ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

おだいりさま

2021年10月29日 | 作品を書いたで
 ドアが開いた。ふらりと男が入ってきた。体重を感じさせない男だ。風に押されるようにカウンターにつく。
「いらっしゃい」
 マスターの鏑木がおしぼりを出す。四〇代後半、彼自身の体重を感じさせないが、なにか肩に負荷がかかっているように鏑木には見えた。この海神では初めての客だ。
「いかがいたしましょう」
「日本酒ありますか」
 海神はバーである。洋酒を楽しむ店だ。日本酒をリクエストする客は珍しい。
「ございます」
「ひやでください」
 鏑木は呉春をグラスに注いだ。クーと半分ほどあけた。
「ほんとはスコッチが好きなんだ。バーボンも好き。ウィスキーが好きなんだ」
 男は、コップの残りをあけた。
「おかわり」
「呉春でいいですか」
「まかせるよ。日本酒はよく知らないんだ」 鏑木は別の一升瓶を開けた。
「ん。この酒もうまいな」
「石川県の天狗舞です」
 男は二杯目の天狗舞もあけた。空のコップを持ってじっとしている。
「なにかおつまみを、めしあがりますか」
「いや、いい」
 鏑木は天狗舞を横の戸棚にしまうと、グラスをふきはじめる。男に視線を向けないように心がける。
 男と鏑木はカウンターを挟んでいるが、二人とも気配がない。静寂が流れている。
 ふっと、男が息をはいた。
「マスター、おだいりさまって知ってるか」
「ひな人形のですか」
「いいや。なんでも人の代理やってる人のことだ」
「はい?」
 男は空のコップを手に持って、ながめている。
「おれ、会社では課長代理なんだ。同僚はみんな『代理』がとれて課長や次長になってった。おれだけまだ課長代理なんだ」
「は」
「家では父代理なんだ」
 そういうと空のコップをカウンターに置いた。
「おかわり」
「天狗舞でいいですか」
「うん」
 戸棚から天狗舞を出してコップに注いだ。「なぜコップなんだ」
「徳利とお猪口は置いてないんです」
「このコップもおだいりさまか」
 そういうと天狗舞の入ったコップを愛おしそうに持って傾けた。
 男のポケットでスマホが鳴った。
「はい。いま、商店街の中のバーで飲んでる。海神というバーだ」
「娘からだ」
 鏑木に話しかけた。話を聞いて欲しいのだろう。
「娘さん、来られるですか」
「うん。あと一〇分ほどで来る」
 若い男女が入ってきた。
「かおり」
「おとうさん」
「娘さんですか」
 鏑木が聞いた。
「うん。血はつながってない。再婚した女房の子だ」
「でも、おとうさんはおとうさんです」
「代理のオヤジだ」
 娘の横に若い男が座った。
「義彦さんです」
「知ってる。名前だけは。女房から聞いてた」 若い男はこくりと、男に頭を下げた。
「で、娘をどうする」
「しあわせにします」
 若い男は顔を上げ、男の目を見ていった。「結婚するのか」
「はい。おとうさん」
「で、かおりは」
「式は秋にしようと思うの。おとうさん」
「わかった。父親代理はおれがやるよ」
「だいりじゃないよ。おとうさん」
「マスター、うんと上等のスコッチ出して」「マッカランの十八年がございます」
「それをロックで三杯」
「かおりは飲むな。義彦君は」
「ぼくもいただきます」
 三人はロックグラスを持った。
「二人の結婚を祝して乾杯」
 三人はグラスを空けた。
「おれは『代理』がとれるまで好きなウィスキーを断っていた。こんどの移動で課長になる」
「おめでとう。おとうさん」 
 

我らの生涯の最良の年

2021年10月26日 | 映画みたで
監督 ウィリアム・ワイラー
出演 フレドリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、ハロルド・ラッセル、マーナ・レイ、テレサ・ライト、キャシー・オドネル

