ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

繫昌亭の笑福亭たま第16回繁昌亭大賞受賞記念ウィークに行く

2022年04月30日 | 上方落語楽しんだで

 午前中会社で仕事して神戸から大阪へ移動する。天満天神繁盛亭に行く。神戸のイナカもんが大阪に久しぶりに来ると人の多さにとまどう。JR東西線の大阪天満宮で降りて、天神橋筋商店街に出る。すぐそこの天ぷら屋えびのやに入る。小生は繁昌亭のときはこのえびのや、神戸新開地喜楽館の時はグリル一平で食事をすることが多い。1時半の開場まで少し時間がある。小生は座る場所さえあれば時間がつぶせる。本を読むからだ。繁昌亭の時は天満宮の休憩所で喜楽館の時は湊川公園のベンチで本を読んでいる。
 時間が来た。広瀬正の「マイナス・ゼロ」を閉じて繁昌亭に入る。今週は「笑福亭たま第16回繁昌亭大賞受賞記念ウィーク」ということで、たまさんがずっとトリを務める。笑福亭たまさんは小生は買ってる上方の落語家さんの一人。
 開口一番は月亭希遊さん。少しおかしな噺をしますということで「犬の目」無難にまとめてはったけど、もう少し「石段」で登壇する必要がありそう。
 2番手は桂佐ん吉さん。やったのは「時うどん」。吉朝門下らしく「ひっぱりな」がない「時うどん」この「時うどん」落語会に行くと聞くことが多い。落語会は演者がなにをやるかは高座に上がって決める。この「時うどん」は何をやろか悩んだら「時うどん」をするんではないのか。佐ん吉さんクラスの噺家さんなら別の噺をしてほしかったな。
 3番手は笑福亭の中堅笑福亭游喬さん。少し変わった噺をしましょうということで「尻餅」をやった。こないだの喜楽館では桂吉弥さんがこの噺をやった。きせずして米朝一門と笑福亭の「尻餅」の聞き比べとなったが。吉弥さんが技の「尻餅」に対して遊喬さんはパワーの「尻餅」だ。
 モタレ前の色もんは豊来家玉之助さんの大神楽。伝統的な和風曲芸だが、こういう色もんは曲芸の技は出来て当たり前で、その技と同じぐらい大切なのは話術。だまって傘の上で玉を回しているだけでは間がもたん。技と技の間をつなぐ話術が場をつなぐ。玉之助さんの話術は楽しかった。
 仲入り前は桂米紫さん。「宗論」をやらはった。大爆笑や。老舗の仏壇屋の若旦那が熱心なカソリック信者になる。浄土真宗の大旦那と宗教論争を繰り広げる。イエス・キリストVS阿弥陀さん。ずっとハイテンションで、全編大笑いの爆笑落語となった。しかし、この米紫さん、塩鯛師匠のお弟子さんで、桂都んぼといったたころとは比べもんにならんぐらいに大爆笑噺家に成長した。
 さて、仲入り。仲入りの時はトイレにいくのやが、ワシは繁昌亭のトイレは混むので、いつもは外に出て天満宮のトイレに行くのやが、この時は雨が降ってたから並んで繁昌亭にトイレに行った。
 仲入り後は記念口上。米紫さんが司会で、たまさん、遊喬さん、桂三象さんがならんどる。普通は高座を撮影するのはあかんけど、口上だけは撮影OKというこやった。遊喬さん、いきなり矢沢栄吉の歌を歌いだす。たまさん、いつになく真面目。ま、ワシも襲名披露さんか、なんどか落語家の口上を聞いてきたけど、たいてい対象者をイジるもんやが、この時も遊喬さんがたまさんをイジってた。そこでたまさんもそろそろ別のそれらしい名前にしたらどや、いってたがワシも賛成や。いっそのこと8代目松鶴になったらええんちゃうん。仁鶴もいのなったことやし。
 トリ前は桂三象さん。6代文枝一門やけど地味な噺家さんや。あまり見かけない。派手さはないけど、けっこう味のある落語家さんやな。代理で墓参りをやる商売の男の噺「代参」をやった。最後のオチは「骨つり」のオチといっしょの噺やな。
 さて、トリはもちろん笑福亭たまさん。マクラはSR=ショート落語。ワシら古い上方落語ファンはSRというと枝雀師匠のを想い出すけど、たまさんのSRは枝雀師匠とは味わいが違っておもしろい。「猫の忠信」をやったのやけど、おもろなかったら「寿限無」に替えるでということやったけど、「猫の忠信」を最後までやらはった。もちろん、大爆笑。この不思議なSFっぽさがある噺をみごとたま落語にしあげてた。たまさんの「寿限無」も聞きたかったな。
 大笑いして繁昌亭を出ると雨はやんでいた。





