ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

サテ

2020年05月31日 | 料理したで

 新型コロナ騒ぎも、そろそろ収束の方向にベクトルが向いてきたのではないだろうか。外で飲もうと思えば飲める場所もでてきた。とはいいつつも、小生も小生のお友だちもそれなりのお年。慎重なのである。月に一度やっていた飲み会も中止している。7月になれば再開してもいいだろうと考える。
 というわけで、今夜も家飲み。さて、アテはなににしよう。焼き鳥がいい。普通の焼き鳥じゃ面白くない。毛色の変わった焼き鳥だ。エスニックな焼き鳥、インドネシアの焼き鳥だ。サテという。
 肉は鶏もも肉、それに豚のロース肉も少し使おう。肉を切って、おろしにんにく、レモン汁、砂糖、醤油、塩、こしょう、一味唐辛子で下味をつける。半日ほど漬け置けばいいだろう。
 さて、半日たった。肉を串刺して焼く。焼くのは普通に焼けばいい。炭火があればいいが、小生は魚焼きグリルで焼いた。
 タレが独特のモノで、ピーナツバター、醤油、ケチャップ、豆板醬、おろしにんにくを混ぜて作る。焼けた肉をタレにつけて食べる。ビールを飲む。サンチェをパリパリ。サテをほうばる。ビールを飲む。

引っ越し大名

2020年05月26日 | 映画みたで

監督 犬童一心
出演 星野源、高橋一生、高畑充希、松重豊、西村まさ彦

 姫路藩藩主松平直矩は姫路から豊後の国日田へ国替えを幕府から命じられる。これで三度目の国替え。大名の国替えは大事業である。多くの藩士を引き連れて藩丸ごとの引っ越し。人手もいる手間もかかるもちろん金もかかる。しかも、次の日田藩では石高は大幅に少なくなる。大事業の上に大変な難事業である。
 この難しいプロジェクトをだれにやらそうか。で、白羽の矢が立ったのが書庫番の片桐春之助。一日中書庫にこもって本ばかり読んでいる片桐は、だれもやりたがらないこの難仕事引っ越し奉行をむりやり押し付けられる。
 なんにも判らない片桐が頼りにしたのは、先代引っ越し奉行の娘於蘭と幼なじみで武芸の達人鷹村源右衛門、勘定方の中西監物の3人。
 持って行く物を減らさなくてはならない。商人から借金もする必要がある。そして藩士をリストラしなくては。気弱で引きこもりの片桐は3人の助けを借りながらなんとか引っ越しの計画を実行していく。
 原作脚本は「超高速!参勤交代」と同じ土橋章宏。正直、「超高速!参勤交代」の方が面白かった。「超高速」は出発して道中の話であったが、この映画は出発するまで準備段階の話がメイン。だから「超高速」であった疾走感がこの映画ではなかった。それに主人公が違う。この映画の主人公片桐は子供である。子供が大人の事情を抱える大人たちを動かしていくのである。知恵と才覚で大人たちを動かすのではなく、上記の3人も含めて、金を貸してくれた商人など、片桐の人柄で動くである。「超高速」では知恵をだして散々苦労しながら参勤交代を実行していくのは家老の相馬兼嗣である。相馬は大人である。片桐は子供である。それが映画としての面白さの違いとなっている。