 戦争が終わった。ヨーロッパから、沖縄から、太平洋から3人の復員兵が故郷に帰ってきた。冒頭のシーンでびっくり。終戦まぎわのアメリカ。大きなドラッグストアに豊富にモノがある。街にはきれいな建物が林立し、人々は平安な生活を送っているようだ。同時期、日本は焼け野原。食べ物にも困り、国中が荒野であった。戦勝国と敗戦国の違いとはいえ、こりゃ、戦争に負けるわけだ。
 フレッドは帰郷する旅客機に乗り損ね、軍が飛ばすB17に乗せてもらう。アルとホーマーも同乗。二人とフレッドは目的地が同じ。フレッドは大尉で航空軍の爆撃手。アルは軍曹で陸軍。ホーマーは海軍の水兵で空母の乗組員。ホーマーは戦傷を受け両手がない。義手を装着している。
 年齢も所属する軍も階級も違う3人は機中で意気投合。仲良くなる。3人はそれぞれに家に帰る。3人の家庭も違う。フレッドは貧困な実家で、出征直前に結婚した派手で金遣いのあらい妻がいる。軍では英雄だったが、再就職に苦労する。やっとドラッグストアの店員になれる。
 アルは銀行員だった。豪華なマンションに住み、美しい妻と、良い子の娘と息子がいる。復員後、すぐ銀行の頭取から銀行に復職してくれと頼まれる。復員兵向け小口融資担当の副頭取として銀行に復職。昇格である。
 ホーマーは母、父、妹といった家族から復員を喜ばれるが母はホーマーの手を見て泣く。父も意識しているみたい。隣家の娘ウィルマはいいなずけ。ウィルマはホーマーとの結婚の意志は強いがホーマーは、自分の手のため結婚にふみきれない。
 と、いうぐあいに3人の復員後の生活を描いていく。アルが一番しあわせそうだが、アルはアルなりの悩みもある。家族や恋人と離れ長い間の戦場くらし。3人の生活の底流を戦争の影が流れる。静かな、そして力強い反戦映画といえる。必見の名作だ。
 

メッセンジャー

2021年10月18日 | 映画みたで

監督 馬場康夫
出演 飯島直子、草彅剛、京野ことみ、加山雄三

 バブル時代を代表するクリエイター、ホイチョプロの4作目の映画である。ホイチョイ映画はたしか5作あるが、小生はこの映画が一番好き。
 主演は草彅ではなく飯島だろう。バブルの申し子みたいな、けばいねえちゃんだが、中身はしっかりナニワ節である。
 海外アパレルのブティックを任されていた清水尚美は、高級マンションに住み、赤いアルファロメオに乗り、1本5万円のシャンパン、クリュグを飲んで、クレジットカード使い放題。バブル生活満喫。ところが海外アパレル倒産。出資さきの商事会社にカード類没収、マンション差し押さえ、なんとかアルファロメオだけは乗って逃げた。途中、自転車便の男と事故る。男骨折全治二か月。尚美金ない。示談の条件。骨折男の替りに自転車便をやることになった。
 自転車便トウキョウエクスプレス。代表の鈴木は自転車便はバイク便より速いとの信念を持っている。
 と、いうわけで、バブルの申し子尚美は肉体労働の自転車便を始める。相棒の鈴木とはケンカしながら。とうぜんバイク便業者とは競合する。
 この映画、エンタメ映画の王道を行く要素がいっぱい。最初、反発しケンカしていた男女がしだいに魅かれあっていく。非力で少数の人数で強大で多数の敵と戦う。小人数のチームがチームワークと知恵で勝つ。抜けたメンバーが元仲間の危機を聞き、自分の利益を放り投げて助けに駆けつける。
 バイク500台を相手に自転車4台で競争する。これなど「リオ・ブラボー」だ。少人数のチームで戦う。「七人の侍」だ。ではあるが、この映画「七人の侍」よりも「荒野の七人」へのオマージュを強く感じる。「荒野の七人」ではスティーブ・マックィーンのヴィンが、仲間が増えるたびに指を立てていったが、この映画では草彅はユル・ブリンナーのクリスとするならマックィーンのヴィンに当たるのが飯島の清水尚美。その尚美が同じように仲間が増えるたびに指を立てていってた。
「荒野の七人」のブラッド・デクスターのハリーは仲間を抜けるが、戦いの最中に復帰する。尚美も自転車便屋を抜けて、元の華やかな世界に戻ろうとしていた。その時、鈴木たちはバイク便相手に苦戦。尚美がまんできずにタクシーを降りて自転車に乗る。このシーンは胸がすくのである。
 見終わって実に爽やかな気分になれる、実に良く出来たエンタメ映画であった。楽勝!