小説伊勢物語 業平

2022年04月29日 | 本を読んだで

高樹のぶ子      日本経済新聞出版

 ワシは神戸は東灘の住民や。少し東に行くと芦屋川がある。その芦屋川にかかる国道2号線の橋を業平橋という。この小説の主人公在原業平の屋敷がこのあたりにあったとか。
 上方落語ファンの小生にとって、在原業平といえば「ちはやふる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは」という歌の作者という認識しかない。竜田川という相撲取りがちはやという太夫に惚れて相撲取りをやめて故郷の奈良で豆腐屋をやる。という解釈以外に竜田川に流れる紅葉の美さを詠んだという解釈があるから、いつ業平が奈良へ行くんやろと思って読んでいたが、伊勢には行くがいっこうに奈良へは行かない。これ、ほんまは業平は屏風の絵を見て詠んだ歌やねんて。初めて知ったわ。
 ワシは日本の古典はなじみがのうて「伊勢物語」は読んだことがない。在原業平が主人公の歌物語で、時系列がバラバラで読んでもよう判らんらしい。で、高樹さんがそれを整理して現代人でも判りやすく読める小説にしたのが本書だ。
 確かに読みやすいうえに、独特のですます調の文章で平安朝の雅な雰囲気がよく出ていた。もちろん業平の歌をはじめ業平以外の歌人の歌もでてくるが、その歌の解釈の文章が、古典の教科書的ではなく、自然に小説の流れを止めずに記述されている。高樹のぶ子さんはさすがに手練れの文章家だ。

プロジェクト・ヘイル・メアリー

2022年04月27日 | 本を読んだで

アンディ・ウィアー     小野田和子訳   早川書房

 太陽の熱を吸い取る微生物が太陽系にまん延している。このままでは数年後に太陽の熱は大幅に減少して氷河期が到来する。人類は壊滅的な被害を受けることは確実。どうもその微生物アストロファージは近隣の恒星系にもまん延しているらしい。これはえらいこっちゃ。どないかせなあかん。と、いう話しである。
 で、たった一人でどないかせなあかん羽目になったのが、中学の先生グレース博士。なんで中学の先生が人類の救世主になったのか。先生にはどんな能力があんのか。ともかくアストロファージなるやっかいなもんを、どないかせなあかん。今のコロナまん延は地球上だけの話しやけど、これは太陽系のみならず銀河系にまでおよぶ感染症である。そないな感染症をどうして終束させるのか。ここでなにを書いてもネタバレになるので書けん。
 少しだけネタバレしてみよう。グレース先生は宇宙船ヘイル・メアリー号で人類を救う恒星間航行に出立したんやが、他の乗組員二人は死んでしもて、先生一人生き残った。で、下巻になって先生に実に頼もしい相棒ができる。その相棒とは?中学で機嫌よく生徒たちに科学を教えとった先生を宇宙へ送り込んだのは、ストラットというおばさん。このおばさん、ものすごく有能で強引だけど妙な魅力がある。
 そしてヘイル・メアリー号の最後の切り札がビートルズ。ポール、ジョン、リンゴ、ジョージ。この4人?が人類を救う。

