ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

異動辞令は音楽隊!

2023年11月27日 | 映画みたで

監督 内田英治
出演 阿部寛、清野菜名、磯村勇斗、倍賞美津子、光石研、見上愛

 組織のはぐれ者、おちこぼれ、一匹狼、なんて主人公が、集団に入る。そこはおちこぼれの集団。やる気ない、かったるい、覇気ないダメ人間の集まり。主人公もやる気ない。ところが紆余曲折があってバラバラだったチームがやる気を出して、最後は成果を上げてカタルシスとともに映画は終わる。
 そういうパターンは娯楽映画の定番だろう。「スイングガールズ」「特攻大作戦」などなど。この映画もそれの典型である。
 成瀬警部補は刑事を30年もやっている大ベテラン。この成瀬警部補は捜査に熱心すぎて暴走する。違法捜査まがい、部下後輩にパワハラ。横暴乱暴。ダーティ・ハリーじゃあるまいが阿部寛にクリント・イーストウッドのまねはできない。あまりパワハラがひどいので県警上層部に投書があった。で、成瀬は捜査課をはずさせ音楽隊に異動。音楽隊なんかにまわす予算がないから、音楽隊の練習場は町はずれの教会で間借り。メンバーは交通課や警ら係との兼務。成瀬も広報との兼務。まったくやる気がない。演奏も下手。県警本部長は警察に音楽はいらんという。県知事はこんな音楽隊は税金のムダという。八方ふさがりどうしようもない。
 とはいいつつも成瀬もだんだん本気になって音楽に取り組み、人間的に成長してくる。人にあやまれるようになったりして。
 で、最後は見事な演奏を披露するのはお約束。定番映画だが、少しは外してもいいと思うが。でも、ま、及第点をやってもいい。「スイングガールズ」には負けてるけど。



翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて

2023年11月24日 | 映画みたで

監督 武内英樹
出演 GACKT、二階堂ふみ、片岡愛之助、杏、川崎麻世、藤原紀香

 いやあ。ごっついおもろかった。ワシは前作よりおもろかった。これはワシが関西人やからおもろかったんか、関東関西以外の人が観てもおもろいのか判らんけど。
 ともかく関西人の琴線に触れる、あるある小ネタ満載や。例えば、「風が吹いたら停まる湖西線」「大阪人でも迷う梅田ダンジョン」「堺には古墳しかない」「奈良には鹿しかいてへん」などなど。
 前作では東京の横暴ぶりを描いたけど、今回は大阪や。かって大阪都構想をぶち上げて大阪を日本の首都にしようとの野望をいだいた前大阪府知事。大阪都の夢は破れけど、前府知事の息子が現府知事。母の野望を実現しようとたくらむんや。大阪は神戸(兵庫県で大阪に都会と認められているのは神戸と芦屋だけやて)京都と手を組んで、和歌山、奈良、滋賀を抑圧差別していじめよる。大阪もあの知事がなる前は人情あふれるええ街やったけど。と、ゆうとる。
 埼玉に海を作ろうと、埼玉解放戦線のリーダー麻美麗は白い砂を求めて埼玉解放戦線の仲間とともに和歌山の白浜へ。そこは冷酷非情な大阪府知事が支配する地。逆らったモノは牢獄「甲子園」に入れられる。縦じまの知事親衛隊に甲子園に引っ立てられた麗。なんとか脱出して阪神電車で梅田に行けば、梅田ダンジョン。麗は滋賀へ向かう。滋賀のオスカルこと桔梗魁とともに滋賀、奈良、和歌山を大阪の横暴から救うために戦うんや。
 いやあ、ごっついおもろかったわ。滋賀県民はもちろん、三重以外の近畿の人らにとっては必見の映画や。知らんけど。
 23日の午前中に三宮のミント神戸の映画館で観たんやけど、映画館の外は「アレのアレ」のパレードで大さわぎ。映画館を出ても非日常の世界が展開しとったわ。