風の神送り

2020年05月19日 | 上方落語楽しんだで
 ええ、ようお運びで。といいたいんやけど、今日は無観客落語会ちゅうこって、これ読んでるあんさんには判りまへんやろけど、私の前にはだれも座ってない椅子がずらっと並んどるだけですわ。私も長い間落語家やってますけど、椅子相手に落語やんのんは初めてでおます。
 こまった病気が流行ってますな。新型コロナウィルスちゅうウィルスがまん延してるんですな。この新型ちゅうのんがワザしてるんでっしゃろ。旧型コロナウィルスやったら、おなじみの風邪やインフルエンザのウィルスやそうです。新型やから、どないなウィルスやよう判らん。治療薬もワクチンもないから困っとるんですな。
 いま21世紀やから、判っとる病気がほとんどやけど、昔は、ほとんどが判っとらん病気やったんです。ただの風邪でもようわからん。そやもんでヤブ医者やったらマシな方で、ヤブになる前の竹の子医者とか、なんでも葛根湯のます葛根湯医者とか、どんな病気でも「手遅れじゃ」いう手遅れ医者のとこへ連れて行くんですな。それで治ったか治らんかったんか私はよう判りまへん。
 いま、みなさんが困っとる新型コロナみたいな疫病はどないしたらええんやろ。妖怪アマビエに頼むんも一つの方法や。上方落語はえらいもんで、たいていのことには、ちゃんと対処法が紹介されとる。もちろん困りもんの流行り病の対処法もある。
昔は風邪も怖い病気だったんですね。風邪がまん延して困ると、こりゃ風の神がおるからあかんのや。風の神を送らあかん。「風の神送り」ちゅう落語ですな。忘れられた落語でしたけど、桂米朝師匠が発掘して今に残っておます。
 風邪が流行っとる。風の神を川に流して海へ送らなあかん。はりぼての人形をつくって、それを風の神に見立てて、お供えもんして「風の神送ろ」「風の神送ろ」とにぎやかに川に流したんですな。
 今はこないなもんを川に流したらあかんけど、どないかして新型コロナをどっかへ流したいもんでおます。「新型コロナ送ろ」「新型コロナ送ろ」

バルカン超特急

2020年05月18日 | 映画みたで

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレイヴ

 雪に閉ざされた、アルプス山中らしき山の中のホテル。鉄道が止まって駅の近くのホテルは満員盛況。クリケット好きのイギリス人二人。アメリカ人の若い女。おせっかいなイギリス人老婦人。民族舞踊を研究していてクラリネットを吹く男。不倫中の弁護士。などなど。
 翌朝、列車が動くことになった。アメリカ人の若い女アイリスはホテルから出しな、上から落ちてきた植木鉢で頭を強打。意識がもうろうとする。それでもなんとか列車に乗る。
 アイリスは家庭教師だという老婦人フロイと同じ席になる。フロイは気さくで親切なおばさん。アイリスとフロイは食堂車に行って、アイリスが席に戻って眠って目が覚めるとフロイがいない。だれに聞いても、そんな人は知らん。最初からあんた一人やった。
そんなはずはない。フロイは必ずこの列車の中にいる。アイリスは動く列車の中を捜索する。アイリスのいうことを一人だけ信じて捜索に協力してくれたのは、ホテルの上の部屋だったクラリネット吹きの青年ギルバート。上の部屋がうるさい。眠れない。アイリスは宿のイハチにいってギルバートに部屋から出てもらった。アイリスとギルバートはケンカする。最初にケンカしていがみあってた男女がだんだん仲良くなるというパターンである。
 グランドホテル形式の群像劇から始まって、人探しのサスペンスへと映画は移行する。後半ははでな銃撃戦からエスピオナージュへと。いくつもの顔を見せてくれる映画であるが、窓の下のギターで歌うおっさんとか、頭を打っておかしなことをいってる女が目の前にいるのに診察しようとしない脳外科医とか、不可解な伏線もきっちり回収してある。古い映画であるが面白かった。

トルコ風鶏の串焼き

2020年05月17日 | 料理したで

 月に何度か友人と酒宴をやっておった。ワシは神戸市民であるが、酒宴の場所は大阪が多い。それが、この新型コロナ騒ぎで、酒宴をやらなくなって久しい。落語会にも行かない/行けない。外食もしないし外で飲まない。せんべろ屋西宮八園海神も休みである。そういうわけで今はお小遣いは比較的余裕がある。で、あるからして、家でブッカーズとかマッカランとか上等のウィスキーを飲んでおる。ウィスキーは食後、くつろぎながら刑事コロンボでも観ながらチビチビやるが、食事の時は今の季節ならビールだ。
 で、今夜のビールのアテはこれだ。トルコ風鶏肉の串焼き。鶏肉を玉ねぎのすりおろしに半日ほど漬けておく。クミン、コリアンダー、パプリカも入れて香りと色を付ける。あとはこの鶏肉と野菜を串に刺して焼くだけ。野菜はナス、ピーマン、玉ねぎ。焼くのはガスレンジの魚焼きグリルで焼くと簡単である。
 こいつにかぶりついてエビスをガーと飲む。も、サイコー。


