ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

チェンジリング

2020年06月29日 | 映画みたで

監督 クリント・イーストウッド
出演 アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコビッチ、ジェフリー・ドノバン

 どっちかというと重い映画が多いイーストウッド映画。本作はその中でもたいへんに重い映画だ。重く、悲惨で、悲しい映画であるが、非常に優れた映画である。悲しく重いだけではなく、最後に希望もあるし、勝利の爽快感もある。
 クリスティン・コリンズが会社から帰ると、9歳の息子ウォルターがいない。行方不明になったようだ。警察に電話する。なんとすぐ動いてくれない。24時間待てといわれる。
 5ヵ月経った。息子さんを保護したと警察から連絡。会いに行く。息子じゃなかった。見知らぬ少年がママといって抱きついてきた。この子は私の息子じゃありません。私の息子を探してくださいと担当のジョーンズ警部にいうが、警部は取り合ってくれない。警察が保護した少年があんたの息子だ。あんた、どうかしている。警察と結託した医者まで寄こして「医学的」に偽ウォルターを本物と「証明」する。母親のクリスティンがいっても信用してくれない。偽者は身長が低い。歯医者のカルテからも偽物と判る。学校の担任の先生もこの子はウォルターじゃないと証言。それでも警察は認めない。彼をウォルターじゃないと認めると警察のミスを認めたことになる。クリスティンはとうとう精神病院に強制入院させられる。このころのロスアンジェルス警察は腐りきっている。腐敗、暴力、不正に満ちた警察だ。
 子供を20人殺したサイコパスが捕まった。ウォルターはそいつに殺されている可能性が。新たな事実が出た。クリスティンは警察不正をあばく牧師と弁護士の支援を受けて警察に敢然と戦いを挑む。
 クリスティンの意志はただ一つ「息子とあいたい」それだけ。そのためには警察の不正にも精神病院での迫害にも負けない。死刑直前の死刑囚とも対決する「地獄に堕ちろ」と。
「トゥームレーダー」などでアクション女優のイメージが強いアンジェリーナ・ジョリーがタラコくちびるを振り立てて、大変な大熱演。このヒロインの対比となる憎まれ役警察の体面しか考えないジョーンズ警部のジェフリー・ドノバンとサイコパスの死刑囚ゴードン・ノースコットのジェイソン・バトラー・ハーナーが良い演技をした。
 主人公クリスティン・コリンズは鋼鉄の意志を持つ母親である。息子を見つけたい。その意志は決して揺るがない。
 クリスティンは警察と戦い息子を取り戻そうと生涯をかけたが、もっと大きな国家という巨大なものと戦い、息子を娘を取り戻そうと戦っている人たちがいる。この映画を観て拉致問題の一日も早い解決を望みたいと思った。 

死霊狩り

2020年06月24日 | 本を読んだで

 平井和正          早川書房

「狼男」シリーズと双璧をなす、平井アクションSFといっていいだろう。平井和正ならではの、情念たっぷりのSFホラーアクションエンタメとなっている。
 天才レーシングドライバーの田村俊夫は、大きな事故で半死半生となる。瀕死の重傷から驚異的な生命力で復活した田村に、大金の報酬を条件にある組織が接近してきた。田村は契約に応じた。
 連れていかれたのはカリブ海に浮かぶ絶海の孤島。そこは組織の秘密基地。そこに2000人の候補生が集められ選抜試験が実施される。
 猛獣、毒蛇、毒虫、地雷、罠、ありとあらゆる危険なモノがあるジャングル。そこにナイフ一丁で放置される。 2000人のうち生き残れるのは20人。田村は試験に合格した。与えられた仕事がゾンビーハンター。宇宙からの侵入者ゾンビー。知らぬ間に地球人に取憑いている。世界を動かす要人にも取り憑いているかもしれない。私もゾンビーかもしれない。あなたもゾンビーだろ。そのゾンビーを見つけ出して殺すのがゾンビーハンターの仕事だ。
 田村の恋人がゾンビーとなった。姉もゾンビーに殺された。個人的な動機もあって田村は腕利きのゾンビーとなっている。組織の司令官は冷酷非情なミスターS。目的のためには人の死などへとも思わん。
 ゾンビー化した人間は凶悪強力なモンスターとなる。普通の手段では死なぬ。田村は最強の拳銃オートマグ44を手にゾンビー退治に従事する。
 田村が闘うのはゾンビーだけではない。ソリの合わない同僚のゾンビーハンターとは命のやり取りの格闘をする。そして田村最大の敵は司令官S。すごい切れ者でゾンビーハンターたちからはゾンビーよりもSを恐れている。
 出てくるのはゾンビーはもちろん、田村も含めて不死身の化け物みたいなヤツばかり。22口径はもちろん38口径ぐらいの拳銃で撃たれても死なん。こやつらを殺すには44マグナムが必要。血と熱気の平井アクションSFを満喫できる。