喜楽館に行ってきました

2021年10月14日 | 上方落語楽しんだで
 昨日は半日有給休暇をとって、久しぶりに喜楽館に行ってきました。午前中、お仕事。昼食を会社で食べてからゆっくりと出ても、新開地の喜楽館には余裕で間に合います、
 私は喜楽館のタニマチなので電話で予約しておけばチケットは取り置いてくれます。当日券2800円が2000円になります。
 入場しました。私の席はC列でした。A列とB列は感染症対策で使用されません。私は最前列です。手が届きそうな席です。演者さんとたびたび目があいました。お客の入りは、後ろを見ると前5列ぐらいまででした。一人おきですから20人ぐらいの入りでしょうか。平日の昼席ですが、それにしても少ないです。運営の大変さがしのばれます。上方落語を愛する心ある人はタニマチ
になりましょう。
 さて開演前は桂雪鹿さんです。この落語家さんは初めてです。桂文鹿師匠のお弟子さんですね。桂文福師匠の孫弟子さんです。きっちりと楷書の落語を演じられました。「子ほめ」を演じられました。
 さて開演です。開口一番は森乃阿久太さんです。この人も私は初めてです。若手の立場で、石段の出囃子ででてきましたから、若手だと思いますが、中堅ベテランの風情の落語家さんです。噺ぶりも落ち着いていて安心して聞けます。演目は旅ネタの「兵庫船」です。オチで出てくるかまぼこ屋のオヤジはなかなかの迫力でした。
 二番手は桂小鯛さん。お名前からわかるように桂塩鯛師匠のお弟子さんです。「時うどん」です。この噺をやるにはまだまだ気温が暑いですね。「ひっぱりな」があるバージョンの「時うどん」です。小鯛さんの師匠の師匠は桂ざこば師匠ですから、米朝一門です。米朝一門の「時うどん」には2種類あって、桂吉朝一門の「時うどん」は「ひっぱりな」がありません。
 さて、今日の色もんは内海英華姐さん。少し年を取られましたがその色香はまったくおとろえておられません。あいかわらず色っぽいです。女道楽です。三味線とおしゃべり。こんな芸は日本で英華姐さん一人だけです。世界でも一人です。
「世界で一人の女道楽内海英華です」と自己紹介。都都逸などのあと最後は三味線の曲ひき。見事なもんです。手が届きそうな所の英華姐さん。お色気の直撃をくらいました。
 仲とりは林家染二さんです。「皿屋敷」をやらはった。パワフル染二です。染二さんの噺はいつもパワフルです。それが、C列というものすごい前で聞くとたいへん。噺が物理的な衝撃となってぶち当たります。英華姐さんのお色気でくらくらパワフル染二の迫力でガンガン。もう、たいへん。
 仲入りでひと息ついたあとは森乃福郎師匠。今の福郎師匠は2代目。私が子供のころよく見た森乃福郎師匠は初代です。なかなか男までいい男の落語家さんでした。今の福郎師匠は洒脱な感じのベテランです。やらはった噺は「鶴飛脚」私は初めて聞く話です。この噺、新作です。作者は田中啓文さん。田中さんは落語にも造詣が深く、月亭文都さんと「ハナシをノベル」というイベントをやってはった。だから文都さんがこの噺をやるのなら判りますが、森乃福郎師匠がやらはったのは意外でした。
 さてトリ前は桂あさ吉さん。まくらで、最初米朝師匠に入門志望して「ワシはもう弟子は取らんのや」断られ、吉朝師匠に入門した経緯など、長いまくら。「トリ前の私の仕事は時間調整」トリはだいたい大きめの噺をやるから時間はだいだい判ります。寄席では誰がどんな噺をやるかは決まってません。前の演者が何をやったか、客の様子などを考えて、いまからどんな噺を高座にかけるのかを決めるのです。ですから演者によって高座の時間に長短がでます。でも最後の時間をだいたいは決めなくてはなりません。お客さんのこれからの都合もあるでしょう。あさ吉さんは自由に長短が調整できるまくらで時間調整をしてはったんですね。やらはったの短めの噺「味噌豆」です。
 さて、本日のトリ。笑福亭松枝師匠です。松枝師匠はいつもまくらで、「せっかくですから、みなさん、ウチに遊びに来てください」と、具体的な住所と電話番号をいわはる。これが本物かどうか判りません。ただ松枝師匠はいつもまくらでいわはるから実害はないのでしょう。やらはったのは大ネタ「宿屋仇」です。