孤宿の人

2020年05月15日 | 本を読んだで

宮部みゆき 新潮社

 人から悪魔だの鬼だの悪霊だのといわれ、諸悪の根源のようにいわれている、悪逆非道の極悪人。実は、人格高潔でたいへんに良い人だった。と、いう話はよくあるが、さすが宮部みゆき、かようなベタな話を感涙必至の物語に仕上げている。
 四国の小藩丸海藩は幕府からやっかいな仕事を命じられた。元勘定奉行の船井加賀守をあずかることになった。加賀守は妻子供家来を惨殺した極悪人。直ちに切腹を命じられるところであるが、迷信深い将軍家斉が加賀守が死して悪霊となりたたることを恐れ、丸海藩へ流罪となった。
 この物語の主人公は二人の少女。9歳のほうと17歳の引手見習いの宇佐。
ほうは捨て子同然に江戸から丸海に来た女の子。医家(匙という)井上家に拾われ下女として働く。ほうとは阿呆の呆。少し知恵が足りないかもしれない。ほうは井上家の娘琴江、長男啓一郎にかわいがわられ読み書きを教えてもらう。ほうに優しくしてくれた琴江は毒殺される。
 宇佐は漁師町の娘であるが町で引手(岡っ引き)見習いをやっている。その宇佐の親分一家に大きな不幸が。
 そのころ丸海の藩内では不審な病死が相次ぐ。調べていたベテラン検視係の井崎までも不審死する。その謎を宇佐は町役人渡部とともに追う。ほうは紆余曲折を経て加賀守つきの下女として加賀の身の回りの仕事をする。加賀ははたして極悪非道の鬼は悪魔か。ちなみに主人公ほうの漢字が出世していく。最初は「呆」だった。それが「方」となり、最後は「宝」となる。ほうは最初から「宝」だったのだ。それを見抜いたのはあの人だ。
 

書評稼業四十年

2020年05月12日 | 本を読んだで

北上次郎             本の雑誌社

 小生は本好きである。小生にとって読書は、食事、睡眠、排泄と同様の生理現象である。いろんな本を読むが、特にSFと冒険小説を好む。読書だけして、それで収入を得て生きていけるのなら、非常にけっこうな人生であろう。
 この本の著者、北上次郎も小生と同じくSFと冒険小説が好きらしい。しかも、かようなエンタメ小説を読んで、それを紹介することを生業として40年。たいへんにうらやましいのである。もちろん、本読みを仕事にして人さまからお金をいただくのは、それなりのご苦労もあろうかと思うが、この本をよむかぎりでは書評稼業も楽しそうだ。
 出版不況といわれつつも、世に本はあふれている。この本の大海の中で、読むに値する本を選ぶのはむつかしい。人生は有限である。駄本を読んで無為に過ごす時間はない。だから読む本を自分で選ぶのは不合理だ。で、本を選ぶより書評家を選んだ方がいい。信頼する書評家を選び、その人が勧める本を読むわけ。小生の場合、この北上次郎だ。大森望はSFのレビューをよくするが、大森はなんでもかんでもほめるからあまりあてにできない。
 この本は、北上が書評家としてつきあった、作家、編集者が興味ぶかいエピソードがいっぱいで、本好きとして面白く読んだ。それにしても、昔は、小説新潮とかオール読物、小説現代といった、中間小説誌がたくさん売れ、大学生たちが喜んで読んでいたとか。夢のような話である。