ククーシュカ ラップランドの妖精

2022年04月25日 | 映画みたで

監督 アレクサンドル・ロゴシュキン
出演 アンニ=クリスティーナ・ユーソ、ヴィッレ・ハーパサロ、ヴィクトル・ヴィチコフ

 戦争やってるけど、ぼくはもう戦うのはやめたんだ。こいつはナチだと思ってたけど違ってたんだ。だったら友だちだな。この男二人どこのだれだか知らないけれど、私が面倒見なくちゃいけないらしいわ。という3人の映画。登場人物はサーミ人の女、フィンランド人の男、ロシア人の男。舞台はフィンランドの北の方、人工のモノはまったくない。寒そうな大自然。そこで小屋を建てトナカイを育てながら暮らすサーミ人の女一人。そこに男二人が転がりこむ。二人とも軍人。女はサーミ語しかしゃべれない。男はフィンランド語、ロシア語しか判らない。言葉がまったく通じない同士の3人が奇妙な共同生活をする。戦争はまだやってるらしい。フィンランドはどうも降伏したらしい。
 ウクライナで戦争している今、この映画を観ると、いまどきなんて愚かななことをと思う。この映画の軍人二人、有能な軍人ではない。二人とも自分の軍隊では罪人。フィンランド兵はナチの軍服を着せられて鎖で岩につながれる。味方に殺されるかもしれない。ロシア兵は罪人として連行されている途中戦闘機に襲われて彼一人生き残った。この二人、軍人として落第でも、人間として上質の人間であることが映画を観ていると判る。
 サーミ人の女。歳は若いが二人の保護者となる。この地で生きていくための知識を多く持っている。どんな病気でも薬を作って治療する。トナカイの乳をしぼり仕掛け罠で魚を捕る。極めつきは、銃で胸を撃たれ死にかけていても、祈りとまじないで治す。3人のうちで一番大きな人間は、このサーミ人の女だろう。
 

水だし

2022年04月23日 | 料理したで

 和風のだしが必要になれば、昆布と鰹節あるいはいりこなどを用意して、加熱してだしを取るだろう。その和風のだしが少しだけ要るときがある。大さじ1杯とか2杯とか使うときに、昆布と鰹節を火にかけてだしを取るのはいささかめんどう。で、小生はこういうモノを冷蔵庫に常備している。昆布、鰹節、水を小びんに入れたモノだ。こうしておけば半日ほどでじゅうぶんにだしがでる。ただし昆布と鰹節は良いモノを使いたい。小生は昆布は羅臼、鰹節は厚削りのモノを使っている。もっとたくさん欲しい時はジョージアムーンの空びんを使う。あのウィスキーまずかったけど空びんは役に立っている。