パーキングエリア

2021年10月13日 | 本を読んだで
 テイラー・アダムス   東野さやか訳          早川書房

 登場人物は6人。舞台は雪に閉ざされた山中のパーキングエリア。こういう設定で434ページの長編を読ませてしまう。100枚前後の短編にしかならないと思うのだが。読みはじめから読了までだれることなく一気に読ませてしまう。この作者たいへんな腕力だ。
 重いガンの手術を受ける母を見舞うため、女子大生ダービー・ソーンは雪道をホンダ・シビックで走っていた。雪はますますひどくなり、ワイパーも破損した。とりあえず山の中のパーキングエリアに避難する。休憩所には4人の先客がいた。ダービーは駐車場に止められたバンの中に少女が閉じ込められているのを目撃する。4人の中に誘拐犯がいるのだ。あの子を助けなきゃ。ダービーは決心する。夜のことである。
 外は猛吹雪。除雪車が救援にくるのは明日の朝。警察に連絡したいが携帯の電波がエリア外。バッテリー残量も少ない。ダービーは墓石の拓本集めが趣味のただの美術専攻の女子大生。格闘技も身につけていない。武器もない。持っているのは小さなアーミーナイフだけ。犯人は銃を持っているだろう。女の子は難病で定期的にステロイド剤を注射しなくては命にかかわる。4人のうちだれが犯人か、だれが味方か判らない。
 さあ、どうする。ダービーは女の子を助けることができるのか。
 


SKAT.20

2021年10月12日 | 本を読んだで

第58回宣伝会議賞実行委員会編          宣伝会議

 昨年の宣伝会議賞に応募して1次審査通過以上の作品が掲載してある。小生も応募したが結果は秘密。一つの課題に実に多くの人が多くの作品を応募している。一人の人間が考えることに限界があるのがよく判る。小生も、とりあえず全課題を考えたが、なるほど、そういう切り口、考え方があったのかと勉強になるなあ。
 グランプリは商工組合中央金庫の
 なかなか見どころのある悩みをお持ちですね。
と、いうコピーであったが、小生の選ぶグランプリは次の作品だ。1次審査にすら通ってなかったようだが、審査員の福部明浩さんが紹介していた作品。新ビオフェルミンの課題に応募されたラジオCM。
女の子「ママ、お腹痛い」
ママ「お腹痛いの?痛いの痛いの、飛んで・・・」
女の子「やめてママ、飛んでった先の人がかわいそう」
NA「お腹が痛くなったら、新ビオフェルミン」
 福部さんは、これがグランプリだとおっしゃっていたが、小生も同感だ。
 新型コロナまん延による感染症のこわさをやさしく底流に流しつつ、登場人物の優しさ、そこに商品である新ビオフェルミンを印象づける。実に見事な広告になっている。

定吉七番シリーズ4 ゴールドういろう

2021年10月11日 | 本を読んだで

 東郷隆        角川書店

 大好評上方ドタバタアクション第4弾。殺人許可証を持つ丁稚定吉七番の今回の相手は小豆を市場から抹消して、京都伝統和菓子を壊滅に追い込む悪者。名古屋の富豪で和菓子屋の鯱鉾屋金蔵は日本政府が某所に保管している国有羊羹の貯蔵所に攻撃をしかけて小豆相場を牛耳って和菓子界制服をたくらむ。それを阻止するため定吉は敵の本拠地名古屋に乗り込む。
 このシリーズ、いうまでもなく007のパロディ。今回の本歌は「ゴールドフィンガー」だからできれば、「007ゴールドフィンガー」を観てからこれを読めばあちこちにやりとするだろう。
 007ではウェットスーツの男が海から上がってくる。ジェームス・ボンドだ。ウェットスーツを脱ぐとタキシードの正装。
 安治川からヘドロで汚れたウェットスーツの男が上がってくる。ガタロかいな。ウェットスーツを脱ぐと、唐桟の和服に草履の丁稚が現れた。定吉七番だ。
 と、いう具合に、今回はあちこちのもじりパロディが散りばめられて007ファンはニヤリくすくす。もちろん特別誂えの車も出てくる。本家のボンドカーはアストン・マーチンだが、こっちの定吉カーはダイハツスパイダー。英国製ではなく大阪は池田製である。
 ボンドは捕らわれて縛り付けられてレーザーで殺されそうになる。定吉も縛り付けられて殺されそうになる。こっちはレーザーではなく、納豆が一粒づつ落ちてくる。関西人の定吉に納豆が当たると・・・。ワシ(雫石)も関西人だから、このシーンは怖かった。あないな腐れ豆が肌に当たると死んでまうで。
 悪の首魁鯱鉾屋金蔵が本家のゲルト・フレーベそっくりなのも笑わせる。

