ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

ブリット

2022年12月30日 | 映画みたで

監督 ピーター・イエーツ
出演 スティーブ・マックィーン、ロバート・ヴォーン、ジャクリーン・ビセット

 この映画は、いろんなエンタメ映画の始祖ともいうべき映画だ。「乱暴な刑事さん」映画の始祖。クリント・イーストウッド「ダーティ・ハリー」ジーン・ハックマン「フレンチ・コネクション」それに渡哲也「西部警察」なんかもそうかな。腹黒い上院議員というロバート・ヴォーンのはまり役もこの映画が最初だ。それになんといってもマットアートを使わないカーチェイスもこの映画が始祖だ。ともかくハリウッド製アクション映画のビッグバンの最初の映画がこの「ブリット」だろう。
 カーチェイスばかりが着目される映画だが、映画そのものがいい。ストーリーは「組織」壊滅を唱える上院議員の指示によって、議会で証言する予定の証人の警護をサンフラシスコ警察のブリット警部補が担当する。ところがその大切な証人が殺される。ヒットマンのおっさん二人を追うブリットという映画だ。刑事もんとしては単純でさしてひねりのない映画だ。イギリス人監督のイェーツの演出がかっこええ。オープニングからしてクール。それにマックイーンがムダのないストイックな演技でスマートでかっこいい。
 さてこの映画の最大のウリはやっぱりカーチェイス。ブリットが駆るフォード・マスタングGT390とヒットマンが乗るダッチ・チャージャー。両車ともアメリカを代表するマッチョな車。この映画はアメリカの映画なんだから、ポルシェやフェラーリなんか使ってやらないんだ。これが日本映画ならスカイラインGT-Rとロータリーエンジンのマツダ・サバンナかな。坂道が多いサンフラシスコの街を走りまわる。車の外観を映す、車内のドライバー目線の映像。乗り物酔いの人なら酔うだろう。
 今や絶滅危惧種になったFRのマニュアル車。FR車ならではの派手なドリフト。前輪を観ればきっちりカウンターを当てている。それに感心したのはちゃんとダブルクラッチを踏んでいる。要所でブオンブオンとエンジン音が響く。足元の映像はなかったがヒール・アンド・ツゥーをやっているだろう。エンジン音と前輪の様子をみればちょっと車に詳しい人ならわかる。
 ハリウッド映画の三大アクションシーンといえばこの映画のカーチェイス、「ベン・ハー」の戦車競走、「ワイルド・バンチ」の最後の銃撃戦かな。

愛と哀しみの果て

2022年12月27日 | 映画みたで

監督 シドニー・ポラック
出演 メリル・ストリーブ、クラウス・マリア・グランダウア―、ロバート・ㇾドフォード

 それにしてもひどい邦題だ。原題は「Out of Afurica」「アフリカにて」とか「アフリカの日々」という題名にすればいいものを、これじゃ安物のメロドラマだ。
 デンマークの裕福な家の娘カレンは貧乏貴族ブロルの求婚を受け入れる。ブロルは半分カレンの家の金目当て。二人はアフリカに移住。いろいろあってコーヒー農園を経営する。ところがブロルは農園の仕事に興味を示せず、サファリに出かけて何日も帰ってこない。カレン一人がんばってコーヒー栽培に取り組む。現地人の族長と交渉して、その一族全員を雇って屋敷を維持し農園を運営する。とうとう夫婦は別居。カレンはイギリス人ハンターのデニスに心を魅かれる。
 カレンは苦労の連続。夫は農園の仕事にまったく興味を示さない。夫からうつされた病気になってデンマークに一時帰国。そんなカレンの心の支えはデニス。そして決定的な災厄が。カレンはアフリカを離れデンマークに帰国して作家になった。
 圧倒的なメリル・ストリーブの演技力と存在感である。レッドフォードも大スターだが、この映画ではストリーブのたんなる相手役。レッドフォードより夫ブロル役のクラウス・マリア・グランダウア―がいい感じ。頼りにならない夫であはあったが決して悪い人ではない。
 とにかくアフリカの風景の映像が素晴らしい。この映画の真の主役はアフリカの大地ではないだろうか。