グレー・レンズマン

2023年11月22日 | 本を読んだで

  E・E・スミス      小隅黎訳         東京創元社

銀河パトロール隊」に続くレンズマンシリーズ2巻目。スペースオペラである。SFもいろんなもんが有るが、ワシはなんちゅうてもスペースオペラが好きやな。正義のヒーローが悪もん相手に、宇宙せましと大活躍。ものすごくかっこええ宇宙船にうち乗って、必殺の武器を手に大立ち回り。うう、ええな。
 主人公はご存じキムボール・キニスン。キニスン、グレー・レンズマンに出世しとる。もう、だれの指示も命令も受ける必要はない。ヘインズ長官でさえ対等の立場となった。
 こんかいのキニスンは潜入捜査を行う。007もかくや(キムボール・キニスンの方がジェームス・ボンドより登場が早い)と思われるエスピオナージ活劇で読者のご機嫌をうかがう。キニスンは隕石鉱夫ワイルド・ビル・ウィリアムズとして悪の巣窟である魔窟〈鉱夫の休息〉に行く。デラメータの腕で、ならず者どもに一目置かれる。でもキニスンはボスコーンに捕まりひどい拷問を受ける。なんとか脱出し病院に。そこにはキニスンにとって最もうるさくこわい存在が。星区看護師長クラリッサ・マクドゥガルである。彼女こそ銀河最強の女性だろう。

ボタニカ

2023年11月21日 | 本を読んだで

朝井まかて                 祥文社

 牧野富太郎の伝記である。なんかちょっと前までテレビでドラマになってたらしいけど、ワシはかようなもんは興味がないから見てへんけど、牧野富太郎といえば日本の植物学の父ともいうべき人。牧野がいなければ近代の学問としての日本の植物学はなかったであろう。
 困った天才という人たちがいる。手塚治虫は漫画の神様といわれるが、金銭的事務能力のない人だった。ただただ漫画を描く人だった。自由律俳句の種田山頭火とか尾崎放哉といった人たちは、とんでもないろくでなしであった。将棋の天才小池重明なんて人はたいへんな困ったちゃんである。天才漫才師横山やすしもそうだろう。
 牧野富太郎もその困った天才の仲間だ。植物を採集し標本にし分類して学名を特定する。植物の本を購入し、植物の雑誌を刊行する。それだけ。それしかしない。植物植物植物。ただただそれ。あとのことは知らん。もちろんこれらのことはタダではできん。金が要る。その金はどこからでる。牧野は打出の小槌をもっていたわけではない。土佐の実家は酒屋。そこには忠義な番頭と前妻がいる。植物の雑誌を出したい。金送れ。土佐から送金されて来る。土佐の実家も無尽蔵に金があるわけではない。ついに底をつく。あとに残ったのは借金の山。そんなことは気にしない。なんとかなる。ともかく植物だ。あとは知らん。まったくもって牧野富太郎、困った人だ。
 

Dear フランキー

2023年11月20日 | 映画みたで

監督 ショーナ・オーバック
出演 ジャック・マケルホーン、エミリー・モーティマー、ジェラルド・バトラー、メアリー・リガンス、シャロン・スモール

 ウソがテーマの映画である。ウソにもいろいろある。悪意のウソ。いいのがれのウソ。見栄をはるウソ。いいウソは少ない。でも少ないながらもいいウソ。と、いうか必要に迫られてのウソもある。
 フランキーのお父さんは船員。ずいぶん前に出港して家に帰ってないからフランキーはお父さんを知らない。
 お父さんはアクラという船に乗って世界中を航海している。船乗りのお父さんは手紙をくれる。どこの港に着いた。赤道を超えた。いろんな国の珍しい切手を送ってくれる。フランクもお父さんに手紙を書く。フランクとお父さんの文通は続く。聴覚障害のあるフランクは言葉をしゃべれないが文章を書くのは上手で勉強もよくできる。
 級友がアクラ号という船がこの街の港に入港することを教えてくれる。お父さんの船だ。お父さんと会える。楽しみ。
「お父さん」が来た。お土産に欲しかった熱帯魚の本を持って。フランクお父さんに抱きつく。それから月曜に船が出港するまで「お父さん」と楽しく過ごす。
 これ、みんなウソ。フランクがなついた「お父さん」はニセ者。お父さんからの手紙もウソで、返事もお父さんからのモノではない。フランクの本当のお父さんは。フランクに手紙を書いていたのはだれ?
 どんなに善意のウソでもかならず真実がばれる。いや、「善意のウソ」対象者は真実を知っているかもしれない。母、祖母、父代理、母の友人。フランクの周囲はみんないい人。「あの人」はフランクの周囲にいないのだから、フランクのまわりはみんないい人。うれしい余韻を残して映画は終わる。「善意のウソ」が、「代理」が本物になる予感が・・・。