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。

息の重さあるいはコトバ五態

2021年10月09日 | 本を読んだで

  服部誕    書肆山田


 畏友服部誕氏からご恵送いただいた詩集。服部氏6冊目の詩集となる。小生、詩は書いたことがない。と、いうか小生は逆立ちしても詩はかけない。だから、こうして6冊も詩集を出している人は敬服する。
 もちろん一読させていただいた。詩は散文と違って感性だけで書かれているようだが、この詩集は感性だけではなく、しっかりした設計とそれを実作に仕上げる確かな文章作成技術が感じられる。

SFマガジン2021年10月号

2021年10月08日 | 本を読んだで

2021年10月号 №747       早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 鎧う男        平山瑞穂
2位 メガ奥46K      三方行成
3位 時間の王       宝樹 阿井幸作訳
4位 年年有魚       S・チョウイー・ルウ 勝山海百合訳
5位 環の平和       津久井五月
6位 従属人間は容認しない 上遠野浩平
未読 主観者(後編)    春暮康一

連載    
アグレッサーズ 第6話・激闘(承前) 戦闘妖精・雪風 第4部
              神林長平
マルドゥック・アノニマス(第38回)  冲方丁
空の園丁 廃園の天使Ⅲ(第10回)   飛浩隆
幻視百景(題33回)          酉島伝法

1500番到達記念特集
ハヤカワ文庫JA総解説 PART2

 今号の1位平山瑞穂の「鎧う男」久しぶり。1年ぶりかな。小生はこの作家を高く評価している。発表頻度上げて欲しい。
 上遠野浩平のウトセラ・ムビョウシリーズが今号も載っているが、このシリーズはまったくおもしろくない。載っているからイヤイヤ読んでいるが苦痛なだけである。
 特集はハヤカワ文庫JAの総解説。なかばでございます。

 

足ながおじさん

2021年10月04日 | 映画みたで

監督 ジーン・ネグレスコ
出演 フレッド・アステア、レスリー・キャロン

 ミュージカルである。たしかタモリだったかな。ミュージカルが大嫌いだといったのは。普通にしゃべって芝居をすればいいモノを、とつぜん踊って歌い出す。違和感が大いにあるというわけ。小生もタモリ氏に賛成のところもあるが、「サウンド・オブ・ミュージック」のように良くできたミュージカルは好きだ。また、タモリのいうミュージカルの違和感を逆手に取った「ダンスウィズミー」のような佳作もある。
 いずれにしてもミュージカル映画は出演する役者の芸に負うところが大きい。「サウンド・オブ・ミュージック」はジュリー・アンドリュースの芸達者があったればこそだ。
 ミュージカルは歌と踊りを見せる映画。かといて、ずうっと、ただただ歌と踊りをひたすら見せるだけで退屈なだけ。どういうストーリーに歌と踊りをからませるかが大切。この映画の場合、有名な「足ながおじさん」のストーリーだ。
 貧しい孤児の女の子を大富豪が、自らの正体をあかさず支援する話だ。とうぜん、この大富豪と女の子が歌って踊るわけだから、この二人の芸がこの映画の生命。大富豪はハリウッド全盛期時代きっての芸達者フレッド・アステア。アステアの芸を満喫した。女の子役のレスリー・キャロン。この人の踊りがすごくうまい。(小生の昔のガールフレンドにバレリーナがいるからバレーはよく見た/見せられた)それもそのはずキャロンは女優になる前はバレリーナだった。
 フレッド・アステアとレスリー・キャロン。芸達者二人の芸を満喫した映画であった。