男は旗

2022年12月25日 | 本を読んだで

稲見一良      新潮社

 うう。ワシにとっては宝石のような1冊である。ワシはこないなおじんになってしもうたけど、ワシの中には盲腸にように「少年」が残っている。そのワシの「少年」の心をくすぐりまくられた1冊だ。
「宝探し」古地図に記された財宝を求めて、気の合った仲間で冒険の旅に出る。ずいぶんと古典的な物語であるが、稲見の筆にかかると現代の「少年」をワクワクさせる作品となる。このあたりの塩梅は、「不良老年」のまま彼岸へと旅立った稲見一良がワシら「少年」の残滓を体内に宿す大人たちへの贈り物なのだ。
 シリウス。美しい船だ。かっては「七つの海の白い女王」と呼ばれ、豪華客船として大海原に君臨していた。
 それは昔のこと。今は港につながれホテルとして余生を送っていた。そのホテルの支配人安楽はかってはシリウスの船長だった。古い地図を持っている。
 ホテルの料理長は、シリウスのコックだったカナダ人。アメリカ人のパイロットとその彼女。捕鯨船の銛撃ち。売店の店員の女性二人。フリーターの若い男とその先輩。船客だった作家で医者。レストランのワイン係。これらの人たちはみな一芸に秀でた人たち。そしてみんな、この船シリウスが大好き。安楽をリーダーとする、この面白い面々が宝探しに旅立つ。ホテルから船としてよみがえったシリウスに乗って。彼らは海賊、ギャング、シリウス買収をたくらむ商社らを撃退できるのか。これでワクワクしなければ「少年」じゃない。

そっくりな女

2022年12月23日 | 作品を書いたで
 世の中にはそっくりな人が三人いるとか。亭主とそっくりな男は時々見かける。どこにでもいる、どうということもない男だ。珍しい顔はしてない。いま、道路の向こう側にいる男もそっくりさん、と、思いたい。 
偶然というには、偶然すぎる。そっくりさんは亭主そっくりさんだけではない。その男と仲良さそうに歩いている女、だれでもない、私とそっくりなのだ。
 男は亭主のそっくりさん、女は私のそっくりさん。ん、これに違いない。亭主にそっくりな男はいる。私にそっくりな女もいるだろう。そっくりさん同士が肩を並べて歩いていても不思議ではない。
 一番考えたくないこと。あれは亭主。で、女は浮気相手。ウチの亭主に限ってそんなことはない。と、思いたい。では、アレはどういう女だ。何者だ。
 もうひとつ考えられることがある。ふたりとも、そっくりさんではない。本物。アレは亭主で女は私。では、ここにいる私はだれだ。 いまは平日の午後六時。ウチの亭主は経理課だ。結婚以来、残業はしたことがない。毎日六時十五分に帰ってくる。駅から家まで歩いて十五分。今ごろの時間なら駅の改札をでているころのはずだ。それが、こんな時間にこんな所にいる。しかも女と。
 久しぶりにデパートで買い物をした。六時三十分。アレが亭主でないのなら、先に帰っているだろう。夕食は冷蔵庫に入れてあるからそれを食べているころだ。私は外で食べてくるといってある。
 チャイムを押す。返事があるか?緊張するなあ。返事があれば、アレはそっくりさんということだ。なければ、アレは亭主。ウ・ワ・キ。まさか。
「女房が妬くほど亭主もてもせず」というではないか。
 家の中はシーンとしている。人がいる気配がない。もう一度チャイムを押す。まさか。ん。別の事態も考えた。中で倒れている。そういう可能性だってある。浮気?倒れている。最悪死んでいる。浮気が一番ましか。
 意を決して鍵を鍵穴に入れる。回す。ドアは施錠されていた。
 ドアを開ける。相変わらず人の気配がしない。家の中はシーンとしている。最悪の事態を想像しながら家の中を歩く。トイレ、寝室居間、風呂。どこにもいない。最後にダイニングキッチン。いない。冷蔵庫を開ける。亭主用の夕食がラップがかかったまま有る。
 決定!亭主はまだ帰宅していない。あれが亭主だったんだ。ウ・ワ・キ!