思い出せない一人

2022年04月22日 | 作品を書いたで
 ずいぶん久しぶりのクラス会だ。神戸市立H中学を卒業して半世紀五十年。紅顔の美少年美少女だったわれわれも還暦をとうに過ぎている。
 中学卒業以来、一度だけクラス会をやった。三十年前だ。
 六甲山から吹き下ろす北風が寒い。そごうの南側のビル。ここの五階だ。ここのカニ料理屋がクラス会の会場。五階へ上がるエレベーターを待っていると、ポンと肩をたたかれた。にこにこ顔のご婦人が立っていた。
「湯沢くん。やね」
 少しだけ、私の中に残っていた「少年」がときめいた。
「山口さん」
「そ。今は徳林やけど」
 私と同級生だから六五歳だ。年齢的には充分老人だが、ばあさんっけがない。奥の方に可憐なところが残っている。
 山口悦子。中学のころ、密かにあこがれていた女の子だった。五十年前のことだ。
「ほか、だれか来てる?」
「さっきエレベーターに乗ったのがおったけど」
「だれ」
「わからん」
 山口=徳林と二人でエレベーターに乗る。このコと二人だけ。五十年ぶりに念願が叶ったわけだけれど、ときめく少年の心はものすごく小さくなったから平然としている。
 五階でエレベーターを降りる。すぐ前が店の入り口。先客が三人待っていた。女性二人と男性一人。
「悦子、全部で何人になるの」
 女性の一人橋田が山口に聞く。
「十一人」
 山口と橋田が幹事だ。
「木下やな」
「うん」
 男は私と仲が良かった木下健二だった。
「ひさしぶりやな」
「そや。三〇年ぶりや」
「じいさんになったな」
「おたがいさまや」
 六五歳なんだから二人とも充分にじいさんである。じいさん木下の中に少しだけ中学生の木下が見える。
「あんたたち三人が最初?」
 山口が聞く。
「いいや、一人先にだれか来てたみたいやけど」
「だれや」
「わからん」
「男?女?」
「わからん」
「どこ行ったの」
「さあ、トイレにでもいったんとちゃうか」
 エレベーターが止まって扉が開く。あとの参加者たちがガヤガヤと出てきた。思い出話の花が咲く。 そうこうしているうちに時刻になった。
「全員そろいました。はじめましょうか」
 幹事の橋田がそこにいるみんなに声をかけた。
 参加者全員十一人がそろった。みんな座敷に座っている。十一人いるということは、一番最初に来た人物もここにいるということだ。十人の顔をひととおり見渡したが、山口、橋田、それに橋田といっしょにいた平良と木下。あとはエレベーターでいっせいにやって来た連中だ。すると、一番最初に来たのはだれだろう。
「先生は連絡つかなかったのか」
 前回は担任の中橋先生にも参加してもらった。あのとき先生は還暦だった。還暦のお祝いの品を贈ったのを覚えている。あれから三〇年。先生九〇歳になっておられるはず。橋田が暗い表情になった。
「先生は地震で亡くなったの」
 いまから二七年まえ、この地は大きな地震に襲われた。六千人以上の方が亡くなった。先生もその中の一人だった。
 それから地震の話となった。ここにいる十一人は全員あの地震を経験している。
「あのとき、あたし炊き出しのボランティアしてたの」
 橋田がいった。
「うん。覚えてる。ワシに豚汁よそってくれたな」
 近くの市立小学校に避難していた。地区の小学校だから、何人かは知った顔もあったが、橋田以外中学の同級生とは出会わなかった。「あんた以外とは三〇年ぶりやな」
「いや、あたしといっしょにボランティアやってた人がいたはずよ」
「だれや。おんなじクラスの子か?」
「そのはずやけど」
 橋田といっしょにボランティアやってた同じクラスの人物がいたようだが、どうも印象のうすい人物だったらしく橋田はよく覚えていない。
「それでは学級委員長だった山口さんに乾杯の音頭をとっていただきます」
 橋田の指名を受けて山口が立ち上がった。「ではH中学三年九組の健康を祈って、かんぱあい」
「長寿も祈った方がいいぞ」
 木下がちゃちゃを入れた。
「では、長寿も」
 店の仲居が鍋のコンロに点火した。カニの鍋以外の料理も並んだ。ビールだけでなく日本酒も出てきた。
 料理に箸を伸ばし、酒をさしつさされつ。なにせ三〇年ぶりである。酒の肴になる話のネタはたくさんある。
「お、これ、カラオケの機械やないの」
 部屋の隅に置いてある機械が目についたらしい。
「おねえさん、カラオケできるんか」
 木下が仲居に聞いた。
「できます」
 それからカラオケ大会となった。酒もすすんで、ずいぶん酔っぱらってきた。酔眼朦朧の目でみなを見渡す。みな歳を取った。一人一人の顔を見る。少年少女の面影があって、それぞれ思い出のある顔だ。
 ん、まてよ。あいつはだれだったかな。どうしても思い出せないヤツが一人いる。そういえば影のうすいヤツがいたような気がする。あいつがこいつか?
「では、最後に校歌を歌いましょう」
「ええ、校歌忘れたわ」
 だれも校歌を覚えていない。その時、そいつが立ち上がって校歌を歌い出した。
「海も深江のチヌの海、六甲おろしにほほ染めて」
 完璧に三番まで歌った。思い出した。あいつは音楽の先生にいつも褒められていた。絶対音階の持ち主だと。
  
  

帰らざる河

2022年04月20日 | 映画みたで

監督 オットー・プレミンジャー
出演 マリリン・モンロー、ロバート・ミッチャム

 ハリウッドを代表するアイドル、というよりアメリカ人男性の永遠のアイドルといえばマリリン・モンローではないだろうか。金髪碧眼メリハリのあるボディ。アメリカ人美女の代表。ではあるが、小生、マリリン・モンローといえば、カラダと顔は一級品だが、おつむの中はからっぽという偏見を持っていた。で、この映画を観て、モンローを見直したしだい。
 旅をする西部劇である。西部劇の旅といえば馬での旅だが、この映画は違う。イカダで急流下りをするのである。小生もいろんな西部劇を観てきたが、急流下りをする西部劇は初めてだ。
 マットは別れていた9歳の息子と再会し町はずれで農業をやっていた。川をイカダで下る男女を救助する。女は酒場の歌手。男はギャンブラー。女ケイは息子マークに親切にしてくれていた。男はマットを殴り倒し馬と銃を取って逃げた。その後アメリカ先住民たちが襲ってきた。マット、マーク、ケイはイカダで逃げる。
 お目当てのマリリン・モンローはイカダに乗っているときは、美脚をジーンズで包んでいたが、酒場で歌う時は美脚を披露してくれる。だからモンローの魅力を堪能することができる。マリリン・モンロー、かようなビジュアルだけの女優ではないな。なかなかのうまい女優さんだ。酒場の芸人という境遇から足を洗いたい。いちるの望みを金鉱のオーナーになったという男に託す。ところが、この男、どうもいかさまギャンブラーでろくでなし男のような。そんな男に頼ってでも今の生活からぬけだしたい。マットが男を殺すというのを、なんとか止めて、いかさま男を説得しに行く。このあたりのしっかりしつつも哀しい女ごころが良く表現されていた。
 この映画を観て思ったのは、アメリカは銃と馬でできた国だ。馬が車に替わっただけで、今のアメリカは西部と変わらない。いくら乱射事件が起きて大惨事になっても、まったく懲りないのだ。

