本の雑誌編集部編 本の雑誌社
X線、エコー、MRI、CT、内視鏡、と、小生は身体の中をのぞきこまれる経験はひととおりした。でも、小生をかたちづくっている、もう一つの内部を人に見られたことは一度だけあった。
1995年1月17日午前5時46分。神戸市東灘区在住の小生は震度7の揺れを経験した。阪神大震災である。揺れがおさまって書斎へ行くと、本棚が1さお机を飛び越して、内容物をぶちまけながら反対側に着地していた。一か月後、避難先から帰って部屋の整理をし始めた。本がどうしても半数ほど減らす必要がある。そこで、SFの友人たちを呼んで、「欲しい本は持ってって」といって、かなりの冊数の本を持って行ってもらった。半数に減った。
小生もSFファン歴は長いから、その関係の友人も多い。彼ら彼女らの家に遊びに行ったこともある。そんな時、自分の本棚を見せてくれる人はいない。こっちから見たいともいわない。
本好きにとって蔵書は内臓みたいなものだ。人に内蔵は見せたくないだろう、人の内臓は見たくないだろう。
ですから、この本は人の内臓を見る本である。へー、あの人はこんな本を読んで、ああなったのか。ふう~ん。