「ごめん。もう一晩泊まらなくちゃ。どうもクラクラが治らないのよ。あした病院へ連れて行くわ。晩ごはんどっかで食べてね」
 老母の介護にいってる。九十近くだが、まだまだ元気で一人暮らししていたが、一ヶ月ほどまえから具合が悪くなった。姉一家と暮らしていたが、姉一家は海外に赴任。「だいじょうぶよ。あたし一人で」と、いっていたが大丈夫ではなかった。
 母に手がかかるぶん、亭主に手がまわらなくなった。亭主とこんなに疎遠になるのは結婚以来初めてだ。
 母を入院させ一週間たった。
「やっぱりお前のメシはうまいな。外食やコンビニ弁当はあきてきた」こんなことをいってた亭主が、あたしがつくっておいたご飯を食べないで浮気してる。あたしとそっくりな女と。
 テレビの天気予報も終わった。もう七時半だ。ごはん、どうしよう。食べるのかな。お風呂は。入るのかしら。
 あたしって人がいいんだわ。浮気亭主のご飯やお風呂はどうでもいいんじゃないの。ごはん捨てよう。お湯抜こう。
 いやいや。待って。あれは違うんだ。他人のそら似なんだ。あの男は亭主じゃないんだ。では、なんで七時を過ぎても帰ってこないんだ。どっかで倒れている?会社でなら残業してる人か警備員が連絡してくるはず。会社以外なら、ここは都会だから誰かが救急車呼んでくれるだろう。
 ピンポーン。チャイムがなった。帰ってきた。やっぱり浮気だ。どうしてやろう。一気に怒りを爆発させるか、それともじわじわ真綿で首を絞めてやろうか。どんな顔して迎えよう。ここは、ひとつ普通に迎えるか。いやいやドアを開けないという手もある。鍵は持ってるがドアチェーンを外さなければいい。 浮気以外の選択肢も考えないといけない。あの女は浮気相手の女ではなく、なにか仕事の女だろう。例えば転職を考えていて、就職支援会社の女子社員と面接に行ってるのかも知れない。そういえば近頃会社の不満をもらしていたっけ。それなら私に電話ぐらいしてくれるだろう。
 万が一、浮気だとしたら、なぜあの女なんだ。亭主は私じゃ満足しないから浮気してるのだろう。だったら私とは違う女を求めるのではないか。はたして、自分の女房とそっくりな女と浮気するだろうか。
 ピンポーン。カチ。鍵を回す音が聞こえる。鍵を持ってる。ドアの向こうは亭主だ。まちがいない。ドアが開いた。ガチャ。ドアチェーンが引っ張られる。
「おーい。何してんのや。入れてくれ」
 あわててスマホを持って、そそくさとドアに駆け寄って開ける。
「ごめん。おねえちゃんと電話してたの」
「なんや」
「おかあちゃん。来年の春には帰国するって。ご飯は」
「食べてきた」
「そう。あの人と食べたから、おいしかったでしょう」
「あの人ってだれだ」
「なんで、こんなに遅くなったの」
「学生時代の友だちに誘われて飲みに行ってた」
「そのお友だちって男じゃないでしょ」
 亭主はウソはつけない人だ。だから経理なんて仕事を長年やってる。それになんたって私の亭主だ。
「さみしかったんだ」
「母を入院させてもう一週間たったのよ。あたしはもう、ここにいるのよ」
「足らんかった」
「なにが」
「お前が」
 あの女は、やっぱり私だったんだ。私の不足分を補っていたんだ。