コクーン

2020年06月22日 | 映画みたで

監督 ロン・ハワード
出演 ドン・アメチー、ウィルフォード・プリムリー、フューム・クローニン

 時間のムダであった。なんとも出来の悪いSF映画であった。いやいやこれをSFといったらSFを冒とくしているようで、古狸SFもんの小生としては、この映画にSFという言葉を使いたくない。
 フロリダの老人ホーム。そこのじいさん3人組。ホームの隣の別荘のプールに入って勝手に遊んでいる。ひとのプールの無断借用である。
 おっさんが釣り船を長期に借りる契約をする。そのおっさんと仲間は釣りなんかしない。海からせっせと丸いもんを引き上げている。このおっさんというのが、じいさんたちが勝手に入っている別荘の借主。おっさんは、海から引き揚げた丸いもんをプール沈めていく。そんなもんがプールにあっても、じいさんたちは無断のプール遊び。すると不思議なことにじいさんたち妙に元気になる。
 実は、このおっさんちゅうのが、なんたら星人で、プールに沈めとるのは仲間の繭。その繭を母星に持って帰るところが、時間が経ちすぎたから持って帰れん。で、じいさんたちに提案。私の宇宙船には30人ほどの人間が乗れる。いっしょに来ないか。で、じいさんと仲間の年寄り30人が宇宙船に乗ってなんたら星に飛び立つ。こんなんレベルの低いファンジンの素人作品の方がもっとマシやで。くだらん映画を観てしまった。昨日は昼間は阪神タイガースのくだらん試合を見せられて、夜はこの映画や。くだらん1日やった。救いはグレンリベットの12年がおいしかったことだけや。

クラス会

2020年06月21日 | 作品を書いたで
 冷蔵庫を開ける。ほとんど空っぽ。奥の方に、昨日のおかずの残りがある。あと冷や飯が少し。おかずは筑前煮だ。鶏肉はない。にんじん、ごぼう、こんにゃく。
 冷や飯と筑前煮を電子レンジで加熱して食う。女房は母親の介護でクニへ帰っている。女房の母はいつもは義姉が看ているのだが、彼女が入院したため、義母の面倒をみにいったというわけだ。
 昨日の筑前煮とご飯で、にわか独身の夕食をすまそうとしたら、電話がかかってきた。
「今から出てこない」
 女だ。女二人、三宮のスナックで飲んでいるとのこと。中学の同級生であった連中だ。なんでもクラス会を企画しているけれど、なかなか参加者が集まらず、その善後策を相談しているらしい。
 一〇年前にもクラス会があった。私は参加した。その時の幹事は彼女たち二人であった。
 メシはやめて出かける。生田神社の近くのスナックで二人は待っていた。山口と橋田だ。
 ビールを頼んだ。
「海崎くんは地震でなくなったでしょ。高木くんは入院してるわ。藤田くんと平さんは来るって」
「ま、還暦を過ぎてるからいろいろあるわ」
「で、ワシにどうしろとゆうんや」
「あんた。副添くんとしたしかったじゃない。誘ってよ」
「わたしたち二人、藤田くんと平さん、あんたと副添くん。これで六人、なんとかクラス会としてかっこがつくわ」
 この二女史は私が参加するものとはなっから決めつけているらしい。
「おいおい五人かもしれんで」
「どういう意味」
「ワシの都合は聞かへんのか」
「あら、あんたは当然参加じゃない」
 中学を卒業して四五年。この間、クラス会が二回あった。私は二回とも参加した。前回のいいだしっぺで幹事は、この二人だ。最初は死んだ海崎と私がいいだしっぺで幹事をやった。