人生の特等席

2020年05月11日 | 映画みたで

監督 ロバート・ロレンツ
出演 クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス

 クリント・イーストウッドが、監督をせず、久しぶりに俳優に専念した映画である。「グラン・トリノ」でみせてくれた老年のイーストウッドの当たり役、偏屈頑固なじいさんを楽しめる作品だ。
 ガス・ロベルはアトランタ・ブレーブスのベテランスカウト。今まで何人ものプロ野球選手を発掘してきた。そんなガスも年老いた。前立腺肥大でおしっこも出にくくなった。目もかすんでよく見えない。でも、引退する気はさらさらない。
 きょうもドラフト1位候補の高校生の強打者を見に地方の試合を見に行く。ガスの妻は娘が6歳の時に死んだ。その娘ミッキーは成人し有能な弁護士だ。
 その娘が久しぶりにガスのもとにやってきた。目も見えにくくなり、すっかり年おいた父を心配するが、この父娘はなにかと確執がある。
 プロ野球のスカウトを続けるか引退するか、弁護士として事務所の経営者に加わってキャリアをアップさせたい娘、それぞれの人生の岐路に立たされた父と娘の老人と成人となってからドラマだ。
「荒野の用心棒」や「ダーティハリー」のイーストウッドもかっこいいが、年取ったイーストウッドもしぶくてかっこいい。


三国志(七) 望蜀の巻

2020年05月10日 | 本を読んだで

 吉川英治   新潮社

 赤壁の戦いは曹操の敗北となった。曹操は負けたがKO負けではなく判定負けといったところか。この戦いでの呉の周瑜の存在は大きい。そして、もちろん劉備の軍師諸葛孔明の働きも大きい。
 赤壁の戦いのあと、呉の孫権と劉備の対決は決定的となる。劉備、優勢。孫権、妹を劉備の嫁にして和平を図る。
 蜀の君主劉璋はアホである。蜀の知恵者張松が劉備に蜀に入るように画策する。これで曹操の魏、孫権の呉、劉備の蜀の三国志体制となるか?
 

木の葉丼

2020年05月09日 | 料理したで

  昼めしにはいろんなもんを食うが、やっぱ丼もんがいっちゃん好きやな。めしの上におかずをのっけてがさがさ食う。ワシら日本人は米のめしさえ食っとけばどないかなるもんや。そのめしとおかずをいっぺんに食えるんやから丼もんは合理的やで。
 さて、きょうもちゃちゃと昼めしを作ろうぞ。まずなにはなくともめしを炊く。材料はかまぼこ、干し椎茸、長ねぎ、卵や。そや木の葉丼や木の葉丼を作るで。かもぼこは薄く切る。干し椎茸は戻しておく。長ねぎは斜め切り。卵は一人分2個は欲しいな。あとは昆布カツオ出汁。調味料は醤油味醂砂糖や。
 干し椎茸、かもぼこ、長ねぎを出汁で煮る。調味料を入れる。ちょっと濃いめがええ。煮えたら卵でとじる。めしの上に乗っける。大事なんは卵のとじ方と、丼つゆの量やな。つゆは少なくてもいかん。つゆだくなんていう多すぎるのんもわしは好かん。50ccぐらいがちょうどええ。

名前のない少年

2020年05月08日 | 作品を書いたで
「まちがいないです。ぼくが小学生のころ、近くに住んでたユウキくんです。学校には行ってなかったみたい」
「この人、なんとなく記憶にあるわ。あたしが小さいころ住んでたアパートの一階におった子だわ。おかあさんやおとうさんといるところを見たことがないわね。名前?さあ、確かトクジくんっていってたわ」
 男性。推定年齢一〇代後半から二〇代。身長一七三センチ。やせ型。
 警察の身元不明遺体の情報公開に応じて、五人が情報提供にやってきた。今日の二人もふくめて、子供のころ近くにいた記憶がある。その子は一人でポツンといることが多い。彼の親は知らない。それに五人とも、その子の名前を憶えているが、その五人が憶えている名前がみんな違う。今日来た男性はユウキ、女性はトクジといった。一昨日きた三人も違う名前をいった。
 彼の名前はなんというんだろう。

