村上春樹を読む(PART 1)
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デンマンさん。。。 最近、村上春樹さんの小説を読んだのですか?
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いや。。。 僕は自慢じゃないけれど、村上さんの小説は一冊も全ページを読んだことがないのですよ。。。
それなのに、どうして村上春樹を読むというタイトルにしたのですか?
あのねぇ~、僕は彼の小説は読んでないけれど、ノンフィクションは読んでいるのですよ。。。 つい最近、バンクーバー市立図書館で借りて『約束された場所で』を読みました。。。 僕は、なぜ、彼の小説を読まないのか?
なぜですか?
その答えが本の中の次の箇所に書いてあるのですよ。。。
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ひょっとしてこれは本当に
オウムがやったのかもしれない
狩野浩之 1965年生まれ
大学在学時に体をこわし、オウム真理教の主宰するヨーガ道場に通うようになり、わずか20日後に麻原彰晃から出家を勧められ、その5ヵ月後に出家した。
古参のサマナ(出家者)で、地下鉄サリン事件当時は科学技術省に所属し、そこで主にコンピュータを扱う作業に従事していた。
6年間におよぶ教団内での生活は、地下鉄サリン事件によって、その平穏が破壊されるまでは、彼にとっては曇りひとつなく素晴らしいものだった。
(22ページ)
狩野: 現代の科学というものはすごくよく考えられたものだし、よくできたものです。
ですからそれを使って数学的に理屈を組み立てていけば、かなり精巧なレベルの体系だできると思います。
オウムの中にも、すごく価値のある部分はあります。
私としてはそういう血とか肉になる部分を残していきたい。
宗教という形ではもう駄目だなと、個人的に思うんです。
自然科学として理論化しないといけないと。
科学的に測定できないものにはあまり興味が持てません。
興味がないというか、それじゃ説得力がないから、まわりの人たちにもその利益を還元することができませんよね。
測定できないものが力を持つようになると、その結果オウムみたいになっちゃう可能性もあるわけですしね。
測定できるということによって、そういう危険性はかなり排除できると思うんです。
村上: ただその測定がどこまで真実かというのは、立場やものの見方によって違ってくる場合もあります。
データの採用が恣意的になるおそれもあります。
これだけの測定で充分なのかどうかを判断しなくてはならないし、測定する機械がどこまで信用できるかということもあります。
狩野: そのへんの統計的な構築の仕方というのは普通の医学と一緒でいいと思うんです。
こういう症状が出たらこうですよとか、こういう症状にこういうことをやったらこうなりますとか。
村上: あの、あなたは小説って読めないでしょう?
狩野: ええ、小説読めないです。 3ページくらいで忍耐力に限界がきちゃいます。
(34-35ページ)
村上: 僕は意識の焦点をあわせて、自分の存在の奥底のような部分に降りていくという意味では、小説を書くのも宗教を追求するのも、重なり合う部分が大きいと思うんです。
そういう文脈で、僕は彼らの語る宗教観をある程度正確に理解できたという気がします。
でも違うところは、そのような作業において、どこまで自分が主体的に最終的な責任を引き受けるか、というところですよね。
はっきり言って、僕らは作品というかたちで自分一人でそれを引き受けるし、引き受けざるを得ないし、彼らは結局それをグルや教義に委ねてしまうことになる。
簡単にいえばそこが決定的な差異です。
(295ページ)
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
『約束された場所で』
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著者: 村上春樹
2015年1月15日 第13版発行
発行所: 株式会社 文藝春秋
村上さん自身が、理系の狩野さんに対して「あなたは小説って読めないでしょう?」 と尋ねて、狩野さんも「小説読めないです。3ページくらいで忍耐力に限界がきちゃいます」と答えてますねぇ~。。。 デンマンさんも、日本では理系でコンピューターをやっていたのですよねぇ~?
そうです。。。 でも、あのサリン事件が起きた時には僕はバンクーバーで暮らしていたのです。。。 アサハラ・ショウコとラジオ・ニュースのアナウンサーが言ったので、初め、僕は教祖は女だと思い込んでいたのですよ。。。 あとでネットで調べたら、ヒゲモジャの男の写真が出てきたので、笑いましたよ。。。
事件当時デンマンさんが日本で暮らしていたら、オウム真理教の信者になって地下鉄でサリンを撒いていたんじゃありませんかァ?
やだなあああァ~。。。 僕は宗教に対して、ある種の拒否反応を示すのですよ。。。
あらっ。。。 マジで。。。?
実は、僕が日本で暮らしていた当時、僕の家族は宗教が てんでんバラバラだったのですよ。。。 お袋と次男は創価学会の会員です。。。 親父は日蓮宗。。。 三男は密教系の阿含宗。。。 長男の僕は無宗教。。。 だから、僕は死んでも葬式一切しないのですよ。。。
デンマンさんは亡くなったら、どうするのですか?
遺書には、「ついでの時に、南太平洋のサンゴ礁の海に散骨して欲しい」と書いてあります。。。
マジで。。。? そういう人は珍しいのではありませんか?
カナダでは死んだあとで、墓に埋めずに散骨する人は意外に多いですよ。。。
。。。で、デンマンさんが小説を読めない理由は、狩野さんと同じ理由ですか? 「自然科学として理論化しないといけないと。 科学的に測定できないものにはあまり興味が持てません」と言うことですか?
いや。。。 全く同じ理由ではありません。。。 司馬遼太郎、山本周五郎、城山三郎、杉本苑子、新田次郎、藤沢周平、松本清張、吉村昭、有吉佐和子、森鴎外、夏目漱石が書いた歴史小説や時代小説などは、けっこう読んでいるのですよ。。。
村上さんの小説が読めないというのは、どういうことですか?
