E・E・スミス 小隅黎訳 東京創元社
ワシもこのトシじゃ。ゲホゲホ。老い先短い身となってしもうた。イテテ。昔のことをつとに想い出す。昔は良かったなあ。ウグウグ。老人にとっては昔の想い出がなによりの宝じゃ。ちゅうこって、おりにふれて若いころ読んだ本を再読しとる。
レンズマン。懐かしいなあ。この「銀河パトロール隊」はワシが生まれて初めて読んだSFじゃ。出版社はこの本と同じ東京創元社。編集者が厚木淳、小西宏訳、イラストは真鍋博だった。1966年のことじゃ。それから36年後2002年、この新版の「銀河パトロール隊」が出た。編集者が小浜徹也、小隅黎訳、イラストはご覧の通り生頼範義である。20年積ん読であったが、上記のごとき心情にあいなって、このたび読んだわけ。
一読後、思ったこと。レンズマン・シリーズの後世のエンターテインメントへの影響の大きさ。と、いうことだ。スターウォーズ第1作「新たな希望」の日本公開は1978年。ワシは公開初日に観に行ってる。だからワシが小西訳の「銀河パトロール隊」を読んだときはスターウォーズなんてもちろん観ていない。
で、スターウォーズ(以下SWと記す)とレンズマンの似ているところだが、SWのジェダイはレンズマンのレンズ装着者である。ルークがヨーダの弟子となってジェダイになったように、レンズマン=キムボール・キニスンは師アリシア人のメンターのもとで修業してグレイ・レンズマンとなったのだ。そしてルークたちが銀河帝国を相手に戦うように、レンズマンは宇宙海賊ボスコーン相手に戦うのだ。
原作は1930年代の作品だ。戦前だ。決して現代SFではない。でも、読んでいて古色蒼然とした感じはうけない。小西訳は50年以上昔に読んだから、どんなんだったか忘れているが、小隅訳は現代スペースオペラといってもいい作品に仕上がっている。このシリーズは空想科学な仕掛け、設定、兵器、武器が沢山出てきて、ワシのような空想科学小説大好きな古狸SFファンを喜ばせるのだが、ウソっぽい訳語が一つでもあれば興ざめだが、翻訳が小隅黎=柴野拓美先生だから安心して読めるのである。