2022年8月号 №752 早川書房
雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 魔法の水 小川哲
2位 奈辺 斜線堂有紀
3位 すべての原付の光 天沢時生
4位 怪物 ナオミ・クリッツァー 桐谷知未訳
5位 殯の夢 森田季節
6位 汝ら、すべてのゾンビたちよ カスガ
7位 モータル・ゲーム 春暮康一
8位 ツインスター・アビアロンザ・プラネット 小川一水
9位 製造人間は省みない 上遠野浩平
連載
戦闘妖精・雪風 第五部〈第2回〉霧の中(承前) 神林長平
マルドゥック・アノニマス〈第43回〉 冲方丁
さわやかに星はきらめき〈第4回〉 村山早紀
小角の城〈第64回〉 夢枕獏
幻視百景〈第38回〉
戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡
第3回 仁木悦子、藤木靖子、戸川昌子―推理作家の挑戦(前篇) 伴名練
前号の次号予告で「SFの訳し方」とあった。これは興味深い企画じゃわいと楽しみにしていたが、この企画は延期となった。それに関連してか、古沢嘉通がエッセイ「SF翻訳、その現在地と十年後の未来」を書いていた。考えさせられるエッセイであった。このままではSF翻訳の未来はない。小生(雫石)思うに十年後、翻訳SFは読めるだろう。ただし読むに堪えない素人翻訳ばかりの海外SFを読まなければならないだろう。プロの翻訳家がいなくなり、そのへんの英文科の学生アルバイトがSFの翻訳をするようになるだろう。
古沢氏の心配は痛いほどよく判った。作家は食えないといわれるが、翻訳家はもっと食えない。翻訳、とくにSFの翻訳だけで食っている人はごく少数。近年新人のSF翻訳家がまったく出てこない。十年後にはプロのSF翻訳家は皆無となるだろう。まさにゆゆしき大問題である。そのあたりのことを踏まえて「SFの翻訳」をしっかり企画して特集するのがSF専門誌としての責務と心得るべし。
それはそうとして替りの企画として「短編SFの夏」という特集。いかにも穴埋め企画っぽい特集であったが、なかなか良かった。前編集長のころは、読み切りの短編SFの掲載が少なく、読むところが少なく、誌代に見合う内容ではなかったが、今号は9篇も読めた。満足である。1位にした小川の「魔法の水」は小川の新刊長編「地図と拳」と関連しているとのこと。この「地図と拳」面白そう。詠みたい。2位にした斜線堂有紀はなかなか面白い作家がでてきた。
前号で小生は1位にしているし、今号もご覧のように上位にしている。この作家、楽しみ。