村上さんは「自分の存在の奥底のような部分に降りていくという意味では、小説を書くのも宗教を追求するのも、重なり合う部分が大きいと思うんです」と言っている。。。 僕は、村上さんのエッセーやノンフィクションは、けっこう読んでいるのです。。。
でも、村上さんの小説は読めないのですか?
自分の存在の奥底のような部分に降りていくという書き方は、上に挙げた小説家の書き方とは完全に違っているとジュンコさんは思いませんか?
確かに、自分の存在の奥底のような部分に降りていくと、少なくとも歴史小説は書けないでしょうねぇ~。。。
歴史小説というのは、他の小説と違って、例えば、SFなどとは違って、歴史的事実に即して書いている。。。 そういう点で、読んでいて僕には受け入れ易いのですよ。。。 ところが書評で読むと、村上さんの小説は、「自分の内的な夢想の世界をつむぎだす」というように、なんとなく事実性や科学性が感じられない。。。 少なくとも、僕には自分の存在の奥底のような部分に降りてゆき、「自分の内的な夢想の世界をつむぎだす」小説は、事実性や普遍性や科学性が感じられないから嫌いなのですよ。。。
つまり、りんごが嫌いな人はりんごを食べない、という理由ですか?
端的に言えば、そういうことです。。。 村上さんの存在の奥底と、僕の存在の奥底では、かなりの開きがあるような感じがするのですよ。。。 それは狩野さんの言うとおり、僕にとって、彼の小説は3ページくらいで忍耐力に限界がきちゃいます。。。 でも、海外でも、これだけ読まれているし、彼のファンはたくさんいるのだから、そろそろノーベル賞をあげるべきだと僕は思います。。。
でも、評論家の中には、村上さんの小説は無国籍だから、ノーベル賞に値しないと言う人もいますよね。。。
確かに次のように書いていた人がいた。
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関西弁を捨てた村上春樹
「週刊朝日」連載の『村上朝日堂の逆襲』は1986年に単行本化されたが、そこに「関西弁について」という文章がある。 (略)
東京に出てきていちばん驚いたことは僕の使う言葉が1週間のうちにほぼ完全に標準語ーーーというか、つまり東京弁ですねーーーに変わってしまったことだった。
僕としてはそんな言葉これまでに使ったこともないし、とくに変えようという意識はなかったのだが、ふと気がついたら変わってしまっていたのである。
気がついたら、「そんなこと言ったってさ、そりゃわかんないよ」という風になってしまっていたのである。
同じ時に東京に出てきた関西の友達には「お前なんや、それ。 ちゃんと関西弁使ったらええやないか、アホな言葉を使うな」と非難されたけれど、変わっちゃったものはもうどうしようもないのである。(新潮文庫、25頁)
(中略)
毎年のようにノーベル文学賞候補に上がる「村上春樹のブンガク性」は、無国籍的だと指摘され続けてきたが、母語であった関西弁を捨てたところから始まっているといえるだろう。
(111-112ページ)
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
『大阪弁ブンガク論』
著者: 江 弘毅
2018年7月2日 第1版発行
発行所: ㈱ミシマ社
りんごが嫌いな人は、めったに居ません。。。 僕は例えで「りんごが嫌い!」と言うわけだけれど、村上春樹の小説が嫌いなのですよ。。。 でもねぇ~、日本を含めて、世界にはおそらく少なく見積もっても4000万人のハルキストが居ると思うのですよ。。。
つまり、村上さんの小説を読んで、素晴らしいと思う人が世界にはたくさん居るということですか?
そうですよ。。。 彼の小説は、他のどの日本人小説家よりも多くの国(36言語)で翻訳されているし、売り上げだけを見ても、世界の読者を合わせれば、少なくとも4000万人は居るはずですよ。。。
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『ノルウェイの森』の発行部数1000万部突破
2009-08-05 14:00
作家・村上春樹氏の長編小説『ノルウェイの森』(講談社)の国内総発行部数が、5日に増刷を行ったことで上下巻合計1000万部を突破したことが明らかになった。
同作は1987年に発表された村上氏の代表作品で、2010年には松山ケンイチ、菊地凛子を主演に同作の映画が公開されることでも話題になっている。
発行元の講談社によると、同作は単行本、旧版・新版の文庫本が発行されているが、今回文庫本の上巻を6万部、下巻を5万部増刷したことで、総計1000万3400部に達したという。
同作は主人公と友人の恋人を軸に、青春の葛藤や恋心、喪失感、死生観、成長などが描かれた作品。
欧米、アジア圏など多数の言語で翻訳され、国内外で読まれている。
同作の映画化以外にも、今年2月には村上氏がイスラエルの文学賞『エルサレム賞』を欧米言語以外の作家として初受賞し、今年5月に発売された5年ぶりの新作『1Q84』(新潮社)が早くもベストセラーになるなど、同氏の作品への注目度がひときわ高まっている中での1000万部突破となった。
(注: 赤字はデンマンが強調。
読み易くするために改行を加えています。
写真はデンマン・ライブラリーより)
『ORICON NEWS』より
それなのに、どういうわけでノーベル文学賞がもらえないのですか?
簡単な理由ですよ。。。 リンゴが嫌いなように、ノーベル文学賞選考委員の多くが村上さんの小説が嫌いなのですよ。。。 現在の選考委員を若い人に入れ替えない限り、村上さんがノーベル賞をもらう可能性はありません!
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