俺たちは天使じゃない

2022年04月18日 | 映画みたで

監督 二―ル・ジョーダン
出演 ロバート・デ・ニーロ、ショーン・ペン、デミ・ムーア

 落語に「餅屋問答」という演目がある。江戸では「こんにゃく問答」という。われわれ同様というブラブラ男が、餅屋の大将の世話で無人の荒れ寺の坊主になる。ニセ坊主ですな。ある日旅の雲水が禅問答を挑んでくる。負ければ寺をほうり出される。こまったニセ坊主が餅屋の大将に相談する。餅屋の大将が大和尚に化けて対応する。大将、ええかげんなんことやって雲水に勝つ。
 コソ泥の囚人ネッドとジムは殺人犯の脱獄につられて脱獄する。刑務所には戻りたくない。カナダとの国境近くの町に逃げてくる。そこで、ひょんなことから高名な神父と間違えられる。二人は神父になりすます。ジムは聴衆を前に神の言葉を伝える話しをする。みんなに感心される。若い神父などはジムに教えを乞う。二人は有徳の神父として町の人たちの尊敬を集める。
 餅屋の大将も脱獄犯二人も決して修行を積んだ宗教者ではない。そんな餅屋のオヤジやコソ泥でも、偉い坊主や神父になれるんだ。なんだか宗教者をバカにしてるような気がするけど。
 だいたいが坊主、神父、修道女なんて人たちは衆生の尊敬の対象としての認識がある。ところがほんまはそうではないとの本音があるのだろう。この映画などはニセ修道女だし、落語の「手水まわし」でも坊主をバカにしてる。「天王寺詣り」でも「下寺町への道がわからん坊主に十万億土の道が教えられるか、あのヤマコ坊主が」というくだりがある。
 どうも一般衆生は建前として尊敬してるけど、本音は、あんな、おるんかおらへんのか判らん神だの仏だのをメシのタネにしてる人たちを少しバカにしるのではないか。そんな映画であった。


すばらしき世界

2022年04月14日 | 映画みたで

監督 西川美和
出演 役所広司、仲野大賀、長沢まさみ、六角精児、橋爪功

 都会で住んでると、迷惑なアホはいるのである。たいていの場合がまんする。がまんできないで文句をいいに行くと、悪くすると暴力沙汰になる。でも、近くにがまんできないおっさんがおれば、おっさんが文句をいいに行ってくれるから自分は助かるのである。小生が子供のころ近所にそんなおっさんがおった。なにかあると文句をいってくれる。行政や警察にすぐ電話してくれる。大助かりであった。この映画の主人公三上はそんなおっさんである。
 曲がったことは大嫌い。弱い者がいじめられていると助けなければおれない。まことに真っ直ぐで正義感が強い。これが時代劇で清水の次郎長か幡随院長兵衛といった侠客なら人気者で浪曲や歌舞伎のネタになるのだが、三上もヤクザだが次郎長や長兵衛と違って現代の人間である。
 三上は13年ぶりに刑務所を出所した。人生の大半を組とム所で過ごしてきた男。こんどこそ絶対カタギになってやると固い決意で社会へ出た。
 保護司や役所の福祉関係の職員、知り合ったスーパーの店長たち、三上を親身になって応援する人もいるが、前科者の就職は難しい。
 と、こういう映画である。過ちを犯した人を許せる社会なのか。真正面から問いかけてくる。三上は出所してからも何度かきれて暴力をふるう。カツアゲを見て、許せんと思って被害者を助け加害者をボコボコにする。
 親身に応援する人はいるが、なかなか思うにまかせない。そして、封印していた電話番号に電話する。相手は応じてくれて、家に来いという。行く。ごちそうを並べて優しく歓待してくれた。その相手は若いころのヤクザ仲間。今は組の親分になっている。いつでも帰ってこいという。世間は冷たいが、昔のヤクザ仲間は温かく優しい。
 そんな三上は、やっと介護施設に就職できた。そこで障害のある職員が、仲間の職員にいじめられているのを目撃する。三上は見て見ないことにした。
 これでいいんだろうか?
  

