ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

LION ライオン 25年目のただいま

2023年01月31日 | 映画みたで

監督 ガース・ディヴィス
出演 デーブ・パテール、ルーニー・マーラ、デビット・ウェナム、ニコール・キッドマン

 5才のインド人少年サル―。母、幼児の妹、兄、貧しいが母も兄もサル―を愛している。兄は特に良くしてくれる。兄弟仲は大変良い。
 兄は家計を助けるために働きに出るという。サル―もついて行く。サル―は兄とはぐれる。列車に無賃乗車したら遠くの見知らぬ土地にいた。親切な女性に助けられたが、そこはやばい所だった。サル―は危険を察知して逃げる。役人にみつかり施設に入れられる。そこで孤児を里親に世話する女性に会う。その人はオーストラリアの夫婦の里子にサル―を世話する。
 オーストラリアに行った。子のない夫婦は大変に良い人で、サル―をわが子のように育てる。大学にまで進学させてくれる。彼女もできた。養父母は優しく、大学の友人もたくさんできた。立派に成人したサル―はホテルの支配人となっていた。なんの不足も心配はない。でも、どうしても抑えがたい感情がある。望郷。母と兄はどうしているだろう。母と兄に自分が無事でいることを伝えたい。
 5才の時に出てきた故郷だ。かすかな記憶とグーグルアースを頼りに自分の故郷をネットで探す。そして。
 なんかグーグルのPR映画みたいだったが、サル―の子供時代の子役がうまくかわいい。ラストは素直に感動できる。

お家さん

2023年01月26日 | 本を読んだで
玉岡かおる   新潮社

 5年前神鋼記念病院で前立腺の手術を受けた。その神鋼記念病院の入り口に黒御影石の碑がある。ここが神戸製鋼発祥の地だ。明治のころ、この地に小林製鋼所という小さな鉄鋼会社があった。その小林製鋼を神戸の商社が買い取って現代の神戸製鋼に育て上げた。その商社は鈴木商店という。
 かって神戸に三井三菱をしのぐ日本一の巨大商社があった。鈴木商店という。小さな砂糖問屋鈴木商店に嫁いだよね。当主の夫に死なれ店が残された。たたもうと思ったが店を存続させることを決意した。よねはお家さんとなって店の代表を務める。高知の田舎から少年が丁稚として鈴木商店に就職する。金子直吉という。若いが優れた商才を発揮する。
 お家さんよねは金子に絶対の信頼を寄せて店の経営を一任する。金子もよねの信頼に応えて、次々と新規事業を興し鈴木商店を総合商社へと育てていく。
 主人公はあくまでお家さんよねだが、脇役ともいう人物が物語の幅を広げている。大番頭金子直吉もさることながら、よねのお付き女中で、よねの前夫の娘、珠喜、金子の右腕ともいうべき存在で、鈴木商店にとって大切な地台湾へ先遣隊となって出向く田川、米担当の棚倉、珠喜、田川、棚倉、3人とも若い。珠喜は元気で、魅力的な娘。その珠喜は田川に恋心、棚倉はどうも珠喜が好きみたい。この3人だけでも物語ができそう。明治、大正、昭和と実業の世界をおさえつつ、女性として妻として母親として実業家としてのよね。すべてを事業にささげた金子。金子は大企業の重役でありながら家は借家。金子が亡くなった時、遺産はゼロだった。そして3人の若者の波乱万丈の生涯。これだけの要素がありながら1本の太い流れを持った小説となっている。見事な大河小説であった。

アバター ウェイ・オブ・ウォーター

2023年01月23日 | 映画みたで
監督 ジェームス・キャメロン
出演 サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガ二―・ウィーバー、スティーヴン・ラング