ソース焼きそばの謎

2023年11月19日 | 本を読んだで

塩崎省吾       早川書房

 出してる出版社を見てびっくり。早川である。ワシらSFもんにとって早川は最もつきあいのある出版社だ。SFマガジンの発行元であり、ワシらが読むSFの大きな供給源である。その早川からこんな本が出たことが、これひとつのびっくり。
 昔「探偵ナイトスクープ」で「アホバカ分布図」というのがあった。人をののしる言葉として関東では「バカ」関西では「アホ」その境界はどこかというモノ。そんなこと別に知らんでもええと思うけど、それを大まじめに徹底的に調べる。これがめっぽう面白いのである。
 さて、この本はソース焼きそばだ。麺を炒めてソースで味付けをする。ごく単純な料理である。この単純な料理を徹底的に調査考察したのがこの本である。まず、だいたいが、ソース焼きそばなるもんが、いつごろ、どこでできたか。戦前か戦後か、東京か大阪か。著者は古い文献を探り、古老に取材し探る。文献といってもソース焼きそばなるジャンクな食べ物の記録はあまりない。文人の随筆などを丹念にあたり、それらしい食べ物のことについての記載を発見して、ソース焼きそばのルーツを探る。このあたりの著者の活動は、あたかも考古学者が遺跡を調べるようである。
 ソース焼きそばを作るのに一番欠かせないモノ。麺だ。麺の材料は小麦。その小麦の日本での事情も調べる。国際情勢も大きく関与する。
 全国各地はそれぞれ特徴のあるソース焼きそばがある。それを著者は丹念に食べ歩き感想をのべ、店主に話を聞き、記録していく。わが地元神戸にも「ぼっかけ焼きそば」「そばめし」なるモノもある。それにもちゃんと言及しているのは神戸人としてうれしい。
 巻末の記載してある参考文献のリストは30ページもある。全国各地のソース焼きそばは写真付き紹介されている。その写真も著者が食べ自分で撮影した。ともかくたいへんな労作の本である。ソース焼きそばの興味のない人でも、巻を手に取れば、思わず引き込まれ読まされてしまう。

フェイブルマンズ

2023年11月14日 | 映画みたで

監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ガブリエル・ラベル、ミシェル・ウイリアムズ、ポール・ダノ

 スピリバーグの自伝映画である。小生の親戚に映画俳優のおじさんがいた。沢本忠雄という。その沢本は映画を製作する側として日活に入社しましたが、なにかの拍子で俳優になったそうだ。スピルバーグの場合は沢本と違い映画監督になるんだとの強い意志を持ってハリウッドへ行った。けっして沢本のようにひょんなことで映画監督になったのではない。
 映画監督になるために生まれ、育ち、映画監督になって、世界的な名監督になったのである。だからスピルバーグは幸せな人だろう。
 サミーは両親に連れられて映画を観に行った。列車が転覆するスペクタクル映像を観てすっかり気に入って、鉄道模型を買ってもらって、転覆させて喜んでいると、お父さんがカメラを買ってくれた。それで鉄道転覆の映像を撮って映写するうれしさを得た。それがサミーが映画創りに没頭するスタートだった。
 サミーの父はコンピュータ技術者、母はピアニスト。父からエンジニアとしての資質を母から芸術的な感性を受け継いだ、映画監督としての適性を生まれた時から持っていたのだ。
 それからサミーは友だちを集めて西部劇や戦争映画を創っていく。高校生になってユダヤ人であるがゆえの差別やいじめにもあうが、高校最後の「おさぼりの日」を映画に撮り、いじめっこに改心させる。
 高校を卒業したサミーはハリウッドに行く。幸運なことのアメリカを代表する巨匠と会い、アドバイスをもらう。
 スピルバーグが自分を題材に映画創りを描いた映画である。だからたいへんに素直に判りやすい映画だ。スピルバーグはいういう映画を創るとたいへんに良い。SFを知らんくせにSF映画を撮らず、こういう映画を撮ればいいのに。
 

