線でないかぎり電車は必ず止まる。そこではイヤでも電車を降りなくてはならない。
 一駅目、二駅目も過ぎた。次は私が降りる駅だ。
 となりの頭はまだ私の肩にある。降りるためには起こさなくてはならない。
 線路ばたのパチンコ屋の看板が見えてきた。今はネオンを消しているが、目立つ看板だから夜目にもよく判る。この看板を目安にしていて、二駅目から私の降りる駅のちょうど中間地点だ。あと数分で電車は到着する。いつもは読んでいる本にしおりを挟んで閉じてバックにしまう。
 いまは本は読んでいない。読む気力はない。私も疲れているのだ。尻を座席からはなしたくない。できれば私の身体全体が座席に吸いこまれたい。
 電車は進む。ほどなく私が降りるべき駅だ。さて、どうする。 私が降りるにはお隣さんを起こさなければならない。気の毒だ。それに私自身も可能ならば、このままここに座っていたい。
 どうする。車掌がほどなく私が降りる駅に到着するアナウンスをした。電車が減速しはじめた。
 ええい。こいつが起きるまで肩貸してやろう。どこで降りるのか知らないが、こうなりゃ最後までつきあってやるぞ。
 はっと気がついた。私もねこんでしまったようだ。まだ肩に重みがある。
 ここはどこだ。見知らぬ駅だ。終着駅か。この路線の電車は毎日乗っているが、終着駅まで来たことはない。いや、違う。一度だけ来たことがあった。今から数年前の冬だ。忘年会で飲み過ぎた。ぐでんぐでんになって、電車の中で酔いつぶれてしまった。ハッと気がついたら終点だった。酔眼朦朧とした目で見た終着駅の風景をうっすら覚えている。
 この駅はあの時の駅とは少し違うような気がする。いまは、疲れているが酔ってはいない。アルコールは入っているが酔ってはいない。しらふの目で駅を見る。
 隣りの男も目覚めたようだ。
「ご迷惑をかけたようですね。すみませんです」
「いえ。あなたはどこで降りるのだったのですか」
「芦山です」
 私が降りる駅だ。
「どうも、降りそこなったようですね。おたがい」
 電車の中を見る。この車両に六人乗っている。みんな乗り過ごしたようだ。この六人、私、隣の男。十六個の目がキョトキョトしている。
「ここはどこだ」
「終点じゃないのか」
「この電車の終点は梅沢じゃないのか。俺は梅沢は用事でよく来るがこんな駅じゃないぞ」
 そういえばおかしい。終着まで乗っている客がいれば車掌が降ろしに来るがはずが、来ない。駅のホームには駅員が一人もいない。
「おい、あれ」
 隣の男が指差した。駅名表示盤が見える。
「なんだあれは」

「昨夜深夜。 十二時三分。G電鉄梅沢行き最終電車が脱線転覆。乗客八名と乗員二名全員が死亡しました」




波紋

2024年01月23日 | 映画みたで

監督 荻上直子
出演 筒井真理子、光石研、磯村勇斗、キムラ緑子、柄本明、津田絵理奈、木野花

 荻上監督ほど、荻上直子のこれ1本を選ぶのが難しい映画監督はない。荻上映画は長編デビュー作の「バーバー吉野」以降、「恋は五・七・五」以外全部観てきたが、どの作品も捨てがたい。
 前作「川っぺりムコリッタ」もみょーな映画であった。幸せではないが不幸でもないけったいな人たちが出てきた。
 今回はみょーなところもあるが、摩訶不思議な側面はなかった。主人公は中年の主婦だがこの主人公のおかれた身の上の気の毒さは理解できる。
 須藤依子の夫は10年前に失踪した。大きな地震があって原発の放射能漏れが恐れられていたころ、夫は妻と子を捨てて、なんの前ぶれもなく消えた。
 それから10年。庭は夫の趣味の派手な植物がいっぱいの庭から、枯山水の庭に変わっている。依子はていねいに庭に波紋を描く。
 夫は癌にかかったという。保険適用外の薬のお金を出してくれという。夫が失踪後も義父を介護し看取った。息子は成人して九州で働いている。
 依子は夫失踪後、「緑命会」という新興宗教に入信して「緑命水」なるサギまがいの水に頼って生きている。息子も突然6歳年上で障碍者の彼女を連れて帰宅。彼女は妊娠しているという。
 と、いうこと。さあ、依子はどうする。笑って踊らなしゃあないやんか。ともかく主演の筒井真理子が、泣いて、怒って、困って、狂って、泳いで、歌って、踊って、笑っての大熱演。荻上直子の新境地であったが、独特の色づかいは今回も楽しめた。極彩色の庭から白と黒だけの枯山水の庭へ。ラストは夫が死に出棺のあと、雨の中をずぶぬれになりながら依子がフラメンコを踊り狂う。赤い傘をさし、白い砂の上で黒い喪服。喪服の裏地は真紅。大笑いの後依子は踊る。お~れ!

