2020年12月号 №742 早川書房
ごろりんひとり人気カウンター
1位 女童観音 篠たまき
2位 人生 劉慈欣 泊功訳
3位 我らの科幻世界 宝樹 阿井幸作訳
4位 生存実験 王晋康 大久保洋子訳
5位 地下室の富豪 査杉 及川茜訳
『万博聖戦』第二章トルエンの雨/1969は未読
連載
小角の城(第62回) 夢枕獏
アグレッサーズ第三話カーリー・マー戦闘妖精雪風第4部 神林長平
マルドゥック・アノニマス(第33回) 冲方丁
空の園丁 廃園の天使Ⅲ(第5回) 飛浩隆
幻視百景(第28回) 酉島伝法
中国SFの特集である。中国SFをリードしてきた雑誌「科幻世界」と、日本のSFをリードしてきたSFマガジンが提携して企画した特集である。
さすが現代の世界のSFで最も活発な中国SFである。掲載作4編は、いずれも大変に面白く満足だ。
SFはその時の国の勢いと比例している。1950年代、アメリカが最も勢いがあった時代はアメリカのSFが、また、1960年から70年代にかけて、日本が希望に満ちあふれていた時代には、日本SF第1第2世代が出てきた。
冷戦時代、アメリカと対抗する国としてソ連があった。そのソ連にもSFがあった。エフレーモフ、ストルガツキー兄弟など優れたSF作家もいた。ソ連も中国も社会主義国で共産党1党独裁の国だが、ソ連SFに比べて中国SFの方がはるかにエンタメ性が強く面白い。ソ連は政治も経済も社会主義であったが、中国は政治は社会主義だが、経済は自由主義だ。そのちがいだろうか。
その面白い中国SFをおさえて、1位になったのは「女童観音」耽美的で少しエロでグロなとこもありホラーっぽくもある。この篠たまきさん、知らない女性作家だが、楽しみな人が出てきた。篠さんの「人喰い観音」も読みたい。