ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

なめらかな世界と、その敵

2020年11月01日 | 本を読んだで

 伴名練          早川書房

 作者は京大SF研出身の若い作家。大学のSF研出身ということは、首までどっぷりとファンダムの沼に漬かって、そこから発芽して花を咲かせた蓮のような作家といえる。だから腰巻に「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」とのコピーがあるが、世界中のSF作家を全員インタビューして確かめたのかと、このコピーを書いたヤツに聞きたくなるが、伴名がSFが好きなのが、よくわかる作家であることは理解できる短編集といえる。
 小生もSF好きになって久しい。半世紀以上SF好きをやっている。で、SFとはなんぞやと考えてみるに、SFはSFでしか表現できないアレコレを記述した文芸作品であると小生は思う。SFは文芸なのである。SFのアニメや映画などの映像、漫画や音楽などもあるが、あれらはあくまでSFのサブジャンルである。SFの本筋は文芸、文字で読んで摂取するのがSFだ。
 と、いう意味かから考えると本書に掲載されている作品はいずれも、文字で読んで面白さが味わえる作品ばかり。だからこそ、ハヤカワが頼んだSF好きどもが決める「SFが読みたい2020年度版」で、本書が国内1位になったことは納得がいく。