ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

愛しのワンダーランド

2022年09月27日 | 本を読んだで
野田昌宏              早川書房

「スペース・オペラの書き方」に続く、野田大元帥の「SFへの愛情たっぷりエッセイ」の2冊目の本。小生がSFもんになった、ん十年前、SFマガジンでまず目を通すのは野田さんのエッセイだった。小生にとって野田さんはSFの面白さ楽しさを教えてくれた大恩人といえる。
「スペース・オペラの書き方」では、スペース・オペラ=宇宙冒険大活劇の楽しさをノダコウ節で堪能させていただいた。
 本書はスペース・オペラに限定しないで、SFの魅力をたっぷり満喫させてもらう。それもSFの黄金期といってもいい、1950年代のアメリカSFを基調にSFの魅力を語る。特に御三家というか3本柱ともいうべき、クラーク、アシモフ、ハインラインの読むべき代表作を紹介。これらの本はSFもんとして必須科目だ。あと、ブラッドベリ、ブラウン、シェクリイ、そしてもちろんハミルトンにも言及されている。いやあ、SFっていいもんだなあ。

ジュマンジ

2022年09月20日 | 映画みたで

監督 ジョー・ジョンストン
出演 ロビン・ウィリアムス、ボニー・ハント、キルスティン・ダンスト、ブラッドリー・ピアース

 はでなエンタメ作品を形容するのに、よく使われる「おもちゃ箱をひっくり返したよう」という言葉がある。この映画はまさにその言葉がぴったりな映画である。おもちゃ箱をひっくり返したような映画である。
 大きな靴製造会社社長の息子アランはいじめられっ子。きょうもいじめられ自転車を取られる。そんなアラン、工事現場で「ジュマンジ」というボードゲームを見つけて持って帰る。
 自転車を取り戻し持って来てくれたガールフレンドのサラと「ジュマンジ」をする。サイコロを振ったらコウモリが大量にわいて出た。アランはゲーム版に吸い込まれた。
 それから26年。アランの家は空き家になっていた。そこにジュディとピーターの姉弟が叔母と住むことになった。働きに出た叔母の留守中姉弟はそこにあったボードゲームで遊ぶ。とつぜん巨大な蚊が出てきた。そしてターザンみたいなおっさんも。実はこのおっさん大人になったアランだ。サイコロを振ればライオンがでるわ猿の大群は出るわで大さわぎとなった。アランはいうこのゲーム始めたメンバーで最後までやって「あがり」にしなければ騒動はおさまらない。アラン、ジュディ、ピーターとあとサラが要る。アランは大人になったサラを説得4人でゲームをする。サイコロを振るたびにいろんなもんが出てくる。猟銃をぶっぱなすレトロなかっこうしたハンター。巨大な肉食植物。ゾウやサイなどサバンナの動物の群れ。大洪水、大地震。サイコロを振るまで何が出てくるかわからん。しかもこれらのモノが街に被害をもたらす。ハンターのおっさんは銃を乱射。猿どもは車を暴走させる。ゾウやサイが走り回って大さわぎ。
 いやあ、面白かった。なにが出てくるかワクワクする。最後は別の時間の流れになってめでたしめでたし。大さわぎで大災厄だが流血ざたはなく、悲惨さはまったくなくおかしさだけが残った娯楽映画の佳品だ。

たかが殺人じゃないか

2022年09月16日 | 本を読んだで

辻真先         東京創元社

辻真先さん、今年で90才。かようなご高齢でこんなみずみずしいミステリーをお書きになるとは敬服のいたり。辻さんは日本のアニメの創成期からかかわってこられた。アニメ、ミステリーをいったSFと親和性の高い分野の大先達である。小生もお目にかかったことがある。たしか星群祭にも一般参加者としてこられたことがあった。たいへんに気さくな人だった。
 サブタイトルが「昭和24年の推理小説」とあるとおり、そのころが舞台が小説である。旧制中学から新制高校に変わった直後のこと。主たる登場人物は男女共学1期生の新高校生5人と彼らのクラブの顧問の先生。
 主人公は料亭の息子でミステリーマニアの高校3年生風早勝利。かれは長編ミステリーを執筆中。あと、勝利の友人大杉日出夫。上海から帰国子女咲原鏡子、お嬢様の薬師寺弥生、優等生神北礼子。この5人の高校生は推理小説研究会で映画研究会。この二つクラブの顧問は別宮操先生。そして探偵役に別宮先生の友人那珂一平。
 殺人事件は2件。一つは密室殺人。被害者は高名な評論家。もう一つはバラバラ事件。被害者は市議会議員。二人とも名のある人物だが、人格高潔聖人君子では決してない。
 で、犯人は?動機は?ヒントは昭和24年ということ。終戦から4年しかたっていない。被害者の一人が生前こんなことをいっていた。「戦争で何万という人が殺された。ワシのやったことは、たかが殺人じゃないか」犯人がいう「私はあいつらを殺したことを、ただ一度も後悔したことはない」

ペリカン文書

2022年09月12日 | 映画みたで

監督 アラン・J・パクラ
出演 ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン

 最高裁判事が立て続けに二人殺害される事件が起きる。法学部の女子大生ダービー・ショウはこの事件に興味を持ち、独自に調べレポートを作成する。それを担当のキャラハン教授に提出する。キャラハンは「なかなか面白い仮説」といって友人のFBI職員に見せる。そのダービーのレポートの内容がなぜかFBI上層部に伝わり、CIAまで動き出す。
 そしてキャラハン教授が爆死。何者かに殺害されたのだ。ダービーの調べたことは偶然にも、大きな疑獄事件の真相をあばいたらしい。某大企業の利権がからむ、大統領まで巻き込む大きな問題に発展する。
 ダービーはことの真相を公表するためヘラルドの記者グランサムに接触。二人は命がけで真相に追う。
 どこやらの国の首相は、モチカケサクラとさんざん問題を起こしながら、なんら納得のいく説明しないまま彼岸へ行ってしまった。自分の良心に従った一人の公務員が亡くなった。だれがこの公務員を死においやったのか、未だに判らない。この映画では二人の判事を殺したのはだれか、悪いヤツはきっちり訴追され、大統領も再選が不可能となった。
 グランサム一人がテレビに出てダービーが書いた「ペリカン文書」を公表する。
インタビューアーに聞かれる「このダービー・ショウって誰ですか。架空の人物という憶測がなされていますが」「そうかも知れません」
 日本にはダービー・ショウはいないのか?日本にはダービー・ショウの替りに山上徹也がいた。「ペリカン」の替りに「統一教会」の問題があきらかになった。