 新梅田食堂街の串カツ屋で飲んでいたとき、たまたまヤツがいた。
「ま、飲め」
 課長がビールを勧めた。どうも職場のQCサークルのリーダーを私にさせたいらしい。結局、ビール三本と串カツ数本で私はQCサークルのリーダーの件、OKしてしまった。
 ふと向こう側のカウンターに視線を上げると、ヤツも視線を上げた。
「ん」確かあいつは中学で同じクラスだった・・・。んんん名前が思い出せない。あのころは、神戸の中学生は全員丸坊主の少年であった。その少年の面影が残っている。しかし、よく似た別人ということもある。
 トイレに行った時、そっと聞いた。
「失礼ですが海崎さんですか」
 相手もそうではないかと思っていたようだ。
「高垣か」
「そや。海崎、ひさしぶり」
 課長がこちらを見ている。
「ちょっとごめん」
 課長の隣りにもどった。
「知り合いか」
「はい。中学の時の同じクラスやったヤツです」
「そうか。そんじゃ俺は帰る。あ、ええええ。ここはワシが出しとく。QCサークルのリーダー頼むで。ま、旧交を温めたらええ」
 課長はそういうと支払いをすませて帰った。そのあと、海崎と居酒屋とショットバーへ行った。
「なあ、高垣、クラス会せえへんか」
 最初のクラス会は、私と海崎が幹事となって、みんなに声をかけて集まってもらった。その時に大活躍して二十五人もの出席者をかきあつめたのが例の二女史だ。

 六甲山から吹き下ろす風が冷たい。神戸は三宮のフラワーロード。そごうのひと筋南のビルの五階。待ち合わせはそこのカニ料理屋東村。待ち合わせ時間は午後七時。午前中だけ会社で仕事して、時間があるので阪急会館で映画を観て、センター街の星電社で買い物してた。午後六時四十分。ちょうど良い時間になった。
 東村に入る。席は私の名で予約している。
「お、山口と橋田早いな」二女史がもう来て席に着いている。
「海崎は」
「まだみたいよ」
 ほどなく海崎も来た。続いて十人の参加者がぞろぞろと来た。この第一回のクラス会は十四人の参加者が集まった。担任の先生もゲストで来ていただいた。

「クラス会へのお誘い」のハガキが来た。第一回のクラス会から一〇年たった。なんでも山口女史と海崎が元町で、ばったり会ったとのこと。「久しぶり元気?」から、「積もる話」で盛り上がり、クラス会をやろうということになったのだろう。
「出席」に○をして返信ハガキを出した。日時は一月一六日午後七時。会場は百人奉行鍋屋敷。
 一月十五日の成人の日が日曜だったので十六日の月曜日が振り替え休日となった。三連休の最終日の夜に二回目のクラス会が行われた。幹事の海崎が特に楽しそうだった。
「近いうちにぜひ三回目をやろう」といっていたことを思い出す。その海崎はクラス会には永遠に出席できなくなった。

 一九九五年一月十七日午前五時四十六分。神戸は地震で壊滅した。海崎は自宅で圧死した。この震災で私の知り合いは六人死んだ。海崎もそのうちの一人だ。
 震災後の神戸は、それ以前とは違う神戸になった。あれからふた昔ほど年月が流れた。地震で亡くなった者、病気で亡くなった者。この世には居るが神戸を去った者。七十近くなるといろいろある。
 たまたまぱったりと同級生と街で出会うということも少なくなった。

「今日、そごうで買い物してたら橋田さんにばったりあったの。で三回目のクラス会をやろうということになったのよ」
「山口は今はどこにおるん」
「塚口よ」
「みんな年とったから、ばったり会うこともすくなくなったね」
 結局、中学のクラス会は三回やっただけだ。参加者が集まらなくなったし、妙な疫病がまん延して集まって酒宴を開くこともはばかられるようになった。  

茶匠と探偵

2020年06月18日 | 本を読んだで

 アリエット・ド・ボダール 大島豊訳     竹書房

 著者のボダールは父はフランス人母はベトナム人でアメリカのニューヨークで生まれた。と、いうたいへんにグローバルな人。で、本書を一読した印象は母親の影響か、たいへんにアジアな香りが強い。
 どの作品も少々とっつきにくく判りづらいが、濃厚なアジアっけが楽しめる。9編の作品が収録されているが、巻頭の「蝶々、黎明に堕ちて」が一番判りやすく面白かった。ホログラム作家のパパロトルが死んだ。墜落死か他殺か?という話。他の収録作は難解ではあるが、雰囲気は充分に楽しめる。