赤い鯨と白い蛇

2022年12月19日 | 映画みたで

監督 せんぼんよしこ
出演 香川京子、浅田美代子、宮地真緒、坂野真理、樹木希林

 ご覧のように、監督も5人の登場人物も全員女性。女性だけの映画である。この5人の女性、年齢も立場も違う。その5人をつないだのは1軒の古い民家。白い蛇が守り神という、その古い民家に集まった5人それぞれの生き方、悩み、喜びが交錯する。赤い鯨とは何か?そして白い蛇とは?
 老婦人の保江は孫の明美と旅行している。館山に寄りたいという。明美もついて行く。若いころ、戦争中に疎開していた家に寄りたいのだ。
 その古い大きな家には中年の女性光子と小学生の娘里香がいた。その家はあと数日で取り壊すとのこと。光子は保江と明美を歓迎した。祖母と孫は泊めてもらう。ここにもう一人来訪者が。以前、この家に住んでいた美土里。詐欺まがいの怪しげな薬の行商をしている。こうして5人の女が数日のあいだ古い民家で過ごす。光子も美土里も夫はいるが。ここにはいない。明美と里香は、自分の身体に女ならではの大きな変化が・・・。そして保江は、この地で託された戦争の悲劇を伝えるモノを探す。美しい夕日に照らされた「鯨」が海面を沖に向かって進む。爆薬を装着した「鯨」が。



陰翳礼讃・文章読本

2022年12月17日 | 本を読んだで

谷崎潤一郎           新潮社

「陰翳礼賛」と「文章読本」谷崎の2大エッセイが読める。
 日本の美は陰翳にある。こうこうと明るいところには、西洋の美はあっても日本の美はない。秘すれば花ということか。裏も表も上も下もあそこもここも、なにもかも丸見えというのはよろしくないということか。しかし、ま、それはそれで美もあると思うのだが。谷崎のいってるのは、あくまで「日本の美」であって、人類普遍の「美」ではないと思うのだが。
「厠のいろいろ」で吉野川の厠で谷崎が体験したことが書いてある。高い所に便所があって、下の川に排泄物を落とすのだが、高い所から何十尺の下に落とす。実に気持ちがいい。桂米朝師匠の「地獄八景亡者戯」のマクラで、船場へんのだんさんが高野山へ行ったときに、高いところの便所からはるか下に排泄物を落とす。実に気持ちがいい。だんさん気に入って二階に便所を作った。そこを通りかかる通行人の会話「気つけなあかんで。このへん上からババが降って来る」米朝師匠が谷崎のこのエッセイから考えたマクラだろうか。
 文章読本は、ようするに良い文章とは、判りやすく記憶に残る文章だ。と、いうこと。さすがに今読むと古さは否めないが、谷崎のいってることは理解できる。  

ボルサリーノ

2022年12月15日 | 映画みたで

監督 ジャック・ドレ―
出演 ジャン=ポール・ベルモント、アラン・ドロン

 ベルモントとドロン。フランスを代表する2大スターの競演である。このような×大スター競演というのは面白くないことが多い。「座頭市と用心棒」の三船と勝新がちょっと面白かったかな。我の強い者どおしを嚙合わせるのは難しい。「座頭市と用心棒」は岡本喜八と名監督だからこそ成りえた組み合わせであった。この映画では三船も勝新も遠慮はしていない。
 この「ボルサリーノ」は×スター競演映画として成功している。それはドロンが少し引いているからだと思う。主役はベルモントとドロンの二人だが、最後はベルモントが目立つ。この映画のプロデューサーはドロン。ドロンは製作者側の人間だ。なんとしても映画をつくりあげなければならない。だからドロンはベルモントを立てたのだろう。
 どこにでもヤクザはいる。日本にもいるしフランスにもいる。この映画、フランスのヤクザ映画である。場所はマルセイユで、二人の若いヤクザが知恵と度胸でのし上がっていく話だが、やっていることは「仁義なき戦い」と同じ。広島がマルセイユに、菅原文太と松方弘樹が、ジャン=ポール・ベルモントとアラン・ドロンに替わったらこの映画になる。邪魔になる敵対する親分をマトにかけ、シマを広げていく。しょせん人間なんて同じようなもんだ。