「ユウキくん。学校へは来ないの」
 その子はよく公園に一人でいる。ぼくは具合が悪くなり学校を昼前に早退した。そんな時間にユウキくんが公園にいた。
「学校へは行かない」
 ユウキくんはそれだけいうと、下を向いてだまった。足もとをアリが歩いていた。

 塾の時間だ。アパートの階段を降りると、一階の一番北側の部屋のドアが開いている。男の子が一人でいる。部屋の中は乱雑でゴミがいっぱい。たばこの吸い殻やインスタントラーメンの袋や、パンの袋が散乱している。そのゴミのなかで男の子がマンガを読んでいる。
「トクジくん、おかあさんは」
「おとうさんとパチンコに行った」
「そ」
 塾へ行く途中にパチンコ屋がある。男の人と女の人が出てきた。仲が良さそうに手をつないでいる。二人で少し離れたところにある回らない鮨屋に入っていった。この二人、以前、トクジくんの部屋にいるのを見たことがある。トクジくんの親ではないだろうか。

 六人目の人が情報提供に来た。初老の男でラーメン屋をやっているという。
「ああ、この子、以前ウチで雇っていた子に間違いないです。サトシ。かわいそうに。死因はなんですか。この子、出前持ちをやってもらってたんですが、中華料理の才能があるので、養子にしてウチのあと継ぎにと考えてたんですが」
「そういうわけで、この子の親を探したんですがいないんです。この子に親は」
 ラーメン屋の主人がいうには、サトシは無銭飲食をして主人に捕まり、警察につき出さず店員として店に置いたということだ。素直で働き者のサトシは主人にかわいがられた。
「ところが、ある日、とつぜんいなくなったんです。それが、こんなことになって・・・」
 主人は泣き伏した。

サトシの死因に事件性はないとの結論がでた。解剖の結果、死因は若年性の突発性心筋梗塞。彼の本当の名前が判らないので、仮にサトシと呼ぶ。今後、サトシは行旅死亡人として処理される。

「あんたちの子供じゃなの。死に顔なと見てやったらといってやったんだ。ダメだね。あの人たちは人の親じゃない。いいや人間じゃない」
 老人はほほを膨らませて怒りながら部屋に入ってきた。警官にすすめられた椅子にすわり、出された茶をズズとすすった。
「あの人たちはあたしのアパートの住人なんだ。どんな仕事してるんだか知らないけれど、よく二人で遊びほうけてる。男の子が一人いたけど、知らない間に子供はいなくなったんだ。どっかに里子に出したと思ってたんだ。あたしは」

 サトシは捨てられた子だ。どうして大きくなったか判らないが、十七歳でラーメン屋に拾われ、そして人知れず路上で亡くなった。
「で、サトシくんの本当の名前はご存じですか」
「知らないね。と、いうかあの子に名前はないんだ。子供の名前を考えるのは面倒だといってたよ。あの人たち」
 サトシは親から命だけ授かってこの世に生まれてきた。名前すら与えてもらってなかった。そして、その命もなくなった。 

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。

凶犬の眼

2020年05月06日 | 本を読んだで

 柚月裕子             角川書店

孤狼の血」の続編。「悪徳刑事」大上巡査部長は殉職した。その大上の弟子ともいうべき日岡巡査は、田舎へ左遷され派出所のおまわりさんをやっている。
 近くでゴルフ場建設。建設事務所にいる責任者。吉岡と名乗っているが、こいつは心和会系義誠連合会長国光寛郎。指名手配がかかっている男だ。
 史上最悪の暴力団抗争。明石組VS心和会。日本最大の暴力団明石組組長が殺された。その組長殺害の首謀者が国光だ。国光は日岡にいう「わしゃ、まだやることが残っとる。めどがついたら必ずあんたに手錠はめてもらう」
 話は日岡と国光の友情を軸に進んでいく。日岡は警察官、国光は暴力団、これだけみれば警察と暴力団の癒着に見える。しかし、大きな目的は組と組との戦争を終わらせ、市民に迷惑をかけないこと。この大上の教えはしっかり日岡に受け継がれている。
 若い日岡がだんだんと大上化していくのがよく判る。これを成長というのなら、若い警察官の成長の物語だ。