喜楽館の元気寄席に行ってきました

2022年04月10日 | 上方落語楽しんだで
 先週の金曜日、喜楽館へ行ってきました。夜席です。定時まで会社におって、夕方の新開地へ出かけます。私は高校は湊川だったので、大昔のこの辺りのことは知っております。組のひとたちがずいぶんおられました。組といって、年中さん組や年長さん組ではありません。新開地もずいぶん変わりました。深窓のご令嬢が執事を連れずに、一人でお歩きになっても安心です。
 グリル一平で夕食を食べて、喜楽館にむかいます。といってもすぐそこですが。入場する前に5月の南光さんの会の前売り券を買いました。
 さて、入場します。今回は自由席です。通路側の席に座りました。開口一番は石段のお囃子で桂小留さんがお出ましになられました。小留さん、桂小枝さんのお弟子さんです。お師匠さんは探偵で不動産屋さんですが、小留さんは噺家さんんです。お師匠さんは粘着なおしゃべりですが、お弟子さんはオーソドックスなおしゃべりです。「大安売り」をやらはりました。とっても弱いお相撲さんの噺です。まったく勝てず、いろんな負け方をして楽しませてくれます、今年の阪神タイガースみたいなお相撲さんです。
 2番手は桂三四郎さん。高校は地元神戸の長田区の高校だったそうです。長田の高校といっても長田高校ではなく、その近くのIE高校ですって。今は共学ですが、三四郎さんが高校生のころは男子校で、なかなかコワイ高校だったそうです。毎日、だれかがだれかをどついてたんだそうです。
 福原はこの喜楽館の近くです。男が一人で福原に行ってきたといえば、このあたりでは、おかしな目で見られます。なぜでしょうね。その福原がらみで源平の噺です。福原は平清盛公が日本の首都にしたのです。(源氏の小せがれが余計なことをしなければ神戸は日本の首都だったんです
 源平の戦いのころのお噺です。「扇の要」屋島の合戦のおりの那須与一の逸話です。与一は扇の要を見事打ちぬいたのはご承知のとおりです。
 仲入り前のモタレは桂吉弥さん。予定では桂よね吉さんだったのですが、よね吉さん、コロナ陽性だそうで、吉弥さんは代打です。季節はずれですが、ということで師走のお噺です。「尻餅」です。お金がなくて餅がつけない男。でも、近所への見栄で餅つきの音だけでも立てたい。で、女房の尻を叩いてぺったんぺったん音を立てるのです。おかしくて少しセクシーな噺です。この噺、6代目笑福亭松鶴師匠が得意としてはった噺。それを先代の松喬師匠が受け継いで、桂米左さんが先代松喬さんに教わって、吉弥さんは米左さんに教えてもらったそうです。笑福亭から米朝一門のメインストリーを伝わった噺です。
 仲入り後。トリは桂八十八さんです。師匠米朝の俳名を受け継いで半年です。30年以上宗助だったので、まだ八十八はピンとこないそうです。八十八さんのお母さんは宗助をいう名前がたいそうお気に入りで、家では今も宗助さんでおるそうです。演じたのは「骨つり」です。先の男の釣った骨は若い美女。後の男が釣った骨はむくつけき大男。この対比が面白いです。
 この落語会は「元気寄席」といいます。このところ少し元気でない状態だったので、落語のおかげで元気になりました。

ハンシンは暗黒面に落ちたのか?