黒牢城

2022年12月13日 | 本を読んだで
 米沢穂信 KADOKAWA

 小生はあまりミステリーは詳しくないが、安楽椅子探偵というのがある。自分は一か所にじっとしたまま、話を聞いて事件を解決する。この作品は安楽椅子というより牢内探偵といっていいだろう。
 摂津の国の領主荒木村重が織田信長に反旗を翻して伊丹の有岡城にたてこもる。説得に来た織田方の黒田官兵衛を捕らえて地下牢に閉じ込める。
 織田の大軍に包囲された有岡城。武器食料は充分にある。毛利の援軍が来れば勝算あり。地下牢の官兵衛は織田方だが切れ者。城主村重は完全には家臣を掌握していない。その上、高槻衆、雑賀衆といった外様の軍団をかかえている。と、いう設定。で、有岡城で不可解な事件が勃発。そのまま捨て置けば家臣兵の士気にかかわる。ひいては落城につながる。側近の家臣は少しはマシな者もいるが、もひとつ頼りない。困り果てた村重は地下の官兵衛に相談する。官兵衛は敵方の武将。親切に謎解きをするわけではない。ポツとヒントをいう。それで村重が考えて解決する。
 織田方の軍勢の動き、有岡城内の人心の動き。官兵衛の意志。これらを総合的に村重は判断するわけ。現代の企業の不祥事なら「まことに申し訳ございません」と三つほどのハゲ頭を下げるだけが、なんせ戦国のこと、頭は下げるより胴体から離れる。命がけである。全編を通じて緊張感が漂う。そして荒木村重はある決断をする。どんな決断かは歴史が示す通り。決して悪い殿さまじゃなかった村重がなぜ、あの決断をしかかはラストで明らかになる。
 有岡城は今のJR伊丹駅の前に少し石垣が残っている。小生もよく知っているがそんなに大きな城とは思えない。往時は壮大な城だったんだな。

秘密の花園

2022年12月12日 | 映画みたで

監督 アニエスカ・ホランド
出演 ケイト・メイバリー、ヘイドン・プラウズ、アンドリュー・ノット

 小生は原作は読んでないが、読んだ人の話によると、映画と原作の小説では少し話が違うようだ。原作では、主人公のメアリーと使用人の息子ディコンが苦労して、荒れた庭園を再生させるお話しらしいが、映画もそのエピソードもあるが、ごくあっさり描かれている。映画は庭園よりも病弱な少年を再生させる話になっていた。
 メアリーは裕福だが両親の愛情を知らない。インドで生まれた。使用人にかしづかれ、おんば日笠で育ってきた。服も一人で着られない。その両親が地震で死んだ。孤児となったメアリーはイギリスの伯父の下に引き取られた。広大な領地とお屋敷である。伯父のつれあい(メアリーの母の双子の姉)は死んでいる。伯父は妻の死の悲しみから立ち直れていない。病弱な息子コリン(メアリーのいとこ)がいるが、病弱で過保護、寝たきり車いす。自分はほどなく死ぬといっている。
 メアリーはデイコンと二人でコリンを外へ連れ出し、歩けるようにする。見違えるように元気に明るくなったコリンに笑顔を忘れていた伯父も喜ぶ。
 少年コリンの復活と再生の物語であると同時に少女メアリーの成長の物語である。映画の初めの方と後半ではメアリーの目つきが違う。主役のメイバリーうまい子役であった。目の演技ができる。