三体

2020年05月05日 | 本を読んだで
 劉慈欣 大森望 光吉さくら ワン・チャイ訳 立原透耶監修
                              早川書房

 いま、世界で最も旬のSF生産国は中国である。その中国産SFのエースで4番バッターともいえるのがこの作品ではないか。アジア人作家の作品で初めてヒューゴー賞を受賞したのがこの作品だ。
  作品のコンセプトはクラークの「幼年期の終わり」と同じ。ただ、さすがに、現代21世紀2000年代の作品らしく「ゲーム」という形で、三体世界を暗示する。前半の主人公の一人汪淼の視野に入るカウンターの謎、それに冒頭の紅衛兵の乱暴狼藉のシーンなど前半のつかみは強烈。後半、どんどんスケールがでかくなる。巻を措く能わずとはこの作品のためにあるような言葉だ。この「三体」3部作の1巻目とか、こりゃあとの巻も読まねばならん。困ったもんだ。
          

キング・コング

2020年05月04日 | 映画みたで

監督 ピーター・ジャクソン
出演 ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、エイドリアン・ブロディ

 ゴジラとケンカする東宝版のキングコングなど、キングコング映画はいくつかある。そのなかでも、この映画は1933年版の第1作の忠実なリメイクだ。
3時間を超える長尺な映画であるが、退屈せずに最後まで観られた。監督のジャクソンの能力だろう。
 失敗続きで崖っぷちの映画監督カールは、絶海の孤島髑髏島の地図を入手した。そこで映画を撮って再起をはかる。主演女優のアンや脚本家のジャックをだまくらかして、おんぼろ蒸気船で航海に出る。髑髏島にたどりつく、そこは進化に取り残された世界。恐竜が生息し、巨大な類人猿キングコングがいる。アンは原住民に拉致されコングの生贄に。アンは救出されコングは捕まえられニューヨークで見世物に。最後はアンをつかんだコング、エンパイアステートの上で複葉機に攻撃される。
 CGは非常によくできていて、髑髏島のモンスターたちとの戦いは迫力があった。それとコングの大きさが良かった。ゴジラとケンカを繰り広げた東宝コングや佳作「髑髏島の巨神」など怪獣インフレでどんどんでかくなって、なん十メートルという大きさだが、こちらのコングは身長8メートル。コングに感情移入するにはちょうど良い大きさである。だからコングのアンに対する感情が良く判って、この映画をたんなる怪獣冒険活劇ではなく、美女と野獣の純愛ドラマとならしめているのである。

焼豚卵丼

2020年05月02日 | 料理したで

 こまった病気がまん延して、じつにうっとうしい。クサクサする。こんな時はうまいもんを食うにかぎる。メシと肉と卵や。これをワサワサと食うぞ。
 まず、肉。豚肉のかたまりや。こいつを焼豚にするで。ハムのメーカーが市販の焼豚を出しとるけどあれはワシの口にはあわん。南京町の新生公司まで買い出しに行けばええけど、不要不急の外出は自粛せなあかん。
 自分で焼豚を作る。豚肉は肩ロースのかたまりや。こいつを醤油、味醂、酒で煮る。40分ほど煮ればええやろ。一晩おいとく。こいつをガスレンジの魚焼きグリルで焼く。肉には火が通ってるから表面に軽く焦げ目がつくぐらいでええ。
 あとは焼豚を切ってメシの上に乗せて、煮汁をかけて、目玉焼きを乗っければできあがり。さあ、うまいもんを食って元気を出そう。