処刑戦士

2024年01月19日 | 本を読んだで

 大藪春彦     徳間書店

 ワシは車大好き人間であるが、トヨタの車は大嫌い。生まれてから一度もトヨタの車を運転したことがない。マツダとホンダがマイカーだった。ワシが管理責任者の会社のフォークリフトももちろんトヨタではなく三菱ロジネクストだ。
ウチの電気製品にはパナソニックはない。テレビはソニー、冷蔵庫は三菱、掃除機はダイソンだ。なんでか。ワシはなんでも1番とかトップとかいうメーカーが大嫌いなんだ。理由はない。ともかく嫌いなんだ。
 それからワシが嫌いなもん。えらそうなことをゆうて人に説教をたれるオジン。なんとかの首領とかドンとかいわれてるヤツも大嫌い。だからこの小説はワシの好みにドンピシャ。
 PソニックはむかしはM下電器といってた。それの創業者M下Kの助は経営の神様といわれ尊敬を集め(ワシは尊敬してない)PH×なんいう説教雑誌を出したりしてM下政経塾なんていう政治家育成機関をつくったりした。
 日本のドンといわれたS川R一。日本S舶振興会などいう競艇の元締めでしこたま金を持っていて。「人類は一家世界は兄弟」とか「戸締り用心火の用心」などといいながら「親に孝行」と説教をたれていた。
 この小説の主人公は4人。かって自衛隊のレンジャー部隊の教官だった連中。トラブルがあって自衛隊を退職。その卓越した戦闘技術をいかして海外で傭兵をしていたが、日本に帰ってきて、巨悪からため込んだ悪銭を取る仕事をしている。
 船舶事業発展会の竹山。全日本スピードボート協会からのあがりをため込んで莫大な金を持っている。この竹山、日本のドンといわれ与党の有力政治家を思うままに動かし時の首相さえ逆らえない。この竹山の屋敷に処刑戦士4人が乱入。えらそうなことをいってる竹山をけちょんけちょんに痛めつける。
 マンモス企業杉山電工の創業者杉山徳一郎。経営の神様といわれ、報産報国と道徳の普及をとなえている。が、杉山の本性はすけべ。神戸の暴力団山野組を使って女子大生を拉致監禁夜な夜な淫行にふけっている。いたずらが過ぎて女子大生を死なせたり妊娠させたら山野組に処理してもらう。こんな杉山の悪行がなぜばれないか。杉山電工は日本最大のマスコミ機関の広告主だから。
 その杉山の屋敷も4人が襲う。杉山もギタギタに痛めつけて大金を奪う。あと患者を食い物にしている悪徳病院T州会病院の理事長も4人が襲う。
 こうしてえらそうなことをゆうてるヤツを順々に懲らしめてため込んだ大金を奪う。まさに胸がすくのである。


大江戸ミッション・インポッシブル 顔役を消せ

2024年01月17日 | 本を読んだで

 山田正紀  講談社

 山田正紀は現代の日本の最高のエンターテインメント作家といっていいだろう。小説で楽しませるワザは人間国宝級の職人仕事を思わせる。出発はSFだが、ミステリー、冒険小説、ホラー、時代劇、いろんなエンタメ分野の小説で読者のご機嫌をうかがってくれる。
 その山田正紀が書いた時代劇である。めっぽう面白いのである。主人公は江戸の南町奉行所の同心。牢屋番という最底辺の業務を行う川瀬若菜。若くいささか頼りない。でも、それは表の顔で、裏の顔を持っていた。と、いうテレビの「必殺シリーズ」みたいな設定だが、そこは山田正紀、そんな単純なもんではない。
 江戸の闇の組織泥棒寄合は二つの組織に別れていて、共に天を抱かぬ間。川瀬はその一方の「川衆」の棟梁。もう一方の「陸衆」と暗闘をくり広げる。
七つの顔を持つ女「七化けのおこう」スゴ腕の殺し屋「かま」一人で三人、三人で一人の吉原の顔役「灰かぐらの茂平」足で刃物を使う殺人太鼓持ち「乱亭七八」川瀬の上司で捕縄術の達人「椹木采女」絶世の美女花魁「姫雪太夫」と、いったひとくせもふたくせもある連中がくんずほぐれつの死闘を繰り広げる。