2022年04月09日 | 阪神タイガース応援したで
 遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・・。
強大な帝国軍に立ち向かう自由の戦士たちは苦戦を強いられていた。
 反乱軍のジェダイ、サトー・タイガーウォークはオビワン・ヤノ・ケノービに見いだされ自由反乱軍の第4軍の指揮をとっていたが思うどおりの戦いができない。
 今日も惑星コシエンの秘密基地ににモウリ星系のカプのシスが襲来した。立ち向かったコシエン守備隊長アキヤ隊長は緒戦に戦死。サトー・タイガーウォークはライトサーバーをふるって奮戦したがコシエン守備隊は全滅した。
 賢者はいう。自由反乱軍は軍全体がフォースの暗黒面に陥ったのではないか。しかし自由の戦士たちはまだあきらめていない。銀河帝国の秘宝「ワスレモノ」を手に入れるまでは。
フォースとともにあらんことを。

嗚呼、9連敗。

2022年04月03日 | 阪神タイガース応援したで
「さむれえを雇うだ」
 村人のリキチとモスケの相談をも持ちかけられた長老のギサクはそういった。
 ロッコ山のふもとのハンシ村は、今年になって三つの野ぶせりの襲撃を受けた。スワ党、コイ党に作物を根こそぎ持っていかれた。そして、大悪党ハラひきいるウサ党に、わずかに残った作物ばかりか、金、村の娘までさらわれてしまった。
「どうする。あと、ドラ党、ベイ党もやってくるのは確実、なんの武器も持ってない村人だけじゃ防ぎきれねえだ」
 で、知恵者の長老に相談に行ったわけだ。
 リキチとモスケは海を渡って侍を連れてきた。その7人とは。
リーダーはバース敢兵衛
     菊千代オマリー
     ウィリアムス平作
     マートン勝四郎
     スアレス五郎兵衛
     メッセンジャー七郎次
     ブラゼル久蔵
     

鷲は舞い降りた

2022年04月01日 | 本を読んだで

ジャック・ヒギンス    菊池光訳 早川書房

 戦後、イギリスのとある寒村に一人の作家がいた。墓がある。その墓にはクルト・シュタイナ中佐たちドイツ落下傘部隊13名が眠っている。なぜイギリスの寒村にドイツ兵の墓が?その作家の名はジャック・ヒギンス。
 その数年前、まだ戦争は終わっていなかった。ナチス親衛隊長官ハインリッヒ・ヒムラーは連絡文を受け取った。それにはこう書いてあった。「鷲は舞い降りた」
 山中に幽閉されていたムッソリーニをドイツの特殊部隊が救出した。盟友の救出に気を良くしたヒトラーは冗談みたいな作戦を思いつく。
 14才のユダヤ人少女がゲシュタポの将校に虐待されている。通りかかったクルト・シュタイナ中佐がいう。「恥を知れ」ゲシュタポから少女を救う。ナチスの中佐がユダヤ人を助ける。本来なら銃殺だが、極めて有能な将校で、勲章ももらっている勇士を殺すわけにはいかない。戦死してくれたら都合がいい。魚雷にまたがって敵艦を攻撃する任務に従事している。
 ヒムラーはヒトラーの冗談をまにうけて、本気で実現しようとする。実務を片目片腕で戦傷のため先が長くないマックス・ラードル中佐に命じた。ラードル中佐が実行部隊のリーダーに選んだのがシュタイナ中佐。
 イギリスの首相ウィストン・チャーチルがノーフォークの寒村スタドリ・コンスタブルに静養に来る。ナチスドイツの仇敵チャーチルを誘拐せよ。それがヒトラーの命令だ。
 主人公のシュタイナ中佐はもちろん、みんな魅力的。ノーフォークの「草」となってドイツに情報を送る女スパイジョウアナ・グレイ。スタドリ・コンスタブルに先乗りして事前工作を行うIRAの戦士リーアム・デブリン。デブリンが惚れる現地の少女モリイ・プライア。シュタイナ中佐の忠実な副官リタァ・ノイマン中尉。そしてドイツ落下傘部隊の隊員たち。部隊を現地に輸送するDC3ダコタを操縦するペイタ・ゲーリケ大尉。現地で訓練中のアメリカ奇襲部隊のハリイ・ケイン少佐。みんな魅力的。みんないい。でも、小生が一番好きな登場人物はラードル中佐。中間管理職である。社長ヒトラーの思いつきを専務ヒムラーが半分べんちゃらで実現しようとして課長ラードルに実行を命じる。重役たちの無理難題を実行部隊に伝達する。病身の身ながら、さんざん苦労してなんとか「鷲を舞い降ろした」中間管理職の悲哀が哀しい。