 映画を鮨に例えよう。鮨はネタとしゃりの二つでできている。映画も二つの要素できている。ストーリイ物語シナリオと映像である。どっちをネタにしてどっちをしゃりにするかだ。両方ないと映画はできない。ネタとしゃり、両方おいしければいうことはない。こういう映画が傑作とか名作とかいわれる。
 この映画の映像がネタとしよう、シナリオがしゃりである。いくつかの映画ブログをみると、みんな同じことをいってる。映像は素晴らしいが内容がいまいち。小生もその意見に与する。小生が観たこの映画、映像が圧倒的に素晴らしい。ネタがものすごく美味しいのである。ネタがすばらしくおいしからしゃりがいまいちでも許せるのである。最高級のクロマグロの大トロが、普通のコメで炊いたしゃりに乗っているのである。そんな映画である。
 内容は西部劇である。惑星パンドラが開拓時代のアメリカ西部。ナヴィがネイティブアメリカン、スカイピープル(=地球人)白人、クオリッチ大佐たちの海兵隊が騎兵隊といったところか。
 いろいろつっこみどころは有るが、鯨(みたいな巨大な海の動物)がでてくるが、小生が一番気に食わんのは捕鯨船を悪もんとしてるところだ。鯨を食って育った日本人として(鯨のはりはり鍋食いたい。おばけ、ころ、食いたい)あれはいただけない。
 でも、まあ、圧倒的な映像力にはひれ伏すしかない。前作は森が舞台であったが、今回は海だ。異星パンドラの海が忠実に?映像化されている。目につく大型の生き物はもちろん、群れで泳いでいる小魚や、海底に生息している腔腸動物(と思われる)などの小さな生き物は画面に隅にいるモノまで、きっちりと異星の生物を映像化してあった。
 シガ二―・ウィバーが出てるはずだが、どこに出ているのだろう。回想シーンなのかなと観ていたら、なかなか出てこない。ところがシガ二―・ウィバーはずっと出ていた。少女キリがシガ二―・ウィバーだったのだ。ぜんぜん判らなかった。だいたいシガ二―・ウィバーは70を越してるはず。顔が違うしウィバーはグラマラスな身体だったと記憶する。なんせエイリアンと戦った人なのだから。それがキリはほっそりした少女。どうして撮影したのだろう。
 ともかく凄い映像だった。どんなに内容がダメでもこの映像ならお金を使って観る価値がある。

2022年に観た映画ベスト5

2023年01月20日 | 映画みたで

 土曜の夜は映画を観る。お好みのアイラモルトなどをちびちびやりながらブルーレイか録画したモノを観ていた。ところがアルコールが入ると途中眠くなって最後まで観れない映画がある。面白ければなんぼアルコールが入っても最後まで観れる。だから映画の友のウィスキーは映画の出来不出来を判断するものさしとなっていた。でも、ま、どんなつまらん映画でも最後まで観たいから土曜の夜にウィスキーを飲むのはやめた。金曜日に上方落語のDVDを観ながらウィスキーを飲んでいる。
 昨年観た映画のベスト5は以下の通り。順不同。

エール
 娘のポーラ以外家族全員聴覚障碍者。しゃべれない聞こえない。ただ一人の健常者のポーラ一家の支え。そのポーラ音楽の道へ。

愛と追憶の日々
 母と娘の物語。娘への異常なほどの愛。シャーリー・マクレーンがチャーミング。

こころの湯
 北京の下町胡同の銭湯。胡同の人たちにとってはなくてはならない。その銭湯オヤジと次男でやっている。そこへ長男が帰って来た。

フィールド・オブ・ドリーム
 とうもろこし畑に野球場を造る。善意と夢とあきらめない心。その野球場に野球をなにより愛した男たちがやって来る。

いとみち
 津軽語映画。なにをいってるのかわからないが、判る。一人の内気な女の子の成長の物語。


2022年に読んだ本ベスト5

2023年01月17日 | 本を読んだで
 読書の最凶の外来種はスマホである。電車に乗れば判る。ほとんどの人がスマホとにらめっこ。本を読んでいる人は1車両に数人。時には小生一人ということもある。電子書籍を読んでいる人もいるかもしれないが、ほとんどの人はゲームをしているのだろう。あんな非生産的なことをして、人生のムダ使いだと思うのだが。小生は電車や寄席の仲入りなどのすきま時間は必ず本を読んでいる。
 小生もスマホを持っているがゲームはしない。メールと通話、必要な時にちょっと検索。それに目覚ましをよく使う。
 で、昨年2022年に読んだ本ベスト5だ。順不同。

へうげもの
 クリエイティブとはなんだ。偉大なクリエイター古田織部が問う。

同志少女よ敵を撃て
 一粒で何度もおいしい。出色の冒険小説、戦争小説、アクション小説、お仕事小説でもある。

クララとお日さま
 機械であるクララは何も想ってない。感情を持ってない。でも読んでてクララに感情移入する。出色のロボットSFだ。

カムイの剣
 国産冒険小説の大傑作。英国製冒険小説の名翻訳者矢野徹が自ら冒険小説を書いた。

男は旗
 小生にとっては宝石のような一冊。

 あとベスト5には入れなかったが、上記5冊には決して劣らず、小生の記憶にとどめたい本だから、ここに記しておく。
鷲は舞い降りた
プロジェクト・ヘイル・メアリー
地図と拳
女王陛下のユリシーズ号
黒牢城

セントラル・ステーション

2023年01月16日 | 映画みたで

監督 ヴァルテル・サレス
出演 フェルナンダ・モンテネグロ、ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ

 この映画の主人公は代書屋である。現代の日本ではなじみのない商売であるが、ワシら落語ファンにはなじみ深い商売である。代書屋といっても先代桂米團治師匠のようなおじさんではなく、おばあさんに近いおばさんである。「もうかった日も代書屋の同じ顔」という句があるが、このおばさん、落語の代書屋のような誠実な代書屋ではない。客の手紙を面白半分に読んで、めんどうだと投函せずに破り捨ててしまう。「もうかった日も代書屋はズルをする」主人公はそんなおばさんである。
 ドーラはリオの中央駅で代書屋をやっている。繫盛しているようで客はたくさん来る。リレキショーを書いてもらう松本留五郎も来るかもしれないが、多くの人は自分の大切な人への思いを手紙に託すためドーラに代書を頼む。別れた夫への手紙を書いてもらうため、アンナが子供を連れて代筆を頼み来た。ドーラが手紙を書いた直後アンナは交通事故死。9才の男の子ジョズエが一人残される。成り行きからドーラはジョズエのめんどうを見る。
 ここから映画はリオを離れて、ドーラとジョズエ、初老のおばさんと9歳の少年の二人旅ロードムービーとなる。
 この映画はブラジル映画だ。ブラジルの現状が描かれている。犯罪が多く殺伐としている。子供を確保して殺して臓器密売する。万引きが横行する。ドーラも万引きした。店員が万引きを捕まえても警察なんかにつき出したりしない。撃ち殺す。人々は国や公を頼らない信用しない。欲望むき出し。そのぶん自由だ。
 ドーラは決して善良ではない。ずるいし自分勝手。ジョズエに優しくはしない。ジョズエも素直でかわいい少年ではない。大人びていて憎まれ口をたたく。この二人がジョズエの父を探してブラジルの大地を旅する。そしてドーラはジョズエにとって一番良いことをして去っていく。別れ別れになった二人の目には涙があった。 

姫路へ立ち食いそばを食べに行く

2023年01月09日 | いろいろ

 眉村さんや堀さんから、あそこのはうまいと聞いていた駅の立ち食いそば。一度、食べにいきたいと思いつつ、なかなか機会がなかった。
 今日は休日なり、たいてい喜楽館か繁昌亭に落語をききにいっているのだが、その予定もないし、映画「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を観に行ってやろうと思ったが、もうしばらく上映しているだろう。で、姫路まで行った。2時間だけ会社で仕事して新快速で姫路へ。降りたホームのそこにある立ち食いそば「えきそば」が目的地。天ぷらえきそば430円を食べる。長年の念願が晴れる。
 そばといっても蕎麦ではない。和風ラーメンといっていいかな。和風の昆布鰹だしに中華風の麺が使われている。
 だしは澄んだ純関西風のだし。心持ち塩っけが強かったが、上品にうま味が出て上等のだしだ。麺は細いうどんとストレートの中華細麺の中間のような麺。黄色くないからかん水を使っているのだろうか。純関西風のだしとこの麺が実によくあう。なかなかうまい。また機会があれば食べたいし、自分でも作ってみよう。だしはできるけど麺が難しいな。フードリエの麺好亭の細直麺がなんとかこれに近いかな。

気まぐれコンセプト 完全版

2023年01月04日 | 本を読んだで

ホイチョイ・プロダクションズ        小学館

 ホイチョイ・プロダクションズはバブル時代を代表するクリエイター集団だろう。バブルの時代。日本が最もうかれてた時代だ。お金がありあまり、能天気に遊びほうけてても許される時代であった。SFもんの小生にとってもSF大会のいいだしっぺになったりして、いちばん楽しく活発にファンダム活動をしてた時代だった。そして、小生はそのころコピーライターをしてた。若いころ広告業界にいたのである。この漫画は、その広告業界に生息するアドマンなる人種の生態を描いたモノ。小生も短い間であったが、この業界にいたのである。
 広告はクライアントがいて成り立つ仕事だ。小説や絵画などの芸術はクライアントがなくても創作する人もいるが、広告は芸術ではなくビジネスである。だから、この漫画も仕事の発注もとのクライアントと受注者の広告会社の騒動がネタになっている。発注元は自動車メーカーのカブト自動車の宣伝部長ザイゼン。受注者は広告会社の白クマ広告社。そこの営業部長のクマダ、営業部員のヒライ、クリエイターのナオエ、マツイ、媒体担当のホソカワ。これなるめんめんがドタバタを繰り広げる。彼らはいとおう広告制作はまじめに取り組みが、それと並行、いや、それ以上の熱心さで取り組むのは、若いかわいい女性とのナニ。だからクライエントへのプレゼン以上の情熱で合コンのセッティングに取り組み。食欲、金銭欲、出世欲、性欲、これらの欲望で特に性欲が発達している。特にホソカワなるおっさんはセクハラおやじもいいとこ。そっちの方に特化して過激な接待でお得意のご機嫌をとる。
 ともかくバブル能天気絶好調な漫画である。その漫画が今も連載が続いているから驚きだ。