決算!忠臣蔵

2020年06月15日 | 映画みたで
監督 中村義洋

監督 中村義洋
出演 堤真一、岡村隆史、濱田岳、竹内結子、石原さとみ、西村まさ彦

 背広組と制服組、営業と総務、現場と経理。これらの連中がそれぞれの仕事をまっとうしようとすると必ず対立がおこる。実は小生の本業は購買仕入れ。現場が仕事を行うために会社の金を使ってモノを買っている。現場が仕事をしやすいように配慮すると、たくさん金を使うといって経理が文句をいう。金をけちって節約すると現場が文句。例えばアーク溶接用の炭酸ガス。ガスの圧力が弱いと作業しにくいといって現場がブーという。圧力を高くすると炭酸ガスの使用量が増えて経理がブー。双方にブーといわさぬのが小生の腕の見せ所というわけだ。
 藩がつぶれた。ここで武士の実行部隊である番方と金勘定をする勘定方の軋轢がでてくる。お話は日本人ならたいていの人が知ってる赤穂浪士の吉良邸討ち入りの話し。小生も日本人であるから、いろんな忠臣蔵を見てきたし、いろんな大石内蔵助を見てきたが、こんな忠臣蔵、こんな大石内蔵助は初めてだ。決してNHKの大河ドラマ的ではないし、長谷川一夫や萬屋錦之助的ではない。
 まず感心したのは大石をはじめ赤穂藩士たちが関西弁をしゃべっていること。これは当然だろう。赤穂は播州、いわゆる西播者の土地だから、ほんとは神戸、大阪、京都、阪神間、摂津の関西弁とは違うと思うのだが。長谷川や萬屋の大石よりは大いに納得するのである。
 この映画には吉良は登場しない。忠臣蔵最大の見せ場、吉良邸討ち入りのシーンがない。では、この映画、何を見せるのか?金勘定を見せるのである。そんなもん見せて面白いか。さすが中村義洋監督、めちゃくちゃ面白い映画になっている。
 藩がなくなり浪人となった侍ほどツブシがきかない人種はない。自分で生産する手段を持たないのだから金は1銭も稼げない。浪人になった大石をはじめ赤穂浪士たちとて食っていかねばならない。住む家もいる。そのうえ討ち入りともなると莫大な金がかかる。その金をどうしたのか。これが、この映画の見せどころである。赤穂藩の残務整理で残った金、夫浅野内匠頭を亡くした瑶泉院が大石に預けた金など当初は9500万円。この金で浪士たちが食い活動するわけ。どんどん減っていく。実際、画面にはデジタルカウンターが表示され、見る見る減っていく。大石が滞在する京と江戸を行き来するだけで片道36万円かかる。
 江戸の堀部安兵衛たちが活動拠点とするため古い家を買った。700万。なんだかんだとお金はとうとうマイナス赤字に。こんなんでほんとうに討ち入りができるのか?

チンジャオカマスー

2020年06月14日 | 料理したで

 青椒肉絲。ちんじゃおろーすや。ピーマンの細切りと肉を炒めたもんや。肉もええけど、ワシはかまぼこをつこうてみた。材料はピーマンとかまぼこ。調味料は酒、醤油、オイスターソースそれだけや。シンプルにいこうやないけ。そのかわりピーマンは緑黄赤の三種類つこうてカラフルにしたいで。
 ピーマンちゅうと嫌いなムキもおられるだろう。ピーマンは嫌いな人は青くさいのが嫌なんやろ。ピーマンの青くささを取っておいしさだけを残す下処理方法があんねん。
 中華鍋をカンカンに熱しておく。横で湯をチンチンに沸騰させとく。ピーマンを中華鍋に入れる。しばし炒める。熱湯をそそぐ。しばしゆでる。これでピーンマンの青臭さが取れうま味が残る。
 あとはかもぼこを炒めて、下処理したピーマンを合わせて調味したらできあがりや。肉を使うよりだいぶんコストがかからへん。それでいて肉に負けへんぐらいにおいしい。