喜楽館昼席に行ってきた

2022年12月07日 | 上方落語楽しんだで
 喜楽館昼席に行った。開演前の一席は桂八十助さん。お名前から桂八十八師匠のお弟子さんと思われる。「道具屋」をやらはった。入門して1年半とか。そのわりにはちゃんと落語になっていた。大学の落研かどこかでアマチュアで高座に上がってはったのではないやろか。
 開口一番は桂りょうばさん。爆笑王桂枝雀師匠の息子さん。じつは先月には芦屋ルナホールの「ざこば・南光・塩鯛3人会」にも行ったのですが、その時もりょうばさんが前座で出てはった。あの時はお茶子もりょうばさんが務めてはった。コロナで仕事がない時にタクシーに乗ったらタクシー車内テレビのCMが再就職のCMやったというマクラ。そのマクラと同じマクラをやらはった。演目は「子ほめ」お父さんとは違う噺家に育ちそうやな。
 二番手は笑福亭呂好さん。マクラは師匠に「らくだ」をやれと強要した話。6代目松鶴の至芸「らくだ」恐れ多くてできんという師匠にしつこくせまったとか。呂好さんなんならご自分でやったらどうやろか。やらはったのは「らくだ」やのうて「平林」四国の落語会で落語を知らん人にチャチャいれられてできなんだから、その続きをやります。と、いうんで「平林」を途中からやらはった。
 仲とりはオクラホマミキサーの出囃子で出てきはった会長笑福亭仁智師匠。仁智落語の大定番「源太と兄貴」この落語はなんぼでもネタが増やせられるな。マクラは例によって野球解説者のネタ。色もんのコントのあと仲入り。
 仲入り後の最初は桂文昇さん。坂本龍馬に似てるといわれたそうや。いろんな角度からご自分の顔を見せてはった。「猫の皿」をやらはった。この落語なまで聞くのは初めて。で、家に帰って調べて見るとワシのコレクションにある。三遊亭王楽の「猫の皿」やから江戸落語やな。上方落語でこの噺を聞くのは初めてやな。
 トリ前のもたれは笑福亭生寿さん。生寿さん、上方落語若手噺家グランプリは優勝されたそうやけど、NHKの新人落語大賞は桂二葉さんに僅差で負けた。なんか二葉さんにえらいライバル意識をもってはるようや。一度、生寿VS二葉という落語対決を喜楽館か繁昌亭でやってくれへんやろか。ワシは絶対聞きに行くで、応援高座はそれぞれの師匠、笑福亭生喬師匠と桂米二師匠に務めてもろたらええやん。勝負はもちろん客の笑い声。音量測定器で計ったらええやろ。「ちはやふる」をやらはったけど、さすがに面白かった。
 トリは桂春蝶さん。お父さんの2代目桂春蝶に勝っているかもと思わせるところがあった。ただ少し力が入りすぎ。洒脱なところは2代目に勉強すべき。
「死神」をこってりとやらはった。
 さて、落語で心を満たしたからお腹も満たさなあきません。新開地から三宮へ移動して、サンチカの酒房灘で夕食。関東煮いろいろで白鷹と龍力を一合づついただく。あと天ぷら定食。この店サンチカに古くからあって、神戸市民のワシもよう前を通るが入ったのは初めて。けっこううまかったで。



夏への扉

2022年12月02日 | 本を読んだで

 ロバート・A・ハインライン 福島正実訳       早川書房

 ずいぶん久しぶりに読んだ。たしか世界SF全集のハインラインの巻で読んだと記憶する。もう50年ほど昔のことだ。この全集、別巻が広告されていたが、まだ出ないな。どうしたんだろう早川さん。
 この「夏への扉」いろんなSFの人気ランキングで1位になることが多い。SFファンの心の琴線に最も触れる作品といっていいだろう。小生もSFファンとなってずいぶん経つ。ここでもいったように若いころ読んだ名作を読みなおしているしだい。
 さて、「夏への扉」だ。おおまかなプロットは覚えているが、細かいストーリーは忘れている。ほとんど初読みといっていい。うん。面白い。冷凍睡眠とタイムトラベルの複合ワザだが、時間モノSFが苦手な人(小生もそのうちかも)でも判りやすく複雑なタイムパラドックスはない。ようするに30年眠って未来に行き、30年タイムスリップする。
 主人公は世間知らずのエンジニアおたく。画期的な家庭用ロボットを開発して会社を興すが経営には全く関心がない。新たなロボットを造ることだけが楽しみ。会社の実務は全くダメ。で、経営は親友に、事務は若い女性を雇う。この女性がたいへんに有能で、会社の株も持たして、さらには婚約までする。
 ところが・・・。という話し。悪と善が判りやすいから楽しめる。善も悪も女性である。とくに悪の女性は強烈な悪女。この悪女っぷりは爽快ですらある。ハインラインの小説のうまさが堪能できる。