ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

上方落語ノート 第一集

2020年11月02日 | 本を読んだで

桂米朝       岩波書店

 桂米朝師匠の代表的な著作の第一集である。上方落語を愛する者ならば必読の書といえよう。上方落語に軸足を置いて、上方の古い芸能にまつわるあれこれを米朝師匠が書き残してくださった。
 古い資料、文献を読み解き、古老の話を米朝師匠みずから聞き、記録して整理して、こうして1冊の本となって残った。
 資料文献なら一次資料が後世に残るが、古老の頭の中にあるモノは、だれかが古老から聞いて書いて保存しておかなければ永遠に失われてしまう。そういう意味からもこれは貴重な本である。
収録されている「花柳芳兵衛聞き書」は貴重かつ興味深い。花柳芳兵衛は元は落語家だった。初代桂小春団治。舞踏家に転身し花柳芳兵衛となって落語家をやめる。この芳兵衛師匠本人はもとより、古い落語家とも多く交流があった人なので、その芳兵衛師匠から米朝師匠がいろいろ聞き出し、こうしてここに残してくれる。ありがたいことですじゃ。
大昔、「素人名人会」という視聴者参加番組があった。その名の通り素人が落語や歌など芸を披露する番組。司会が西条凡次。落語の審査員が米朝師匠、舞踏の審査員が花柳芳兵衛師匠だった。この本を読んでそんなことを想い出した。