Bジュース

2020年06月09日 | 作品を書いたで
 武兵県葦内市。たぶん月元一のセレブな街だろう。温暖な西月元の破戸内海気候で雨が少なく、冬に雪が降ることはめったにない。港町仏床の東隣で、丙寅園球場がある胡祭市の西隣である。
 大都会中革と仏床に挟まれた都会地でありながら、清冽な自然に恵まれている。25年前の革床大震災では葦内も大きな被害を受けたが、それは海沿いの南の方に被害は集中していた。私が念願かなって屋敷を建てた七頂陣地区は、葦内市の北にあり震災の被害はほとんどなかった。
 葦内市七頂陣地区。この国、月元で最も高級な住宅地である。八乙連山の麓に位置し軽く南に傾斜している土地だ。最寄りの駅、MR葦内や革急葦内川とは遠いが、七頂陣に住むような人は自家用車を持っているから問題ない。私も、このたびの引っ越しに際して車を買い替えた。国産のタカユ・ミレニアムから雄国製のジェームスジョイス・スーパーゴーストに乗り換えた。
 運び込まれた荷物の整理はあらから終わった。風呂に入る。ゆったりとミズナラの木の湯船につかって外を見る。高台にあるここからは、葦内市内が一望できる。視界の南の端は海だ。破戸内海が見える。
 いい湯だった。湯上りにBジュースを飲もう。この七頂陣地区には通常の水道とは別にBジュースが各戸に配送されている。蛇口をひねると、いつでも好きな時に好きなだけBジュースが飲める。新鮮なBジュースが好きなだけ飲めるというのも私がここに屋敷を新築した理由の一つだ。
 水道の蛇口の横に設置されているBジュースの蛇口をひねる。少し出て、すぐ止まった。
「おおい。Bジュースが出んぞ」女房にどなった。
「なんでも、Bジュース貯血池が空っぽになったそうよ。原料不足なんですって」
 洗面所で牙を研いでいた女房がどなり返した。
「なんでも、供給地で悪い疫病が流行って、外を出歩く原料が少なくなったんですって」
 しかたがない。Bジュースはがまんしてクロの散歩に行こう。外は月も出ていない気持ちの良い夜だ。クロを連れ出す。バタバタとうれしそうに羽ばたく。私の上空2メートル。そこがクロのお気に入り。コウモリとはいえウチの家族だ。散歩のついでに貯血池をのぞく。確かに空っぽだ。なんとかしてもらおう。

「7時のニュースです。高級住宅地として知られている兵庫県芦屋市で発生した集団行方不明事件が、思わぬ展開を見せました。三日前から行方が判らなかった13人が遺体で発見されました。13人とも体内の血液が抜き取られていてミイラ状で発見されました」

「ふ~うう。湯上りのBジュースはやっぱりうまいな」  

記憶にございません!

2020年06月08日 | 映画みたで

監督 三谷幸喜
出演 中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、石田ゆり子、草刈正雄

 三谷幸喜の最新作だが、最高傑作ではけっしてない。三谷も老いたのではないか。ドラマに疾走感がなく、もたついた印象が残った。記憶喪失した男が総理であったというアイデアは面白いが、そのアイデアを生かしていない。
 黒田啓介は病院のベッドで目覚める。どうも頭に石をぶつけられて記憶喪失になったらしい。自分がだれでここはどこか何も判らない。黒田は自分がこの国の首相であることが判る。この秘密を知るのは3人の秘書官だけ。黒田は支持率2.3パーセントという憲政史上最悪の首相であった。
 と、いう話だが、黒田首相の内面にスポットを当て、どうも、黒田自身が記憶喪失を契機に心を入れ替えて、良い首相になってやろうと努力しはじめる。こういう話ではなく、記憶喪失でなんも判らん男をを周りがよってたかって、曲がりなりにも首相を務めさせるドタバタを描いた方が、いかもに三谷喜劇だと思うのだが。
 ところどころに、某国の某首相をほうふつとさせるシーンや、某首相夫人を皮肉っている所もあったりして笑わせられるが、これらはくすぐりで笑わせられるだけでお話がおかしくって笑うのではない。
 

中華かゆ

2020年06月07日 | 料理したで

 ようし、今朝はおかいさんを食おう。おかいさん。昔いた会社で、岡井さんという女子社員がおったが、別に彼女のことを想い出したわけやない。ちょっとかわいい娘やったけど、とくだんつきあいはなかった。
 ここでいうおかいさんは、岡井さんのことやない。おかゆのことや。関西では、なんにでも「ちゃん」や「さん」といった敬称をつけることが多いんや。「飴」は「あめちゃん」「芋」は「おいもさん」といった具合やな。そのでんで、「粥」は「おかいさん」とゆうんや。
 さて、そのおかいさんやけど、中華風でいこか。中華のおかいさんは、米粒が壊れてポタージュ風になるんが特徴や。
 米を軽く洗う。そのあと、油を少し垂らしておくんや。長ねぎのみじん切りを鍋に入れて加熱。そこに米を入れ水をいれ煮ていく。水は米がゆったりをするぐらいの量を維持しよ。蒸発したら足すんや。香りつけに八角を2個ほど入れとこ。具にする鶏のむね肉を入れて加熱。鶏肉に火が通ったら出して細かく裂いて塩コショウ。少しゴマ油をふる。鶏むね肉はパサパサして好かんというムキもおるけど、むね肉は脂分が少ないからパサつくんや、そやから油を補充してやればええんや。湯にガラスープの素を入れて味の補強をして、米がポタージュ状になればできあがりや。ザーサイの刻んだのとアサツキを散らしてできあがりや。すりゴマをふって食べようぞ。

 星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。