紙魚の手帖 GENESiS 2023 AUGUST voi.12

2024年01月16日 | 本を読んだで
2023 AUGUST vol.12 東京創元社

夏のSF特集
第14回創元SF短編賞 選評 宮澤伊織・小浜徹也
受賞作 竜と沈黙する銀河  阿部登龍

くらりvsメカくらり     青崎有吾
記憶人シィーの最後の記憶  柞刈湯葉
ローラのオリジナル     円城塔
扉人            小田雅久仁
手の中に花なんて      笹原千波
この場所の名前を      高山羽根子
登録者数完全破壊してみた  宮澤伊織
冬にあらがう        宮西建礼
英語をください       アイ・ジアン 市田泉訳

 上記のように10篇読み切り短編が載って1540円。SFマガジンよりコスパは良い。
 まず、受賞作の「竜と沈黙する銀河」未来、食料問題は完全に解決。家畜は食用ではなくぜんぶ愛玩動物。競馬もなくなる。ここは竜が実在する世界。竜でレースをする。設定とアイデアは魅力的だが、後半息切れ。竜頭蛇尾な受賞作だ。
 あと、印象にのこった作品を上げる。
「くらりvsメカくらり」実在の出版社楽屋ネタおふざけ。あと、「扉人」記憶人「シィーの最後の記憶」「冬にあらがう」などは印象に残った。 

ミルコのひかり

2024年01月15日 | 映画みたで

監督 クリスティアーノ・ボルトーネ
出演 ルカ・カプリオッティ、パオロ・サッサネッリ

 主人公ミルコ少年は映画好きな少年。決して裕福ではないが愛情豊かな両親に育てられている。そのミルコを大きな不幸が襲う。銃が暴発して両目を傷つける。うっすらと光は感じるがモノは見えない。
 盲学校に転校する。校長は厳格だが、担任のジュリオ先生は優しい。視覚を失ったミルコにジュリオ先生はいう。「人間の感覚は五つあるんだ」
 ミルコは残された感覚聴覚を生かす。テープレコーダーにいろんな音を録音していく。その音を編集してドラマを創る。音にも色がある。雨の音の色風の色。
学芸会が近い。ミルコは音のドラマを創ってみんなに聞かせようと、制作に励む。同級生や管理人の娘も協力する。反対する校長をジュリオ先生が説得してミルコの音のドラマは公開される。
 一つのことに熱心に取り組めば必ず理解者や協力者があらわれて、ことはなる。最後は大きな感動とともに映画は終わる。
 ミルコとそのガールフレンド、友だちたち、目が見えなくてもミルコはモノを表現できる。素直に感動できる映画だ。

パリタクシー

2024年01月11日 | 映画みたで

監督 クリスチャン・カリオン
出演 リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン

 タクシーの運転手と客の老婆の二人の映画である。免停寸前のタクシー運転手シャルルはパリの向こう側へ客を乗せる仕事を受けた。客は92才のおばあさん。マドレーヌは家を売って老人施設に入るため、シャルルのタクシーに乗る。おしゃべりなおばあさんと不愛想な運転手。ミスマッチなとりあわせの運転手と客だが、シャルルはおばあさんのおしゃべりを聞く。マドレーヌはあちこちと寄り道をする。けっこう長いドライブになった。 そのあいだ、マドレーヌは自分の身の上話をする。それは彼女が過酷な人生だったことがシャルルに判るモノだった。
 予定時間を大幅に遅れて施設に着いた。わずか数時間の出会いであったが、二人の間には深い友愛が生まれていた。
 後日、家族ととも施設にマドレーヌに面会にいったシャルル。悲しいことに彼女は亡くなっていた。そして、驚くような遺言がシャルルに告げられた。
 タクシーの運転手と客。今までなんの接触も関りも共通点もない二人。それでも理解しあえば、ここまで信頼しあうようになれる。人間を大きく信じられる映画だ。人間って捨てたものではない。

