呑んべぇ爺さん

呑んべぇ爺さん「音岳」の記録とつぶやき

聖岳敗退

2008年01月01日 | 南アルプス
【Google Earth による軌跡】


夜中にトイレで外に出ると積雪はずいぶん増えており、風も相変わらず強い。今日も沈殿になるかなと思う。全員朝4時起床で今日も、四国の3人組は様子を見ながら聖岳にアタックに出発するそうな。風雪は相変わらずで、積雪は小屋付近では腰まで来ている。

四国のリーダーもさすがにアタックはどうかなと、偵察に出かける。直ぐに帰ってきて仲間に報告している。その結果を老カップル(旦那だけ)はしきりに気にかけて、これからどうするかと追求がうるさい。四国の3人組みも負けて「下山の方向です」と答える。すると、老人はうろたえて、「私も準備しようかな」とおっしゃる。ホッとする。

四国のパーティは下山しても便ケ島まで積雪でタクシーが呼べず、集落まで歩かなければならないだろうと考えているようで、出発準備を着々と進める。老カップルも一緒に下山するだろうと安心して、今日は沈殿のつもりで、再びシュラフに潜り込む。その内、鬱陶(うっとう)しい老人が出発の準備をしていないようだと判って来る。参ったなと思う。誰にも迷わせられず、自分一人で次の行動に出ようと思っていたが、老人が付きまとって来るようだ。屈強の3人パーティより単独の私の方が組し易いと思ったのだろうかと思う。

そうなると、更に降雪も進むだろうし天候の安定に3~4日かかるかも知れないので、聖岳アタックも余裕が無くなる可能性もあるだろう。それに、老人カップルの相手をさせられて小屋で沈殿しているのも嫌に感じてくる。四国のパーティが出発する頃になってしまったが、意を決して「私もラッセル泥棒にならないよう、早く追いかけて下山します」と皆さんに宣言する。

老人は驚かれる。「明後日にでも一緒にラッセルしませんか」と言われる。アイゼンだけのラッセルはとてもあてにならないし、その姿勢から、おんぶに抱っこに成りかねないのでお断りする。それなら私達もと老人達は急に準備を始める。四国のパーティは直ぐ出発して行く。老人カップルは軽装なので私より早く出発準備ができる。「先に出発してトレースが消えない内に後を追って下さい。3人パーティには直ぐに追いつきますよ。」と言う。

私も直ぐ続くつもりだったが、大キジがしたくなったので少し出遅れて、8時過ぎに出発する。小屋付近の樹林帯では、腰付近までのラッセル跡を進む。深いラッセルと言えど、平坦地では先頭は苦しくなかったろうと思う。薊畑への登りは、四国の彼らは最初、夏道を進んだり左に振り過ぎたりで、深みにはまる事が多かったが、途中から風の強い稜線のルートを進んで雪が飛んで締まっていて登り易いルートに変えて行ったのがよく判る。

申し訳ないが後を辿らせてもらうと、吹雪の中でも余裕があって、ルートの取り方にフムフムと思いながら楽しませてもらう。直ぐ老人に追いつくだろうと思っていたが、出発が遅れたので、薊畑のトラバースの所で追い付く。「この吹雪の中で、トレースは判ったか」と尋ねられる。何度も迷ったそうだ。

「ワカンを履いていないので、私達は遅いから」と先に行かされる。直ぐ樹林帯に入る。少し下ると、トレースが分かれている。直感で左だろうと進むと、老人は来た時は右から来たとのたまう。そうかなと、取り敢えずそちらに進むと、直ぐトレースは途絶えていた。

引き返して左を下ると、再びトレースが2つに分かれている。これも直感で左に下ろうとすると、再び老人は右だと主張する。取り敢えず様子を身に行くと、再びトレースは途絶えていた。いい加減いらいらしてきて、GPSで確認して見ると左方向で良いのだ。「GPSの精度はどの位だ」といちいちうるさい。

本来なら登り返してからトレースを点検すれば、何の問題も無い所まで来ているが、老人がうるさいので登り返さず、トレースの無い所を下りのラッセルしながら左、左と進む。彼らは着いて来ないで上から様子を見ている。(辟易するよ。頼って付いて来るなら、ゴチャゴチャ言わず付いといで。厭なら引き返してトレースを確認して下れば良いだろう、と思いながら)ズンズン進む。

去年正月の御嶽山より積雪は少なく、胸まで沈む事も無くせいぜい腰までだ。予定通りのトレース跡に出くわす。この辺まで来ていれば、彼らも遭難することも無かろうから気にせずズンズン下る事にする。もっと深刻な状況ならいざ知らず、彼らのガイドに雇われた訳ではないのだよと思う。
暫く下って中腹辺りに来ると、8人程のパーティが登って来るではないか。挨拶して3人パーティと出会ったかと尋ねると、3グループと出会ったそうだ。今日先に、既に3パーティが下山しているのだ。

気になる便ケ島辺りの雪を聞くと、下は雪は少ないそうだ。それを聞くと、ガックリ来る。心配する程ではなかったのだ。登って来れるという事は、車も入れた訳だから当然かと思う。一瞬、下山を早まったなと後悔する。ここまで下ると、登り返す気分にならない。その後、4~5人のパーティと7~8人のパーティの3グループに出会う。下るにつれて小雪になり、積雪もどんどん少なくなる。岐阜県中濃地域の大雪警報はこの地域では無かったのかなと思い始める。年末から登らず、登って来たグループのように年始から登るのが良い計画だとは判っていたが・・・・。

西沢渡まで来ると積雪20cmしか無い。これでは、昨年の御嶽山の方がすごかったと思う。来る時は雪は無かったので、降るには降ったのだが・・・・。ティット号の閉じ込めの妄想は何だったのか。御嶽山や槍平では車を止めて置く所は一般交通機関が近くまで入る所や近くに居住区域があるから、除雪の心配は無いが、便ケ島は集落から奥深く入った所なので、結果的に心配し過ぎたようだ。

15時過ぎに便ケ島に戻ると、車は6台に増えていた。四国のパーティはタクシーを呼んで既に帰ったのだろうか、誰も居ない。ゆっくり着替えて出発する。帰りの道は、積雪が適当にあって来る時より走り易い。光岳の方に登っているのだろう、易老渡の駐車場では車が2台止まっていた。

今日はどこか、一番近い「道の駅」をGPSで捜すと「花の里いいじま」が見つかったので、そこに向かったが、辿り着くまで道路は、積雪やチェーンの轍(わだち)でガタガタ振動が激しかった。気温も-4℃程しか下がらなかったので路面のアイスバーン化はしておらず、気をつけて走ったが50kmも出してしまう事もあった。


【トレース跡を下る】

【野猿に戻る】

【滝の沢橋】

【聖光小屋駐車場に戻って来た】

【ティット号に思ったより少ない冠雪】

【易老渡駐車場では2台の車が止まっていた】

【ルートの軌跡】
往復で違う所を通っている。
(1)行きで薊平付近をトラバースせず高巻きしている。
(2)行きの小屋へは近道をしている
青矢印は帰り道。
(3)最初は聖平分岐を通過。
(4)途中、尾根筋を左に振り過ぎている。
(5)薊平からの帰りはトラバースしている。
(6)一番左の矢印は間違った踏み跡に踏み込んだ時のもの



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