ゴジラ -1.0

2023年11月13日 | 映画みたで

監督 山崎貴
出演 神木隆之介、浜辺美波、吉岡秀隆、安藤さくら、青木崇高、佐々木蔵之介

 ワシら東宝特撮映画で育ったオジンどもを、ゴジラ映画で喜ばせるのは簡単だ。ゴジラを街中で暴れさせ伊福部昭の例の音楽を鳴らせば、手をたたいて喜ぶ。でも、それだけじゃ芸がないから様々な設定を考え手をかえ品をかえて、いろんなゴジラ映画が創られてきた。1954年の第一作「ゴジラ」から数えて30作目が本作である。いろんなゴジラを観てきた。一連の「ゴジラ対〇〇」では「シェー」までするコメディなゴジラまであった。アメリカ産のたんなる巨大爬虫類映画もあった。しかしゴジラの本質は「荒ぶる神」であり地震や台風と同じ大災害なのである。ゴジラはやっぱりでかくて凶暴で人間では手がつけられない大怪獣=大きな怪しげなモノでなくてはいかん。
 終戦直後、焼け野原になった日本をゴジラが襲う。アメリカ軍はソ連を刺激したらあかんというので動けん。日本には陸軍も海軍もない。もちろん自衛隊もまだない。ゴジラをこのままほっとけん。どうする。立ち上がった人たちがいた。
シン・ゴジラ」は「官対ゴジラ」「組織対ゴジラ」であったのに対して本作は「民対ゴジラ」「個人対ゴジラ」である。
 主人公は敷島という戦闘機のパイロット。特攻に出撃したが死にきれず、緊急用飛行基地に着陸する。そこにゴジラが襲う。ゼロ戦の20mm機関砲で撃てといわれたが恐怖で打てなかった。そのため基地の整備兵たちが死ぬ。特攻で死なず、なおかつ自分の臆病で多くの戦友を死なせた。終戦後もトラウマになって悩む。ゴジラの悪夢を見る。敷島にとって戦争は終わってない。
 そのゴジラが敷島の住む東京に上陸。丸ごしの日本はどうすることもできない。でも戦いを知っている男たちがいた。有志の元海軍の男たちが生き残っていた巡洋艦、駆逐艦に乗ってゴジラに戦いを挑む。敷島も残っていた戦闘機震電に乗って飛び立つ。
 映像は圧倒される。今まで見たゴジラ映画で一番だ。またゴジラが口から放射する熱線も最強のモノであった。ナウシカの巨神兵か宇宙戦艦ヤマトの波動砲か、はたまたデススターのスーパーレイザー砲かといったところだ。着弾地からきのこ雲が立つ。最恐のゴジラであった。



ニューヨーク東8番街の奇跡

2023年11月07日 | 映画みたで

監督 マシュー・ロビンス
出演 ジェシカ・タンディ、ヒューム・クローニン、フランク・マクレー、エリザベス・ペーニャ、デニス・ボウトシカリス、マイケル・カーマイン

 アメリカはニューヨークにも笠地蔵はいた。笠地蔵は恩を受けたお地蔵さんがおじいさん、おばあさんに恩返しをする話だが、この映画は小型のUFOがアパートに住人たちの恩返しするのである。UFOはどんな恩を受けたか、映画では描かれてないから判らぬが。
 ニューヨークの東8番街に古いアパートがある。このへんいったいは再開発。古い建物が取り壊され更地になっている。古いアパートも取り壊されることになるが5人の住人が立ち退かない。カフェを営むライリー老夫婦。妻は認知症。売れない画家メイソン、妊婦のマリサ、元ボクサーのハリーの5人。
 立ち退かない5人に業を煮やした地上げ屋に雇われたチンピラがライリーの店で乱暴狼藉。メチャクチャにする。妻の認知症に加え店を壊されたフランクは「誰か助けてくれ」と願う。助けにきた。どこかから小さな円盤状の生き物?が飛来して壊れた店を元通りにしてくれた。それからこの円盤生物は5人を助け、この古いアパートをきれいな建物に修復する。そしてとうとう地上げ屋はあきらめた。めでたしめでたし。笠地蔵ならぬ笠円盤のおはなし。