午前中会社で仕事して神戸から大阪へ移動する。天満天神繁盛亭に行く。神戸のイナカもんが大阪に久しぶりに来ると人の多さにとまどう。JR東西線の大阪天満宮で降りて、天神橋筋商店街に出る。すぐそこの天ぷら屋えびのやに入る。小生は繁昌亭のときはこのえびのや、神戸新開地喜楽館の時はグリル一平で食事をすることが多い。1時半の開場まで少し時間がある。小生は座る場所さえあれば時間がつぶせる。本を読むからだ。繁昌亭の時は天満宮の休憩所で喜楽館の時は湊川公園のベンチで本を読んでいる。
時間が来た。広瀬正の「マイナス・ゼロ」を閉じて繁昌亭に入る。今週は「笑福亭たま第16回繁昌亭大賞受賞記念ウィーク」ということで、たまさんがずっとトリを務める。笑福亭たまさんは小生は買ってる上方の落語家さんの一人。
開口一番は月亭希遊さん。少しおかしな噺をしますということで「犬の目」無難にまとめてはったけど、もう少し「石段」で登壇する必要がありそう。
2番手は桂佐ん吉さん。やったのは「時うどん」。吉朝門下らしく「ひっぱりな」がない「時うどん」この「時うどん」落語会に行くと聞くことが多い。落語会は演者がなにをやるかは高座に上がって決める。この「時うどん」は何をやろか悩んだら「時うどん」をするんではないのか。佐ん吉さんクラスの噺家さんなら別の噺をしてほしかったな。
3番手は笑福亭の中堅笑福亭游喬さん。少し変わった噺をしましょうということで「尻餅」をやった。こないだの喜楽館では桂吉弥さんがこの噺をやった。きせずして米朝一門と笑福亭の「尻餅」の聞き比べとなったが。吉弥さんが技の「尻餅」に対して遊喬さんはパワーの「尻餅」だ。
モタレ前の色もんは豊来家玉之助さんの大神楽。伝統的な和風曲芸だが、こういう色もんは曲芸の技は出来て当たり前で、その技と同じぐらい大切なのは話術。だまって傘の上で玉を回しているだけでは間がもたん。技と技の間をつなぐ話術が場をつなぐ。玉之助さんの話術は楽しかった。
仲入り前は桂米紫さん。「宗論」をやらはった。大爆笑や。老舗の仏壇屋の若旦那が熱心なカソリック信者になる。浄土真宗の大旦那と宗教論争を繰り広げる。イエス・キリストVS阿弥陀さん。ずっとハイテンションで、全編大笑いの爆笑落語となった。しかし、この米紫さん、塩鯛師匠のお弟子さんで、桂都んぼといったたころとは比べもんにならんぐらいに大爆笑噺家に成長した。
さて、仲入り。仲入りの時はトイレにいくのやが、ワシは繁昌亭のトイレは混むので、いつもは外に出て天満宮のトイレに行くのやが、この時は雨が降ってたから並んで繁昌亭にトイレに行った。
仲入り後は記念口上。米紫さんが司会で、たまさん、遊喬さん、桂三象さんがならんどる。普通は高座を撮影するのはあかんけど、口上だけは撮影OKというこやった。遊喬さん、いきなり矢沢栄吉の歌を歌いだす。たまさん、いつになく真面目。ま、ワシも襲名披露さんか、なんどか落語家の口上を聞いてきたけど、たいてい対象者をイジるもんやが、この時も遊喬さんがたまさんをイジってた。そこでたまさんもそろそろ別のそれらしい名前にしたらどや、いってたがワシも賛成や。いっそのこと8代目松鶴になったらええんちゃうん。仁鶴もいのなったことやし。
トリ前は桂三象さん。6代文枝一門やけど地味な噺家さんや。あまり見かけない。派手さはないけど、けっこう味のある落語家さんやな。代理で墓参りをやる商売の男の噺「代参」をやった。最後のオチは「骨つり」のオチといっしょの噺やな。
さて、トリはもちろん笑福亭たまさん。マクラはSR=ショート落語。ワシら古い上方落語ファンはSRというと枝雀師匠のを想い出すけど、たまさんのSRは枝雀師匠とは味わいが違っておもしろい。「猫の忠信」をやったのやけど、おもろなかったら「寿限無」に替えるでということやったけど、「猫の忠信」を最後までやらはった。もちろん、大爆笑。この不思議なSFっぽさがある噺をみごとたま落語にしあげてた。たまさんの「寿限無」も聞きたかったな。
大笑いして繁昌亭を出ると雨はやんでいた。