すずめの戸締り

2024年01月09日 | 映画みたで

監督 新海誠
出演(声) 原菜乃華、村松北斗、深津絵里、伊藤紗莉、神木隆之介

 先日の能登地震は、ここ神戸でも震度3であったが、怖かった。小生は29年前に震度7を経験しているが、震度3でも怖い。地震がどういう禍をもたらすかを身をもって知っているからだ。そういう時期にこんな映画を観てしまった。
 日本列島の地下には巨大なミミズいる。(なまずだと思うけど)そのミミズは要石でおさえられている。その要石が外れると地震が起こる。
 主人公の少女すずめは「閉じ師」そうたと知り合い好意を抱く。すずめの母のかたみの3本脚の椅子になってしまった、そうたに替わって、要石を確保するため、各地にある扉を閉めて回る。すずめの現住所の九州を出て、神戸、東京、そして生まれ故郷の岩手県宮古市に向かう。すずめはこの地で2011年に母を亡くしている。すずめが行くところ、かって大きな地震があった所だ。
 よくできたアニメだが、能登の地震が起こったばっかりで、阪神大震災の被災者として、大きな違和感を感じた。すずめが戸締りすれば地震を防げるのなら苦労はしない。なぜ神戸や能登で地震が起きる前に戸締りしなかったのだ。





2023年に観た映画ベスト5

2024年01月05日 | 映画みたで
土曜日には映画を観てる。たいていはTSUTAY DISCASで借りるか、BSシネマで放映されてたのを録画して観ている。でもたまには映画館で観ることもある。昨年は比較的よく映画館に出かけた。小生が行く映画館は地元神戸は三宮のOSシネマズミント神戸だが。ここで珍しい経験をした。映画は非日常を楽しむという一面があるが、日常の方が映画より非日常という経験をした。
 11月23日に「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」を観たのだが、映画館を出たら、うんと非日常の世界があった。この日、阪神タイガースの「アレのアレ」のパレードがあった。あの阪神タイガースがかようなことになるのは、非日常の最たるものだ。
 さて、昨年に観た映画のベスト5は以下のとおり。順不同。

ゴジラ-1.0
 あまたあるゴジラ映画で最高は「ゴジラ」1作目か「シン・ゴジラ」かと思っていたが、これで、さらに迷う。「シン・ゴジラ」がゴジラVS官・組織だったのに対して「ゴジラ-1.0」はゴジラVS民・個人だ。

翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて
 ごっついおもろかったわ。わしら関西人の笑いツボをこそばす、あるある小ネタ満載や。

アバター・ウェイ・オブ・ウォーター
 映画は絵だ。圧倒的な映像にひれふせ。

川っぺりムコリッタ
 少しおかしく少しふしぎな荻上ワールドが満喫できる。

PLAN75
 もう少したったら、これが現実になるだろう。小生は、あなたはどうする?

2023年に読んだ本ベスト5

2024年01月03日 | 本を読んだで
 小生は本読みである。常に本を持っている。本を持たずに外出することは、まず、ない。外出すると、すきまな時間がかなりある。電車の待ち時間。電車に乗っている時間。医者の待合室。外食したときの料理が出てくるまでの時間。去年、ポルトガル料理を食べに行ったことがある。ポルトガルの時間の流れは日本とは違うようで。コース料理で前菜からデザートまで1時間以上かかった。こんな時でも料理を待っている間は本を読めば時間をつぶされるのだ。イラチの小生にとって本は必須品なのだ。
 さて、昨年2023年に読んだ本ベスト5は以下のとおり。順不同。

お家さん
 かって神戸に日本一の鈴木商店という巨大商社があった。(登記上は今も存在している)その代表者鈴木よねと稀代の大番頭金子直吉。鈴木商店をめぐる波乱万丈の大河小説。

水車小屋のネネ
 理佐と律の姉妹はいい人たちと1羽のしゃべる鳥に見守られて人生を過ごす。40年のここちよい時が流れる。

A-10奪還チーム出動せよ
 出色のカーアクション小説。ドイツが東西のころ。500馬力のばけもんフォードで東ドイツ領内を逃げ回る。追いかけるのはソ連軍と東ドイツの警察。

風神雷神 Juppitr,Aeolus
伝奇冒険アート小説。半村良の伝奇、田中光二の冒険。稲見一良のロマン。全部のせ。

ソース焼きそばの謎
 ソース焼きそばから世界が見えるのだ。ソース焼きそばのことしか書いていない本。だそれでもめっぽうおもしろいのだ。大労作。